SAMULION ~まじっくナイトはご機嫌ナナメ☆~ 作:Croissant
テンプレートと言えば何を思うだろう?
マウスピースの仲間で、歯のかみ合わせと調整して脳の感度を変化させ全身疾患や愁訴の改善そして新しい歯のかみ合わせを見つける装置の事?
それもまぁ、正しい。
鋳型、雛型という意味の英単語。何かの元になる定型こと?
うんそれも正しい。
だけど、昨今のテンプレの意味は、型にハマり切った一定の状況とかに使われる事が多い。
例を挙げるなら――
ああ、目の前にトラックが(ry
おぎゃー(なんじゃこり(ry
というヤツだろう。ウン。オレもネット小説とかで良く見た。
しかし……
まさか目の前でテンプレを見る羽目になるとは思いもよらなかった。
「ぬぅっ!? この様な箱に人の姿。
更にこれは違う土地の光景……何と面妖な。
……いや?
フッ 解ってしまったでござるよ殿。
実はこの箱の中に小型の式を入れて寸劇を行なっているでござるな?
如何に拙者でも手妻(所謂、手品)ぐらい存じておるでござる。
見破るなど造作も……
ぬ ぉ っ !? 板塀が如く薄いとな!?
ならばこれは……と、殿ぉーっっ!! これは如何なる術でござるかーっっ!!」
(薄型だけど)テレビにビビる時代錯誤な甲冑娘……
使い古された行動ではあるのだけど、まさかそれをナマで見てしまう日が来るとは思わなかった。
つか……
どーしてこうなった?
****** ****** ******
雷はオレの法力(?)とかで生まれたそうだけど、様々な知識はきちんと持って誕生している。
ただ、どうも一番新しいデータでも江戸後期の手前くらいで、後はおもいっきり古くて大して役に立たない。
歴史的な価値はすんごいものがあるんだろーけど、事実と真実は違うっていう見本のような話がてんこ盛りで、人に言ったって信用なんかされないだろうからあんまり意味ないけどネ。
いや、九尾の狐がマジにいたとか、それを退治した後に封じた殺生石から更に力奪って完全封印したとか知ったって嬉しくも何ともない。○の槍もどっかにある可能性も出来たけど、石喰いの実在率が上がっただけじゃんっ マジ怖いわっっ
どんだけ石喰いトラウマってるんだ…ちゅー説もあるけど、十余年も痛い目に遭わされ続けてるんだからしょーがないだろ?
兎も角、『ぬぅ?! 牛も馬も無く車が走るとは面妖な!!』とか、電気点けて驚かれたり、冷蔵庫で目を見張られたり、エアコンで声を上げたりと本当に忙しかった。
テンプレっちゃあ テンプレなんだけど、実際にその場に居合わせるとホントにタイヘンなんだと思い知らされたぜよ。フォローでヘトヘトになったし。
デジタル時計だけでも驚くんだもんなぁ……
ま、まぁ、幸いにしてオレは和食が得意だからそっちではそんなに大変じゃなかったのは救いか。
甘いって驚いてたけどネ……そーいえば昔は砂糖の味がすごいカルチャーショックだったって聞いた事あったなぁ。
兎も角、この一週間は現代の常識を教えるのに明け暮れたよ。と言っても、大学まで付いて来ようとしたのを我慢させる方が大変だったり……
確かに物騒な世の中だけど、この辺りはこの娘が護衛に来なきゃならないほど物騒じゃないし、何より大学にはものごっつ強いのがいるからそんなに心配しなくていい。
因みにその強いのってのは、オレの事…じゃなく、数少ないオレの友達の事だったりする。
その男は高校時代からの腐れ縁。
ずっと剣術を学んできたという腕前は凄いらしく、おじーちゃんのお墨付き。
何か知らんけど、ヤツのパパさんも昔はボディーガードとかしてたっつーから納得したもんだ。
一時期は膝とかヤっちゃってたけど、おじーちゃんが治したから全然OK。全く無問題で運動できるらしい。あぁ、言い忘れてたけど、おじーちゃんは鍼灸医の真似事が出来る。ヤツのパパさんも治したとか言ってたし、腕は良いっポイ。無免許だけど……
兎も角、そんな奴がいるので安心なんだヨ。負けるトコ想像できんし。
