魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
雪花のあーちゃんルート突入、本当は九校戦辺りになるはずだったのですが…結局先伸ばしになり、横浜騒乱編に入ってしまった結果、雪花とあーちゃんの描写が少なめになってしまいました。その分これからちょくちょく入れていくのでラブコメに注意してください。
では、また後書きで。
論文コンペの会場へ向かうために乗り込んだキャビネットの中でぼくはあーちゃん会長について考えていた。
マッキーが姉さんを好きになったのは一目惚れ。なら、ぼくは?と聞かれると『いつの間にか好きになってた』としか言いようがない。きっかけは褒められたことだろう。キラキラした目でCADを見つめて語り続ける姿は嘘偽りなく本心で称賛してくれていることが分かった。けど、それはあくまできっかけで、決め手は?と問われれば首を捻ることになる。
結構重度のCADオタク、頭が良い、意外と運動神経も悪くない、ぼくと同じで苦いものが苦手、ちょっとした仕草が可愛い、髪は癖毛、朝が弱い、結構頑張り屋さん。
少しずつ『中条あずさ』という人間を知っていって気がついたら好きになっていたのだ。
あーちゃん会長と遊ぶようになったのは会長に当選してからだから約二ヶ月。一緒にいる時間がただ楽しかった。彼女のことを知るたびに好きになった。
だから決め手という決め手が特にあるわけじゃない。
けど、それが恋だと気がついたのはつい最近だった。
随分前から招待状を貰っていた泉美ちゃん、香澄ちゃんの誕生日会へ持っていく誕生日プレゼントを一緒に選んでもらうため二人で放課後、買い物に行った。ぼくは基本的に学校とFLT以外では家から徒歩でいける距離しか行動しないためどこにどんな店があるとか良く分からない。そういう話をしたらあーちゃん会長が着いてきてくれたのだ。正直、どんなものをプレゼントすれば良いのかも分からなかったぼくとしてはありがたかった。
そんなプレゼント選びのためにやって来たショッピングタワー、そこでぼくは二人のプレゼントにリボンを買った。白に黒いラインの入ったリボンだ。ただ七草のお嬢様相手にプレゼントがリボンだけというのもどうかと思ったのであーちゃん会長の「手作りのものを貰ったら嬉しい」という意見を参考にしてアクセサリーを自分で作ることにした。CADにハマる前はアクセサリー製作にハマっていて色々作っていたのだ。そこで気がついたのだが自分で作ったアクセサリーをプレゼントするというアイディアを最初から思いついていれば、プレゼント選びで悩むようなことはなかったのかもしれない。
手作りのアクセサリーといえば思い出すのがリーナにプレゼントした指輪である。二人の約束の指輪。ぼくはネックレスにして常に首から下げているがリーナはどうだろう。あのポンコツぶりを見るに無くしていてもおかしくはない。今度、再会した時のために新しく作っておいた方がいいかもしれない。泣きつかれるのが目に浮かぶ。
「何か面白いことでもあったんですか?」
自然に顔が綻んでいたのだろう。あーちゃん会長が不思議そうに訊ねてくる。
「いえ、なんでもないです」
唐突、というわけではないのだろう。もっとも長い時間を一緒に過ごした女の子であるリーナのことを思い浮かべたからこそ感じたことだ。
リーナに対する好きとあーちゃん会長に対する好きはなんだか違う気がした。それに姉さんやちーちゃん。響子さんや澪さんとも違う気がする。
「雪花くん、次はあそこに行きましょう!」
ぼくのプレゼント選びだったはずなのにいつの間にかあーちゃん会長に振り回されていた。でもそれはそれで良いかなと思ってしまう。
キラキラした笑顔をぼくに向けられるとドキッとする。
少しでも一緒にいたいと思ってしまう。
「迷子になっちゃうかもしれませんから手を繋ぎましょうか」
「迷子になんてなりませんよ!私を子供扱いしないでください!」
「いえ、ぼくがですよ」
「まさかの迷子宣言!?」
ああ、これが恋なのかもしれない。
このどうしたら良いのか分からない、なのに心地良いこのモヤモヤが恋なのかもしれない。
「もう、仕方ないですね、離しちゃダメですよ?」
いや、これは恋だ。
ぼくは初めて恋をしたのだ。
口から砂糖が出そう。
もしかするともう一話ラブコメしてから論文コンペに入るかもしれません。
さて明日も0時に投稿します。