宍戸丈 LP3100 手札二枚
場 カオス・ソルジャー -開闢の使者-、堕天使アスモディウス
伏せ 二枚
魔法 冥界の宝札
ダークネス LP3800 手札二枚
場 無し
伏せ 無し
アルカナ・ナイトジョーカーと混沌の黒魔術師という二大エースモンスターを撃破されておきながら、ダークネスに動揺らしい動揺はない。
手札はともかくボードアドバンテージで大きく劣っているにも拘らずだ。
『我のターン、ドロー。我は手札より魔法カード、高等儀式術を発動。手札の儀式モンスターを選択し、そのモンスターのレベルと合計が同じになるようデッキからモンスターを墓地へ送る。その後、選択した儀式モンスターを儀式召喚扱いとして場に降臨する』
ダークネスが黒い外套をなびかせ、その白い手より三枚のカードを出現させた。出現させた三枚のカードをそのまま投げ捨て墓地へ送る。
墓地へ送られたモンスターのレベルの合計は8。デッキより生け贄に捧げられた三つの魂がダークネスの手札に眠る最上級儀式モンスターを降臨させる。
『三つの魂は光と闇を導く! やがて光と闇の魂はカオスのフィールドを創り出す!! 疾走れ! 三体の供物たちよ!! カオス・フィールドを駆け抜けろ!! そして超戦士の力を得よ!!
儀式召喚、現れろデュエルモンスターズにおいて伝説の白龍に肩を並べし剣士よ。カオス・ソルジャー!!』
【カオス・ソルジャー】
地属性 ☆8 戦士族
攻撃力3000
守備力2500
「カオスの儀式」により降臨。
デュエルモンスターズにはリメイクカードというものがある。過去に活躍した人気あるモンスターを、新たな効果をもつ別のモンスターとして生まれ変わらせる。カオス・ソルジャー -開闢の使者-もそんなリメイクカードの一枚だ。
そしてリメイクする前、謂わばカオス・ソルジャーの原初の姿ともいうべきカードがダークネスが降臨させた最上級儀式モンスター、カオス・ソルジャーなのだ。
攻撃力は青眼の白龍と同等の3000。最強の剣士だ。
「……だがカオス・ソルジャーと俺の場にあるカオス・ソルジャー -開闢の使者-や堕天使アスモディウスの攻撃力と同じ数値。攻撃したところで自爆特攻になるだけだ」
『愚か。攻撃力の数値で我のカオス・ソルジャーが貴様の場のモンスターを超えられぬというのであれば超えさせるまでのこと。
我は天よりの宝札を発動。互いのプレイヤーは手札が六枚になるようカードをドローする。我はモンスターをキラー・トマトを攻撃表示で召喚し、装備魔法、団結の力をカオス・ソルジャーに装備!』
【団結の力】
装備魔法カード
装備モンスターの攻撃力・守備力は、自分フィールド上に表側表示で存在する
モンスター1体につき800ポイントアップする。
団結の力はフィールドのモンスターが一体につき装備モンスターの攻撃力を800ずつ上げていくカードだ。
フィールドに並べられるモンスターの数は全部で五体のため、攻撃力上昇の最大値は4000。それこそ攻撃力0のモンスターに装備しても神を倒せるようになる数値だ。
『我の場にはカオス・ソルジャーとキラー・トマトの合計二体のモンスターが表側表示で存在している。よってカオス・ソルジャーの攻撃力は4600ポイントとなった。
バトルフェイズ。カオス・ソルジャーでカオス・ソルジャー -開闢の使者-に攻撃。オリジナルの力を示すがいい。カオス・ブレード!』
「迎撃しろカオス・ソルジャー! 開闢双破斬!」
世代を超えて二人の最強剣士が真っ向から激突する。二人のカオス・ソルジャーは自らの刃をぶつけ合い鍔迫り合いを行う。
それでも決着がつかず両者は一旦離れると全身全霊を込めた斬撃を同時に振り落した。
一瞬の交錯。一体のカオス・ソルジャーから首筋から血を吹きだし、倒れる。倒れたのは……開闢を告げる騎士だった。
宍戸丈LP3100→1500
超過分のダメージが丈を襲い、ライフが半分を切る。
そしてフィールドには攻撃力4600のカオス・ソルジャー。攻撃力が高いモンスターというのは単純だからこそ強力だ。
『我はターンを終了する』
「……このエンドフェイズ時、リバースカードオープン。メタル・リフレクト・スライム!」
【メタル・リフレクト・スライム】
永続罠カード
このカードは発動後モンスターカード(水族・水・星10・攻0/守3000)となり、
自分のモンスターカードゾーンに守備表示で特殊召喚する。
このカードは攻撃する事ができない。(このカードは罠カードとしても扱う)
罠モンスターの中で守備力にかけては随一のメタル・リフレクト・スライムが丈を守るように現れる。
