カイザー亮 LP4000 手札3枚
場 無し
伏せ 一枚
エド・フェニックス LP4000 手札1枚
場 シャイニング・フレア・ウィングマン、The シャイニング
伏せ 一枚
シャイニング・フレア・ウィングマンとThe シャイニングという強力な融合HEROが出たことで、カイザー側の観客はお通夜ムードに、逆にエド側の観客は大盛り上がりだった。
だがこれくらいの窮地で絶望し膝を屈するほどカイザーと呼ばれたデュエリストは生温い男ではない。寧ろ追い詰められれば追い詰められるほどに、それを打開するために爆発力を溜めこんでいくのが丸藤亮という男だ。
「俺のターンだ、ドロー。…………エド、お前が『真のデッキ』を投入してきたのであれば、俺もまた新たなる力をお前に見せよう」
『ここでカイザー亮! 絶体絶命の窮地でまさかの新たなる切り札の登場を宣言だぁぁあああああッ!』
『カイザーは正々堂々の戦いを重んじるデュエリストです。となるとこの発言もハッタリの可能性は低いでしょう。問題はエド・フェニックスの場にある二体のHEROをどう攻略するかですが……』
亮の発言にお通夜ムードだった亮側の観客席が活気を取り戻し、それが会場全体に伝染する。実況の声もどことなくテンションが上がっている様子だった。
そして当事者の一人であるエド・フェニックスは、奥の手の存在を匂わす発言にも不敵な雰囲気を崩すことはしなかった。逆に挑発気に笑みを浮かべると、
「それは面白い。サイバー流の新しい力とやらを一番近くで見れるとは光栄ですよ、先輩」
「先輩と強調する必要はない。アカデミア生としては俺は先輩だが、プロとしてはお前が先輩だ」
「ならばカイザー。君の言う奥の手で僕のHEROを倒せるかな?」
「倒すさ。まずは魔法カード、トレード・インを発動。手札のレベル8モンスターを捨ててカードを二枚ドローする。俺はラビードラゴンを捨ててカードを二枚ドロー」
「ラビードラゴンだと!」
【ラビードラゴン】
光属性 ☆8 族
攻撃力2950
守備力2900
雪原に生息するドラゴンの突然変異種。
巨大な耳は数キロ離れた物音を聴き分け、
驚異的な跳躍力と相俟って狙った獲物は逃さない。
サイバー流の象徴はサイバー・ドラゴンであり、そのデッキはサイバー・ドラゴン系列モンスターを中心とした機械族で構成されている。その時々によって亮は機械族以外のモンスターを投入することもあるが、それはサイバー流と相性の良いカードであったり、メタモルポットのような汎用性の高いカードばかりだ。
まかり間違ってもラビードラゴンのようなサイバー流と特にシナジーもないドラゴン族通常モンスターを投入したりなどはしていなかった。
そのことはエド以外も理解しているため、観客もどこかざわめいていた。
「さらに竜の霊廟を発動。デッキからレベル3の通常モンスター、ハウンド・ドラゴンを墓地へ送る。さらにこの効果で墓地へ送ったのが通常モンスターだった場合、更にもう一枚カードを墓地に送ることが可能。俺はもう一枚のハウンド・ドラゴンを墓地へ送る」
一気に二体のドラゴン族通常モンスターを墓地へ送る亮。完全にこれまでのサイバー流とは異なる動きが、亮の発言の信憑性を増させた。
なにをしてくるのか分からない不気味さから、エドも不敵な笑みを消し去って真剣そのものの目つきで亮の行動を凝視する。
「サイバー流の歴史に封じられし闇。サイバー流裏デッキの切れ味をとくと味わわせてやる。俺は手札よりサイバー・ダーク・ホーンを攻撃表示で召喚!」
【サイバー・ダーク・ホーン】
闇属性 ☆4 機械族
攻撃力800
守備力800
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地のレベル3以下のドラゴン族モンスター1体を
選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
このカードの攻撃力は、このカードの効果で装備した
モンスターの攻撃力分アップする。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが戦闘によって破壊される場合、
