魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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土日の疲労感がMAXです。来週の土日も大変なので休みってなんだろうと考える日々。

そんなわけで今話は三千字を越えました。嬉しいです。


ピクシーの意思

ほののんが怖い。

 

 

「達也さん、私達を見張っていた人たちには、全員寝てもらいました」

 

「ご苦労様」

 

 

あの兄さんが、得意気に告げるほののんを前に、顔を引きつらせている。

青山の高架駅から地上第一層の歩道に降りた途端に感じた監視の目。徐々に近づいてくる異質な気配、パラサイトの相手をするのに人間の監視者は邪魔だ、と兄さんは考えたはずだ。しかし、今さらではあるが街中で勝手に魔法を使うのは違法行為であり、魔法を撃ち合っている姿を見られるのは都合が悪い。だから兄さんはぼくたちに監視者の存在を伝えたのだ。監視者の目を振り切るまで不用意に魔法を使わないように。言われなくても分かることだし、兄さんはそれを言葉にしようとしていた。けど、それよりほののんの行動は早かった。

 

ほののんの得意魔法は光波振動系。簡単に言うと光を操るのが得意なのだ。兄さんから監視者の配置を聞き出し、自分でも光を利用して位置を確認すると、ほののんはいきなり、相手の目の前に、激しく点滅する光の塊を作り出した。

 

これがとんでもない魔法なのだ。兄さんが焦るくらいだし、ぼくもファッ!?ってなったからね。

 

 

洗脳用魔法、『邪眼』の光。それがほののんの魔法だった。暗示効果は「眠らせる」だけだったけど、万が一本物の警官に捕まったら確か実刑だったはず。

それをほののんは躊躇いなく使った。実はこの面子で一番思い切りが良いのはほののんかもしれない。いや、単に舞い上がっているだけかもしれないけど。

 

 

取り合えずぼくはほののんを怒らせないようにしようと決めた。

 

 

 

 

 

「達也様、「パラサイト」三体が接近中です」

 

 

ピクシーの報告に兄さんは足を止め、携帯端末でナビゲーションシステムから取得した現在位置を、エーちゃんとミッキーのもとに送った。二人は千葉家の手勢を引き連れてすぐにこの場に向かってくるだろう。予定では彼らが配置についてから、パラサイトの捕縛へ移ることになっている。まあ相手の出方次第では、このまま戦闘に入ることもあるだろうけど。

 

 

「司波達也、話がしたい」

 

 

パラサイトに憑依された男はマルテ、と名乗り話し合いを求めた。

 

 

「我々デーモンは、君たち日本の魔法師に対して、今後、敵対行動をとるつもりはない」

 

 

どうやらパラサイトは自分たちのことをデーモンと呼称するらしい。横で「可愛くない」なんて言ってる例外もいるが皆で相談して決めたのだろう。パラサイト、よりは強そうな呼び方だと思う。

 

 

「その変わり、そこのロボットを我々に引き渡してもらいたい。君たちがどう考えているのかは知らないが、我々は生物だ。そして我々相互の繋がりは君たち人間よりずっと強い。生物でありながら生命のない器に囚われている同胞を解き放ち、取り戻したいのだ」

 

 

言っていることは至極まともだ。ロボットに囚われた仲間を助けたいってことなんだから。でもそこに本人の意志がなければそれは偽善でしかない。まあ、ぼくは偽善であれ囚われた仲間は無理矢理にでも助けるけどね。それが家族であったなら、一国を相手にしてでも。

 

 

 

「しかし、どうやって」

 

「機体を破壊する。現在の宿主を失えば、我々は新たな宿主に移動することができる」

 

「…ということらしいぞ、ピクシー。お前はそこから解放されることを望むか?」

 

「なるほど、確かに生物でありながら生命のない器に宿ることはいけないかもしれない。仲間を救いだしたいという気持ち、素晴らしい─」

 

 

ピクシーは真剣な顔、真剣な表情で力いっぱいに言った。

 

 

「─だが断る!」

 

 

言い終わったピクシーは満足気な顔で得意気に理由を語り始める。シリアスな雰囲気なのでツッコミは自粛した。

 

 

「私が元々どのような存在で、私の核をを成すこの願いが何処から得られたものかなんて、ぶっちゃけどうでも良いことです。私は知ってしまった、萌えの素晴らしさと愛の偉大さに。故に私が私でなくなるのは、嫌です」

 

 

ピクシーの言葉を、兄さんだけでなく、三体のパラサイトだけでなく、ほののんも、姉さんも、そしてぼくも、聞いた。聞いた上で全員が微妙な顔をしている。おい、パラサイト、正直もうこいついらね、みたいな顔を止めろ!得意気だったピクシーが拗ねてるだろ!構ってやれよ!そして兄さん!一瞬、あげちゃってもいいかなって思ったでしょ!?