……それにしても神様は何て不平等なんだろう。
両親も二人の妹達もイケメンor美女美少女というムカつくご家庭で、当人も高校時代からモテモテだったし、学校でも一二を争う美少女と付き合いだして現在は婚約なんてしてやがる。
オイオイ。大卒後は金持ち一家に婿養子に入ってウハウハ生活ですか? ドチクショーめ神様はなんて不平等なんだ。
天は二物も三物も与えていやがる。ひがんでやる。ふーんだっっ
……あ、話がそれた。
だ、だから、そんな訳でキミは一般常識くらいは覚えてよーね? でないと外に連れ出すのも難しいアル。そう説得して何とか引き止め、色々と勉強させてきたのデスよ。
まぁ、直に苦労は報われて近所に買い物に行く程度はできるよーになってくれたけどさ。
雷と暮らし初めて解った事だけど、この娘って文明のギャップは酷かったものの、物覚えそのものはものすごく良かった。
何せ現代のものや社会構成等を見聞きした時、初見こそ驚いたりショックを受けたりしたものの、キチンと教えたらあっという間にその知識を吸収してゆくのだから。
テレビの事だって、最初こそテンプレ通り驚きかえっていたんだけど、今ではすっかり慣れたもの。
別に断りなんかいらないから勝手に見ていいよって言ったら、ホントに勝手に見るようになっていた。
まぁ、自分以外からも現代社会の情報を仕入れて欲しいって意味もあるんだけどね。
もちろんPCの使用も許可しておいた。
古いヤツを勝手に使って良いとプレゼントしてあげたし。五体当地して感激された時はどうしようかと……
一応はそれなりに早いけど、OSが古くてサポート受けられないんだよね。ううっ スクラップ押し付けたようで良心が痛い。
ま、まぁ、証拠隠め…じゃない、Cドライブを綺麗にしてるからそれなりに容量はあるはずだから勘弁してください。たのんます。
兎も角。そういった訳で思ってた以上のスピードで現代に馴染みつつあった。
「ふむ…殿。昨晩のないたーはまたもタイタンズが勝ったようでござるぞ。
真に忌々しい事でござる」
「落ち着け」
「如何なる軍でも構わんでござるが、
無論、殿が出陣なされば一人で片が付く事は承知でござる。殿以外の何者かが力づくで……」
「……だから落ち着けと。
それに野球は一人ではできん」
「ぬぅっ これはウッカリ」
とまぁ、こんな感じに。
そしてオレの朝は、野球談義で始まるようになったのである。
……何ぞこれ?
昔は寺だったという、主の家は結構広い。
そしてその庭も元は境内だった事もあってか結構広く、そこに様々な作物が育てられていて農家のようだ。
尤も、玄関まで続く道の周囲はきちんと草も刈られていて住人の清潔さが伝わってくる。
そんな家の庭先――畑と縁側の空間に散らばる葉を竹箒で掃きながら、ふとその手を止めてしまう。
自分が
無論、ただ無駄に日を送っていた訳ではない。如何に血臭の混ざらぬ平和な空気が漂っていようとも、平時にこそ様々な準備を整えねばならぬもの。
流石に主はその事を思い知っているのだろう、こちらが恐縮してしまうほど現在世界の常識等を教えていただいている。
主本人も付きっ切りで指導してくださったし、自分も申し訳なさからしっかりと学んだので思っていたより早く馴染めたと思う。
尤も、残念ながら完全に付きっ切りだった訳ではない。
何せ主は文武両道という言葉を体現なさっているお方。学び舎が開かれている時はしっかりと出かけて勉学に励まれ、帰ってからも復習に勤しまれるのだから。
恐らくそれは、人生の全ては学ぶ事だと身をもって教えてくださっているのだろう。
何せ高が式である自分に情報端末とやらまで与えてくださった程なのだから。
この扱い、式としては破格である。いや、考えられないと言った方が良い。
とは言っても、金剛の様な意志の力を持つ主が練りに練った呪力によって編まれたこの身は人間そのもの。下手をすると
だから人として接して下っているのかもしれない。
