丸藤亮 LP2900 手札5枚
場 無し
伏せ 無し
カミューラ LP6000 手札3枚
場 ヴァンパイアジェネシス、ヴァンパイア・ロード、カース・オブ・ヴァンパイア、シャドウ・ヴァンパイア
伏せ 二枚
カミューラの場には四体のヴァンパイアモンスター。しかしメタモルポットの効果で五枚のカードをドローして、逆転のキーカードは揃っている。
ここからがサイバー流の本領を発揮する時だ。
しかし亮にはどうにも解せないことがある。
「カミューラ、一つ聞きたい」
「なにかしら? 降参の申し込みならいつでも受けていいですわよ」
「デュエルしていて分かった。三幻魔の力など得ずともお前は自分の実力に自信をもち、自信に見合う実力をもつデュエリストだ」
カミューラが奪った丈のデッキを使わず、あくまで自分のデッキで戦いを挑んできているのがその証明でもある。
「お前ほどの女がまさか無理矢理セブンスターズに従わされているというわけでもないだろう。何故三幻魔を狙う?」
「女の過去を詮索するだなんて罪な御方。だけど……そうね。これまでの貴方の戦いに免じて、話してあげる。私達ヴァンパイア一族と人間の戦いの歴史を」
ヴァンパイア、即ち吸血鬼は地上に存在する数多の
高い知能をもち、変身能力や使い魔を自在に操り、人間を超えた身体能力をもち尚且つ美しい。吸血鬼は怪物たちの貴族として君臨していた。
「だが栄華を誇ったヴァンパイア一族を滅ぼした種族がいた。……そう、人間よ。工業の発達によって得た兵器や数の暴力を武器に人間どもは私達に襲い掛かって来た。
一族で生き残ったのは私一人。他の者は死んだわ。私一人だけが棺の中で眠りについた。ついていたのよ、あの男に起こされるまでは」
「あの男?」
「そいつは言ったわ。三幻魔の力を手に入れ一族を復興するつもりはないかって。降ってわいた好機だったわ。三幻魔の力を手に居ればヴァンパイア一族の復興なんて夢じゃない。いいえそれどころかヴァンパイア一族こそがこの地上の帝王として君臨することだって出来る。
人間共を餌として跪かせた栄華を私達は取り戻すのよ。貴方達の命を礎にしてねぇ」
一族の復興……ヴァンパイアは化物。つまりは人間の敵。
人間である亮は人間を餌として食い潰すヴァンパイア一族が復活するなんてことは阻止しなければならない。
だがそれはそれだ。カミューラもカミューラの戦う理由があって、このアカデミアに乗り込んできた。だとすればその精神はリスペクトするに値する。
「リスペクトしないと言ったのは取り消そう」
「……なに、いきなり」
「行くぞ。俺のターン、ドロー!」
サイバー・ドラゴンがその力を最も高めるためのキーカード、パワー・ボンドは既に手札にきているのだから。
後はサイバー流の象徴ともいえるサイバー・エンド・ドラゴンを召喚するだけ。
「手札断殺を発動。互いのプレイヤーは手札を二枚墓地へ捨て二枚ドローする。俺はサイバー・ドラゴン・ドライを攻撃表示で召喚!」
【サイバー・ドラゴン・ドライ】
光属性 ☆4 機械族
攻撃力1800
守備力800
このカードが召喚に成功した時、
自分フィールド上の全ての「サイバー・ドラゴン」のレベルを5にできる。
この効果を発動するターン、自分は機械族以外のモンスターを特殊召喚できない。
また、このカードが除外された場合、
自分フィールド上の「サイバー・ドラゴン」1体を選択して発動できる。
選択したモンスターはこのターン、戦闘及びカードの効果では破壊されない。
このカードのカード名は、フィールド上・墓地に存在する限り「サイバー・ドラゴン」として扱う。
ツヴァイの後に誕生したドライ。三機目のサイバー・ドラゴンが出現する。
見た目はサイバー・ドラゴンと殆ど変らないが、こちらはよりスリムで全身にある機械仕掛けの黄金の鱗が黄色く発光していた。
これもつい最近発売されたサイバー流カードの一枚で、新生サイバー流の新たなキーでもある。
「サイバー・ドラゴン・ドライは召喚に成功した時、フィールド上の全てのサイバー・ドラゴンのレベルを5にする効果をもっている。だがしかしこの効果は任意効果。俺はこれを使用しない。
そしてサイバー・ドラゴン・ドライが〝サイバー・ドラゴン〟である所以、それはこのカードがフィールドと墓地ではサイバー・ドラゴンとして扱うからだ」
「……来るつもり!?」