代わりにこのカードの効果で装備したモンスターを破壊する。
奇妙な沈黙の中、亮が召喚したのは外骨格を思わせる機械族モンスターだった。
サイバー・ドラゴンと同じ『サイバー』という名を冠しながら、ダークという名が示す通り属性は闇。サイバー流裏デッキの名に恥じないカードといえるだろう。
だが危ういオーラとは反対にステータスそのものは貧弱そのものだ。
「攻撃力と守備力が……たったの800だと?」
「サイバー・ダークの真価はこれからだ。サイバー・ダーク・ホーンが召喚に成功した時、自分の墓地のレベル3以下のドラゴン族モンスターを選択し、装備カード扱いとしてこのカードに装備する! そしてサイバー・ダークは装備したモンスターの攻撃力を自身の攻撃力として獲得する。
サイバー・ダーク・ホーン! 俺の墓地に眠りしハウンド・ドラゴンをフィールドに引きずり出せ!!」
【ハウンド・ドラゴン】
闇属性 ☆3 ドラゴン族
攻撃力1700
守備力100
鋭い牙で獲物を仕留めるドラゴン。
鋭く素早い動きで攻撃を繰り出すが、守備能力は持ち合わせていない。
墓地での眠りから強制的に覚まされたハウンド・ドラゴンを、外骨格型のサイバー・ダークが挟みこんだ。
ハウンド・ドラゴンのパワーがサイバー・ダークに流れ込んでいき、その力を増大させる。亮はサイバー・ダークに装備という言い方をしたが、これは装備というよりも寄生と呼ぶ方が適切だろう。
「ハウンド・ドラゴンの攻撃力は1700。つまりサイバー・ダークの攻撃力は1700上昇して2500となる!」
「……まさかレベル4モンスターが通常召喚されるだけで、帝モンスターのラインを超えた数値になるとは。だがその攻撃力では僕のHEROを倒すことはできない!」
「そう慌てるな。まだ俺のメインフェイズは終わっていない。魔法カード、パワーボンド! 手札のサイバー・ドラゴンとサイバー・ドラゴン・コアを手札融合! キメラテック・ランページ・ドラゴンを融合召喚!!」
「サイバー・ダーク以外にも新しいモンスターがいるのか!?」
【キメラテック・ランページ・ドラゴン】
闇属性 ☆5 機械族
攻撃力2100
守備力1600
「サイバー・ドラゴン」モンスター×2体以上
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
(1):このカードが融合召喚に成功した時、
このカードの融合素材としたモンスターの数まで
フィールドの魔法・罠カードを対象として発動できる。
そのカードを破壊する。
(2):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。
デッキから機械族・光属性モンスターを2体まで墓地へ送る。
このターン、このカードは通常攻撃に加えて、
この効果で墓地へ送ったモンスターの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃できる。
キメラテック・ランページ・ドラゴンはサイバー流裏デッキに分類されるカードでこそないが、属性はサイバー・ダークと同じ闇。
サイバー流の掲げるリスペクトデュエルの精神は、時に相手を真っ向から力でねじ伏せる暴力性を見せる。ある意味ではサイバー・ダークと同じくサイバー流の暗黒面を象徴するカードといってもいいだろう。
「キメラテック・ランページ・ドラゴンの攻撃力は2100。しかしパワー・ボンドによって融合召喚されたモンスターは攻撃力が倍となる! よって攻撃力は4200ポイント! そしてキメラテック・ランページ・ドラゴンは素材としたモンスターの数まで、フィールドの魔法・罠カードを破壊する!」
「そのエフェクトにチェーンしてリバース発動、針虫の巣窟! 僕はデッキより五枚のカードを墓地へ送る!」
「だがキメラテック・ランページ・ドラゴンには更なる特殊能力がある! 一ターンに一度、デッキから機械族・光属性モンスターを二体まで墓地へ送り、その効果で墓地に送った枚数分だけ攻撃回数を増やす!
