双六で人生を変えられた男   作:晃甫

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 何か新キャラが出てきますが、今のところ使い捨て確率が高いのでそこまで重要視しなくて大丈夫です。……今のところは。
 あとごめんよ、酢豚の出番は後半ほぼカットなんだ。


#9 代表と褒賞

 

 

 四月中旬。

 そろそろ遅咲きの桜も散りだそうかという頃。

 俺は分厚い書類の束を広げつつ、生徒会室横の学年主任室で先の行事の予定を確立させようと各学年主任たちとの会議を行っていた。

 

「さて、これでようやくクラス対抗戦の日程が確定したわけか」

「そうですね。例年四月下旬に行われるんですけど、今年に限っては仕方ないですね」

「それにしても今年の一年生は個性豊かというか」

 

 二、三年生の学年主任である教師たちが口々にそう零す。

 確かに今年の一年生の面子は例年までとは異なり話題性に富んだ生徒が多い。一組代表は世界で三人目のIS操縦者である織斑一夏。二組代表は中国代表候補生である凰鈴音。四組には世界四人目となる男性IS操縦者の皿式鞘無。三組と五組は代表候補生が努めており、一夏たちに負けず劣らずの個性を有した生徒たちだ。

 率直に言ってしまえば、濃い。

 

 今の二年生や三年生にも代表候補生は当然存在するし、実力も相応に高いことは確かだが、それでもやはり今年の一年生と比較しては見劣りしてしまう。

 

「大変ですね更識先生」

「言わんでください……」

「ふふ、黒執事と言えども苦労しますね」

「それ関係あります?」

 

 二年の学年主任を務める二十代後半の女性が茶化すように笑いかけた。

 彼女は千冬や真耶のような実技の担当ではなく、座学が専門の教員だ。確かこの学園に来るまでは国立の大学院で学んでいた筈だ。そんな彼女は研究者よろしく白衣を纏い背中辺りまで伸ばされた黒髪を無造作に一括りにして束ねている。

 俺がこのIS学園の教員になる前から勤めているので教師としては先輩にあたる訳だが、俺に対してはずっと敬語を使っている。どんな理由があるのかは知らないが、彼女は基本フランクなので敬語でもあまり気にならない。

 

「各国研究機関への手配は?」

「生徒会の方に回した筈ですが」

 

 俺の問いかけにもう一人の女性が答える。

 三年の学年主任を務める彼女はきっちりとスーツを着こなしたキャリアウーマンのような女性だ。少々お堅いところはあるものの生徒に対して優しく接することから人望も厚く、なにより教員から信頼されている。

 

「あー、てこと虚が処理してますかね」

「妹さんではないのですか?」

「アイツはそういう机仕事は丸投げしますから」

「生徒会長としてそれはどうなんでしょうか」

 

 はは、と苦笑を漏らさずにはいられなかった。

 姫無は基本的に机仕事を嫌う。頭が悪いわけではないので、ただ単純に面倒くさがっているだけだ。おそらく虚がいなければ自分で処理するんだろうが、出来すぎる従者がいるのも困りものである。だからと言って本音みたいに仕事に全く手を付けないというのも問題だが。

 

「はぁ、招待状の手配と座席の確保はこちらでやっておきます。組み合わせと時間の調整はお任せしていいですか?」

「わかりました。組み合わせは任せてください」

「時間の都合はこちらで付けておきます」

 

 そう快諾してくれた二人に礼を言い、俺は広げた書類を片付けながら来月行われるクラス対抗戦へと想いを馳せるのだった。

 

 

 

 ◆

 

 

 

 一組と四組のクラス代表を決定するために行われた試合から凡そ三週間。

 そろそろIS学園での生活にも慣れて行動にも余裕が生まれてきた一夏の元へと、とある少女が向かっていた。

 頭の高い位置で左右それぞれを結んである所謂ツインテールと呼ばれる髪型をした小柄な少女は、改造が自由とされているIS学園の制服の肩の部分をバッサリとカットしミニスカートのような短い丈にしていた。歩く度に揺れるツインテールが、今の彼女の心境を表しているように見える。