「無論だ。手札より魔法カード、パワー・ボンドを発動ッ!」
【パワー・ボンド】
通常魔法カード
手札またはフィールド上から、
融合モンスターカードによって決められたモンスターを墓地へ送り、
機械族の融合モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する。
このカードによって特殊召喚したモンスターは、
元々の攻撃力分だけ攻撃力がアップする。
発動ターンのエンドフェイズ時、このカードを発動したプレイヤーは
特殊召喚したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを受ける。
(この特殊召喚は融合召喚扱いとする)
遂にパワー・ボンドが発動される。これまで数々のデュエルで亮を勝利に導いてきた最強の融合魔法。
これにより融合召喚される機械族モンスターは攻撃力を倍加させる。
「よっしゃ! 漸くのパワー・ボンドだぜ!」
「ヴァンパイア軍団もパワー・ボンドで召喚されるサイバー・ドラゴンの融合モンスターの火力に比べたらなんてことはない。このデュエル……カイザーの勝ちだ」
十代と万丈目がそう漏らす。
二人だけではない。他のギャラリーもパワー・ボンドが発動された瞬間に亮の勝利を確信していた。それほどまでにカイザー亮の実力はアカデミアにおいて絶対的なものだったのだ。
だが一人だけそうではない者がいる。カミューラはパワー・ボンドが発動したその瞬間、恐怖に震えるのではなくニヤリと口端を釣り上げた。
「貴方がそのカードを発動することを、これまでずっと待ってきましたわ」
「なに?」
「カウンター罠、封魔の呪印!!」
「……っ!」
【封魔の呪印】
カウンター罠カード
手札から魔法カードを1枚捨てる。
魔法カードの発動と効果を無効にし、それを破壊する。
相手はこのデュエル中、この効果で破壊された魔法カード及び
同名カードを発動する事ができない。
パワー・ボンドのカードの真下に黄金の魔法陣らしきものが現れ、赤い煙がパワー・ボンドを縛り付けていく。
封魔の呪印、そのカードに亮どころかギャラリー全員に見覚えがあった。
「あ、あのカードは俺が十代とのデュエルで使った……!」
「融合封じのカウンター罠!」
三沢が蒼白な顔をした。
十代の融合対策として投入したカウンター罠は、十代と同じく融合を基本戦術に取り入れるカイザー亮にも有効である。そのことをカミューラがそのプレイングをもって証明した。
「クスクスクス。封魔の呪印、このカードは手札から魔法カードを捨てることで、魔法の発動と効果を無効にし破壊する。そして相手プレイヤーはこの効果で破壊されたカードをこのデュエル中使用できなくなる!」
「パワー・ボンド封じか」
「あの男が私にこのカードを渡した意味が分かったわ。蝙蝠からの情報で貴方がパワー・ボンドをゲームエンドの要にしていることは分かっていた。
だから貴方のデッキを完全に狂わせるため、貴方がパワー・ボンドを発動する瞬間をずっと待ち望んでいたというわけ」
蝙蝠と聞いて亮の頭に閃くものがあった。
蝙蝠なんて特に珍しくない、夜になればアカデミアでも飛んでいたりするものだが、それにしても最近はよく飛んでいた。
亮の所に招待状を送りつけてきた蝙蝠といい、増えた蝙蝠は全てカミューラの差し金だったのだろう。そして、
「蝙蝠を使って俺のデッキを盗み見ていたのか」
「ふふふ。ご自慢のカードを封じられて絶望したかしら」
「いや寧ろ失望した」
「なんですって!?」
「この俺がパワー・ボンドだけの男だと思われているとはな」
「可愛くない負け惜しみを」
「負け惜しみ? ならば見せてやる。友より譲り受けたサイバー流の新たなる力。俺の裏・切り札を! 俺は場と墓地の光属性機械族モンスターを全て除外する!」
二体のサイバー・ドラゴン、サイバー・ツイン・ドラゴン、サイバー・ドラゴン・コア、二体のサイバー・ラーバァ。それに手札断殺で墓地へ送られたサイバー・ヴァリー。
七体のモンスターが墓地より除外されていく。そして除外されたモンスターのエネルギーがフィールドに一体の機光竜の姿を形作っていった。
「光属性機械族を場と墓地から除外ですって!? まさか……パワー・ボンドだけじゃなくあのカードまで」
「御明察通りだ。八体のモンスターの力を得て起動せよ、サイバー・エルタニンッ!!
