魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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少し書き貯めしたので連続投稿!



お母様学校へ②

「雪花には異能とも言うべき力があるわ。達也、貴方と同系統の力よ」

 

「やはりそうでしたか」

 

「ふふ、貴方ならある程度は予想できていたでしょうね。雪花は隠すのがあまり上手ではなかったから」

 

 

 

雪花は他人とは違うものを見ているような時があった。まるで他の人間には見えない何かを見ているように。

不自然な視線の動き方から視界を起点にした知覚系の異能である、と達也は珍しく勘と穴だらけの推理で予想を立ててはいた。

やはり、というのが一番の感想だった。

 

 

「でもきっと、貴方の予想を遥かに越えるものよ。雪花の『幻想眼(ファンタジー・サイト)』は」

 

雪夜によって語られる雪花の異能。

それは、達也の予想通りのものであり、しかし、その遥か延長線上にあるものであった。

 

 

 

 

この世に存在する実体のない曖昧なものをその瞳で捉えることができる異能。それは魔法式であったりサイオンであったり精霊であったり、はたまた、気配であったり感情であったり。

 

達也の理解の外にある異能。

それが雪花の『幻想眼(ファンタジー・サイト)』だった。

 

 

「そんなの、私にも教えてくれなかった……」

 

「仕方がないわよ、雪花は誰にもこの力のことは……あっ、水波ちゃんには話してたわね」

 

 

雪夜の言葉に得意気な顔で胸を張る水波。それが悔しいのか、リーナと深雪が不穏なオーラを出しはじめる。

しかしそれも、雪夜の話が続けられると、なくなっていった。そんなことを気にしていられないほど破格の力だったからである。

 

 

「その幻想眼なのだけど、雪花はそれを応用することで凶悪なまでの力を手にいれたわ」

 

 

雪夜の言葉に達也の頭には幻想眼の応用の仕方が何通りも浮かぶ。隣の芝生は青いというが、達也には精霊眼よりも汎用性が高いように思えた。

 

 

 

「四葉の秘伝、フラッシュキャスト。リーナは知らなくて当然だけど、水波ちゃんは話くらいは聞いたことがあるのではないかしら?」

 

「洗脳技術の応用だということくらいで、あまり詳しいことは。ただ村には洗脳装置のノウハウを利用して必要な知識を本人の意思に依らず記憶させる装置がありました」

 

「……まさか、水波ちゃん。真夜にそれ使わされたりしていないわよね?」

 

 

雪夜もその装置の存在は知っていたが、あれは神経を酷く消耗するもので、体に相当の負担をかけるものだ。深夜の亡き今も、現役で使用されているとは思っても見なかった。

 

 

「……雪花様の専属になる前に少し。一週間程寝込むはめになりましたが」

 

「……真夜は泣くまでお仕置きコースね」

 

 

唐突に決まった当主の哀れな末路に顔をひきつらせながらも、達也は先を促す。

達也としては、四葉家の秘伝であるフラッシュキャストの情報が、雪花の婚約者とはいえ外部の人間であるリーナに漏れてしまうことはどうでも良かった。それに、リーナが雪花の不利になるようなことはしないだろうという確信もあった。

 

 

 

「まあ、真夜をどうするかは後々考えるとして……雪花の幻想眼、その応用の一つはフラッシュキャストを応用したものよ」

 

 

記憶領域に起動式をイメージ記憶として刻み付け、記憶領域から起動式を読み出し、起動式の展開、読み込み時間を省略する技術であり、達也に至っては、魔法式構築の時間すら省略する。

人道上の問題はあるものの、魔法師ならば誰もが欲するであろう技術だ。

実際、この話を聞いたリーナは達也をジトっとした眼で非難した。当の達也は涼しい顔で無視を決め込んだわけだが。

 

 

「雪花は、幻想眼とフラッシュキャストを組み合わせることで、一度見た魔法をCADもなしに万全の状態で複写することができるの」

 

「なっ!?」

 

 