しかし、仮にそうであったとしても主のその人柄と器の大きさに心が震える。
一昨日の事だが、主が湯に浸かるというのでせめて背でも流そうと思い立ち、衣服を脱いで
尤も、直に はしたないと窘められて追い出されたのであるが…その際に目にしたその背中。引っ掻き傷や切られ傷、刺し傷等。それらが至る所に見られたのである。
これにより、一厘程あった平穏な生活を送っていたという可能性は消滅。恐るべき戦いの渦中にあったと思われる。何せ鉄砲傷と思われる物もあったのだから。
そんな過酷な戦いの中にあっても気遣いを忘れず、意志を持っているというだけのモノに過ぎない自分を受け入れる器を持つ今生の主。
言い方は悪いが、
しかし、不満が無いと言えば嘘になる。
いや不満が無いという事が不満と言うか、何と言うか……
何せこの主、料理は得意だわ縫い物は上手いわ掃除も得意だわで自分がやる事が殆ど無いのだ。
この身になって食物を美味いと感じられるようになったのは嬉しいが、主に作っていただくというのは
九分九厘 人の
尤も、件の主はその道に進んだ職人のような危なげない手つきで
三枚におろす際にも包丁の刃が骨に当たる音を立てないし、自家製の干し椎茸を戻した水と昆布、荒節で出汁をとって醤油で整えた汁物も美味いという言葉しか出せないものである。
進歩している世には“いんすたんと”なる汁物もあるようなので、一度試させてもらったのだが不純物の味しかせず、我ながら贅沢だとは思うが食えたものではなかった。
いや主の味に慣れ過ぎたという事なのか。
主曰く――
「食品を長持ちさせたり色を整えたりする為、食品添加物というものが入っている」
との事。
それが不味いと感じられる理由らしい。
実際に身体に悪い物が入っているのだが、世間の多くはその不味さを美味いと感じてしまうのでどうしようもないと言う。
成る程。世の見た目を綺麗に取り繕う為にそう言う弊害が起こっているのか。まぁ、平安の世からあったような事であるから別に不思議ではない。
不思議では無いが……
我が主はその歪みに逆らって天然自然を取り込み続けてきた。
自分でも食物を取り込んでみて解った事であるが、天然自然から遠いものを取り込み続ければ呪力が落ちる。
天然自然と違うものが血肉に混じってゆくのだから当然だ。
だから主はそうやって天然自然ばかりを取り込んで血肉とし、更にその血肉を鍛える事によって大地からの気脈を全身に通し続けてきたのだろう。
禅の心を持つ
この方が、
この方が自分の主……
恵まれ過ぎた生まれと状況に、言い様のない感激を一人噛み締める雷だった。
ウチの娘がまた箒を握り締めたまま感激してるんですけど……
いや、世間に色んなものが増えまくってるから、多少はギャップでフリーズするとは思ったけどこんなに多いとは思わなかったヨ。
この娘って異様に物覚えがいいから教えたら面白いんだけど、その記憶力ってコンピューターと一緒で間違えてるデータ教えたらそのまんま覚えちゃう。
そして基本が間違えてるから、末端まで間違え切った知識が出来がってしまう。それに気付いた時はかなり遅かったけどね……お陰で某球団をアンチするのが正しいと思ってる節が……
ま、まぁ、それでも何とか上手くやってる。と思う。多分。きっと……
しかし、彼女って戦闘メインの式神らしいんだけど、犯罪者に出会う率が途轍もなく低いここ海鳴市でナニと戦おうと言うのか? 不良とか? マンガじゃないんだから、悪の犯罪結社みたいな不良学生集団なんか滅多にいないぞ。
つーか学園戦闘モノのラノベじゃないんだし、何より厨二は卒業済みだ。ノートなんか燃やしたぞ? 眼帯と一緒に……
そーいえばこの娘、この間も風呂に突撃してきたなぁ。
いや、時代劇とかだったら夜伽に誘うとかのパターンもあるだろーけど、こっちは
まぁ、そのスんばらしィお肌を目にできた事はご褒美だと思っておく。実にごっちゃんでした!!! 誘えない自分の弱さにドチクショーっっ!!!