【サイバー・エルタニン】
光属性 ☆10 機械族
攻撃力?
守備力?
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上及び自分の墓地に存在する
機械族・光属性モンスターを全てゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
このカードの攻撃力・守備力は、このカードの特殊召喚時に
ゲームから除外したモンスターの数×500ポイントになる。
このカードが特殊召喚に成功した時、
このカード以外のフィールド上に表側表示で存在するモンスターを全て墓地へ送る。
サイバー・エルタニン。亮が中学生の頃、丈とトレードして手に入れた友情のカード。
融合を封じられて尚、その威光を遮ることのできない裏の切り札。
「サイバー・エルタニンの特殊能力! このカードが特殊召喚に成功した時、このカード以外のフィールド上で表側表示で存在するモンスターを全て墓地へ送る!
星の力を得たサイバー流の破壊力を味わうがいい。やれ、サイバー・エルタニン。ヴァンパイア共を一匹残らず駆逐せよ!
容赦ない破滅の輝きがヴァンパイアを照らし、消滅させていく。
伝承通り。闇の支配者たる吸血鬼は光により消滅したのだ。
「わ、私のヴァンパイア軍団が全滅!?」
「バトル。サイバー・エルタニンで相手プレイヤーへ直接攻撃、
サイバー・エルタニンの攻撃力は除外したモンスターの数×500ポイント。
八体除外して召喚されたためその攻撃力はブルーアイズを超える4000ポイントだ。
「が、っぁああああああああああああああ!!」
カミューラLP6000→2000
4000ものダメージを受けてカミューラが大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
これは闇のゲーム。4000ポイントものダメージとなればカミューラにはダンブカーに激突されたような苦痛が全身を駆け巡ったことだろう。
「ゆ……許さない……」
よろよろとカミューラが立ち上がる、そして、
「この生意気な糞餓鬼がァァァァァ!!」
瞳孔は避け、口は獣のように広がり、蛇のように長い舌が口から這いだした。そこに吸血鬼の貴婦人の姿はなく、醜悪な怪物がいるだけだ。
吸血鬼カミューラは殺意を滲みだして亮を睨みつける。
「本性を現したか。天よりの宝札、互いのプレイヤーは手札が六枚になるようカードをドローする。カードを三枚セット、ターンエンドだ」
「もう許してあげない。私の人形にした後、たっぷりたっぷり甚振ってあげる! 私のターン! ドロー!」
カードをドローした瞬間、カミューラの表情が変わる。
化物然とした異形な鳴りを潜め、元の貴婦人としての淑やかさのある顔立ちに戻っていった。
「――――良いカードを引いたわ。これで貴方に止めを刺してあげる。魔法カード発動、幻魔の扉!!」
「幻魔の扉? 聞かない名だ」
扉というだけあり、カミューラの背後に物々しい扉が現れた。名前からして幻魔の力に関係のあるカードなのだろう。
直感的に悟る。あれは開けてはならないものだ。開けたら恐らく酷いことになる。
「ふふふふ。幻魔の扉、このカードの効果は相手フィールド上のモンスターを全て破壊する。その後、墓地に存在するモンスターを一体選択し、召喚条件を無視して自分フィールドに特殊召喚する!」
「な、なんだと!? そんな馬鹿な効果があるか!」
【幻魔の扉】
通常魔法カード
相手フィールド上に存在する全てのモンスターを全て破壊する。
その後、墓地に存在するモンスター1体を選択し、召喚条件を無視して自分フィールド上に特殊召喚する。
言うなればサンダー・ボルトと死者蘇生、その二つの効果を併せ持つカードだ。
しかも〝召喚条件を無視する〟という項があるため下手すれば死者蘇生の上位互換内蔵とも受け取れる。
禁止カードのレベルすら超えていた。ゲームバランスを崩壊させかねない強さをもつ禁断のマジックだ。
「勿論強いカードには相応のリスクがある。このカードのリスク、それは私の魂を幻魔の生け贄と捧げること。このカードを使い敗北したデュエリストの魂は幻魔のものとなり、未来永劫解放されることはない」