俺はデッキからサイバー・ドラゴン・ツヴァイとサイバー・ドラゴン・ドライを墓地へ送る! よってキメラテック・ランページ・ドラゴンは三回の攻撃が可能となる!!」
「合計三回の攻撃だと!?」
デュエルモンスターズには連続攻撃が可能なモンスターというのは数多くいる。しかしその多くが精々二回攻撃が限度で、三回以上の攻撃が可能なモンスターでもモンスターにしか攻撃できないという制限がかかっているものだ。
まったくの制約なしに三回攻撃を可能にするキメラテック・ランページ・ドラゴンは脅威と言う他なかった。
「バトルだ! キメラテック・ランページ・ドラゴンでシャイニング・フレア・ウィングマンを攻撃! エヴォリューション・ランページ・バースト! 第一打ァ!! 続いてThe シャイニングを攻撃! 第二打ァ!!」
エド・フェニックスLP4000→1300
攻撃力4100のモンスターの連続攻撃に、エドのHEROたちは殲滅され、ライフもごっそりと削られる。
そしてモンスターを全て失ったエドに、キメラテック・ランページ・ドラゴンの咆哮が迫ってきた。
「止めだ。キメラテック・ランページ・ドラゴンで相手プレイヤーを直接攻撃、エヴォリューション・ランページ・バースト!!」
「そうはさせない! 手札からバトル・フェーダーのエフェクト発動! このカードを場に特殊召喚し、バトルフェイズを終了させる!」
後一歩のところでバトルフェーダーが立ち塞がり、エドのライフを守った。
千載一遇の好機を逃してしまった亮は、流石に悔しげに眉を潜める。
「……ターンエンドだ。エンドフェイズ時、俺はサイバー・ランページ・ドラゴンの元々の攻撃力分のダメージを受ける」
ジャックのARC-V登場(しかもOPまで出るほどガッツリ)が確定したので、ジャックについてのどうでもいい考察……。
元キングといえばV兄様と並んで遊戯王の二大ニートとして有名である。
クロウがデリバリーとしてバイトをして資金を稼ぎ、蟹がハイトマンのネジを締め直しに行ったり、Dホイールの開発に勤しむ中、仕事がまったく続かず仕舞いにはブルーアイズマウンテンを愛飲したり高価な服を買ったりするなど浪費の激しいジャック。
唯一の収入源であるピリ辛レッドデーモンズヌードルの広告収入は、全てカップラーメンに注ぎ込まれるという本末転倒ぶり。
デュエリストとしての実力は設定上クロウよりも上で、チーム5D'sの貴重な戦力ではあったが、大会の準備ではまったくの役立たずだったと言えるだろう。
――――けれど本当にそうなのだろうか?
そもそもジャックはキングとしてネオドミノに君臨してきたわけで、当然プロとしてかなりの額を稼いできただろう。
作中でプロデュエリストの年俸が明確に示されたことはないが、GXのエドが個人で巨大な船を所有していたあたりトッププロになるとかなりの額を稼ぐらしい。
八百長キングとか元キングとか散々な言われようのジャックだが、キングとして活躍していたのならばエド以上は稼いでいるだろう。
だというのに作中ではブルーアイズマウンテンを飲んではクロウにどつかれる毎日で、とても元キングらしいリッチっぷりは見られない。ブルーアイズマウンテンやカップラーメンなどにお金を使いまくるジャックも、流石に年俸全てを注ぎ込むことはしないだろう。そんなに一気に購入しても保存に悪いし……。ならば一体ジャックが稼いでいたであろう多額の年俸はどこへ消えたというのか。
ここで思い出して欲しいのは、遊星たちがお金を稼いでいるのはDホイールを開発するためということ。
作中の描写によれば、Dホイールの開発は企業がスポンサーになる必要があるほどお金のかかることらしい。そう言われればチーム太陽を除けば、作中登場したチームは皆が皆スポンサーや資金力を持っていそうな面々ばかり。
幾ら遊星がそこらの廃材からDホイールを作ってしまえるメ蟹ックといえど、やはり最高のDホイールを開発するには最高品質の素材を使うにこしたことはない。
だがクロウがデリバリーのバイトをどれだけ頑張っても、高く見積もった上にデュエリスト補正含めて月に100万円が限度だろう。蟹が同じ額を稼いだとしても200万円。日々生活していくには十分すぎるが、Dホイールを開発するには心許ない。
かといって他のチーム5D'sの面々は記憶喪失の未来人ブルーノに学生のアキさんに子供の龍可と龍亞。どう考えてもお金を持っていそうではない。アキさんのパパや双子の親はお金を持っていそうだが、流石にチームメンバーの親にお金をせびるほど情けないことはしないだろう。サテライト暮らしでマーカーつきの遊星やクロウも、貯金などは皆無なのは間違いない。
しかしチーム5D'sに一人だけ例外がいる。―――――ジャックだ。
ネオドミノの復興が進み、予告されるWRGPの開催。デュエリストの本能を刺激され沸き立つ遊星たち。そこで突き当たる資金難という現実の壁。だがそこにジャックが颯爽と現れ、キングとして稼いできた全財産をポンと出資。
クロウが「仕事しろ」と口を酸っぱくして言っているわりに、ジャックに本気で激怒したりしなかったのも「仕事しないのはカチンとくるけど、俺が稼ぐ百倍以上の全財産をポンと出してくれたしなぁ~」という複雑な心境があったからかもしれない。
更に余談だがニートの定義とは家事をしておらず、就職活動もしておらず、教育を受けてもない若年のことなので、一応長続きしないだけで就職活動をしているジャックはニートではなく無職と言うべきだろう。152話で世界をブラブラしていたことも、キングになるための就職活動だったと言えなくもない。
以上、無駄話おわり。