お肌白くてキレーなのな。
例えれば洋食的? 日本人と西洋人のイイトコ取りなプロポーションと風貌で、美人と美少女の中間位置の年齢で整えられてる。
そんな娘が何してもいいですよ? な場所にいるってのに指一本伸ばせないオレって……草食系にも程がある。
ああ、だから彼女できなかったのか……彼女作ろうにも肉食系でなきゃ無理だろーネ。
……って、何か食い荒らされて捨てられるイメージしか湧かねー……
仮に雷に彼女役頼んだって、この娘エラい美少女だから隣に立ったら釣り合いが取れないしね。
オレってどんだけダメダメなんだ……
やたら目つき悪りぃし、笑えねぇし、マンガのドジっ娘もびっくりなウッカリ者だし。
庭でゴミ焼いた時、瓶とか電池を混ぜて爆発させた事あったしね。それも何度も……
お陰で体に刺さりまくってタイヘンタイヘン。
『動物は怪我をしたら二度と同じミスをしないが、バカは何度もやる』
そうおじーちゃんに言われてたけど……ウン。言い返せない。
小学校の時、学校の玄関先ですっ転んでガラスドアを割った挙句、背中をズバブシューって切っちゃった事あるしネ。
先生にさえ おっちょこちょいと言う言葉はお前の為にあるとまで言われたよ。チクショーっっ
缶を開けてて何故か足の甲を切ったり、
プラモ作ってる時、蚊に刺されたから引っ掻いたら手にカッター持ってるの忘れてて腿をズバっと切ってしまったり、
転んだらそこに釘があったり、
包丁を初めて持った時、ウッカリ手が滑って御手玉してしまい腕に刺さった、等々……
まぁ、包丁に関しては怪我しまくった分それなりに上手く使えるようになったんだけどね。それ以外は自業自得っつーより、運の悪さも手伝ってると思うんだ。
運は悪いわ、傷だらけだわ、添加物アレルギーあるわ、アレ? オレって物凄いハンデもってね?
そりゃあモテ期がない訳だよ。はっはっはっ……ドチクショーっっっ!!!
奇妙な気配を感じ、ハッとしてその方向に顔を向ければ主の姿。
睨むような目で遠くを見つめておられる。
自分も主に続いて目を向けてみるが、やはり拙いこの眼力では何も捉えられない。
常に先を見つめておいでの主。
その瞳は何を捉えておいでか。
無論、悔む間があれば鍛錬に勤しむのが正道だろう。だが作務を放り出してまで鍛練に入るというのは不忠にも程がある。主への忠義より我欲を取るという事なのだから。
この主の事であるから咎めようとはしないだろうが、それに甘んじるという事等あってはならない不忠だ。
この方の式であるという悦びは今更語るまでも無いのだが、この方の式であるからこそ自分の力不足が悔まれてならない。
何と
いや、主に作り頂いたこの身は主の式として十全であろう。
足らぬのではなく、
「雷」
「は… ハハッ!!」
いかん!!
主に呼ばれても即座に反応できぬとは……この雷 一生の不覚!!
「殿 お呼びで?」
「……ああ」
やや作法に欠けるが、竹箒を後ろ手に置き、縁側に立つ主の前に跪いて言葉を待つ。
本日の学業はお休みというので長くいられた事に甘んじてしまった。
何という失態続き。反省の多い我が身を叱咤する。
「買い物に出かける。付いてきてくれ」
「はは 何処なりとも」
と答えてから気付く。何かしらの異変にお気付きになられたご様子なのに、買い物とは是如何に――
いや――? 主の事、何かしらのお考えあっての事であろう。
「雷が来てくれないと話にならんからな……
自分のセンスは当てにならん」
「ははぁ……?」
扇子?
……あ、せんす。確か常識とか感性とかを意味する現代語だったか。
何故にそれが必要なのか?
