魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
呂剛虎。
彼の得意とする『剛気功』は気功術を元にして皮膚の上に鋼よりも硬い鎧を展開する魔法で、彼はこの剛気功の第一人者であり対人接近戦闘において世界で十指に入ると称されるほどの大亜連合の白兵戦魔法師だ。
その呂剛虎に対して雪花に対人戦の経験はほとんどなかった。それでも雪花は呂剛虎に脅威を感じない。感じるのは怒り。ただ熱く燃え上がるような怒りが、そして反対に冷たく凍てつくような殺意が雪花を支配していたからだ。
「かかってこいよ虎夫君、遊んでやるよ」
「ほざけ」
呂剛虎もまた雪花を脅威とは思っていなかった。魔法師とはいえ所詮高校生。怒りで状況を理解することも出来ないとるに足らない相手だと考えていた。むしろ呂剛虎は達也を警戒していた。明らかに
思考は一瞬。
呂剛虎は司波小百合を狙った。
「汚い手で触るな」
が、その手は届かない。目前で透明な壁に阻まれたのだ。そして雪花が右の掌を突き出すと呂剛虎がまるでトラックにでも跳ねられたかのように吹き飛ぶ。
「兄さん」
雪花が聖遺物の入った宝石箱を投げ渡すと同時に達也は動いた。あまりのショックに気を失った小百合を抱え走り出す。
「そのくらいじゃ死なないだろ、虎夫君」
雪花の言葉通り呂剛虎は死んでいない。それどころがほとんど無傷だった。
「…投降しろ。新たな人質が必要になった」
呂剛虎は立ち上がると特に表情を変えることもなく雪花に投降を促す。しかし内心では雪花への警戒を高めていた。たかが学生、そう侮ることを止めたのだ。
「嫌だね」
「…後悔するぞ」
無手の構え。呂剛虎は一直線に突進する。が、またも目前で壁に阻まれる。見えない障壁。それは呂剛虎を持ってしても破ることは出来ない。
「ぼくは怒っているんだよ、虎夫君。こんなに怒りを感じるのは初めてだ、ってくらいにさ」
雪花が幼少期、魔法の暴走をさせることがあったのは、ある一つの魔法のせいだった。今も日常的にその制御のために魔法制御の力を半分以上使っている。それを雪花は解放していた。
瞳に映る世界が変わる。
「だからちょっと遊んでやる。この怒りが収まるように、激しく楽しくさ」
雪花は笑う。
その笑顔は酷く冷たく、感情というものがまるで感じられない。
「遊ぶ、だと?」
呂剛虎は正体不明の魔法に阻まれながらも自分が負けるとは微塵も考えていなかった。
しかし、こいつは普通の学生ではない、ということを心の片隅で考えいた。敵が戦いなれていないのは雰囲気で分かる。闘志や殺気、そういうものが薄いからだ。にも関わらず敵に恐怖している様子はない。むしろ余裕があるように見える。呂剛虎の頭に撤退の二文字が過った時、呂剛虎の背筋に冷たいものが走った。
恐怖。
それは最近では戦闘中でも中々感じることのなくなったものだった。
「ああ、安心して。お代は安くしておくよ─君の命で結構だ」
膨れ上がった殺気。それと呼応するように雪花の立つ地面が沈む。
「さあ、精々無様に抗いたまえ」
雪花はまた冷たく笑った。
雪花君、本気モード。
激オコスティックファイナリアリティぷんぷんドリームです。
さて明日も0時に投稿します。