魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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本編に戻ってきました。



アンジー・シリウスとメイド

不審者がいた。

サングラスにニット帽にマスク。いくら冬とはいえありえない枚数の重ね着をしているのだろう、もこもこに膨らんでいる。唯一露出している手が綺麗だし、靴も女の子物、だからたぶん女の子。深く被ったニット帽から三つ編みが飛び出している。

 

 

「……金平糖にこんなに種類があるとは……」

 

 

この店は金平糖専門店というわけではないが二十五種類以上もの金平糖が常時置かれている。達也から教えて貰ったがこの辺では一番品揃えが良いそうだ。

 

 

「……そもそも、なんで私が……」

 

 

なんだか不機嫌そうな不審者。

私があんまりじっと見ていたからか不審者がこちらに振り返った。

 

 

「あっごめんなさい、随分熱心に選んでたみたいだから」

 

「…いえ……それにしてもこの店暑いですね」

 

「…それは…そんな厚着してたら暑いわよ」

 

 

外は寒いけど店内は暖房も効いているし、暖かい。それをもこもこになるまで重ね着していれば暑いだろう。

 

 

「それより、貴女も金平糖好きなの?ここはこの辺では一番種類が多いから迷っちゃうのよね」

 

 

それで結局全部買ってしまうのだ。これでもスターズの総隊長。お金に困るようなことはない。ってこれでもって何よ私!

 

 

「好物というほどではありませんが、好きです。しゅじ……兄の大好物なので散々食べさせられましたから」

 

「へーそのお兄さんとは話が合いそうね、それで何か迷ってるみたいだったけど?」

 

「ええ、実は金平糖を買ってくるよう頼まれたのですが…種類が多くて。どれを買うべきか、と」

 

 

私が日本に来て驚いたのは味の付いた金平糖が売っていることだった。メロン味とかキャラメル味とか。USNAにはなかった。ただ色々な味があると飽きずに食べられるからつい沢山食べてしまうのだ。

日本でも味の付いた金平糖というのは珍しいらしくこの辺ではここしか売っていない。折角ならそこから選ぶべきだろう。

 

 

「味の付いた金平糖が良いんじゃない?メロンとかキャラメルとかイチゴとか。今だとチョコレート味が限定で売ってるみたいね。ほら明日バレンタインデーだし」

 

「そうですね、じゃあチョコレート味を買っていくことにします。一応他にもいくつか珍しそうな奴も」

 

 

悩む必要あったの?というくらいぽんぽんカゴに金平糖を入れていく不審者改め女の子。

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったわね、私はアンジェリーナ、リーナで良いわよ?」

 

「………桜井水波です…リーナさん」

 

 

何故か動揺している。サングラス、ニット帽、マスクでその表情は分からないが私が自己紹介をした瞬間ビクッとしたように感じた。ただの気のせいかもしれないけど。

 

 

「ねえ、どうしてそんな厚着してるの?それにサングラスとかマスクとか…正直怪しいわよ?」

 

「気にしないでください、趣味なので」

 

「…………変わってるわね」

 

 

オシャレが趣味な女の子は大多数だろうけど、厚着するのが趣味の女の子なんてそうそういないだろう。変わってるというか変人だ。こうして話していると普通どころが礼儀正しくて良い娘なのに。

 

 

「では、私はこれで。兄も待っていますし」

 

 

連絡先を交換して欲しいと頼まれて交換した。プロフィールを見るに中学生のようだ。確かに結構話し込んでいたのかそろそろ暗くなるし、お兄さんも待ちくたびれているだろう。

 

 

「家は近くなの?そろそろ暗くなるし送っていくわよ?最近物騒だし」

 

「ありがとうございます、でも近くなので大丈夫です」

 

 

吸血鬼を抜きにしても最近物騒だからと思ったのだが大丈夫だというので引き下がる。

 

 

「じゃあ、また今度」

 

「はい、楽しみにしています」

 

 

店の前で彼女、水波ちゃんと別れる。どういうわけか水波ちゃんにはちゃん付けをしたくなる魔力があるようで水波ちゃんと呼ぶことにした。

 

そんな水波ちゃんの歩いていった方向と私の住むマンションは逆方向。くるりと方向転換して歩き出そうとしたその時─銃声が聞こえた。

 

 

「水波ちゃん!」

 

 

背後を振り返ると対物障壁魔法を発動して銃弾を防いだと思われる水波ちゃん。

続いて二発目の銃声。魔法の気配はない。恐らく遠距離からの狙撃。スナイパーがどこかに潜んでいるのだ。

 

私が考えている内に水波ちゃんは走り出す。その方向には明らかに悪そうな黒服の男たち。

 

 

 

「ああーもう!何がどうなってるの!」

 

 

状況は分からないけど今は水波ちゃんを助けないと!CADを取り出して黒服達を何人か魔法で気絶させる。

 

 

「リーナさん、私は大丈夫ですから逃げてください。私から離れればあの人達は追ってきません」

 

「それでハイそうですか、ってなるわけないでしょ」

 

 

ぞろぞろと現れた黒服達から走って逃げながら会話をする。するといつの間にか水波ちゃんがニット帽、サングラス、マスクを外し、もこもこ厚着からメイド服になっていた。えっいつ着替えたの!?というかメイド服!?

 

 

「水波ちゃんいつ着替えたの!?」

 

「早着替えはメイドの嗜みですよ」

 

「…水波ちゃんメイドさんだったの?だからメイド服?」

 

「いえメイド服はただの趣味です」

 

 

やっぱり変わってるよこの娘!キリッとした顔で趣味って言われても困るわよ!というかそもそもこの黒服は何!?

 

 

今日知り合った女の子、水波ちゃんは変装?を止めたら美少女で、メイドさんで、突然狙撃され、謎の黒服に追われていました。

 

 

本当に何がどうなっているの!?




オリジナル展開。
リーナと雪花の再会も近いです。

さて、明日も0時に投稿します。

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