魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
トミーとマッキーと別れて客席へと行く前に待ち合わせていた水波ちゃんと合流する。一校の控え室に行くときに別れたのだ。
「ごめん、水波ちゃん。おまたせ」
「…………いえ、大丈夫です」
「大丈夫じゃないよね!?今何かを飲み込んだよね!?」
「いえ、本当に大丈夫です。この変態何やってんだ馬鹿、知り合いだと思われたくないから近づくなよ…なんて言葉、飲み込んでいないので」
「解説ありがとう!それは飲み込んで正解だったよ!だって今ぼく死にたくなってるから!」
ここまで言われたら話さねばなるまい。トミー、マッキーと出会う前、会場に着いてすぐに向かった一校の控え室で一体何があったのかを。
◆
会場についてすぐ水波ちゃんと別れて向かった控え室で兄さん、姉さんと談笑しているとぼくの元婚約者、藤林響子さんがやって来た。
急に婚約破棄したりして気まずくなるかなーと少し心配していたがそんなことはなかった。何故ならそんなことは気にしていられない程の事態が発生していたからだ。
「呂剛虎に逃げられたわ、護送車が襲撃を受けたのよ」
「まさか!?…口封じでしょうか?戦力としての価値はもうないように思えますが」
「ええ、呂剛虎は片腕、それも利き手を失っている上ボロボロだわ。口封じの可能性も十分ありえる。ただ、今日に間に合うように奪還作戦を行ったのは何らかの意図があると推定するべきでしょうね」
呂剛虎の逃亡。やっぱりこうなるのか、と原作知識を持っているぼくはあまり驚くことはない。逃げられることが分かっていたからこそ片腕を消しといたのだ。今思うと足も消しておくべきだったのかもしれない。
その後、兄さんと響子さんの話し合いは進みぼくと姉さんは置き去りにされる。いや軍の事とか良く分からないし。
「そこで、雪花くんにはこれを着てもらうわ」
だから突然、目の前に一校の女子制服を出されて意味が分からなかった。
「貴方は呂剛虎に恨みを買ってるでしょうから
変装。そう言われると女装もカッコいい気がしてくる。
「会場内でも不自然じゃない変装でこれほど良いものはないわよ?だって性別が変わるんですもの、呂剛虎も気がつかないわ」
そうしてぼくは
「…というわけなんだけど」
「はあ、事情は分かりましたが…」
「何?また何か飲み込んだ?」
「いえ、やっぱり雪花様は馬鹿だなと」
「言っちゃった!そんな、てへっ!私ったらドジーみたいな顔しても許されないよ!それで許してくれるのは、くりむーだけだよ!」
そんな、最近ぼくの扱いが酷い水波ちゃんを連れて(といっても水波ちゃんにはかなり距離をあけられている、本当に酷い)客席に向かう、その途中。
「雪花くん何してるんですか!?」
「あーちゃん会長!今日も可愛いですね!」
あーちゃん会長がパタパタと駆け寄ってくる。心なしかいつもより髪の巻きがダイナミックな気がする。
「ふぇ!?ありがとうございます…って違いますよ!その格好はなんなんですか!?」
「よくぞ聞いてくれました!これは…変装ですキリッ」
渾身のポーズ。
「キリッじゃありません!そんな格好で客席に入れるわけにはいきませんよ!一校の評価が著しく下がります!ちゃんと着替えてから来てください!」
怒られた。めっちゃ怒られた。
ぼくが落ち込みながら、去っていくあーちゃん会長を見ていると、離れていた水波ちゃんが近寄ってくる。まさか慰めてくれるの?
「怒られちゃいましたね…プフッ」
ただ笑いにきただけだった。
「水波ちゃん、ぼくもそろそろ怒るよ!?」
結局女装は止めました。呂剛虎よりあーちゃん会長に嫌われる方が怖い。
それに良く考えたらただ響子さんに遊ばれていただけのような気がする。
次話からシリアスパートに入るかもしれません。
さて明日も0時に投稿します。