魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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①としましたが、もしかすると②はないかもしれないです。


九校戦編〈下〉
九校戦九日目①


「格好良かったです!」

 

「ほら抱きつかない、こいつも一応、男を自称しているんだから」

 

「自称じゃないよ!?」

 

 

昨日は試合の疲れもあり、部屋に戻ってすぐ寝てしまったため一日ぶりとなったちーちゃんと七草の双子であるが、いつの間にか仲良くなっておりちーちゃんが保護者役になっていた。ただ、ちーちゃんの毒舌は相変わらずである。ぼくを労う気持ちがないのだろうか。結構頑張ったのに。

 

 

「そういえばちーちゃん、お姉さんが担当する選手って今日出るの?」

 

「第一試合、小早川先輩が姉さんの担当」

 

 

「へー、じゃあ応援しないとね。もしかしたら小早川先輩が優勝を決めてくれるかもしれないし」

 

 

ぼくらが新人戦モノリス・コードでポイントを稼げたことにより一校は新人戦での優勝が決定した。これによって二位の三校との差は百四十ポイント、今日のミラージ・バットの結果次第では、最終日を待たずに総合優勝が決まるのだ。そして一校には姉さんが、それもトーラスシルバーのシルバーたる兄さんがエンジニアをつとめるスーパーチート状態で出場するため、まず優勝が決まっているようなものだ。

たしかこのミラージ・バット中にも事故が起きるはずだが怪我人は出ない。そしてこの事故の後、兄さんが事故の原因となった仕掛けを姉さんのCADに仕掛けられ激オコ、そこに九島烈が現れ犯人を糾弾、九校戦における事故は以降なかったはず。

 

そこまで考えたところでぼくは気がついた。いや思い出した。事故が起きるのは第一試合だと言うことに。姉さんの試合は第二試合、兄さんが姉さんのCADを大会委員に提出するのは事故の後だ。つまりそれは事故が起きるのは第一試合以外にないということ。

 

芋づる式に平河千秋というちーちゃんの名前に対して違和感を覚えた理由も思い出した。ちーちゃんは原作キャラだったのだ。そしてこの九校戦で起こる事故が原因で兄さんを敵視するようになる。その結果、彼女は命を狙われるような状況にまで追い込まれるのだ。

 

 

「ちょっと、どこいくのよ!試合始まるわよ!」

 

 

だから急いでるんです!と言う時間すらも惜しい。ぼくはある人(・・・)に電話をかけながら魔法すら使って全力で競技フィールド脇のスタッフ席へと急いだ。ここで事故を止めればどういうことが起きるのか、そんなこと分からない。でも、ぼくは一度目の事故、何も行動せず後悔した。二度目の事故、考えた末に行動せずそれでも後悔した。だったらそれは正解だと信じきれなかったということだ。その選択が正解なんだと信じることが。ならば、今度こそ友達のために信じてみよう。行動することを。

 

 

「その試合ちょっとタンマ!」

 

 

物凄い勢いでスタッフ席に突っ込んできたぼくに皆は目を丸くしている。競技フィールドを見ると試合はもう開始されていた。

 

 

「雪花か、どうした?」

 

「小早川先輩のCAD、細工されてる!」

 

「何?」

 

 

足場から空中へ飛び上がる小早川先輩に変わった様子はなく、魔法はちゃんと発動され他校との接戦を繰り広げていた。

事故が起きるタイミングは覚えていない。何事もなく第一ピリオドが終わることを願いながら片手にCADを掴み何時でも飛び出せるよう準備しておく。入っているのは飛行魔法。ここでこの魔法を使ってしまえば姉さんの試合に何らかの影響を及ぼすかも知れないが仕方がない。早く助ければ原作のように魔法不審へ陥るようなことにはならないかもしれないのだ。

 

 

「3…2…1…よし!第一ピリオド終了!兄さん、小早川先輩一回戻して!」

 

 

兄さんに頼んで小早川先輩を戻してもらおうとするが何やら揉めている。

どうやらちーちゃんの姉に小早川先輩を一度戻すように頼んでいるようなのだが拒否されているということらしい。

 

 

「強制回収!」

 

 

時間がないので小早川先輩からCADを奪い取り、目で確認する。別に何か分かるわけではない。必要なのは試合を止めて彼が来るのを待つこと。故にわざとらしく大きな声で言う。

 

 

「やっぱり!異物が紛れ込んでる!」

 

 

ぼくの声に反応して人が集まってくる。試合の邪魔だ、さっき大丈夫だっただろ、適当なこと言うな、様々な怒りの声。が、それはすぐ静かになった。

 

 

「何事かね?」

 

「やっと来たよ」

 

 

九島烈。魔法科高校の生徒にとっては雲の上の存在。その九島烈の放つ独特のオーラ、威圧感に圧倒されたのかさっきまでの声はすっかりとなくなり観客の喧騒だけが遠くから聞こえる。

 

 

「これ、見てよ」

 

 

ぼくがCADを九島烈に投げ渡すとそれを繁々と見詰め、頷く。

 

 

「恐らく電子金蚕であろう。電子機器の動作を狂わせる遅延発動術式だ」

 

「検査係の方は?」

 

「もう手は回した。このCADを担当した者ならもう拘束されているだろう」

 

 

ぼくらのやり取りを唖然と見ていた一校生徒達であるが状況が飲み込めたのか途端に騒がしくなり一人の生徒が大会委員の元へと走っていく。

 

 

「雪花、何故九島閣下が?」

 

「電話で呼んだんだよ。一応、響子さんに訊いておいて良かった」

 

「お前はなんて無茶を」

 

 

こうして、小早川先輩が魔法不審に陥ることはなくなった。ちーちゃんの復讐フラグを折ったのだ。これにより今後、原作にどんな影響が及ぶか分からない。でも不思議と後悔はなかった。

 

 

 

「で、お前はどうして細工されていることに気がついたんだ?」

 

 

とはいえ、何も問題がないというわけではなさそうだ。




原作改変。これにより小早川先輩は助かり、平河小春が引きこもりになることもなく、ちーちゃんが達也を恨むこともなくなりました。
これはつまり横浜騒乱編のハードルが上がったということです(泣)

さて明日も0時に投稿したいところなんですが学校とバイトがあるのでちょっと自信ないです。なるべくしたいとは思っていますが出来なかった場合でも明後日は必ず投稿します。

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