魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮) 作:カボチャ自動販売機
ベッドにうつ伏せに転がって、枕に顔をうずめ、足をバタバタとさせる。そうすることで、この恥ずかしさを吹っ飛ばせるような気がした。
『任せろ』
脳裏に真剣な雪花の表情が過って、また、足をバタつかせる。顔は間違いなく真っ赤だろう。それどころが今にもオーバーヒートしてしまいそうな程、熱い。
雪花に抱き締められることなんて、沢山あった。
雪花に励まされることも、沢山あった。
なのにどうしてか、今回はそれを思い出す度に恥ずかしさやら、照れくささやらで、顔は真っ赤になり、足が勝手に動く。
雪花は昨日私をこのホテルに置いて、どこかへ行ったけど、私は泣きつかれたからか、安心したからか、すぐに寝てしまった。もし二人きりだったら、目も合わせられなかったかもしれない。
これはおかしい。
久しぶりに再会した時だって、こんなことにはならなかった。
「はぅ…やっぱりそうなのかな」
今までずっと我慢して、塞ぎ込んできたものを全部吐き出した。辛かった、苦しかった、悲しかった、全部を吐き出した。そうして、全部を吐き出して、最後に残った温かい気持ち。私がこの数年間を耐えることが出来たのはまず間違いなくこの気持ちがあったからだ。
「好き…なのかな…」
つまり、その…俗に言うところの……恋…みたいなっ!そんな奴が、それなんじゃないかなーっと。
確かに、雪花のことは好きだし、大事に思ってるけど、それとこれとは話が別というか!
あんな女の子女の子した男の娘……確かに、何度告白されても彼氏を作ろうとしない私に百合疑惑が持ち上がったことがあるのは認める。でも雪花はあれで中々格好良いところもあったりする…って違うでしょ私!
顔をうずめていた枕を胸に抱えてベッドの上をゴロゴロ転がる。
うん、どうやら私は雪花のことが好きだったみたいだ。異性的な意味で。
一度そう認識すると、恥ずかしさは倍増である。もう恥ずかし死ぬんじゃないだろうかというくらいだ。
「うぅ…いつからだろう」
考えると、最初に浮かんだのは初めて雪花に出会ったときの顔だった。予め男の子だと教えられていなければ、なんて可愛らしい子なんだろうと、嫉妬の一つも覚えたかもしれない人形のような容姿。でも、私が感じたのは、なんて悲しい顔をするんだろう、だった。儚くて、消えそうで、泣きそうなその顔をどうしたら笑顔に出来るんだろうと、それから毎日雪花のところに通ったのだ。
あれ?これは一目惚れという奴なのだろうか。今まで近すぎて気がつかなかったのかもしれない。離れていても、毎日雪花のことが頭を過った。うん、気がつけ私。なんという鈍感。一目惚れだとしたら十年以上初恋を続けているというのに。
「雪花はどうだろう」
雪花の周りには可愛い女の子が多い。この前雪花の家に集まったメンバーはまず間違いなく雪花に好意を抱いているはずだ。五輪澪さんはそのベクトルが少し違うかもしれないけど。それに深雪。あんな姉がいてはそこらの女性は霞んでしまうだろう。なんせ極度のブラコン以外弱点や欠点というものが見つからない。
うぅ、これは中々厳しいのではないだろうか。
雪花があんなにモテるとは知らなかった。確かにメイドさんにはモテてたけど、愛でられてる感じだったし。なんだか私のことは妹くらいに思っている気がする。私の方が誕生日早いのに自分でも否定できないのが悲しい。
モヤモヤする。その辺にヘビィ・メタル・バーストをぶっぱなして回りたい。
枕を投げてみたり、ベッドの上をゴロゴロしてみたりして遊んでみるがこのモヤモヤは晴れない。
そんなことをしている内にいつの間にか夕方になっていた。雪花から自分が帰ってくるまでこの部屋を出ないよう言われていたけど、出る余裕はなかった。一日中ベッドでゴロゴロしていたのだ。まるで雪花である。
そう、雪花のことを考えていたからか、丁度良く雪花が帰ってきた。最後に別れてから十数時間は経っているというのに、その姿を見るとまたあの時のことを思い出してしまい、顔が赤くなってしまう。
が、そんな乙女チックな思考に溺れていられたのは、ほんの一瞬だけだった。
雪花が初めて会ったときの雪花に戻っていた。
儚くて、消えそうで、泣きそうな、顔に戻っていた。
だから、私は─
「大丈夫だよ、私がいる」
─ただ、ぎゅっと抱き締めた。
雪花が壊れてしまわないように、消えてしまわないように、ただぎゅっと抱き締めた。
一体雪花の身に何が起きたのか、次話からやっていきます。ここから完全に原作から離れていくと思うので勢いだけじゃなく、しっかり考えて書いていきたいと思ってます。
さて、次話は近日中に投稿します。