 ルンルンと、いっそ鼻唄でも歌いだしそうな程に、少女はご機嫌だった。

 

 この学園に入ったのは各国の専用機や開発状況を知り、本国へと情報を流すことが目的でそこに彼女自身の意思は全くと言って言い程反映されていなかった。

 そのことに対して納得いかない、と若干は思ったものの、代表候補生なんてものはどの国も大体同じようなものである。対して抗議するでもなく、この少女はIS学園への入学を受け入れた。

 

 そして、入学する数週間前、少女はそのニュースに驚愕することとなったのだ。

 織斑一夏。世界で三番目となるIS適性を持つ男性の発覚。

 

 その少年は、少女にとってかけがえのない存在だった。

 初めて恋をした少年だった。

 

 家族の都合で本国へと帰ることになるまで、同じ時間を過ごした少年は、ISを起動させたことでIS学園への入学を余儀なくされた。

 

 一夏や日本政府にも色々と事情はあるのだろうが、ハッキリ言って鈴音にはどうでも良かった。

 また会える。初めて恋をした少年に、この学園で会うことが出来る。そう思ってウキウキで入学した彼女だったが、運命の悪戯かはたまた不運なだけなのか、尽く一夏と出会うタイミングをこれまで逃し続けてきた。入学式の際が一夏を発見することが出来ず、部屋へ行ってみようとすれば図ったかのように不在。休み時間は他の女子に囲まれるかいないか。

 なんと今日に至るまで彼女が一夏のことを見たのはクラス代表を決めるセシリアとの試合と合同授業のみである。

 これは余りにも不憫だ。彼女本来の性格からすれば周囲の女子など無視してズカズカと一夏に向かっていきそうだが、流石に合同授業でクラス代表である自身が規律を乱す訳にもいかず、結局今日に至るまで碌に話すことすら出来ないという状態が出来上がってしまったのだ。

 

 まずい。

 このままでは、非常にまずい。

 

 これではいつか自分の存在を忘れられてしまうのではないか。そうなってしまっては自分の初恋はそこで終了、想いを伝えることすら出来ずに失恋することになる。そうなるのだけは避けたい鈴音。

 そんな彼女に、又とないチャンスが訪れた。

 それは今から数十分前のこと、三時間目が終わった直後、担任の教師に呼び止められた時のことだ。

 

『あ、凰さんちょっといい?』

『はい?』

『今日の放課後にクラス代表が集まる会議があるから、一組の織斑君にも伝えておいてもらえないかしら』

 

 ――――これだっ!

 

 今日の今日まで全く目立つチャンスを与えられなかった彼女にも、神様は平等にチャンスというものを与えてくれるらしい。鈴音はつい数分前まで呪っていた神とやらに手のひら返して感謝した。

 これを機に一夏と再び関わりを持つことが出来る。何より自身と彼はクラス代表という同じ立場にあるのだ。少なくともこれから一年間はクラスは違えど顔を合わせる機会が増えるだろう。今日はその取っ掛りを生み出す日だ。

 

 そして、話は冒頭へと戻る。

 

 意気揚々と歩を進める鈴音は、やがて目的の一組前へと到着した。

 これまで幾度となく前を通ったが、ドアを開くのは今回が初めてだ。若干緊張しつつ、鈴音はドアを開いた。

 

「一夏、いる?」

 

 自分でも驚く程に小さな声だった。まさかここまで緊張していたとは本人も思っておらず驚いたが、よくよく考えてみれば数年ぶりの再会となるのだ。この緊張も無理からぬことだった。

 そしてそんな小さな声でも、件の少年にはきちんと届いていた。

 

「鈴! 鈴じゃないか!」

 

 鈴音の姿を見つけた一夏は、周囲に集まっていた少女たちに一言断って目の前へとやって来た。

 数年前の面影は残しつつも、ガッチリとした体つきは鈴音に男というものを思わせ頬を染めさせる。心なしか顔つきも精悍になったように感じられる。

 

 ――――あれ、一夏ってこんなにカッコよかったっけ?