「勿論、この技術、ソウルキャストにも制限がないわけではないわよ?特殊過ぎる、使い手を選ぶ魔法は雪花でも複写できないし、何より負担が大きい」

 

 

まるで原理が分からない、どうすればフラッシュキャストを応用してそのようなことができるのか。疑問の絶えない達也ではあるが、その部分を雪夜が隠していることは明白、聞いたところではぐらかされることになるだろう。

 

 

 

「ふふっ驚いているわね。でもこれだけではないのよ?」

 

 

楽しそうに笑う雪夜だが他三人はとても楽しめるような心境ではなかった。

 

 

「もう一つの応用、その名もフルキャスト。幻想眼で見た人間の『動き』をそのまま複写することで自分のものにする技術よ」

 

「『動き』……ですか?」

 

 

雪夜の曖昧な表現では今一雪花の技術の詳細が分からない。それは達也以外も共通のようで、三人とも首を傾げていた。

 

 

「動きというのが雪花の認識、解釈なのだけど、実際には技術というべきかしらね。雪花は何十年も経験を積むことでやっと得られるような技術も、血の滲むような特訓の末に会得できる奥義も、一度見るだけで複写できる」

 

「そんな馬鹿な!?いくらなんでも荒唐無稽過ぎる!」

 

「可能なのよ。勿論、一度見るだけとは言ったけど、複写するには雪花に合わせた調整が必要。それに、人間には不可能な動きはできない。言うならば雪花はゲームのキャラクターみたいなものよ。複写したもの(コマンド)通りにその体を動かす、幻想眼と、私の、深夜の、才能を受け継いだ雪花になら十分可能」

 

 

圧倒的。

もはや死角などない完成された魔法師。

四葉の狂気が生み出した最強。

それが雪花なのだ。

 

 

「と、言っても今の雪花(・・・・)ではフルキャストは十全には使えない。体に負担のかかりすぎる動きは再現できないし、身体能力が追い付かないわ」

 

 

雪夜の言葉は半場、達也達の耳を素通りする。

 

 

「ちなみに、私が雪花のふりをするために使ったのもこのフルキャスト。雪花の動き、癖や言動を複写しているの」

 

そもそも、雪花の能力解説はこの説明のために始まったものだったのだが、達也達にとってはもうそんなことは気にしていられない。

 

 

「深夜と真夜、二人の才能を受け継いだ最強にして最高の魔法師を作る、深夜に実験の話を持ち込んだ科学者がそう言っていたわ」

 

最強にして最高。

正に雪花はそうだろう。

 

 

「雪花は最強にして最高の魔法師、それにこの場には戦略級魔法師が二人に、その二人に匹敵する力を持つ深雪さんがいる」

 

 

立ち上がった雪夜がやけに演技がかった身振りで語る。

 

 

 

「それに四葉の内情にも詳しい」

 

 

 

 

雪夜は知らせる。

 

 

 

 

「ねぇ、私たちで四葉を引っくり返せると思わない?」

 

 

 

反逆の時が来たのだと。

自由を、自分を、全てを、取り返す時が来たのだと。

 

 

 

「真夜に特大のお仕置きをしてやりましょう」

 

 

 

歴史が動く、その瞬間はここから始まった。

 

 

 

 




(`・ω・´) キリッ 雪夜「真夜に特大のお仕置きをしてやりましょう」


(〃 ̄ω ̄)アヤシイ 深雪「具体的にはどうするのですか?」


(`☆ω☆´)キラーン 雪夜「ふふっ……揉むわ」

………。


(¬_¬ )深雪「……最低ですね」

(¬_¬ )リーナ「変態ね」

(¬_¬ )水波「近づいて欲しくないですね、妊娠します」



。゜( ゚´Д`゜)゜。雪夜「泣くわよ!?特に水波ちゃん!」






ダブルスノー編も終盤。
次章が最終章になると思うので皆さんこれからも完結まで応援よろしくお願いします!




さて、明日も0時に投稿します。(キリッ)

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