魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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二日も休んでしまいましたが復活です。ご心配おかけしました。

そして今話でついに10万字を越えました!



改変の代償

今、校内で話題になっている会長選挙。何やら『司波達也が立候補するらしい』という噂が流れているがそんなことはないし、ぼくは誰が生徒会長になるのかを知っていた。

 

 

中条あずさ。

 

 

次の生徒会長は彼女だ。兄さんの『悪魔の口(デーモン・マウス)』に唆されてやる気になり立候補しそのまま信任投票で新生徒会長に就任するのだ。

 

 

小柄な童顔。小動物っぽい印象で、見かけどおりに気弱な性格。

意外なことに、というのは失礼かもしれないが意外なことに姉さんと同じく主席入学をしており、その後も毎回上位5位以内をキープしているとか 。今年度1学期の席次では、理論・実技・総合成績とも次席だったようで実技においては細やかさが持ち味らしい。

重度のデバイスオタクで語りだすと周りが見えなくなるというオタクの典型。分かる、分かるよ。良いよねCAD!いくらでも語れるよね!周りの冷たい目とか気にならないよね!

そんな、ぼくと凄く話の合いそうな中条あずさは魔工師を志望しており魔工師として『トーラス・シルバー』を尊敬している。ここまでは良い、凄くグッドだ。

 

でも兄さんがトーラス・シルバーであると9割以上確信している素振りがあるのはいただけない。トーラス・シルバーの情報は四葉によって厳重に守られている。その厳重に守られている情報を何の後ろ楯もない中条あずさが知ってしまったらどうなるか、答えは簡単。

 

消される。知ってはならないことを知ってしまったから。

 

 

ぼくが読んだ中でもっとも未来となる原作知識、原作八巻の時点ではそんなことは起こらなかった。九校戦の時点でかなり確信を持っていたにも関わらずだ。これは中条あずさが気弱な性格で達也のことを誰にも打ち明けていないことが大きい。心の中で留めておけばそれは知らないことと変わりない。

が、ぼくは九校戦において、かなり手を出してしまった。本来起こり得ないことが起きてしまう可能性もある。それに今日気がついた。

 

 

 

「というわけで、あーちゃん先輩、ちょっといいですか?」

 

「何が、というわけなんですか!?あーちゃん先輩って何なんですか!?」

 

 

五時間目終了直後、ぼくはあーちゃん先輩の教室へと乗り込んだ。(魔法科高校は五時限制)生徒会室へと行く準備をしていたのであろう彼女はぼくを見て首を傾げるがその直後に言ったぼくの発言を聞いて声を上げる。

 

 

「まあ、まあ。詳しい話は外でしましょう。ここだと目立つので」

 

「えっ?えっ?ちょっと古葉君!?」

 

 

ぼくらが立ち去った後の二年A組には唖然とした生徒達だけが残された。

 

 

 

 

まず安心したことがある。

 

 

「ぼくの方がちょっと大きい!」

 

「頭の上に手を置かないでください!」

 

 

あーちゃん先輩より背が低かったらもう立ち直れなかったかもしれない。涙目で訴えてくるあーちゃん先輩の頭をポンポンしながらカフェの席に座る。ちなみにあーちゃん先輩というのは二年A組に入った時、周りから暖かい目で見守られているのを見てそう呼ぶと決めた。

 

 

「実はあーちゃん先輩にご相談がありまして」

 

「その前にそのあーちゃん先輩というのを止めてください!」

 

「あっ長いですもんね。分かりました、シンプルにあーちゃんでいきましょう」

 

「どうして先輩の方を改善したんですか!あーちゃんの方を止めてくださいと言っているんですよ!」

 

「じゃあ、あーたん」

 

「悪化した!?」

 

「あっそういえば会長に立候補したそうですね、応援しているので頑張ってください」

 

「あっありがとうございます、頑張ります…って違います!あーちゃんもあーたんも駄目です!司波さんや司波君のように中条先輩でお願いします!」

 

「分かりました、それであーちゃん先輩。ご相談なんですが…」

 

「…もう良いです…どうせ私は『あーちゃん』なので」

 

 

弄りすぎた。あーちゃん先輩は完全にしょげている。でも反省はしない。後悔もしていない。だって楽しいから!

 

 

「トーラス・シルバーが誰だか興味ありません?」

 

「えっ?それが相談…ですか?」

 

 

今、あーちゃん先輩が実際のところどれくらい司波達也=トーラス・シルバーだと考えているのか、それを調べる。

 

 

「ええ、なんでもあーちゃん先輩はトーラス・シルバーの大ファンだそうで。もしかしてその正体に心当りがあったりするのかなーと思いまして」

 

「あっあるわけないじゃないですか!?」

 

「えー本当ですか?本当は心当りがあるんじゃないですか?例えば─」

 

 

この人嘘つけないタイプだ、とすぐに分かる過剰な反応。ぼくはあーちゃん先輩の耳元で小さく囁いた。

 

 

「─司波達也…とか?」

 

 

びくりとあーちゃん先輩の体が跳ねる。

 

 

「やっやっぱり…トーラス・シルバーの正体はっ…」

 

 

そこまで言ったところでぼくはあーちゃん先輩の口を押さえた。

 

 

「そのこと、誰かに言っちゃいました?」

 

「いっいえ。ほぼ確信を持ってはいましたが私の中だけで他の人には…」

 

 

良かった。もし誰かに言っていたらその人まで狙われるかも知れなかったんだから。

 

 

「あっ!そういえば今日、平河先輩と話した時、私言っちゃいました!もしかしたらそうかもって。まずい…ですか?やっぱり。…って古葉君?」

 

「…お金ここに置いておきます、好きなものを注文して下さい」

 

「ちょっと古葉君!?待って!」

 

「今のことは誰にも言わないように!」

 

 

あーちゃん先輩を置き去りにしてぼくはカフェを出た。まずい。平河先輩というのはちーちゃんの姉のことだろう。二人に交遊関係があったとは知らなかった。

あーちゃん先輩がちーちゃんの姉、平河小春にトーラス・シルバーのことを話すというのはぼくが平河小春を助けたからこそ起きた事態だ。原作知識による予測は出来ない。小さなことではあるが情報の危険度は高いのだ。四葉が口封じに乗り出す可能性もある。

 

ちーちゃんに電話をする。まだ家に着いて少ししか経っていないらしく妙に機嫌が悪い。電話に出た瞬間、「用がないなら切るけど」だ。用があるから電話したに決まってるでしょ!?とツッコミを入れている暇はないので早速本題に入る。

 

 

「ちーちゃん、お姉さんに変わった様子ない?」

 

「姉さん?別に普通だけど」

 

 

どうやら、ぼくの先走り過ぎのようだ。いくら四葉でも友達同士の会話だけでその人を消すなんてしないか。

 

 

「あっでも何か変なメールがきたわよ?」

 

「変なメール?」

 

「『司波達也がトーラス・シルバーかもしれない』だって。そういえば今日はそれ調べてから帰るって言ってたけど…」

 

 

 

まずいことに事になったかもしれない。




久しぶりの急展開。今章は横浜騒乱編に向けて伏線を張っていきます。


さて明日も0時に投稿します。

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