千年の盾と同等の3000の守備力をもつメタル・リフレクト・スライムだが敵に攻撃力4600のカオス・ソルジャーがいるとやや心許ない。
「そして俺のターン、ドロー。おろかな埋葬を発動、デッキよりレベル・スティーラーを墓地へ送る。更に魔法カード発動、フォトン・サンクチュアリ!」
【フォトン・サンクチュアリ】
通常魔法カード
このカードを発動するターン、
自分は光属性以外のモンスターを召喚・反転召喚・特殊召喚できない。
自分フィールド上に「フォトントークン」(雷族・光・星4・攻2000/守0)
2体を守備表示で特殊召喚する。
このトークンは攻撃できず、シンクロ素材にもできない。
丈の場に二体のフォトントークンが出現した。これでメタル・リフレクト・スライムと合計して丈の場には三体の生け贄要因が揃った。
フォトン・サンクチュアリを発動したターン、光属性モンスター以外を特殊召喚することが出来なくなるが……丈のデッキには三体のモンスターを生け贄にすることで真価を発揮する光属性モンスターがいる。
「いくぞ。俺は二体のフォトントークンとメタル・リフレクト・スライムを生け贄に捧げる! 来い、雷の力をもちし伝説の剣士! ギルフォード・ザ・ライトニング!」
【ギルフォード・ザ・ライトニング】
光属性 ☆8 戦士族
攻撃力2800
守備力1400
このカードは生け贄3体を捧げて召喚する事ができる。
この方法で召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するモンスターを全て破壊する。
白銀の甲冑に黄色く光る紫電を走らせながら、伝説の剣士が巨大な剣を天高く掲げる。
すると何処からともなく堕ちた稲妻がその剣に雷の力を与え始めた。
「冥界の宝札の効果で二枚ドロー。ギルフォード・ザ・ライトニングは三体を生け贄に捧げて召喚された時、相手フィールドに存在するモンスターを全て破壊する。受けろライトニング・サンダー!」
ギルフォード・ザ・ライトニングの大剣からサンダー・ボルトが放たれた。
サンダー・ボルトはダークネスのフィールドにいるモンスターを問答無用に悉く焼き払う。
『ヌゥゥ。我のしもべを全滅させるか……。だがまだ終わらぬ。我はトラップを発動、和睦の使者。このターンの戦闘ダメージを全て0にする』
惜しかった。和睦の使者さえ発動されなければ、二体のモンスターの総攻撃でライフを削り切れたのだが。
やはりダークネスはそう安々と勝たせてはくれないらしい。
「俺はリバースカードを二枚セットする。ターンエンド」
『我のターンだ。我は天使の施しを発動する。手札を三枚ドローし二枚捨てる……。さてお遊びはこれまでだ。人の身で我とここまで戦ったことは誉めてやろう。褒美に面白いものを見せてやる』
「……なにを、する気だ」
ダークネスの蒼い光を灯していた眼光が一転して赤となる。
血のような真紅の輝きが増幅し、手札にある一枚のカードを赤黒く染めていった。
『手札より魔法カード発動、ダーク・コーリング!』
【ダーク・コーリング】
通常魔法カード
自分の手札・墓地から、融合モンスターカードによって決められた
融合素材モンスターをゲームから除外し、
「ダーク・フュージョン」の効果でのみ特殊召喚できる
その融合モンスター1体を「ダーク・フュージョン」による融合召喚扱いとして
融合デッキから特殊召喚する。
『我の手札または墓地より融合素材モンスターをゲームより除外。ダーク・フュージョンの効果でのみ特殊召喚できる融合モンスターを融合召喚する。
我は高等儀式術の効果で墓地へ送ったE・HEROフェザーマンとE・HEROバーストレディをゲームより除外。人間の心の闇が生み出した暗黒に堕ちた英雄の姿を見るがいい。E-HEROインフェルノ・ウィング!』
【E-HEROインフェルノ・ウィング】
炎属性 ☆6 悪魔族
攻撃力2100
守備力1200
「E・HERO フェザーマン」+「E・HERO バーストレディ」
このモンスターは「ダーク・フュージョン」による融合召喚でしか特殊召喚できない。
このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が越えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地へ送った時、
破壊したモンスターの攻撃力か守備力の高い方の数値分のダメージを相手ライフに与える。
墓地に眠っていたフェザーマンとバーストレディが現世に引きずり出され、黒い力が二体のモンスターを暗黒融合していく。
