魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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本棚を整理してたらいつの間にか何時間も経っててびっくり。しかも全然整理できてないという。


アンジー・シリウスとチョコレート

人生初とも言えるぐらい居心地の悪い査問会をヴァージニア・バランス大佐、USNA統合軍参謀本部情報内部監察局第一副局長、内部監察局のナンバーツーのおかげでどうにか何事もなく乗り越えられた。ブリオネイクの使用も許可されたし。全くあの狒々オヤジ共、いつかぶっ飛ばしてやるわ!査問委員だかなんだか知らないけどやることが汚いのよ!

 

機嫌が悪いのは査問委員たちのせいだけではない。日本で共に生活していたシルヴィが帰国命令を受領され本国に帰ってしまうからだ。合理的な理由があってのことだし仕方のないことではあるがやるせない気持ちになる。

 

 

「リーナ、お寝坊さんな貴女を一人残して帰国するのは心苦しいのだけど」

 

「寝過ごしたのは一昨日だけです!」

 

 

最後の別れであるし砕けた口調で良いと言ったらこれですよ。シルヴィは私のお母さんなんですか!?

 

 

「リーナは感染などしていません。私たちのシリウスは、魔物(デーモン)に寄生されるほど脆弱な存在ではありませんから」

 

「─もちろんです。私はパラサイトなどに屈しません。今度接触する機会があったら、その時こそ焼き尽くしてやります」

 

「そうですね。だから早く任務を終えて本部に帰って来てください、総隊長殿」

 

 

瞳に笑みを残して敬礼するシルヴィに、私は自信満々の態度で答礼を返した。

 

その自信は強がりではなかった。

 

 

 

 

七賢者とかいう奴等が機密扱いになっていた情報をどこぞのメディアに流したせいで私は比喩ではなく頭痛がした。マイクロブラックホール実験を強行したせいで次元の壁に穴が空きパラサイトを呼びよせてしまったことや吸血鬼の正体がパラサイトに憑依されたUSNA軍の魔法師であることなど、の情報だ。

学校になんて行ってる場合ではないのだが実戦しか出来ない私ではこの事態の沈静化には何の役にも立たない。バランス大佐からも「いつもどおり」と指示されている。サボることはできなかった。

 

そんな状態で過ごした学校生活はバレンタインデーを明日に控えているからか、チョコの話で持ちきり。誰に渡すの?とかやっぱり司波君?とかそんな質問を何度もされた。なんだやっぱり司波君?って!渡さないわよ!むしろ私が貰いたいくらいだわ!昔から私は貰う側、雪花から毎年貰えた手作りのチョコレートが懐かしい。

 

そして放課後、生徒会室。

 

 

「光井さん、今日はもう上がってもらっていいですよ」

 

 

さっきから繰り返し鳴っているエラー音。その発生源であるほのかを、どこか具合が悪いのかと気遣ったのだろう。生徒会長がそう声を掛けた。

 

日本人特有なのか、いえいえ大丈夫です、無理しない方が、というような問答の末にほのかは帰っていった。頬が赤かったし熱でもあったのだろう。

 

 

「ホノカ程ではないですけど、なんだかカイチョーさんも元気ないですよね?」

 

「えっ?そ、そんなことはないですよ?」

 

 

初めて会ったとき生徒会長だと深雪に紹介されて驚きの声を上げてしまったのは少し前のこと。

生徒会長は落ち込んでしまい、周りがよいしょして立ち直らせるという一場面を謀らずも目撃してしまった。私の生徒会長のイメージが十文字克人みたいな感じだったから余計に驚いたというのもあるが何て言うか生徒会長感がない。ちんまく纏まっていてクルクルの髪型がチャーミングな全体的に可愛い人だ。威厳的なものは微塵もない。

 

 

「僕も思ってました。なんだか悩み事というか心配事があるみたいに感じます」

 

 

「本当になんでもないですよ?」

 

 

ビクビクとしていて、とてもなんでもないようには見えないが本人が言いたくないことなら無理に聞く必要はない。今、この生徒会室にいるメンバーでそれ以上突っ込んで質問する程不躾な人間はいなかった。

 

 

 

 

学校から駅への帰り道。

私と深雪、達也の三人で並んで歩く。

 

 

「要するに、ホノカの調子が悪かったのは、タツヤにあげる明日のチョコレートが気になっていたから?」

 

「よく分かったわね、リーナ。チョコレートをあげるのは日本固有の習慣だと思っていたけど 」

 

「そんなことないわよ。『バレンタインデーにチョコレート』は有名なジャパンカルチャーだもの。ステイツでも真似してる子は多いし、私も毎年貰って(・・・)たわ」

 

 

やっぱりチョコレートは貰うに限ると思う。わざわざあげたいと思うような男子もいないし義理チョコも面倒くさい。それに私が個人的な贈り物をしたりしたら、色々問題が発生する。

 

 

「そうなの?人気者ね」

 

「人気者というならミユキの方が凄いじゃない。ミユキは誰にあげるの?やっぱり本命はタツヤ?」

 

 

深雪が達也に本命チョコを渡すのは自明のこと、せいぜい惚気なさい!思いっきり弄ってあげるから!

 

「何を言ってるの、リーナ。お兄様とわたしは兄妹なのよ。実の兄を相手に本命チョコなんておかしいでしょう」

 

「…………」

 

 

二の句を継げないとはこの事ね……今日は帰りに金平糖を買っていこう。やけ食いしてなくなってしまったし。またやけ食いすることになるかもしれないし!




次話、あの人とあの人が出会います。たぶん。

地味に久しぶりの登場、あーちゃん。そして五十里さんはたぶん初台詞。

さて、明日も0時に投稿します。

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