魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
「雪花くん!結婚しましょう!?」
笑顔のまま固まった雪花は言葉の意味を理解することが出来ずその思考まで停止していた。
「はわ、あ、えっと、あれ?私今…何て言いました?」
言葉の意味を理解できていないのは言った本人も同様だった。雪花に恋心を抱いていたのだ、ということに気がついた直後に雪花の顔が視界いっぱいに広がり、可愛いと言われて混乱に混乱を重ねたあずさは自分でも何を言ったのか分かっていなかった。
「えーっと…結婚しましょうって」
私は馬鹿なんですか!?とあずさは内心で自分にツッコミを入れる。たしかに好きだと自覚した以上、いつかは告白となるのだろうが、いきなり結婚を申し込むというのは自分で自分の思考回路を疑わざるをえない。
「ぼく…まだ十五歳なので─」
「いいい今のは忘れてください!私が馬鹿だったんです!」
恋を自覚した次の瞬間に結婚を申し込み、それをすぐに忘れるよう言っている自分は何なのかと考えて、今度から雪花にどう接すればいいのだろうという不安感が胸いっぱいに広がる。
引かれてしまっただろうな、もしかしたら嫌われてしまったかもしれない、とあずさはネガティブな思考に捕らわれており、次に発せられた雪花の言葉は幻聴か何かなのではないか、と一瞬疑った。
「─婚約するのはどうですか?」
「へ?あれ?それってオッケーってことです…か?」
「ええ、実はぼく今日あーちゃん会長に告白するつもりだったので」
「えー!!」
正直なところ、あずさが目覚める数分前に目覚めた雪花は今日の告白は止めておこう、とへたれていた。というのも、本来ならばこのワンダーランドで色々なアトラクションに乗ってさらに仲良くなり、最後に告白をする予定だったのだが…水波のせいでその計画は最初から頓挫した。二人きりという大前提が覆された上、引き離されたからだ。さらに、やっとの思いで二人きりになってみれば、あずさは気絶してしまい自分も一緒に寝てしまった。雪花の思い描くデートとはかけ離れたものになってしまったのだ。だから告白はまたの機会にと考えていた。
「じゃ、じゃあ雪花くんは、その、わ…私のこと…好き…なん…です、か?」
照れと恥ずかしさと期待で顔を赤くした上に涙目。その破壊力は雪花を一瞬でキョドらせた。
「うぅ…好き、ですよ。えっと、その、これくらい!」
あずさより顔を真っ赤にして手を大きく広げ、自分がどれくらいあずさを好きかを表現する雪花の姿はあずさの沸騰した頭を冷まさせ微笑ませるくらいには愛らしかった。
そして、その微笑みを見て雪花も笑顔を浮かべ落ち着きを取り戻す。
「婚約指輪はないけど、代わりにぼくがとっても大切にしている指輪を預けます」
ネックレスにして首から下げていた指輪をあずさの首にかける。
「じゃあ私からはこれですね」
雪花の頬に柔らかいものが当たった。真っ赤になったあずさの顔がすぐ目の前にある。
「私、初めてですよ?…ってあれ?雪花くん?…気絶してる!?雪花くーん!」
雪花は限界を向かえてしまった。
◆
ワンダーランドから一足先に帰宅した水波は、雪花が特定の女性に好意を抱いていることを、いつも通り『メイドの仕事に関してのレポート』として報告した。すると、数時間後、秘密回線で四葉真夜から直接の通信が入った。
『水波ちゃん、貴女に新しい任務を与えます』
新しい任務。雪花の監視という今の任務はそれほど危険は伴わないが四葉家当主から急な任務依頼だ。危険なものに違いない、と水波は緊張しながら真夜の言葉を待つ。
『雪花さんをこちらに引き入れなさい。幸い貴女は綺麗で、歳も近いことですしね。期待していますよ』
一方的に切れた通信。
真夜の言わんとしていることを理解した水波は、暫くそこで立ち尽くした。
口から蜂蜜が出そう。
次話、水波ちゃん回を入れて来訪者編に入ろうかなーっと思っています。
あの、空気ヒロインが遅れに遅れて再登場するわけです。
さて、明日も0時に投稿します。