「……!」
自らの魂を懸けるカード。
途轍もない効果に見合う滅茶苦茶な代償だが、これの恐ろしいところはデュエルにおけるコストは一切ないということに尽きる。
つまり敗北後に魂を奪われるというリスクを除外するならば、実質ノーコストで使用できるのだ。
「だけど私は慎み深いことだし、折角だから生け贄は他の人間に譲ってあげようかしら。例えば……そこの坊やとか」
「っ!」
「え、ぼ、僕!?」
カミューラが射抜くような目を向けたのは丸藤翔、亮にとってはたった一人の弟だ。
幻魔の生け贄を他人にさせるなど普通なら出来ることではないが、相手は伝説に語られるヴァンパイアだ。人間の不可能を可能にできてもおかしくはない。
だがしかし、幻魔の扉が発動できればの話だが。
「罠カード、リビングデットの呼び声を発動!」
「この期に及んでモンスター蘇生の罠? 血迷ったのかしら。このタイミングでモンスターを蘇生させたところで壁にすることは出来ないわよ」
「壁? 違うな。俺が召喚するのは――――マジック・キャンセラーだ!!」
「マジック・キャンセラー!?」
【マジック・キャンセラー】
風属性 ☆5 機械族
攻撃力1800
守備力1600
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り魔法カードは発動できず、
全てのフィールド上魔法カードの効果は無効になる。
マジック・キャンセラー、その名の通りマジックをキャンセルするモンスター。
リビングデットの呼び声により召喚されたマジック・キャンセラーが光を放つと幻魔の扉がボロボロに崩れ去っていく。
「幻魔の扉が、どうしてっ!」
「マジック・キャンセラーの特殊能力。それはこのカードがフィールドに存在する限り魔法カードの発動と効果を無効にする魔法封じの力。
幻魔の扉は確かに強力なカードだが、魔法カードであることに変わりはない。魔法カードである以上、マジック・キャンセラーの前には無力だ!」
「くっ……! 使いたくなかったけど仕方ない。リバースカードオープン、無謀な欲張り! 2ターンの間、ドローフェイズをスキップすることを代償にデッキからカードを二枚ドローする。
モンスターをセット、リバースカードを二枚伏せてターンエンド」
「これがラストターンだ。俺のターン。罠発動、異次元からの帰還! 自分のライフを半分支払い、ゲームから除外されている自分のモンスターを召喚可能な限りフィールド上に特殊召喚する!」
【異次元からの帰還】
通常罠カード
ライフポイントを半分払って発動できる。
ゲームから除外されている自分のモンスターを
可能な限り自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターはエンドフェイズ時にゲームから除外される。
次元の穴に扉が開き、そこからサイバー・エルタニンの力となるため除外されたモンスターが帰還してきた。
フィールドに新たに並ぶのは二体のサイバー・ドラゴンとサイバー・ヴァリー。
「サイバー・ヴァリーのモンスター効果。このカードとマジック・キャンセラーをゲームより除外しカードを二枚ドローする。
これで魔法カードが使用できるようになった。魔法カード、エヴォリューション・バースト! 相手のフィールドにあるカードを一枚破壊する。俺が破壊するのはお前の場にあるセットモンスター」
「魂を狩る死霊が、こうもあっさりと」
サイバー・ドラゴンの攻撃により、戦闘破壊耐性のある魂を狩る死霊をあっさり突破されカミューラの表情が歪む。
「そして魔法カード、融合! 手札と場の二体のサイバー・ドラゴンを融合! 融合召喚、現れろサイバー・エンド・ドラゴンッ!」
【サイバー・エンド・ドラゴン】
光属性 ☆10 機械族
攻撃力4000
守備力2800
「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」+「サイバー・ドラゴン」
このカードの融合召喚は上記のカードでしか行えない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