 

「どうしたんだ? つうか、この学園に入学してたんだな!」

 

 鈴音のドキドキはしかし、この一夏の一言によって吹き飛んだ。

 どうやら信じられないことに、この少年は鈴音がこのIS学園に入学していたことを知らなかったらしい。IS学園に入学して約一ヶ月、一組と二組での合同授業もあったのにも関わらず、だ。この発言には流石の鈴音もカチンときたが、今は怒っている場合ではない。折角こうして一夏と話すことができるのだ。そんなことでこのチャンスを無駄にしたくなかった。

 

「ま、まぁね。それよりあたしもびっくりしたわよ、まさかアンタがISを起動させちゃうなんてね」

「まぁ成り行きでな。不本意ながらこの学園で三年間過ごさないといけなくなっちまった」

「そう、まぁ男のあんたじゃあ今まで碌にISのことなんて勉強してないでしょうから、あたしが教えてあげてもいいわよ」

「いやお前頭そんな良くなかったろ」

「んな! あたしは中国の代表候補生なのよ!?」

「え、そうなの?」

「同じ学年の代表候補生くらいチェックしときなさいよアンタはぁ!!」

 

 うがー!! と癇癪を起こす鈴音。

 結局怒ってしまっているが、そこでここへ来た本来の目的を思い出した。

 

「って、怒ってる場合じゃなかったわ。アンタ、クラス代表になったんでしょ? 今日の放課後、クラス代表者は会議があるから学年主任室に来なさい」

「ああ、分かった。でもあれ、何でそれを鈴音が俺に伝えるんだ?」

「バカね、あたしもクラス代表だからに決まってるでしょ」

 

 まだたくさん話したいことはある。積もる話も多い。でも、今そんなことを言う時間はないだろう。それにこんな大勢がいる前では出来ない話だってあるのだから。鈴音は簡潔に要点だけを伝え、一組の教室を後にした。

 

 そして放課後、一年生のクラス代表たちが一同に集う、クラス対抗戦事前会議が始まる。

 

 

 

 ◆◆

 

 

 

 生徒会室横にある学年主任室。そこをIS学園での活動拠点としている俺は、端をホチキスで留めた数枚の書類を人数分用意して彼らがやってくるのを待っていた。

 書類の内容は言わずもがな五月に行われることが正式決定したクラス対抗戦についてのものだ。今日がクラス代表たち集める最初になるが、これから数回にわたってこういった会議を開くことになるだろう。

 まぁ今日は真面目な会議、というよりは顔合わせ的な意味合いが強く、そこまで時間のかかる話し合いなどをする予定はない。

 

 大理石で出来た高級そうな長机の上に書類を置き、生徒たちがやってくるのを待つ。

 程なくして、最初の生徒がやって来た。コンコン、と丁寧にドアをノックしてから、静かに扉が開く。

 

「失礼します」

「おうディーニ。そこの書類の置いてあるところにかけてくれ」

 

 室内に入ってきたのは綺麗な金髪を腰まで伸ばした長身の少女。年齢以上に大人びて見える彼女は五組のクラス代表にしてイタリアの国家代表候補生、セレーナ・ディーニ。補足しておくと、今年度入試の実技試験をトップ成績で突破したかなりの強者だ。

 今年度の試験管は真耶だったからかなりレベルは高かったと思うが、このセレーナ・ディーニは真耶に三発のペイント弾を当てることに成功している。

 

「失礼しまーす」

 

 セレーナ・ディーニより数分遅れて入ってきたのはかなり小柄な茶髪の少女。ショートカットと八重歯がその少女の活動的な性格をよく表している。

 

「語尾を伸ばすなよ、カノ」

「えへへー、中々直んないよ先生ー」

 

 そう言って苦笑いするのは三組のクラス代表を任されたアルセリア・カノ。スペインの代表候補生だ。

 カノにも座って待つように指示し、残りの三人がやってくるのを待つ。厳密な時間指定をしなかったので、集まる時間が多少バラけるのは仕方ない。

 それから程なくして、残りのクラス代表たちもこの部屋へとやって来た。一夏に鈴音、皿式も各々書類が置かれた場所へと腰を下ろしところで、俺は口を開く。

 

「さて、全員揃ったところで始めよう。今日お前らに集まってもらったのは既に承知しているだろうが、来月開催されるクラス対抗戦についてだ」

 