そうしてフィールドに姿を現したのがインフェルノ・ウィング。ダークネスの力を得たHEROの暗黒に堕ちた融合体。その力はフェザーマンとバーストレディを正規の手段で融合したフレイム・ウィングマンを凌ぐ。
「だがインフェルノ・ウィングの攻撃力は2100。E-HEROじゃスカイスクレイパーの恩恵を得る事も出来ない」
『なにを勘違いしている? 貴様への褒美はこれからだ。我はこのターン、まだ通常召喚を行っていない。手札より我はジャンク・シンクロンを通常召喚!』
【ジャンク・シンクロン】
闇属性 ☆3 戦士族 チューナー
攻撃力1300
守備力500
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地の
レベル2以下のモンスター1体を選択して表側守備表示で特殊召喚できる。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。
丸い眼鏡をかけたようなモンスターがダークネスの手札より飛び出してくる。
ただの弱小モンスターをこのタイミングで召喚してくるダークネスの意図が分からず首を傾げるが、直ぐに丈の視線がカードテキストに記された『チューナー』という文字列に釘づけとなった。
『ジャンク・シンクロンの効果。このカードが召喚に成功した時、自分の墓地よりレベル2以下のモンスター1体を効果を無効にして表側守備表示で特殊召喚する。
我は天使の施しで墓地へ埋葬したドッペル・ウォリアーを蘇生する』
【ドッペル・ウォリアー】
闇属性 ☆2 戦士族
攻撃力800
守備力800
自分の墓地に存在するモンスターが特殊召喚に成功した時、
このカードを手札から特殊召喚する事ができる。
このカードがシンクロ召喚の素材として墓地へ送られた場合、
自分フィールド上に「ドッペル・トークン」
(戦士族・闇・星1・攻/守400)2体を攻撃表示で特殊召喚する事ができる。
『その効果は無効化にされるが関係はない。このモンスターは墓地へ送られた時に発動する効果をもっているのだからな』
「――――!」
ジャンク・シンクロンの効果を無効にする効果はフィールドにある限り有効だ。つまり墓地で発動する効果は無効にならないということである。
『我が褒美を目に焼き付けるがいい! レベル2、ドッペル・ウォリアーにレベル3、ジャンク・シンクロンをチューニング!』
☆2 + ☆3 = ☆5
ドッペル・ウォリアーとジャンク・シンクロンが宙へ飛び上がり二つの光の輪に吸い込まれていく。
二体のモンスターは光の粒子となり輪の中で一体化していった。
「一体、なにが……?」
『集いし暗黒が、新たな力を呼び起こす。闇へ誘え! シンクロ召喚! 出でよ、ジャンク・ウォリアー!』
【ジャンク・ウォリアー】
闇属性 ☆5 戦士族
攻撃力2300
守備力1300
「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
このカードの攻撃力は自分フィールド上に存在する
レベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値分アップする。
ジャンクという名の通りジャンクを組み合わせて生み出されたかのような青い体躯のモンスターが光の環より飛び出してくる。
飛び出してきた青い戦士は力強く右手を突きだした。
「ば、馬鹿な……シンクロ、召喚、それは……?」
ペガサス会長が言っていた現在競合中の新しい召喚方法。まだこの世界に存在しない未来の技術だ。
それをどうしてダークネスが。
『何を唖然としている。我は言ったはずだ。ダークネスの世界には個人も時間も複数の次元もない、と。そして表側に存在するものは裏側においては一つなるダークネスとして存在している。
ダークネスそのものである我は表側に存在しこれから存在するであろうあらゆる時代・次元のカードを使うことが出来るのだ。当然まだこの時代には存在しえないカードもだ』
「時代を超越したカードを扱うだって。……そんな無茶苦茶、許されると思ってるのか!」
こんなものは槍と弓矢で戦っている時代に、戦車とミサイルをもつ現代の軍備をもった国家が殴り込むようなものだ。
技術力とは決して一朝一夕のものではない。積み重ねてきた年月と多くの科学者や技術者の努力の結晶が――――現代の技術力という形なのだ。
だから現代の技術力で過去の技術力と戦うというのは時代を嘲笑う暴挙に等しい。