遂に降臨するサイバー流の切り札、サイバー・エンド・ドラゴンがサイバー・エルタニンと並び立つ。
サイバー流の二大切り札の揃い踏みにカミューラが後ずさる。
「ゆくぞ! サイバー・エンド・ドラゴン! サイバー・エルタニン! 俺に勝利を齎せ! エターナル・ドラコニス・バーストッ!!」
「と、罠発動! 聖なるバリア -ミラーフォース-! あははははははははははは! 残念だったわね、折角の攻撃もこれでおしまいよ!」
「それはどうかな。こちらも罠発動、サイコ・ショックウェーブ!!」
【サイコ・ショックウェーブ】
通常罠カード
相手が罠カードを発動した時、
手札から魔法・罠カード1枚を捨てて発動できる。
自分のデッキから機械族・闇属性・レベル6のモンスター1体を特殊召喚する。
白いウェーブが広がり、フィールドが振動する。
「このカードは相手が罠カードを発動した時に魔法・罠カードを一枚捨てて発動できる。自分のデッキより闇属性機械族のレベル6モンスターを一体特殊召喚する。
俺は手札よりブラックホールを捨て、デッキより人造人間サイコ・ショッカーを特殊召喚! そしてサイコ・ショッカーの効果によりミラーフォースは無効となる!」
【人造人間サイコ・ショッカー】
闇属性 ☆6 機械族
攻撃力2400
守備力1400
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
お互いに罠カードを発動する事はできず、
フィールド上の罠カードの効果は無効化される。
場には異なる二体のサイバー流の切り札が存在し、罠封じのサイコ・ショッカーまでもが現れた。
完全に詰み。もはやカミューラに残された手は何一つとして存在しない。
「攻撃は続行だ。速攻魔法リミッター解除。フィールドの機械族モンスターの攻撃力を倍とする。――――――さらばだ、カミューラ」
「あぁ、がぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
サイバー・エンド・ドラゴンとサイバー・エルタニンの合体攻撃の直撃で、カミューラは断末魔の悲鳴をあげながら吹き飛んだ。
カミューラが受けた合計ダメージは15000。その前に受けたダメージも加えればその破壊力は一体どれほどのものか。
途轍もないダメージを受けたカミューラはもはや立つ力も失い、意識を手放してしまった。カミューラにとって不幸中の幸いだったのはマジック・キャンセラーの能力により〝幻魔の扉〟に自身の魂が生け贄とされていなかったことだろう。
「……え、えげつない」
完膚無きにまでに叩きのめした亮のデュエルを見ていた万丈目がげんなりとする。仮にここに亮の友人である三人がいれば同じリアクションしたに違いない。
ふと気づく。万丈目の持っていたクロノス先生の人形が震えはじめた。
「お、おお! ぬおわっ!」
一層光が強まった瞬間、クロノス先生が元の姿に戻った。そして戻った拍子にクロノス先生はそのまま床に落下する。
「ペペロンチーノ! こ……これは私はダーレ? ここはドーコ?」
「しっかりしてくれよ先生。先生はクロノス先生で、ここはカミューラの城だぜ」
「ドロップアウトボーイ。ということは私は……やったノーネ! 助かったノーネ!」
自分が助かったことを全身で喜び震えるクロノス先生。あれほどドロップアウトボーイだのと悪口を言いまくっていたにも拘らず十代と腕を組んで謎のステップをしていた。
そんな皆を見下ろして亮は珍しく顔を綻ばせる。だが、そんな悠長にもしていられなかった。
カミューラとデュエルをしていた城が音をたてて崩れ始めたのだ。
「カミューラが気絶してここを支えた力が消えたんだわ。早く逃げましょう! さもないとここで瓦礫の下敷きよ!」
明日香が言うと、他の皆も一目散に城から逃げ出していく。
亮もこれ以上ここに留まる理由はない。一緒に逃げようとして、寸前で斃れるカミューラが目に付いた。
「俺は丈ほど甘い男じゃないんだがな。――――道を外れたとはいえ、あれほどのデュエリスト。死なすには惜しい」
気絶するカミューラを抱き抱えると、強靭な脚力で跳躍する。
そして亮もまたヴァンパイアの城より脱出していった。