魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
リーナ、内心で変なこと考えてたりする。
「リーナ、いい加減に起きてください!」
シルヴィにどやしつけられて、私は渋々ベッドから這い出た。力尽くで布団をはぎ取られて仕方なく起きたのである。
「まったく……いくら日曜日だからって、だらしないですよ」
ダイニングテーブルの前に座ってパジャマのままボーッとしていると呆れ顔のシルヴィが私の前に蜂蜜入りのホットミルクのカップを置いてくれる。
まだ寝ぼけてふわふわとしていたが、少しずつカップの中身を口にしハニーミルクを飲み干すころには意識が覚醒した。
「ごちそうさまでした…シルヴィ、本部から何か言って来ていませんか」
ふわふわした厚手のパジャマにブラシも当てていない頭では威厳が出ないだろうから口調だけはスターズ総隊長としてのものを意識する。リーナはポンコツでもアンジー・シリウスは格好良くなければならないのだ。って私もポンコツじゃないけどね!…ちょっとドジかもしれないけど。
「今のところは、まだ何も。ですが、何のお咎めも無く済むとは思えませんね……」
「シルヴィもそう思いますか……」
シルヴィの返答を聞いて頭を抱える。
「もしかして……負けたんですか?」
衛星級が一度に四人も無力化され、ミノムシのようになって木に吊るされていた、とか。
リーナまで三時間以上も交信途絶、行方不明になった、とか。
シルヴィから痛いところをつかれまくって、止めとしてその質問をされた。私はあまりの情けなさにテーブルに突っ伏した。どうせ私はポンコツなので。
「私はもうダメです。やっていける自信が無くなりました。シリウスの
昔から私はダメな人間なんですよ。未だにツインテールが不揃いになることがあるし、こないだなんて靴下が左右違うものだったし、昨日だって深雪に負けたし。あああもう私なんて
「えーと、そうですか、今回は運が悪かったんですよ」
「タツヤとミユキと忍者が三人もいたんですよ!だってばよ、の忍者です!分身したり口から火が出たりするやつです!」
雪花から忍者の話は聞いていたし、タツヤが忍者とつながっていたのも知っていたけど、あんな手練れがあの場面に介入してくるなんて予想外だった。特にハゲてる奴はマスタークラスの忍者だったし!これは情報部が悪いわね!もっとバックアップはしっかりしてもらわないと!うん、やっぱり私は悪くない!ポンコツじゃない!
◆
「シルヴィ、すみませんでした……」
ため込んでいた不平不満を吐き出したお蔭で、いつもの自分を取り戻したものの、そうなるとさっきまでの自分が恥ずかしくなってくる。そういうところがポンコツなのかもしれない、とちょっと自己嫌悪。
「良いんですよ、たまには愚痴くらいこぼさないとパンクしちゃいますからね」
ハニーミルクのお代わりをさりげなく差し出しながら、シルヴィは笑って首を振った。シルヴィさんマジ天使。そして私はポンコツの総隊長。駄目な上司である。
そこからしばらく真面目な話をして、ふと最近ミアと会っていないことに気がついた。
隣の部屋に住んでいる別部隊の一人で本名はミカエラ・ホンゴウ。
日系人という点は同じでも、私と違って日本人とほとんど外見上の区別がつかない彼女は、本郷未亜という偽名でマクシミリアン・デバイスにセールス・エンジニアとして潜り込んでいるのだ。
「ここ数日、真夜中過ぎまで走り回っているようです。今日も仕事みたいですよ」
「日曜日だというのに勤勉ですね」
部下にどやされてベッドから渋々這い出るような総隊長(笑)とは大違いだ。
「明日は第一高校に行くそうです。CADの調整用測定器の納入に同行するそうですよ」
「えっ?」
「お昼からの予定だそうですから、ランチタイムにでも会いに行っては如何です?」
何故かミアに私が高校生をやっているのを見られるのは抵抗があった。なんだかこう、私の総隊長としてのキャラというか、威厳というか、そういうのが無くなっちゃうような気がするのだ。いくらポンコツの総隊長(笑)でも守りたいものはある。
提案を口にしたシルヴィから目を逸らし、私は明日のことを考えた。
リーナはどうしてこんなになってしまったのだろうか。うん、全て雪花のせいだな。
さて、明日も0時に投稿します。