丸藤亮 LP2800 手札1枚
場 サイバー・エンド・ドラゴン、ハウンド・ドラゴン
早乙女レイ LP1200 手札3枚
場 無し
魔法 神の居城―ヴァルハラ
罠 王宮のお触れ
カイザーとまで畏怖されたデュエリストによる容赦のない直接攻撃。極々平凡な小学生なら、これだけで戦意喪失して膝を屈していただろう。
だが早乙女レイは七年間ずっと帝王と魔王、二人の王者の背中を追い続けてきたデュエリスト。このくらいで心が折れるなどは有り得ない。
――――王宮のお触れで罠が使えない? ならば正面から殴り倒せばいい。あの二人ならば必ずそうする。
幼い日の大切な思い出を支えに、レイは真っ直ぐに遥か遠くの頂に立つ憧れを見据える。
「ボクの……ターンだよ、ドロー!」
純粋に自分を憧れるレイを、少しばかり複雑な目で見ながら亮は出方を伺う。
レイのフィールドはがら空き。一見すると不利だが、これによりヴァルハラの発動条件は満たされている。召喚される天使族モンスターの能力如何ではサイバー・エンドをこのターン中に失う可能性もあるだろう。天使族を自在に操る友人を知るだけあって、亮はそういう最悪の可能性も想定していた。
そして早乙女レイはその最悪を引き寄せる。
「――――きた! ボクはヴァルハラの効果でヘカテリスを特殊召喚するよ!」
【ヘカテリス】
光属性 ☆4 天使族
攻撃力1500
守備力1100
このカードを手札から墓地へ捨てて発動する。
自分のデッキから「神の居城-ヴァルハラ」1枚を手札に加える。
ヘカテリスは手札から捨てることでヴァルハラをサーチする優秀なカードだが、単体でのステータスはサイバー・エンド・ドラゴンに遠く及ばない。
しかし七年前に宍戸丈がレイへと餞別として送ったカード。それがサイバー・エンド・ドラゴンを倒す突破口となる。
「丈サマに貰ったカード、今こそ使わせて貰います。このカードは特殊召喚できない代わりに天使族モンスター1体を生け贄にして召喚することができる。お願い、力を貸して……! ヘカテリスを生け贄に堕天使ディザイアを召喚!!」
【堕天使ディザイア】
闇属性 ☆10 天使族
攻撃力3000
守備力2800
このカードは特殊召喚できない。
このカードは天使族モンスター1体を
生け贄にして生け贄召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に
このカードの攻撃力を1000ポイントダウンし、
相手フィールド上に存在するモンスター1体を墓地へ送る事ができる。
三幻神や三邪神と同等のレベルをもつ最上級堕天使。嘗て魔王から少女へと送られた力が、七年の時を経て帝王に牙を剥く。
欲望を司る堕天使は、闇にて輝く黄金を放ち帝王の前に現出した。
「来たか。堕天使、丈の託した力よ……!」
「堕天使ディザイアのモンスター効果! このカードの攻撃力を1000ポイントダウンさせることで、相手フィールドのモンスター1体を墓地へ送る。サイバー・エンド・ドラゴンはこの効果により墓地へ送られる!」
破壊耐性をも無効化する墓地へ送るという異常性。サイバー流の象徴として圧倒的な力の波動を放っていたサイバー・エンドは、断末魔の悲鳴すらあげることなく墓地へ消えた。
堕天使ディザイアの攻撃力もサイバー・エンドを消し去った代償に攻撃値がダウンするが、亮の場にいるのは攻撃力1700のハウンド・ドラゴンのみ。問題はない。
「バトル! 堕天使ディザイアでハウンド・ドラゴンを攻撃! 堕天のコキュートス・デザイア!!」
「くっ!」
丸藤亮LP2800→2500
サイバー・エンド・ドラゴンを倒し、帝王にダメージすら与える。これをまだ小学生の少女がやってのけたと知れば、多くの人間は目を丸くして現実の光景か疑うだろう。
しかし亮は寧ろ『これでこそ』と思う。生涯最大の好敵手よりカードを託された一人だというのならば、これくらいはやって貰わねば張り合いがない。それにデュエリストの実力と年齢は必ずしも比例するものではない。自分だってレイと同い年の頃には、既にサイバー流の免許皆伝を得ていたし、他の四天王とて大会で大人顔負けの活躍をしていた。
「スケジュールの忙しいプロリーグの世界で忘れ去っていた。これがデュエルをすることでしか得られぬ高揚、勝利の美酒を渇望する内臓というものか」
「亮サマ?」
「レイ、まだ勝負はここからだ。何もすることがないのならターンエンドを宣言するといい」
「あ、はい! ターンエンドです!」
「俺のターン、ドロー! サイバー・ダーク・ホーンを攻撃表示で召喚!」
【サイバー・ダーク・ホーン】
闇属性 ☆4 機械族
攻撃力800
守備力800
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地のレベル3以下のドラゴン族モンスター1体を
選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備した
モンスターの攻撃力分アップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが戦闘によって破壊される場合、
代わりにこのカードの効果で装備したモンスターを破壊する。
亮のデッキに不和を齎すこととなった原因、サイバー流裏デッキに属するサイバー・ダーク・ホーンが召喚された。
個々のステータスが貧弱なサイバー・ダークはこのままでは他のモンスターに届かないが、既に亮の墓地には格好の得物が置かれている。
「サイバー・ダーク・ホーンのモンスター効果! 墓地に眠るハウンド・ドラゴンを装備し、その攻撃力を奪う! これによりサイバー・ダーク・ホーンの攻撃力は1700ポイント上昇し2500となった!
