魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
論文コンペは厳粛な雰囲気の中で開幕を迎えた。皆、格式張った態度でなんの面白みもない。だから最初の発表校、第二高校によるプレゼン「収束魔法によるダークマターの計測と利用」が始まるころには既に瞼が閉じようとしていた。
「雪花くん、起きてください」
意識の遠くの方からあーちゃん会長の声が聞こえてはっと目を覚ます。あーちゃん会長は審査員なので客席の最前列にいたはずなのだが。
「ありゃ、寝ちゃってた?」
「もう午前の部は全部終わっちゃいましたよ?」
まさかの午前の部を丸々寝ていたらしい。
周りを見るともう客席にはほとんど人がいない。一緒にいたはずの水波ちゃんもいない。
「司波君達はお友達と昼食に行ったようです、眠っている雪花君は放っておいて良いと言われたのですが…一応」
お昼は友達(水波ちゃん)と食べるから良い、と言ってあったのだが…起こすくらいはして欲しかった。全く、駄目な兄さんだなー。
「ありがとうございました、昼食を逃すところでしたよ」
「いえいえ、さすがに放置しておくのは忍びなかったので。あっそうだ、この後一緒に食べませんか?」
「喜んで!」
兄さんありがとう!さすがですお兄様!
あーちゃん会長と楽しい昼食を終えたぼくは再びどこからともなく現れた水波ちゃんと合流した。
「ぼく置いてどこ行ってたのさー」
「ここの警備状況を見て回っていました。そもそも今日の私の仕事は論文コンペを見ることではなく、『情報』の通りの事態が起きたとき雪花様を守ること。馬鹿みたいに寝ている主人に構っている暇はありません」
「最後の悪口要らなくない!?」
なんか機嫌が悪くなってる!なんで!?
「もう時間ですから行きますよ」
「…はい」
メイドから命令される主人。いつからぼくの扱いはこんなに酷くなってしまったのか。夏休みはもっと優しかった気がするんだけど!
午後三時からの一校のプレゼンテーションは予定通り始まり何事もなく終わった。いや、何事もなくというのは語弊があるかもしれない。会場は割れんばかりの拍手に包まれ、聴衆は惜しみない称賛を送ったのだから。
「水波ちゃん行くよ」
「えっ?帰るんですか?」
まだ論文コンペは終わっていない。三校、くりむーのプレゼンテーションが残っているが─それは残念なことに行われない。
「遊ぶための準備だよ」
─お馬鹿な勘違い集団とね。
◆
「VIP会議室…こんな部屋どうやって」
「細かいことは気にしないで、時間がないから」
ぼくは昼休みの内に会議室に隠しておいた荷物を取り出す。
「なんですか?それ」
「まあ、色々必要なもの…あっ水波ちゃん一ついいかな?」
「はい、なんでしょうか?」
「ちょっと寝ててよ」
「ごめんね、水波ちゃんに魔法を見せると面倒だから」
今回、ぼくは本気でいく。色々見られたらヤバイ魔法も使うかもしれないし
「というわけで、『スノー仮面』参上!」
ぼく設計のスーパースーツに目の部分に特殊な仕掛けを施してあるフルフェイスのヘルメット。もちろん変声機能も付いてる。
そしてスーツの上から魔法陣の編み込まれた白いローブを着れば『スノー仮面』の完成だ。ただ『スノー仮面』はダサいとちーちゃんに不評だったので、その内別の名前を考えなくてはなるまい。
「まあ、兄さん達がくるはずだから大丈夫だと思うけど…一応武器置いておくから」
ぼくは水波ちゃんの戦闘スタイルを知らない。けど魔法だけで戦うというのはごく一部の強力な魔法師だけだから銃と銃弾を置いておく。ぼくはごく一部の方だから使わないし!
もし、目覚めなかった時のために
「さて、行きますか」
そう呟いた瞬間、会場が爆音と振動で揺れた。
どうやらハロウィンパーティーが始まったようだ。
スノー仮面、出陣。
次話から盛り上がっていきたいです。
さて、明日も0時に投稿します。もしかすると二話投稿するかもしれません。