そんな皆の反応にピクシーはぼくの所に来た。本気で落ち込んでいるようなので慰めておく。よしよし、これを反省して今後は立派なロボットを目指すんだよ。

 

 

「…交渉は決裂だ…武器を捨てて大人しく投降しろ。そうすれば痛い目を見なくて済む。幸せな実験動物としての待遇を保証するぞ」

 

「ほざけっ!」

 

 

起動式の展開もなく、魔法発動の兆候が現れる。パラサイトは、魔法を使うのに起動式や呪文の類を必要としないらしい。なんてチート!あっぼくもか。

そして、この場にはもう一人、公式チートがいるわけです。

 

 

パラサイトの魔法が発動するより早く、兄さんの「分解」が事象の改変するための情報体を破壊する。情報体の直接分解、『術式解体(グラム・ディスパーション)』だ。

 

思い掛けず魔法をキャンセルされたマルテは予想外の事態に立ち竦んでしまったのだろう。その隙を見逃す兄さんではない。四肢の付け根を撃ち抜き、マルテを路上に転がした。

だが、問題はこれからだ。体を破壊しても別の宿主を求めて飛び去っていくだけ、凍らせても自爆され結果は同じだ。自爆する可能性が大いにある以上、拘束は出来ず、そもそも倒したところで別の宿主に宿るだけ。捕獲しようにも手がないということに、今気がついた。ミッキーが古式魔法の封印術とか使えるならそれを待たないと。

 

けどそれは余計な心配だったようだ。

 

 

兄さんの左手から凝縮された想子(サイオン)の砲弾が発射され、パラサイトの胸を打った。

瞬間、マルテは身体を激しく痙攣させのたうち回った。ぼくの眼には憑依されたパラサイトが派手に動き回っているのが見える。

 

 

「お兄様!」

 

 

こんな隠し球を持っていたとは流石ですお兄様!と感心している余裕はなかった。姉さんの切羽詰まった声に振り返ってみれば、服を凍らせて動きを封じて、相手の魔法を領域干渉で抑え込んでいるマジ女王様な姉さんと、その向こう側で武装デバイスに翻弄されるほののんと、それを、守るピクシーの姿。

 

 

「ほのか!」

 

「大丈夫です!」

 

 

大丈夫、とほののんが強い口調で応えるが、今日のほののんは何をするか分からないのでCADを準備しておく。白い悪夢(ホワイト・ナイトメア)(兄さんたちがそう呼んでいるのが気に入ったのでスノー仮面から改名、水波ちゃんからは不評)に変装したとき専用のCADも作ったので安心してスノー・ホワイトを使える。

 

が、やらかしたのはピクシーだった。

 

ほののんから足手まといにはなるまい、とする強い気持ちが見え(・・)、それは瞳に光を与えた。想子(サイオン)波の急激な高まり、瞳と、そして水晶の髪飾りからだ。

 

 

直後、強力なサイキックがピクシーから放たれた。

ほぼ制御されていない荒々しい事象改変の力。それは姉さんの構築していた干渉力の力場すらも揺らがした。それに合わせて兄さんは抜け目なく、姉さんが相手していたパラサイトへ想子の塊を撃ち込んだ。マルテ同様、のたうち回るパラサイト。大変申しわけないのだが実験のためにもう一発、ぼくからも想子の塊をプレゼントした。兄さんのを見て(・・)たら出来るような気がしたので使ってみたかったのだ。ぼくの追い打ちにピクピクと身体を跳ねらせ、泡を吹いているパラサイトだが、もうぼくの関心はそちらに向いていなかった。

 

ピクシーのサイキック、『サイコキネシス』が放出された、その場。

いきなり強力な想子(サイオン)波に曝されて、漫画のように目を回しているほののんと、ドヤ顔のピクシーの姿。

 

二人と相対していたパラサイトは、視界の外へ吹き飛ばされていた。

 

 

ヤバイ、ピクシーが格好いい。




あまり雪花に見せ場をあげられない。
ただ今後は主人公らしくオリジナル展開とかで奔走すると思うので、控えめで。

さて、次話ですが無理はせず近日中ということにしておきます。間が空いてしまったら、分量多目で投稿しようかなとは思っています。

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