 皆に配布したものと同じものを片手に、俺は続ける。

 

「このクラス対抗戦は学園内だけでなく、外部からの人間が多く訪れる。目的は基本的に各国のISデータの採取だが、同時に今年の一年生の実力も見られている。代表候補生の三人は理解していると思うが、こういった各国からの評価が今後重要になってくるだろう。それからお前ら、」

 

 視線を一夏と皿式の二人に移す。

 

「お前らは男性のIS操縦者ってことで殊更注目度が高い。下手な試合して評価を下げるようなことだけはするなよ」

 

 まぁ、セシリアとの試合を見る限りでは一夏はそこまで心配はないだろう。あの時の試合は肝心なところでやらかしたが、それ以降は常に集中を絶やさないよう鍛錬をしているようだし。

 心配というか厄介なのは皿式の方だ。以前断言したように俺はこの少年のことがハッキリ言って嫌いなので正直どれほど無様に負けようが興味はない。

 が、しかし。

 クラス代表である人間がそうあっさりと負けるのはまずい。何せこのクラス代表を最終的に承認しているのは俺だ。つまり皿式が下手な試合をしてボロ負けでもすると、『こんなのを代表として承認したのか?』という批判が恐らく発生する。そうでなくても簪という国家代表候補生を差し置いて代表になっているというのに。

 そんな理由もあって、男子二人には頑張ってもらわねばならないのだ。主に俺の体裁を保つという面で。

 

「おう。師し……先生に言われなくても」

「ま、多分大丈夫でしょ」

 

 そう返す一夏と皿式。

 お前らその自信はどっから湧いてくるんだと言いたくなったが、恐らく一夏のほうは自らを鼓舞しているだけで自信自体は虚勢だろう。何年も見てきたのだ、そんなことくらい分かる。

 そこに敢えてツッコむような真似はしない。そういった偽りの強さは、やがて本物へと昇華する可能性を秘めているのだから。

 事実、織村一華という人間がそうだったように。

 

「さて、話を戻そう。このクラス対抗戦だが、基本的には優勝した所で何の褒賞も得られない。精々が学食の期限付きフリーパス程度だ。その商品もお前ら個人に進呈されるものではなくクラス単位で与えられるものだ。あくまでもこれはクラス対抗戦なんだからな」

 

 だが、と俺は続ける。

 

「それじゃあ頑張ったお前らへのメリットが少ないんじゃないか、と会議で話題に上がってな。俺を含む各学年主任と会議の結果、優勝者には特別配慮を与えることにした」

 

 ピクピク、と一夏たちクラス代表の身体が反応する。

 そんな生徒たちを勿体付けるのもあれなので、俺はあっさりとその内容を口にすることにした。

 ピンと人差し指を立て、

 

「一度だけ。一度だけお前らの機体を、束がメンテナンスしてやる」

 

 その発言に、一夏以外の全員が目を丸くして言葉を失った。

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 その日の夜、俺は部屋で携帯を片手に寛いでいた。電話の画面は通話中である表示がされており、その相手は今日クラス代表たちとの会議で上った一人の天災科学者だ。

 

「つーことで言ったけど、ほんとに良かったのか?」

『なにが?』

「一夏の白式ならともかく、他の専用機なんてお前が見るメリットはないだろ」

『うーん、まぁそうなんだけどねー。あの四人目はちょっと気にかかるし』

「でもアイツの専用機まだ完成してないぞ? 対抗戦までには完成すると思うけど」

『アレの機体ってどこが造ってるんだっけ?』

「杠んとこだよ」

 

 あー、あそこかーと受話器越しの天災は気怠そうな声を漏らした。

 

『確かあそこの社長って……』

「ああ、更識( うち)と同類だ」

『でも問題はないんでしょう?』

「まぁな。そこの社長とは面識もあるし、何よりも争いを好むような人間じゃない」

 

 そこまで聞いて、束は抱えていた不安を解消したらしい。

 全く、いつもは自由奔放に俺や千冬を引っ掻き回すくせに、こういう時は素直に心配してきたりするもんだから質が悪い。ギャップとでもいうのだろうか、普段おちゃらけた奴がいきなり真面目になると感じる違和感のようなものを感じてしまう。まぁ、そういうところも含めて篠ノ之束という一個人なのだろうし、そうだからこそ俺も彼女のことが気になって仕方がないのだろう。