いや何故に自分が…‥
「? 雷の服を買うのだから当然だろう?」
「え゛?」
いやぁ……ハトが豆鉄砲食らった顔ってこんなのを言うんだ……
と、思わず感心してしまう程の驚いた顔を曝してくれた雷。
で、なんでンな事言い出したのかというと、彼女の着ているものがその理由。
この娘、式で作った紺色の
それも
正に、眼福っっ!!
じゃなかった、目の毒だ!!
だってちょっと腕とか動かすだけで見えそうになっちゃうんだよ? 勘弁してくれっ 初心者マークには刺激がキツ過ぎるんだよーっっ!!
ウチにも着物あるから着せても良かったんだけど、実は彼女 中身がおもっきり和風なくせに着物を着慣れていなかったりする。鎧甲冑は着られるのにね。
勿論、単に着る事はできるんだけど帯が留められない。ネットで調べても結び方が途中から良く解らなくなるし、式で着物を作り出すという手もダメ。何せ胸が大き過ぎて着物が似合わんのよ。
例に見せてもらったら風俗のおねーさんにしか見えなかったヨ……いや行った事ないけどネ。
式でフツーの服 作れんのか!? と思ったんだけど、一度現物を知らないと式は編めないんだそーだ。
となると結局は現物を手に入れなきゃならない。まぁ、そんなに欲しいものもないし使わないからお金余ってるんでいくら買っても全然OKだしね。
寧ろ問題は……――
「な、何と恐れ多い!!!」
この反応だよなぁ……
「拙者、確かにこの身は女なれど殿の式でござる!
その拙者が主の懐を煩わす等……言・語・道・断っ!!」
「その程度で負担なんぞ……」
「否! 例え一文であろうと主に出させるなどあってはならぬ事。
拙者のような者なぞ式符の紛い物で上等!!
でなければ素肌で放置すればよろしかろう!!」
え゛? 裸でも全然OKって?
あ……っっ アホかぁーい!!!!!!
オレが堪らんよーになってまうわーっっっっ!!!!
つか、
「それだと単にオレが外道な男だと言われるだけだと思うが……?」
ウン。露出プレイ好きのヘンタイとしてタイーホされかねん。
いや逮捕されずとも、周囲には白い目で見られる事 請け合いだ。これ以上の悪名は勘弁してつかぁさい……
「ぬぅっ!? た、確かに……
この雷 一生の不覚!!!」
いやいや言う事を重く見過ぎ。
単にフツーの服着て欲しいってだけの願いなのに許されないというのか。
「必要な事だから買いに行くのだ。
……それだけの事なんだがな」
「そ、それは……!? な、成る程……」
あ、納得してくれたかな?
必要な事だから買いに行く?
自分の衣装を整える事が……?
無論、昔の術師には人形が如く式を着飾る趣味を持った者もいたようだが、主がそんな趣味を持っているとは思えない。いや考えられない。
となると、それなり以上の深い理由あっての事だと思われる。
今、虚空を見て卦を読み思いついた買い物。
そして式で編んだ――つまり、呪式で生み出した物が駄目である理由……
ハッ!?
『成る程。ようやく理解したでござるよ』
虚空を、卦を見て始まりを予感したのではないだろうか?
そして何かしらの脅威に対して呪式の衣を纏ったままでいるという事は、それらに向けて ここに術師がいると高言しているようなものではないか。
つまり余計な戦いを何処で始めてしまうか解らなくなるのだ。
自分らに直接向ってくるような低俗なものであればまだしも、それなりに知識を持つ輩ならば不必要に用心させて無辜なる民を巻き込む可能性もある。いや、その可能性は決して低くは無いし、何より陰に潜まれてしまわないとも限らない。そうなった場合は更に厄介な事になるだろう。
それらを防ぐ為の準備と言う事か。
「そ、それは……!? な、成る程……」
「解ってくれたようだな……助かる」
やはりそうであったか!!
この雷 一生の不覚!!! 主よ。その深き配慮に気付けずにいたこの虚け者をお許しくだされ!!!
「……兎も角、直に出よう」
「承知!!」
――とまぁ、こんな感じに二人でデパートに買い物に行くというイベントが発動したのだった。
わぁ…女の子と二人でお出かけなんて初めてーっっ
……自分で言ってて寂しぃーっっっ