「デュエルを始める前に宣言して貰うわよ。負けたら私に好きなようにされるって」
小山内先生の口元が三日月に歪む。
どれだけ小山内先生が変態で変態で変態なのかは理解している。もしも断れば実力行使に出るだろう。そうなれば太刀打ちは出来ない。
「いいだろう。俺は吹雪の貞操を賭ける!」
「待った!」
吹雪が丈のことを制止する。
「どうして僕が。そこは自分のものを賭けるべきじゃないかい。胸キュンポイントがガクッと落ちるよ!」
「JOIN女好きだからいいじゃないか。年上だろうとノープロブレムだろ」
「ううん、アレばかりは僕も無理だよアレは。レディーというよりモンスターじゃないか」
「仕方ないか。なら俺は亮の貞操を賭ける!」
「おい」
今度は亮が丈の事を止める。
「俺はデュエルならどんな相手だろうとリスペクトし戦う用意がある。しかし……俺もアレばかりはリスペクト出来ない」
「えぇー」
「ぐふふふふふ喧嘩しちゃって可愛い。なら貴方が負けたらここにいる全員の貞操を頂くとするわぁ」
『!』
全員がギョッとする。
小山内先生の目は本気だ。丈が負ければここにいる全員を性的な意味で捕食するつもりだ。
「……丈このデュエル」
「……勝ってくれよ丈、僕もコレばっかりは……」
「ら、ラジャー」
宍戸丈、13歳。
天下分け目ならぬ貞操分け目のデュエル。丈はデュエルディスクの電源を起動させると小山内先生の前に立った。
小山内先生の実力は未知数。一度もデュエルしたところを見た事が無いので、どのようなデッキや戦術でくるかも分からない。
しかしそれは相手も同じだ
小山内先生の方も丈の新デッキに関する情報はない。条件は互角だ。
『
「先行は俺だ。俺のターン、ドロー! 俺はE・HEROエアーマンを攻撃表示で召喚!」
【E・HEROエアーマン】
風属性 ☆4 戦士族
攻撃力1800
守備力300
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
次の効果から1つを選択して発動する事ができる。
●自分フィールド上に存在するこのカード以外の
「HERO」と名のついたモンスターの数まで、
フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる。
●自分のデッキから「HERO」と名のついた
モンスター1体を手札に加える。
蒼い素肌とバイザー。そして背中には扇風機のような羽をつけたヒーロー。
亮とトレードしたカードの一つにしてE・HERO御用達のモンスターだ。
「HERO? あらあらチェックしておいたデッキと違うわねぇ。私と遊ぶためにデッキも新調したのかしら。嬉しいわね」
「……俺はエアーマンのモンスター効果を発動。デッキからHEROと名のつくモンスターを一枚手札に加える。俺はE・HEROオーシャンをサーチ。これで俺はターン終了」
「私のターンね。私はマンジュ・ゴッドを攻撃表示で召喚」
「マンジュ・ゴッド。儀式デッキのほぼ必須カードか」
【マンジュ・ゴッド】
光属性 ☆4 天使族
攻撃力1400
守備力1000
このカードが召喚・反転召喚に成功した時、
自分のデッキから儀式モンスターまたは
儀式魔法カード1枚を手札に加える事ができる。
「マンジュ・ゴッドの効果、デッキから儀式魔法イリュージョンの儀式を手札に加えるわ。……これで準備は完了♡」
「そ、その儀式カードは!?」
イリュージョンの儀式は唯一の星1の儀式モンスターを召喚する為に必要となるカードだ。
ならば出すカードも一つしかない。
王国編ではあの武藤遊戯を苦しめあわやという所まで追い込んだ怪物。
「私はイリュージョンの儀式を発動。手札のセンジュ・ゴッドを生贄に捧げ、手札よりサクリファイスを攻撃表示で召喚するわぁ」
【イリュージョンの儀式】
儀式魔法カード
「サクリファイス」の降臨に必要。
手札・自分フィールド上から、レベルが1以上に
なるようにモンスターを生贄にしなければならない。
【サクリファイス】
闇属性 ☆1 魔法使い族
攻撃力0
守備力0
「イリュージョンの儀式」により降臨。
1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに1体のみ装備する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は、このカードの効果で装備したモンスターの
それぞれの数値になる。この効果でモンスターを装備している場合、
自分が受けた戦闘ダメージと同じダメージを相手ライフに与える。
また、このカードが戦闘によって破壊される場合、代わりにこのカードの効果で
装備したモンスターを破壊する。
センジュ・ゴッドが贄に捧げられると、小山内先生の背後から闇が溢れだす。闇はやがて巨大な球体となり、小山内先生がニヤリと笑うと同時にバッと闇が消える。
闇の中から先ず現れたのは千年アイテムにあるものと同じウジャド眼。そして全身を覆う傘のような羽。全体の体は青白く染まっており、そこを網目のように白い血管が通っている。
デュエルモンスターズ史上最初の効果あり儀式モンスター、サクリファイス。
その外見の不気味さは随一だ。
「サクリファイスの効果は知っているわよねぇ。あなたのエアーマンを吸収するわよ」
サクリファイスのウジャド眼の下にあるホールに、エアーマンが抵抗しながらも吸収されていく。サクリファイスの傘にエアーマンが呑みこまれる。
そしてエアーマンの力を吸収したサクリファイスがその力を上げた。
「ああん。ギラ目ショタのモノ(モンスター)が私の中(サクリファイス)に入って来るわぁ!」
「死ね」
教師に言うには不適切な暴言をダイレクトに言い放つ。いやこんなのを教師と呼んだら全国の清く真面目な先生たちは偉く迷惑だろう。こいつはただの変態だ。
「酷いわね。これが流行りのツンデレ、ツンデレショタ」
ゴクリと喉を鳴らす変態。
デュエルしていてこんなに疲れたのは生まれて始めてだった。
それとツンデレというのは誤りだ。丈にあるのはツンだけだ。ツンオンリーである。
「だけどこれで貴方のフィールドはがら空き。愛の鞭を貴方の白いうなじに叩き込んであげる! サクリファイスとマンジュ・ゴッドでダイレクトアタック! ダークアイズ・マジック! アーンド! マンジュキック!」
宍戸丈 LP4000→800
がら空きのフィールドに二体のモンスターの直接攻撃。丈のライフが一気に1000ポイントを切った。やはり初期ライフが4000しかないと一度の直接攻撃が致命傷となりかねない。
「私はターンエンド。さぁ貴方のターンよ」