南雲盾一と不思議な神器   作:康頼

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初戦となった汜水関の戦いと違い、虎牢関の戦いは両軍、一進一退の攻防を繰り広げていた。

将である呂布がいないとはいえ、精鋭揃いの呂布の騎馬部隊に公孫賛軍は奮闘をしていた。

白馬将軍でその名を轟かせる公孫賛の旗下の兵達もまた北方の異民族達と渡り合えた猛者である。

だがそれでも呂布の騎馬隊は強かった。

それは精鋭というだけの力ではなく、後がないという気迫の元、数の勝る公孫賛軍を押していた。

その光景を見ていた盾一は、ランスロをこの場に呼んだ。

 

「ランスロ、公孫賛軍に噛みついている呂布軍の首を落としてこい」

「———よろしいのですか?」

 

出るつもりはない、と豪語していた盾一が、突然指示を変えたことにランスロは疑問に思ったのか、珍しく確認を取るように尋ねる。

その言葉に盾一は、少し驚いたように眉を上げる。

キャラクターとして作っているため、こちらの指示通りしか動かないと思っていたが、どうやら自我のようなものも存在するらしい。

ならば、対応力もあるな、と自身の戦力を再認識した。

だからこそ、ここは説明するべきだと考えた。

 

「攻め時だな、ここで呂布軍を突けば、間違いなく呂布が動く」

 

それに今の呂布軍は数を減らして消耗している。

公孫賛相手なら、他の事に眼を行くものはいないだろう、という考えと、一万程度とはいえ呂布軍の脅威さに確実にここで殺すべきだと考えたのだ。

そして、その軍勢を囮として。

 

「そこをトリスタ、お前が射殺せ」

 

トリスタの超精密射撃でその首を取る。

もし、一撃で討てなかったとしても、矢の射程距離内なら間違いなくこちらが一方的に攻撃できるだろう。

呂布を討てば、後は曹操軍と戦っている張遼を皆殺しにして、この戦は終わりである。

 

「かしこまりました」

 

盾一の言葉にトリスタ、ランスロの両名は、その指示を全うするためにその場を後にする。

その二人を見送った盾一は、再び指示を送る。

 

「パーシー、ケイは共に一万の軍勢を与えるから、背を向けた呂布軍の残党を確実に狩れ。 張遼軍は全軍のガウェンに任せる」

 

方針が決まり、速やかに行動を起こす配下達を見送ると、盾一は楽しそうの表情を浮かべて、一騎打ちを行う呂布達にの方に視線を向ける。

 

「さて、賽は投げてやったぞ、後はどうなるか楽しみだな」

 

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・

 

 

 

 

 

 

その軍勢に一番に、気が付いたのは呂布軍と対峙する公孫賛軍だった。

 

「あれは?」

 

突如、呂布軍の攻勢が弱まり、同時に後方の呂布軍から悲鳴が上がったのである。

そこには凄まじいほどの剣捌きで、呂布兵達の戟を打ち払い、流れるような二撃で首を確実に刈り取る化身がそこに存在した。

公孫賛は自分自身に武の才がないことは理解していた。

ゆえに、客将として一時期身を寄せていた趙雲に期待した。

彼女の槍は、目にもとまらぬ刺突で賊兵達を討ち取り、公孫賛軍に貢献した。

だが、あれはなんだ?

確かに趙雲は凄かった、だが目の前の化身は同じようなことを天下最強の呂布軍に向かって行っていた。

ひとたび剣を振るえば、三つの首が飛び、一息で十の命が失われていく。

そんな死神の後には、亡者の如き兵達が呂布軍に襲い掛かった。

確かに練度は呂布軍の方が若干上であった。

一対一なら呂布軍に軍配が上がるだろう。

だが、その数は呂布軍の軽く五倍。

消耗しきっている呂布軍に対し、体力が全開に近い南雲軍には勝てるはずもなかった。

次々に呂布軍を殺していく南雲軍に、公孫賛は味方ながら、その背を恐怖で振るわせた。

 

 

そんな公孫賛の目の前で、ランスロは呂布軍の殲滅を開始する。

呂布が動いたことは、すでに確認している。

だが、それより先にランスロは、殲滅できる自信があった。

それは———

 

「ひ、退くのです!! 恋殿を呼んでしまったら、皆殺されています!!」

 

目の前には小柄な少女が、呂布軍に指示を出していた。

間違いなく、この少女が呂布軍の副官なのだろう。

ならば、やるべきことは一つである。

 

「その少女だけ生かして、後は全員殺せ。 この少女は呂布を動揺させる餌に使う」

 

ランスロは、背後の兵達に指示を飛ばすと、そのまま少女に向けて、馬を走らせる。

途中、呂布兵達の妨害もあったが、ランスロの持つアロンダイトの前では、豆腐のように柔らかい。

数十の呂布軍を切り殺した後、そのまま空いた左手で少女の首を掴み、絞めて意識を飛ばすと、護衛の呂布軍を一掃した。

残りは、パーシーとケイの軍が、隙を突くようにして、呂布軍を一匹残らず耐えられていく。

 

それを見て、ランスロはそのまま背後に振り返ると、そこには血まみれで無数の切り傷をつけた呂布がそこにいた。

二万の南雲軍を割ってきたらしい。

 

「なるほど、その力、主様が脅威を抱くわけだ」

「……はぁ……はぁ、ねねを、はなせ」

 

肩で息をしている呂布は、化け物じみた武勇を持っていたとしても、やはり人なのだろう。

もう限界に近かった。

そんな呂布相手に、ランスロはねね、と呼ばれた少女の首筋に剣を向ける。

 

「動けば、首を刎ねる」

 

ランスロがそう言って、呂布の体が一瞬硬直したその時、————その時が訪れた。

 

「さらばだ、鬼神呂布」

 

人垣を縫うような超精密の矢が呂布の背中に突き刺さった。

 

 

 

 

 


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