イージス護衛艦「はぐろ」、がんばります。   作:gotsu

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由良さんと単装砲です。

「このあたりになると、水深が、10メートルを切って危険です、陸までの距離を300メートル以上は取るようにしましょう。」

「わかりました、この島と島の間が一番難しそうですね。」

 

 私たちの艦隊に臨時で編成された由良さんが大まかに海域の特徴や浅瀬の場所を教えてくれます。

 今回は偵察という事で狭い島々の間にも入っていかないといけないので、綿密な航路の計画が必要です。

 

「ここで襲撃されると厄介なので単縦陣の距離を開いて逃げられるようにしておきましょう。」

 

 由良さんが指挿したのは、今までの任務で最も魚雷艇の攻撃を受けた場所でした。

 

「由良さん、なんとか避けていく事は出来ないんですか?」

 

「残念ですが、この先は天然の良港になっています。偵察のためには少しでも見ておく必要があります。」

 

 由良さんが指差した先の入江は入り口からは中が見えず、待ち伏せを受ければひとたまりもない場所です。

「今回は海域の特徴を知っている私が先頭を走ります。一番索敵能力の高いあなたは最後尾で私たちに攻撃しようとする深海棲艦を教えて下さい。」

 

 由良さんは話しを続けます。

「司令官の言った通り、この海域を抜かれるとOZ国とNZ国へまで止める術がありません、今回の任務はそれほど重要なのです。だから経験は浅いですが、索敵能力に優れた第11駆逐隊が選ばれたんです。それに、即席の編成だと味方撃ちの可能性もありますから。」

 

 確かに重巡洋艦ほどの大きさの艦を狭い海峡などで先行させると、格好の的になってしまいます。でも、駆逐艦では装甲が心許ないです。由良さんの言う事は最善に聞こえます。

 

「わかりました、それで行きましょう、あとは駆逐艦の並びですが……」

「はいはいはい、就役順で!」

「じゃんけんにしようよ!」

「はぁ…」

 

 由良さんはため息をつきます。

 

「まったく、私たちの所だけかと思ってましたが、駆逐艦はどこも同じですね。」

「あの、あの、私も……駆逐艦です……」

「それはそれとして、駆逐艦の並びはあなたが決めておいて下さいね。」

 

 由良さんはそう言うと、もう一度海図に視線を落とします。

 

「じゃあ、やっぱり就役順にしましょう。」

「ですよね、はぐろさん!」

 

 吹雪ちゃんが目を輝かせます。

 

「ちぇっ」

 

「ふふん、一番艦は偉いのです!」

 

「まあまあ、並びなんていいじゃないですか、それに先頭は一番怪我をしやすいんですよ。」

 

 2人の言い争いを見て由良さんが言います。

 

「さて、だいたいは決まりましたね、細かい話はここまでにして……」

 

 由良さんが話しは終わったといわんばかりに手をぱんと叩きます。それから、私の手を取って、目を輝かせながら言います。

 

「あなたの単装砲、見学させて!ねっ!ねっ!」

「へっ?」

 

 私は由良さんの提案に目を丸くしてしまいました。

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 結局、由良さんに押し負けて、私たちは泊地へ向かう通船に乗ることになりました。

 

「そうそう、火力を強化したいんだけど……」

 

「なるほど、単装砲がいちばんバランスがいいので、どうすれば単装砲のまま火力をあげられるかですか……。」

 

 由良さんは真剣な顔で言います。確かに武器は軍艦にとっては譲れないもので、運命を左右するものです。

 

「でも、連装砲にすれば簡単じゃん!」

「いえ、連装砲は……」

 

 由良さんは深雪ちゃんの言葉に目を背けます。

 

「とにかく、単装砲で何とかなりませんか?」

「何とかって……」

 

 確か由良さんの単装砲は14センチが沢山ついていて、6000トンくらいです。それなら127ミリが詰めそうですが……

 

「あっ、見えてきましたよ!」

 

 そんなふうに考え事をしているうちに、泊地に到着してしまいました。

 由良さんは艦首にある主砲を物珍しそうに見ています。

 

「話しには聞いていましたが、艦首に1門なんですね。」

 

「はい、ほんのひと昔前は沢山積んでいる船もあったんですが、ミサイ……ロケットがよく当たるようになったので、私が出来た頃には一つが普通になりましたよ。」

 

 私が就役する頃に、ほんの少しだけご一緒したはたかぜさんやしまかぜさんがその名残です。私が就役する前のむらくもさんはもっと大砲を積んでいたようです。

 

「そうなんですか、戦艦から飛行機になった時のように、時代の移り変わりは思いもよらない事を起こすんですね……」

 

 由良さんは感慨深そうに言います。確かに、兵器の進化は凄まじいもので、思いもよらない方向に変化していくものです。

 

「それに、明石さんに教えてもらったんですが、自動で弾を込められる大砲を作ろうとしているみたいですよ。私は会ったことありませんが、夕張さんが明石さんと協力して作ってるみたいです。」

 

「そうなんですか!!情報が早いですね。流石は明石さんを泊地まで連れてきたたけはありますね!」

 

「そうそう、そうなったら主砲を降ろしてロケット?を積めるようになるかも!?」

「いいですね、吹雪型駆逐艦の20××年版ですね!」

「面白そうですね、じゃあ、改修するまで、しっかり任務を果たして帰ってこないといけませんね。」

 由良さんは興奮するする吹雪ちゃんたちに優しく言います。

 

「由良さんって落ち着いてて、大人っぽいですね、私も見習わないと……」

 

「あら、ありがとうございます。でも、無理して真似をしなくてもいいんですよ。」

 

「そうですよ、はぐろさんにははぐろさんのいい所があります!」

「はぐろさんは今のままでいいです!」

 吹雪ちゃんと白雪ちゃんが力強く言います。

 振り向くと、皆さんがふんふんと、首を、縦に振ってくれます。

 

「って、言ってますよ。」

「そう、ですかね……でも、もう少し旗艦として、しっかりしたいです…。」

 

「そんなものですよ、どんな旗艦でも悩みはあります。それに……」

「そんな事が考えられるのも、こうやって話せるのも艦娘になれたからこそですよね。ねっ!」

 大人っぽく見えていた由良さんが嬉しそうに、楽しそうに言います。

「へへっ、そうそう!だから次の出港も!」

「「「無事に帰って来ましょう!」」」

 

「ええ、そうですね。それには、息抜きも、士気の高揚も大切よね。」

 おとなしそうな由良さんの目がぎらりと光った気がしました。

 

「そうそう、艦内設備がすごく充実した駆逐艦があるって聞いたんですが、誰か知りませんかね、ねっ!」

 

「そんな駆逐艦があるんですか……」

 

 出会った事のある駆逐艦の方々を思い出しますが、艦内まで見たことはありません。いったい誰の事でしょうか?

 そんな事を考えていると、皆さんがこちらを見てきます。

「?」

 

「広い士官室と司令室完備……」

「映画も見られます!」

「空調も……完璧……」

「あの、はぐろさん、ここで悩むのはよくないですよ!」

 

「えっ、私ですか!?」

「という訳で、お邪魔していいですよね、ねっ!」

「はっ、はい!喜んで!」

 

 由良さんの勢いについ反射で答えてしまいます。でも、隠すものでもないですし、由良さんを艦内に案内する事にしました。

 




酒を飲みつつ変なノリで書き上げるました!

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