魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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前話で地味に原作改変したのが今後活かせればなーと思ってます。


変装

十三束鋼が何人もいる警備の中からペアを組むことになったのは、なんと一条将輝だった。心強いのはたしかなのだが、どうにも近づきがたい印象。正直、十三束としてはあまり歓迎すべきペアではなかった。

 

 

「おートミーとマッキーじゃない!どうしたの?」

 

 

どうしたの?はこっちの台詞だった。自分がトミーというあだ名で呼ばれているのは一旦置くとして一条を油性ペンみたいなあだ名で呼ぶとはどういう神経をしているんだ、と十三束は短い付き合いで何度となく考えさせられたことを繰り返す。そして一番ツッコまなくてはならないところをツッコもうとしたところで将輝が声を上げた。

 

 

「どうしたの?はお前だよ。なんだ、ついにそっち(・・・)に目覚めたのか?」

 

 

雪花は女装していた。薄く化粧をし、髪を編み込み、一校の女子制服を着て。

 

 

「違うよ。これは…変装だ!キリッ」

 

 

キリッと口で言いながらポーズを決める雪花。

 

 

「…絶対誰かに騙されてるな、こいつ頭は良いが馬鹿だからな」

 

「…たしかに」

 

 

十三束は雪花の起こしたいくつもの事件を頭に浮かべて深く頷いた。もしかしたら一条くんと仲良く出来るかもしれない、と悲しいところに友達になるきっかけを見つけながら。

 

 

「ぼく、兄さん達呼んでくるよ」

 

 

雪花がどこかへと消えていくのを見ながら将輝は十三束に声をかけた。

 

 

「十三束…だっけ?雪花と知り合いだったのか」

 

「うん、そういう君の方こそ意外だったよ。なんせ九校戦では死力を尽くして戦った敵同士だったんだから」

 

「それ以前からの友達だったんだよ、と言っても九校戦で知り合ったんだがな。そういう十三束はクラスメイトか何かか?」

 

 

当たり前のことではあるが話してみると意外に普通の男子高校生だった将輝に十三束は安堵を覚えた。警備の間中気まずい空気、では必要以上に疲れてしまう。十三束は雪花に初めて感謝した。

 

 

「クラスは違うけど僕は彼のお世話係代理でね。いつもは司波君、九校戦で雪花くんとチームだった彼がその任についてるんだけど、論文コンペで忙しいから僕に回ってきたんだ」

 

「それは御愁傷様…キツいだろ?」

 

「最初はね、でももう慣れたよ。知ってる?彼と上手く付き合うためには『諦めること』が大切なんだよ」

 

「…知ってるよ。その結果が『マッキー』だ」

 

「ぼくも『トミー』だよ」

 

 

哀れな少年達が苦労を語り合っていた時間はそう長くはなかっただろう。しかし彼ら二人の間には確かに友情が生まれていた。

 

 

「司波さん!」

 

 

将輝が内心で良くやってくれた雪花!と感謝しながら想い人の名前を呼ぶ。

 

 

「一条さん」

 

 

が、深雪の反応は薄い。深雪としては将輝よりも雪花を愛でることに集中したかった。

 

 

「一条さんが目を光らせてくださっているのであれば、わたしたちもいっそう安心できます。よろしくお願いしますね」

 

「ハイッ!必ずやご期待に添えるよう全力を尽くします!」

 

 

彼はこんな感じで一日持つのだろうか、と十三束が他人事のように考えていると深雪から「十三束君も頑張ってください」といきなり声をかけられ、しどろもどろになりながらもなんとか返事を返す。放置状態だったため完全に油断していたのだ。

 

 

「ぼくはもうちょっと話してから行くから、先に行ってて」

 

「化粧をしているのだからあまり顔には触らないようにね」

 

「分かってるよ、だからむぎゅるの止めて」

 

 

むぎゅる、というのは後ろから抱きしめられることを表した雪花語である。

 

 

「…雪花くんと司波さんって仲良いよね」

 

 

十三束は先日、目撃した光景を思い浮かべながら呟く。

 

 

「姉弟だからな…羨ましい」

 

「えっあの二人姉弟なの!?」

 

 

衝撃の事実に十三束はつい大声を出してしまう。二人が姉弟だと言うことはあの光景はただのスキンシップ…にしては少々やり過ぎ感があったが十三束は姉弟だったら問題ない!と、無理矢理自分を納得させる。

 

 

「あーあいつこの事あんまり知られないようにしてるんだっけ?悪い、聞かなかったことにしてくれ」

 

「う、うん心の内にとどめておくよ。いやー良かった。この間、別の女性と手を繋いで歩いてるの見ちゃって」

 

十三束が生徒会戦争勃発は避けられそうだ、とほっとする間はなかった。将輝がさらなる爆弾を落としたからである。

 

 

「あいつ、婚約者がいるからな。十歳以上歳上らしいが、かなりの美人だ」

 

「…へっへぇーそうだったんだー」

 

 

冷や汗が流れる。十三束が見たのは一校の会長、中条あずさと中学生くらいに見える女の子と手を繋いでいるところだ。十歳も歳上となると全く心当たりがない。

 

 

「楽しそうだね、何の話してたの?」

 

 

そこに雪花が登場し、十三束はつい雪花をまじまじと見つめてしまう。どう見ても女の子にしか見えない雪花が果して女の子を何人も侍らせているのだろうか?ありえない、そうは思うが実際に見て聞いてしまっている。

一人で考えていても答えが出るわけもない。

 

本人に確認するしかない!そう決意した十三束が口を開こうとすると、なにやら将輝から冷たい視線を浴びせられていることに気がつく。

 

 

「十三束…気持ちは分からないでもないが…流石にそれは引くぞ」

 

「へっ?」

 

十三束が将輝の言葉の意味を正確に理解するまで数秒かかったのは本人にその気が一切なかったからに他ならない。十三束が雪花を見つめていたのには別にそういう(・・・・)意味はなかったのだから。

 

 

「誤解だよ!?ちょっと雪花くんに聞きたいことがあったんだよ!」

 

「あーいや、うん。そうだな、俺は分かってたから」

 

「分かってない!分かってないよ!その見て見ぬふりをする姿勢は絶対分かってないよ!」

 

「あっぼくもう行くね。約束があるんだ」

 

「雪花くんこのタイミングで去らないで!」

 

「やっぱりお前…あっいや、俺は何も知らないがな」

 

「一条くん一回話を聞こうか!?」

 

 

十三束鋼、彼の苦労はまだまだこれからである。




一体雪花くんは誰に騙されて女装しているのか、次話でやります。

トミー、マッキーの活躍が増えそうです。
レオ?出てくるかどうかも怪しいです。


さて、明日も0時に投稿します。

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