魔法科高校の劣等生に転生したら生まれた時から詰んでいた件について(仮)   作:カボチャ自動販売機

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『アンジー・シリウスとパラサイト』の続きです。


アンジー・シリウスと白い悪夢

『きゃー私、怖い』

 

変態がふざけた口調でそう言った瞬間だった。

 

 

「なっ落とし穴!?」

 

 

地面が崩れ変態を囲んでいた皆が視界から消える。ふざけんじゃないわよー!!というエリカの声が響く。

 

 

『ドッキリ大成功ー!じゃ、この娘は貰ってくよ』

 

 

ミアを抱え飛行魔法で空高くに飛び上がった変態をこのまま逃がすわけにはいかない。

そう思って魔法を発動しようとしたのだが……その前に放出系の魔法によって引き起こされた空中放電が変態を襲う。

 

 

『えっ!?こんなの聞いてませんよ!』

 

 

何らかの障壁魔法でそれを防いだ変態は慌てた様子でミアを手放した。何せ今の魔法を放ったのは凍りついたままのミアなのだから。

 

そのまま飛んで逃げる変態をどうこうする暇はなかった。

 

 

「自爆!?」

 

 

氷の彫像は雷光に包まれ、ミアの体が炎を発する。乾いた紙のように一瞬で燃え尽き、そして─舞い散る灰の消え失せた何もない所から、魔法の雷が襲う。

何もないところから降り注いでいる電撃の雨は雷ではない。その速度は目で視認できる程度。ゴルフボールサイズの小型球電。それでも人を行動不能に至らしめるには十分、同時に十発も喰らえば死んでしまうだろう。

 

咄嗟に使った防壁の魔法で防ぎきれない分はプラズマで蹴散らす。いつの間にか穴から出てきていた四人も各々防いでいる。

電子が分子から分離され空中に収束する事情改変の兆候を読み取ることで、ランダムなポイントに生じているように見える攻撃に、辛うじて対処が間に合っているのだ。

しかしそれも達也や十文字克人が攻撃に対処できるようになるまでの話だ。余裕が出来たことでパラサイトについて話し合う。

 

 

「パラサイトは人間に取り憑いて、人間を変質させる。取り憑く相手に適合性があるらしいんだけど、宿主を求めるのは自己保存本能に等しいパラサイトの行動原理らしいわ」

 

最初、黙秘を決め込もうとしたけどそんな場合じゃないと思い直し話す。吸血鬼の正体に気がついていたことには驚いたが達也たちは例外だと思うことにする。こんな高校生が普通なわけがない。

 

 

「つまり、俺たちの誰かに取り憑こうとしているのか」

 

「多分」

 

「どうやって」

 

「知らないわ。ワタシが教えて欲しいくらいよ」

 

「……使えん」

 

「悪かったわね!」

 

 

パラサイトの攻撃をブロックしながら憎まれ口を叩く達也。本当に嫌な奴!

それにしても達也と十文字克人が確実にブロックできるようになってから結構経つのに攻撃が止まない。

無限に魔法を放つことは出来ないだろうがパラサイトのエネルギー代謝のシステムは全くの未知。エネルギーに限りがあるとしても、このまま五人の誰にも取り憑けないと判断して別の場所に移動されてしまうのは困る。

 

そう考えていると、突然慌てた様子で達也がCADを持っていない左手を突き出した。

 

それからは良く分からないままに事態が進行していき私に分かったのはどうやらパラサイトを逃がしてしまったらしいということだけだった。

 

 

「逃がしたか……まあいい。逃がしたとはいえ、相手も無傷ではあるまい。今回は被害が出なかっただけでよしとすべきだろう」

 

 

そろそろ援軍がくるが今日のところは撤退する。マクシミリアンの社員をフォローしなくちゃいけないし……ってそんな状況作ったの達也達じゃない!なんで私が…いや私の部下がやってくれるんだけど。

 

結局、エリカが私に斬り掛かろうとしてきて羽交い締めにされた、というハプニングはあったものの何故かそのまま帰らせてくれた。パラサイトと手を組んでいると誤解しているらしい彼らが、六体一という圧倒的優位で拘束もせずに逃がしてくれたのは達也が私の正体を既に分かっているからだろう。お前程度いつでも倒せる、と。そういう訳なんですか!本当に嫌な奴よね!

 

今日は金平糖をやけ食いしてやる!

 

 

 

 

「なんですかあれ!ピカッてしましたよ!」

 

いつものキャラが完全に崩れてしまっている水波が雪花に報告をする。

 

「水波ちゃんから話を聞くに自爆だったんだろうね。うーん、全く予想してなかったよ。自爆とかするんだね」

 

自分がこんなに慌てているというのに落ち着いている雪花に水波は段々とイライラし始めていた。

そもそも、水波は突然雪花に今チャンスだから突っ込んで!と言われ渋々スーツに着替えて(スーツは新技術により一瞬で着脱可能)漁夫の利を狙うべく、ヤバイ高校生達の集団に突っ込んだのだ。『きゃー私、怖い』というのは本音だったりする。雪花からイタズラで学校中に仕掛けた落とし穴を使うと通信があっても不安だったのだ。そして任務成功間近で予想外の事態。あの魔法を防げたのは奇跡だとさえ水波は思っていた。それを、まあそういうこともあるよね、といった感じで返されればイライラもする。

 

 

「雪花様が七草真由美とイチャついてる間に私が大変な目にあったというのにそんな反応ですか、そうですか」

 

「いや別にイチャついてたわけじゃないよ!?顔を出してただけ!」

 

「お兄ちゃん、私はご褒美を要求します」

 

「水波ちゃん、甘える時だけお兄ちゃんと呼ぶのはずるいと思うんだ。そしてぼくもそう何度も何度もお兄ちゃん呼び一つで落ちたりしないよ!ぼくだって馬鹿じゃないんだから」

 

どうだ、と言いたげな顔でふんぞり返る雪花。

 

水波は両手を胸の前で祈るように合わせ、涙目で下から覗き込むようにして言った。

 

 

「お兄ちゃーん」

 

「お兄ちゃんどんな願いも叶えちゃう!」

 

 

雪花は結局馬鹿だった。

馬鹿は馬鹿でも妹馬鹿だが。




そろそろあの人とあの人が対面します。ほのぼのとした日常が書きたい。

三月十日から三泊四日で旅行に行くので書き貯めできなかった場合番外編が続いたり投稿出来なかったりするかもしれません。一応予告しておきます。

さて、明日も0時に投稿します。


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