『笑止。許す許さぬは太古の昔より人ではなく〝神〟の定めること。我が許し我が許可する。貴様の意見など意味のなき遠吠えに過ぎぬ。
そして我のデッキはあらゆる時代の最強デュエリストたちのデッキを束ねしデッキ。最初から貴様が勝てる道理などないのだ』
「……!」
時代の最強デュエリストたちのデッキを束ねたデッキ。道理で見覚えのあるカードを多く使うはずだ。
アルカナ・ナイトジョーカーや混沌の黒魔術師、そしてカオス・ソルジャー。これらは全て史上最強のデュエリストと謳われる決闘王〝武藤遊戯〟が操ったカードたちだ。
インフェルノ・ウィングやジャンク・ウォリアーについては操る最強デュエリストが誰なのか検討もつかないが、これらはこれより後の時代に生まれるであろうデュエリストたちのカードなのだろう。
『ドッペル・ウォリアーの効果発動。このカードがシンクロ素材として墓地へ送られた時、フィールドに攻守400のドッペル・トークン二体を攻撃表示で出現させる。
そしてジャンク・ウォリアーのモンスター効果。このカードがシンクロ召喚に成功した時、我のフィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力を合計した数値を攻撃力に加える。ドッペル・トークン二体の攻撃力の合計は800。パワー・オブ・フェローズ! よってジャンク・ウォリアーの攻撃力は3100となる! 我はバトルフェイズへ移行』
ジャンク・ウォリアーの攻撃力がアスモディウスとギルフォード・ザ・ライトニングを超えた。
このままだと攻撃してくる。恐らくダークネスが狙うのは厄介なトークン精製能力をもつアスモディウスではなくギルフォード・ザ・ライトニング。
「速攻魔法発動、神秘の中華なべ! ギルフォード・ザ・ライトニングを生け贄に捧げ、その攻撃力分のライフを回復する!」
宍戸丈LP1500→4300
ギルフォード・ザ・ライトニングが墓地へ送られ、丈のライフが4300まで回復する。
これでダークネスは堕天使アスモディウスしか攻撃対象に出来ない。ダークネスのエースモンスターの連続召喚、これを耐えるにはライフが1500では心許ない。出来れば攻撃耐性をもつモンスターも召喚しておきたかった。
『ふん。無駄な足掻きを……。ジャンク・ウォリアーで堕天使アスモディウスを攻撃、スクラップ・フィスト!』
ジャンク・ウォリアーが堕天使アスモディウスを殴りつけ撃破する。
しかし堕天使アスモディウスはただ破壊されるだけではない。自分の分身である二体のトークンを場に残した。
効果では破壊されないアスモトークンと戦闘では破壊されないディウストークン。次にダークネスが狙うのは恐らく、
『インフェルノ・ウィングでアスモトークンを攻撃、インフェルノ・ブラスト』
「アスモトークンは守備表示だ。ダメージは受けない」
『それはどうかな。インフェルノ・ウィングには貫通効果がある。守備表示でも攻撃力がそれを超えていれば貫通ダメージだ!』
「なに!?」
アスモトークンが焼き尽くされる。インフェルノ・ウィングの貫通ダメージが丈を襲いライフを3400まで削り取った。
だがこれでいい。アスモトークンは残る上、インフェルノ・ウィングのもう一つの効果は発動しない。
『インフェルノ・ウィングのもう一つの効果、相手モンスターを破壊した時、その攻撃力または守備力が高い方のダメージを相手に与える』
「それはどうかな。インフェルノ・ウィングがフレイム・ウィングマンのモンスター効果を受け継いでいるのは予想していた。インフェルノ・ウィングのダメージは墓地へ送った時に発動する。だがトークンは墓地へはいかない。インフェルノ・ウィングの効果は不発だ」
『……まぁいい。バトルを終了。我は魔法カード、トークン収穫祭を発動。フィールドのトークンを全て破壊し破壊した数×800のライフを回復する』
【トークン収穫祭】
通常魔法カード
フィールド上のトークンを全て破壊する。
破壊したトークンの数×800ライフポイントを回復する。
折角のディウストークンやダークネスの場のドッペル・トークンが破壊される。そしてダークネスのライフポイントが6200まで上昇した。
終わってみれば振出どころかダークネスのライフが初期値を超えてしまった。
『ターンエンドだ』
長いダークネスのターンが終わる。
結果的に二体の最上級モンスターを撃破され、トークンすら場に残せなかったがまだ大丈夫だ。逆転の布石は既に整えている。
パラドックス「時代を無視したカードを使うだと!?」
クロウ「インチキ効果もいい加減にしろ!!」