 

「ところでだ、お前が機体をメンテするって話。二、三年の優勝者にも同じように提示したけど良かったか?」

『ほんとは他人のISなんてこれっぽっちも興味ないけどねー。どうせ二年は姫ちんが勝つだろうし、三年はその従者あたりかな? だったら態々ISを見る必要もないでしょ』

「いやさ、姫無も虚も対抗戦には出ないぞ」

 

 …………。

 

『……へ?』

「当然だろ。二人共生徒会役員なんだ。原則クラス代表と生徒会は兼任出来ないって俺たちの代からもうあったろ」

『そんなの聞いてないよ!!』

「お前が学園にいないことが多かったからだろうが」

 

 学生時代の束の出席率はおそらく相当酷いものだったことだろう。普通の生徒だったら間違いなく除籍されている。

 最も長く行動を取っていた俺や千冬でさえ、束と顔を合わせるのは良くて三日に一度。三ヶ月姿を見ないなんてことも一度や二度では無かった気がする。

 

『ま、まぁしょうがないからそこらへんはかーくんが上手くやっといてよ』

「オイ俺に丸投げすんじゃねぇよ」

 

 さらっと俺へと押し付けようとする束へすかさず言い返す。

 

『ぶー、いいじゃんいいじゃん! 束さんなりの甘えなんだよ! 気づけよ馬鹿!!』

「分かりづらすぎるわ!」

『だってだって! もう随分かーくんに会ってないんだよ!? 会いたいよハグハグしたいよナニしたいよ!!』

「とんでもねぇこと口走ってんぞお前」

『いいのだよかーくん。なんたって私は愛人なんだから!!』

 

 思わず盛大な溜息を吐き出す。

 どういう訳か、束はこの愛人というポジションをえらく気に入っているらしい。千冬と別れたあともこの愛人という関係は続いていたし、現在もそのままだったりする。束本人には一番や二番などといった概念は存在しないらしいのだ。以前千冬との三人プレイを強要されそうになったときは流石に抵抗したが。

 ……ヘタレとかではない、決して。

 

「はぁ……、だったら臨海学校の時くらいは顔出せよ。織村たちも都合が付けば来られるらしいし。一年生の機体メンテもその時やれば済む話だろう?」

『うーん、まぁこの場所から日本まで行くのに時間かかるし、臨海学校になら行けそうかな。なによりかーくんに会いたいしね!! あとちーちゃんたちにも!!』

 

 興奮気味に話す束に苦笑しつつ、俺はふと昔のことを思い出した。

 まだ生徒会が発足して間もない頃の記憶。やがて真耶が増え、ナタルが増えた。その当時の面子が、臨海学校で一堂に会するかもしれない。千冬や真耶はともかく、織村やナタルとは暫く顔を合わせていないのでどう変化しているのか気になりはするが、そこまで大きな変化はないだろうなと予想している。

 

『あ、もうこんな時間。じゃあねかーくん、また連絡する』

「おう、じゃあな」

 

 通話を終了し、携帯を適当にベッドへと放り投げる。

 何はともあれ、先ずは目先のクラス代表対抗戦だ、今の束の口ぶりから察するに、おそらくは何か企んでいるのだろう。でなければアイツが自分以外の手がけたISに触れるなんて言い出す筈がないのだ。

 

「……面倒だけは起こしてくれるなよ」

 

 切実にそう願いつつ、俺や襲い来る睡魔に身を委ねた。

 

 なにやら一夏の部屋のほうが騒がしかったみたいだが、何があったのかは分からない。

 ただその翌日、頬に手形のついた一夏と泣きはらした鈴音の姿が目撃されたそうだ。

 

 

 

 




 次回からクラス対抗戦。

楯「では組み合わせを発表しまーす。第一試合、一夏対皿式」
一「!?」
皿「主人公との絡みキタコレ!!」

 ※嘘です


 最後の一夏と鈴になにがあったかは次回。

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