魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
スピード・シューティング女子決勝が終わり客席も疎らになってきたころ、ぼくは兄さんに電話をかけた。
「もしもし?今どこにいる?」
『第一高校の天幕で昼食を食べているが…どうかしたか?』
「いや友達が出来たから紹介しようと思って」
横からえっ?私たち友達だったの?という悲しくなる声が聞こえてきたが無視する。
『お前に友達が出来るとは…少し今日の試合が心配だな。ほのかには注意するよう言っておこう』
「普通に酷いよ!ぼくだって友達作れるよ!昨日も一人友達出来たし?百人も夢じゃないかもね!」
『…そうか、それで昨日もあんなにテンションが高かったのか。まだ六時だというのに寝ようとしてたしな。それでどうする?こっちに来るのか?』
天幕には絶対に行きたくない。原作キャラの巣窟でもあるし兄さん達と兄弟だとバレたら酷いことになるのは目に見えている。
「ちょっと行きたくないな、ホテルに戻ってこれない?出来れば一人で」
『難しいな、雫はともかく深雪は絶対ついてくるぞ?』
どうやら兄さんは姉さんと北山雫と一緒にいるらしい。これは難しい選択である。友達にホラ吹きだと疑われたままでいるか、姉さんと遭遇するか。
「仕方ない、姉さ…司波さんは連れてきて良いよ。でも同じホテルに泊まってるのは黙っておいてよ?」
『……どんな事情があるか知らないが深雪を怒らせるなよ?俺にまで被害がくるからな』
ぼくが姉さんを司波さんと言い直したことで何かあると察してくれた兄さん。流石ですお兄様!
「分かってるよ、じゃあぼくらまだお昼食べてないし先にホテルに行ってるから」
『了解した』
電話を切り兄さんから了承を得られたことを伝えようと横を見るとまたもジトーッとした目でこちらを見ている平河さん。その目が言っている、私たちはいつから友達になったのかと。
「ぼっぼくは友達になりたいな~って思うんだけど…駄目?」
ぼくがすがるような瞳で見つめたからか平河さんはため息を吐くと言う。
「…作ったっていうのが本当だったらね」
言うだけ言うとぷいっと顔を背けてどんどん歩いて行ってしまう平河さんにぼくは走って追い付く。
「友達になったら名前で呼んでいい?」
「別にいいわよ」
そうしてまた歩きだした平河さん、いずれはちーちゃんにぼくは尋ねる。
「ねぇ、これどこ向かってるの?」
ちーちゃんは赤面した。
◆
ちーちゃんとホテルにて昼食を取り兄さんと姉さんをエントランスにて待っている時、ぼくはふと気になって尋ねる。
「そういえば平河さんはどこ泊まってるの?それとも、日帰り?」
「10日間全部見るつもりだから泊まり。今日は二駅先で降りて少し歩いたところにあるホテル、明日からはそのホテルからさらに歩いたところにあるビジネスホテルに泊まる予定」
10日間連続では部屋が取れなかったのだろう。おそらくちーちゃんはお姉さんがエンジニアに選ばれてから部屋を取ったのだろうし。
「不便じゃない?」
「不便だけど、部屋が取れただけマシ。九校戦は人気あるし」
「ふーん、ちょっと待ってて」
ぼくはちーちゃんに断りを入れてその場を離れると響子さんに電話をした。今日は仕事って言ってたけど昨日、ご心配をお掛けしましたの電話を入れたときお昼頃なら連絡が取れるから相談があれば電話してと言われていたし大丈夫だろう。
「もしもし、響子さん?少し頼みたいことがあるんですが」
『何かしら?私に出来るようなこと?』
「ええ、実は新しく出来た友達をぼくと同じホテルに泊めさせてあげたいんです」
『たぶん大丈夫よ。お祖父様に言えばそれくらい簡単簡単。今日の試合が全部終わるまでには部屋を空けといてもらうから後で友達紹介してよ?』
「はい、きっと」
そうしてちーちゃんの部屋をコネで勝ち取ったぼくは笑顔でちーちゃんを待たせたエントランスへと赴いたのだが─
「雪花…貴方のお友達って女の子なの?」
─そこには非の打ち所のない、まるで絵画から飛び出してきたかのような美しい笑み(ぼく命名ブリザードスマイル)を浮かべて立つ氷の女王がいた。
何故かぼくの頭に修羅場という言葉が過った。
深雪様降臨。
モブと化していた深雪ですがついに再登場できました。
さて明日も0時に投稿します。