魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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新章突入。



会長選挙編
幻の古葉と生徒会室


『幻の古葉』。

 

クラスでぼくはそう呼ばれていたらしい。なんでもちゃんとクラスに在籍しているはずなのに、誰もその姿を見たことがなかったことから付けられたようだ。

 

そんな『幻』呼ばわりされているぼくが学校に来るとどうなるか、簡単に分かることだ。つまり注目される。

 

視線。視線。視線。

 

例えではなくクラス全員の視線がぼくに集まっていた。帰りたい。既に学校へ来たことを後悔していた。なんだこの地獄は。

 

 

 

夏休み。

金沢旅行から帰ってきた後は忙しかった。

まず飛行魔法専用デバイスの開発。ぼくは兄さんの家に泊まりに行くと水波ちゃんに嘘をついて三日で仕事を終わらせた。そして愛媛にある五輪本家への挨拶。結局返事は高校を卒業した後でも良いということで先送り。ニコニコ笑顔の澪さんと共に愛媛で五日間を過ごし、ぼくの夏休みは残り一日となった。夏休み最終日は思いっきりだらけた。もはや溶けるんじゃないかというくらいにだらけた。水波ちゃんからの冷たい視線にも、結局三日で帰ってきた沙世さんからの生暖かい視線にもめげずにだらけきったのである。そんな楽しかった?夏休みも終わり新学期、ぼくはなんと学校に登校した。登校したのだが…。

 

 

「クラスの雰囲気が辛すぎる」

 

 

絶賛後悔中だった。学校というものを舐めていた。始業式ということで午前中で終った今日でさえこの疲労感。明日からは通常授業だというのに耐えられるのか。無理だろ絶対。

そんなことを学校帰りに立ち寄った兄さんと姉さんの家で話せばすぐに返ってくる辛辣な言葉。その通りだけども!もっと慰めの言葉を要求したい!

 

 

「それはお前の自業自得だ。一学期間丸々サボる奴なんて魔法科高校では初だろうな」

 

「うぅ、せめて姉さん達と同じA組だったら良かったのに」

 

 

ぼくのクラスC組にはまだ誰も友達がいない。あの空気の中誰かに話しかける勇気なんてぼくにはなかった。

 

 

「そういえば明日、お前を生徒会室へ連れてくるよう会長に言われているんだ。深雪が迎えに行くから教室で大人しくしていろ」

 

「…勘弁してよ」

 

 

ぼくが司波兄妹の弟であることは周知の事実というわけではない。一校でこの事を知っているのは一校幹部の面々と仲間内だけだ。そんな中、姉さんがC組に迎えに来たらどうなるか、いよいよぼくは視線による攻撃に耐えられなくなってしまう。

 

 

「ぼくが一人で行くよ」

 

「不安だがまあ良いだろう、忘れずに来るんだぞ」

 

 

行くわけないだろ、面倒くさい。

 

 

 

 

 

「そんなことだろうと思っていた」

 

「お兄様の予想通りでしたね」

 

 

翌日の昼休み。生徒会室になんて行きたくないぼくは昼休みになると速攻で教室を抜け出した。そして速攻で捕まった。現在は両サイドを司波兄妹に挟まれて生徒会室へ連行中である。

 

 

「無事、雪花を連れてきました」

 

兄さんがインターホンを押し、そう告げると「ご苦労様」という明るい声と共に微かな作動音がしてロックが外される。

 

初めて入った生徒会室(そもそも学校に登校したのがまだ二度目なのだから当たり前)には生徒会メンバーが全員集合しており、風紀委員長の渡辺摩利も同席していた。

 

 

「今日貴方に来てもらったのは大事な話をするためなの」

 

 

そこで語られた内容をまとめると、出席日数がヤバイ、でも九校戦で頑張ったしこれから真面目に登校すれば許してあげるわ、というものである。取り合えず退学の危機がなくなり一安心していると真面目な話が終ったからか生徒会室ではガールズトークが始まった。ふと周りを見渡すと、はんぞー先輩がちっちゃくなっており、兄さんも気配を消していた。こいつら慣れてやがる。

 

 

 

「そういえば雪花君ってダンス上手いわよね。達也君はダンスマシーンみたいだったけど」

 

 

USNAに住んでいた時は暇すぎて色々なものに手を出していた。ダンスにも手を出していたし、ピアノとか楽器にも手を出していた。

 

 

「真由美と雪花君でダンスを?それは随分と微笑ましい光景だったろうな」

 

「どういうことよ!」「どういうことですか!」

 

 

ぼくと会長の言葉が重なる。

 

 

「そう怒るな、達也君もそう思うだろ?」

 

「そうですね」

 

 

仲間からの支援を得て調子に乗った渡辺摩利はついに『剣姫』の話題を持ち出そうとした。良いだろう、そっちがその気ならこっちもやってやろうじゃないか!

 

 

「そういえば皆さん、ぼく面白い話を聞いてしまったんですよ!」

 

 

全員の視線がぼくに集まる。嬉々として『剣姫』のことを話そうとしていた渡辺摩利もである。

 

 

「誰とは言いませんが、ぼくの友達の…まあ某剣術家としておきましょう。その彼から聞いた話なんですが」

 

 

某剣術家、と言ったところで渡辺摩利が、ん?と何か思うところがあったご様子。

 

 

「その某剣術家の彼女は普段は凛々しくキリッとした人らしいんですが、二人きりになるとかなりの甘えたがりのようで中々会えないこともあってか、手をずっと握っているそうですよ」

 

話を聞く皆は何が何だか分からないのか頭上にクエスチョンを浮かべながらも黙って聞いている。ただ一人を除いて。

 

 

「そんな彼女が某剣術家に告白した時の言葉がとても良い台詞だったので皆さんにもお聞かせしたいな、と」

 

 

チラッと渡辺摩利を見ると顔を真っ赤にして固まっていた。

 

 

「『私じゃ駄目…か?お前を隣で支え…』」

 

「雪花くん!その話はもう良いんじゃないか!?」

 

 

顔を真っ赤にしたまま、ぼくの言葉を遮りアワアワと慌てている渡辺摩利の様子に皆もこの話が誰のことなのかを理解したようで、特にさっきまで言われたい放題言われていた会長はニヤニヤしている。そしてここぞとばかりに反撃に出た。

 

 

「で、雪花君。他にも何かある?」

 

「沢山ありますよ?」

 

 

ニッコリ笑顔で言った。

 

 

「ぐあああああー!」

 

 

おおよそ女の子らしいとは言えない渡辺摩利の悲鳴が生徒会室にこだました。




やっと学校に登校した主人公。もうニートなんて言わせない。


体調不良のため明日の投稿は出来ないかもしれないです。それでも明後日には投稿できるように頑張ります。

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