南雲盾一と不思議な神器   作:康頼

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衝撃の事実から一月。

俺達は村人達と別れると中原、正確には陳留の曹操の勢力圏から逃れるように南下した。

中原から下りた俺達はそのまま荊州に渡ると、その地を勢力下においた劉表軍の最大の都市、襄陽で一度休みを取ると、そのまま南下を繰り返した。

そして荊州の南部であり、劉表軍の勢力下から離れた蒼悟という地に拠点を置いた。

この地は、中華よりも異民族の勢力下の強い地であり、中華の英雄達から逃れるためであった。

だが、異民族と呼ばれる精強な軍勢に囲まれるということもあり、すぐに戦力強化が実施された。

 

人を集めて……という時間のかかる手は取れるわけも無く、頼ったのは神さんの神器である。

アーサー達四人以外に、九人の将を作り出した。

その際、自重をするために残りの九人の能力は全員95にしておいた。

次に行ったのは、本拠地とされる城である。

幸いにも、この神器は新武将登録機能だけではなく、本拠地等の数値を弄ることができるタイプのものであった。

とりあえず、この城の城壁等の数値をマックスにし、人口と兵力を最高値の25万に設定した。

冷静に考えると、この国の洛陽でもここまで凄くないのではないか?と思ったが、かなり頭がハイになっていたため、気にしないことにした。

こうして洛陽を超える大都市が人知れず生み出されたのである。

 

「何っていうか、神さんには感謝でいっぱいだな」

 

この神器を渡されてなかったら、間違いなく死んでいる自信がある。

もし、俺個人がオール100のステータスにされても、この乱世を生き抜くことはできなかっただろう。

 

神さんに感謝を込めながら、最上階の自室からこの蒼悟の城を眺める。

ステータスは弄れたが、内装は自分達の手で行わなければならない。

とりあえず田や畑を城壁内に作り、いわば小田原城風にしてみた。

これで兵糧攻めにも耐えることができるだろう。

といっても、兵糧や金の数値を弄れることに気づいたのは、城を作り終えてだったのだが。

城壁は全部で五層に分かれ、俺達が住む場所を中央とすると、城壁を挟んで25万の兵達が待つ兵達の兵舎。

そして、貯蓄した武具や兵糧を貯めた庫に民達の家と田畑と並び、最後は矢塔等が並んだ見張り兵が駐屯する場所となっている。

あと念には念を重ねて、城の四方を囲むようにして柵で防壁を作った巨大な陣が作られており、異民族達の襲来に備えている。

 

最もアーサー達が率いる軍による、異民族狩りにより周辺の人々が陣の周りを囲むようにして住民達が暮らすようになってきたのだが。

 

「地ならしは殆ど終えてきたようだな。徹底的に異民族を叩いた後に中華に眼を向けてもいいかもしれないな」

 

中央へと飛ばした間者の情報によれば、黄巾の乱と思われる戦いは終えようとしていた。

次に始まるのは史実通りに行けば、西の雄である董卓の圧政である。

その戦に参戦するのはいいかもしれない。

 

「これで本当にあの情報が本当か確認できるな」

 

本当なら曹操や劉備などの後の英雄たちが集う戦いに参戦しようと思わないが、確認したいことがある。

それは巷で有名になりつつある、曹操や劉備のことである。

 

「彼らは本当に女なのか?」

 

 

 

 

 

 

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南で暴れる盾一達のことを警戒する者がいた。

それは盾一自身が脅威に思っていた曹操その人である。

 

「それで、その五人組のことについては追えなかったいうことね?」

「申し訳ございません。 襄陽に入るまでは確認できたのですが……」

 

玉座に座り、忠臣である荀彧の報告に、曹操は思わずため息をつく。

その艶のある姿は、間違いなく男が見ていると思わず唾を呑み込むほど可憐な姿であった。

つまりは、曹操は女であるということである。

むろん曹操だけでなく、目の前で頭を下げる荀彧も、曹操の隣の両翼将軍で知られる夏侯惇、夏侯淵姉妹も女性である。

この世界の住民にとっては不思議なことではないが、盾一からすると、ここは三国志から少しずれた世界ということになるだろう。

 

話がそれたが、そんな女傑曹操が目下気にしている者が、一月前に曹操の領地で起きた盗賊達の件である。

その時、陳留を離れていた曹操達が慌てて軍を送ると、そこには盗賊達の死体が積まれていた村であった。

無論、その中には村人の遺体もあり、その光景に曹操は悔しさで表情を顰めたが、それでも助かった村人を労った。

その際に、聞いたのだ五人組の旅人を。

 

「村人の話では、五人のうち、三人は名刀を備えていたようね。 そしてその剣に勝るとも劣らない腕を持って」

 

細切れになった賊の傷口等を見ると、間違いなく達人であろう。

それも並みの達人ではなく、隣の曹操軍最強の夏侯惇の腕を凌ぐほどの。

そんな人間が最低二人、そして夏侯淵に匹敵するような弓の名手が一人だけいたのも確認されている。

そして、首魁とされる青年。

村長のいう話では、何処か浮世離れした様子だった、と。

四人の英雄を従えた王。

曹操の興味を引くには十分すぎる事実であった。

 

「しかし、先の乱で彼らと思われる者は現れていませんね」

「そうね、けど現れるはずよ。 かの者が私と対する王に相応しい人間ならね」

 

そう言って、古来の英雄は笑った。

英雄の名は曹操、真名は華琳と呼ばれた。

 

 

 

 

 

 


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