魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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悪魔の誘い

ぼくが半壊させたからか、前より少し大きくなった気がする四葉本家。相変わらずの重い空気はこの場だけ重力が違うんじゃないか、と疑いたくなるくらいだ。

 

 

「今夜、アンジー・シリウスが処刑を行うわ。防諜第三課のスパイ収容施設を襲うのよ」

 

 

前回同様、謁見室と通称されているらしい大応接室にて、四葉真夜と対面する。どういうわけか、四葉真夜は一対一での対話を望んできたため、水波ちゃんは別の部屋で待機だ。水波ちゃんに何かあったときのために、緊急連絡手段は用意してある。一対一はこちらも臨むところだ。

とはいえ、最初に飛んできた話題がアンジー・シリウスの処刑について話だったのは予想外だった。

 

実は朝、パラサイトを国防軍情報部防諜第三課に奪われたらしい、という連絡を兄さんから受けていた。パラサイトの中に脱走魔法師が含まれていたのなら、その可能性は十分にある。ただ、防諜第三課のスパイ収容施設とかいう場所にパラサイトが拘束されていることをUSNA軍が知れたのなら、だ。これまでの動きを見るに日本での諜報能力はさほど高くない。昨日の今日で情報を得られるとは思えない。

それに、このアンジー・シリウスの任務をぼくに四葉が伝える意味が分からない。

 

 

「何故、私がこのことを貴方に話したのか不思議かしら?」

 

「不思議ですね、そもそもアンジー・シリウスが今夜、襲撃するというのが不思議です。USNA軍にそこまでの諜報能力はない、と考えていますから」

 

「アンジー・シリウスが今夜襲撃するのは間違いないわ。だって、パラサイトの情報を与えたのは私ですから」

 

 

妖艶な笑み。

まるでこちらの動きを全て操っているかのような態度。その黒幕然とした態度がぼくは嫌いだ。

 

 

「USNA軍を…アンジー・シリウスを利用するんですか」

 

「ふふっ、もう一つの貴方の疑問に答えておきましょう。貴方にこの情報を与えたのは、きっと貴方が貰って良かった、と思う情報だったからよ。シリウスと貴方の関係なら、ね」

 

「シリウスに手を出せば…」

 

「貴方と敵対する気はないわよ、それどころが貴方の願いは大概叶えてあげるわよ?」

 

 

全く四葉真夜の意図が分からない。

敵意どころがやけに好意的だ。万年独身!とか言っても許されそうだ。

 

 

「何か言ったかしら?」

 

「いえ」

 

 

流石に無理だった。ごめんなさい。

 

 

「さて、実は貴方を呼び出したのは、情報を与えるためというより、こうして、また直接顔を見たかったからなのよ。ふふっやっぱり画面越しで見るより可愛いわね、部屋に飾っておきたいくらいだわ」

 

 

ゾゾッてなった!えっ、ぼくが思ってたのと違う!もっとこうお互いに腹の探り合いをする的な展開を予想していたわけなんですけど!

 

 

「冗談はさておき、直接顔を見ておきたかったのは本当よ。前はこうしてゆっくりお話をする時間はなかったことですしね」

 

 

本当に冗談なら、そのねっとりした視線を向けるのを止めて欲しい。

意外と良く話す四葉真夜と、その後一時間ほど話した。大体、向こうが話題が振ってきてぼくがそれに答えるという感じだ。

 

 

「あら、そろそろ時間ね、私はこれで中々に忙しい身の上なのよ、折角の機会なのだけど、これまでのようです」

 

 

話したことは本当に他愛もないことばかりだったが、四葉真夜としては満足だったのだろう。残念そうな顔をしつつも、どこか上機嫌だ。

 

 

 

「最後に一つ、貴方に言っておくわ。貴方が願うのなら大概のことは叶えてあげる。だからもし、困ったことがあれば、ここへいらっしゃい」

 

 

 

謁見室を出るときに、四葉真夜はそうぼくに言った。それはまるで悪魔の誘いのようではあったが、何故か悪意は感じなかった。

だからぼくは素直に頷いて、今度こそ部屋を出た。

 

疑問の残る対面ではあったが、それを気にしている余裕はない。

すぐに帰って準備しなくては。

 

アンジー・シリウス、リーナを止めるための準備を。




真夜さんェ…。
雪花くん、良いように遊ばれているようです。

次話からシリアスが続くと思います。伏線も回収していきたいな、と思ってます。

次話、近日中には投稿します。

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