バトルだ! サイバー・ダーク・ホーンで攻撃力が2000となっている堕天使ディザイアを攻撃、ダーク・ホーン・バースト!!」
「あ、ああああああああああああああああ!!」
早乙女レイLP1200→700
三邪神ほどではないがサイバー・ダークの切れ味は、ソリッドビジョンすら相応の苦痛を相手デュエリストにも与える。
亮からすればどうということはないが、小学六年生のレイにこの痛みは堪えるだろう。
これで斃れるようならば仕方ない。良いデュエルを途中で終わらせるのは勿体ないが、まだサイバー・ダークの相手をさせるには早すぎたと手を引かなくてはなるまい。戦いの興奮と命、どちらが重いかなど分かりきっているのだから。
だがレイはまだ未成熟な体で痛みによく耐えた。目元に涙が滲んでいるものの、闘志そのものは消えていない。
「それでいい。バトルを終了、ターンエンドだ」
やはりというべきかジャックがコモンズ出身と明らかになっていることや、差別がサテライトとシティじゃなくてコモンズとトップスになっていることから、ネット界隈では完全に平行世界説が主流になっていますね。
しかし平行世界説は万能すぎて、それだとまったく考察し甲斐がないので多少強引にでも5D'sとまったくの同一世界だとすると、かなり問題も出てきます。
・まず時系列は一体いつ頃なのか?
・ジャックの出自がコモンズになっているのは何故なのか?
・サテライトとシティじゃなくてトップスとコモンズになっているのは何故なのか?
・遊星は何処へ行ったというのか?
・シティの市長に就任したイェーガーはなにをしているのか?
まずジャックの出自については、一応作中で遊星敗北後にサテライト出身だとマスコミにばれていたので、サテライト=コモンという解釈がなされたのなら、ジャックが本編終了後に真のキングになってからコモンズ出身ということになっていても不思議ではない。そして前述のことから時系列はアニメ本編終了後であると考えられる。
では身分制度がネオ・ドミノとまるで違うことや遊星がいないことやイェーガー不在はどう説明するのかと言われると、これが難題である。
そもそも5D'sラストの描写から遊星がネオ・ドミノにいるのは確定であり、市長のイェーガーも乱心して嘗ての身分制度復活とかはしないだろう。
つまりネオ・ドミノに関しては遊星という英雄が常駐で、しかも政治機構がしっかりしているという無敵な布陣なわけで、今更どうこうなるなんてことは考えにくい。
やはりあの世界は平行世界でファイナルアンサーなのか――――――と、ここでチェス盤というか前提を引っくり返してみる。
そもそも…………別にあの街がネオ・ドミノとは限らなくね?
というのもARC-V作中では『シティ』と呼称されてはいるものの、一度もネオ・ドミノとは言われていない。
満足タウンやチーム太陽の田舎もある5D'sの世界観。別にネオ・ドミノクラスの街が他に幾つかあってもおかしくはない。そう考えると遊星がいないことやイェーガー不在、身分制度がネオ・ドミノと違うという謎も一気に解決する。
街が違えば身分制度が違っても不思議ではないし、イェーガーはあくまでネオ・ドミノ市長であって、他の街への影響力は薄いだろう。
…………え? ユーゴはジャックと同じ施設出身だって? 知らんがな。