南雲盾一と不思議な神器   作:康頼

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合従軍の軍議に参加して数十分。

話の半分は、盟主となった袁紹の自慢話だったため、つまらない時間となったが、ある意味この場に参加できたことは大きい。

まず、確認しておきたいことの一つであった、曹操の性別だったが、やはりここの曹操は女性であった。

あの乱世の奸雄と呼ばれた者が、あのような可愛らしい姿だったのは意外だったが、あの見定めるように見てくる眼と体から溢れるオーラは間違いなくイメージの曹操そのものだった。

そして、袁紹に、袁術、孫策に劉備も女性ということには驚いた。

今まで三国志の英傑達に出会ったことはなかったが、もしかすること全員が女性になっているのかもしれない。

しかし、それでも能力的には全く変わらないということなら、女性だろうが男性だろうが脅威に値することには違いはない。

とりあえず、華北で最大勢力を持つ袁紹には媚でも売っておくほうがいいだろう。

 

そんなことを考えていると、議題は誰が先陣をいくかということになっていた。

汜水関という巨大な防壁を攻略するのには、間違いなく多くの犠牲に払うことになるだろう。

 

「ああ、もう! では劉備さんお願いしますわ!!」

 

そのため、誰もが様子見となっている中で気の短い袁紹の独断により、不運にも槍玉に挙げられたのが、この中で一番勢力の低い劉備であった。

 

「お待ちください! 我々の兵力では汜水関を抜くことなど」

「ええい!! 煩いですわね。 私が盟主です! 盟主の指示に従いなさいな!」

 

劉備の隣にいたロリッ子が慌てていたが、袁紹は聞く耳を持たない。

その様子を見ても曹操などは何も言わないのだから間違いなく、様子見に徹するのだろう。

だが、聞く話によると劉備軍の兵力は二千(よくこんな小勢で参加したものだ)、対する汜水関の董卓軍は3万という数らしい。

加えて関墜としのことを考えると、兵力は全然足りないだろう。

劉備ということは、張飛と関羽がいるのだから、間違いなく後の脅威となるため、ここで死んでもらうのは有難いが、合従軍には勝ってもらわなければならない。

確かに合従軍と董卓軍なら、間違いなく合従軍が兵力を上回っているが、それは合従軍だからである。

単独で言えば、董卓軍が俺達を除けば間違いなく中華で一番の兵力を誇っているだろう。

それに董卓軍には呂布がいる。

こちらには、オール100のアーサー達がいるが、呂布の力がどれ程のものかはわからない。

ゆえにこの有利な状況を生かして、董卓軍を殲滅しなければならないのだ。

 

「少しお待ちいただきたい」

 

ここはこの一手が手堅いだろう。

 

「我が軍も、先陣に加えていただきたい」

 

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

先ほどまで沈黙を保っていた南雲に、天幕内の視線が集まる。

その視線に構うことなく、南雲は気負い一つしていない自然な様子で答えた。

 

「我が軍も、先陣に加えていただきたい」

 

その発言に、華琳は考えを読もうと眼を細める。

普通に考えれば、名を上げたいということが考えられるが、それならば先の乱の時に名を上げようとできたはずである。

兵力を整えていたのか? それはあり得ないだろう。

そもそも20万という数を集めるということは、間違いなく何年もの月日が必要になる。

一か月ほどで変わる数ではないため、間違いなく乱の際には戦える十分な兵力は保っていたはずである。

そもそも20万の兵力を持って、この合従軍に参加したことすら理解ができない。

この合従軍は、帝を董卓の手から助け出すという大義名分を打ち出してはいるが、実際のところは名を、地位を、力を得るためだけの欲にまみれた戦いである。

もしも、華琳自身が20万の兵力を手に入れたのなら、こんな戦いには参加せずに領地を広げるために各地に軍を送っていただろう。

ならば、考えることは一つ。

この戦い自体に意味があるということだ。

無論、あの大義に惹かれたというわけではないだろう。

あの麗羽に媚を売っていたた時の態度とは、真逆の何の関心すら持っていないあの眼をもつ人間が、漢王朝を助けようという気があるわけがなかった。

 

少し、評価を改めるべきね、

と華琳は、南雲という男の評価を上げた。

 

そんな華琳を放って話は続く。

 

「こうして、南方の地から参ったのです。 微力ながら袁紹殿の力になりたいのです」

 

あからさま過ぎる南雲の言葉に、調子のいい麗羽は少し顔を赤く染めてほほを緩める。

 

「で、ではお願いしようかしら」

「は、必ずや期待に応えましょう」

 

天幕内に通るような声を上げた南雲は、上座に座る麗羽に礼を行うと、近くにいた劉備——桃香に向き直る。

 

「では劉備殿、互いに力を合わせましょう」

「は、はい」

 

それだけ伝えると、南雲は立ち上がる。

 

「では、我々はすぐに軍の編成を急ぎますので、失礼いたします」

 

そう言って、配下の四人を引き連れて天幕出て行った。

 

 

 

 

 

 


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