妄想戦記   作:QOL

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「キナ臭いとは思ってた…」

         

 

 

 

 

Side三人称

 

「ふぁあ~あ…ねむいぜ」 

 

 その日、とある軍需施設を警護する警備兵は、代わり映えのしない景色に飽き飽きしていた。ここは本国から遠く離れた火山島の一つ。赤道に位置するここは海流の影響からか熱帯と温帯とが同居する、この世からもっとも遠く、もっとも楽園に近い島だった。

 

 発見当初から地下資源が豊富な為にUSNとOCU両国が入植し、資源採掘を行っているのだが、両国は対立している為に島の中心国境に東をUSN、西をOCUと半分にしている。その為、国境周辺は常に緊張が付きまとう土地のはずなのだが、ここ二十年は小競り合い以外の紛争が発生していないので、警備の気も緩むというものだろう。

 

 あー、そろそろ昼だし、パラダイス・バーガーのクーポンもたまってきたから、ランチは豪華にトロピカルグランバーガーが2個も付いてるスペシャルセットでも頼むかな。あのバーガーはまさに悪魔の食い物だ。うまさという罪に脂肪という罰がまっている――などと、門兵に立つ男が考えていたその時。

 

《ウーーーーー―――――!!!》

 

「んがっ!?警報だとっ」

 

 ハンバーガーの太りやすさについて脳内考察をしていた男は、突如鳴り響いた警報に身をすくませる。ここはUSN直下の軍需施設であり、そこで警報が鳴り響くと言う事は、何かがあったということ。

 

「おいっ!こちら北門だが何があった!」

『侵入者だ!国境を越えてやつらが―――っ』

「なんだって!?よく聞こえないぞ!おいっ!くそ切れやがった!」

 

 門番の男が悪態をついて回線が途切れた電話を床に叩きつける。工場の中で何かが起きたのだろうという事だけは分かったが、ほかは依然として分からない。しかたなく男は車両通行止め用の杭をセットして、門の遮断機を下ろそうとした。

 その時、工場のほうから爆発音が響いた。驚き工場に目を向けると軍需工場から火の手があがっている。そしてその炎にまぎれて何かが飛ぶように地上をかけてくる姿も。

 

「――っ!とまれっ!とまらんと―――」

 

 お決まりの定型文、警告を行おうとした男だったが、走る影の手元が光ったかと思うと、そのまま門の柱に叩きつけられてしまう。その影が魔導師であり、自分を吹き飛ばしたのが魔法である事に気が付く余裕もなく、再び爆発音がとどろいた。

 

 ただし、それは近隣にまで被害が及ぶほどの大爆発。門番の男がうっすら目を開けたとき、すでに炎の壁が音速を超えて迫っている。バーガーのクーポン、どうしよう。それが門番が最後に考えた事だったのは、誰も知らない。

 

 その日、USN領のラーカス地区の軍需工場が爆発炎上するという事件が発生した。擲弾やミサイル用の爆薬も扱っていた為、工場の爆発で約80余命の命が奪われた。コレに対しUSNではこの事件にOCUの魔導師が関与していると報道。しかしOCUはそれをUSNの狂言であると反論し、和解にいたることなく紛争状態へと発展した。

 

 後の世における紛争の火種となったラーカス事件は、こうして発生した。長き沈黙をやぶり、再び大国同士が戦うという事態に世界が揺れる。それは勿論、自国内の人間も例外ではなく、当事者たち以外のほぼ全ての人間が驚きを持って紛争を迎える事となったのだった。

 

 

***

 

Sideフェン

 

 

この世界に生れ落ちてから早七年、俺が7歳になった時だった。戦争が起こった。USNから海を挟んだ位置にあるOCUが、海の真ん中にある大きな火山島で起きた小競り合いが元で勃発したらしく、相手の国がとった軍事的挑発の制裁を行ったら、向こうが国境を越えてこっちの街をいくつか占領したらしい。

同時多発的に国境を越えて攻める電撃戦だったらしく、随分と前から準備を進めていたらしいOCUは一気に国境を越えて侵攻した。戦線は拡大し食い止めるUSN側が必死の抵抗を見せた事で、現在両陣営は膠着状態となり両国とも現在本国からの援軍の準備を進めているんだそうな。

 

 たまたまテレビをつけたところ、無名のカメラマンが撮影したという件の火山島での戦端が開かれた映像が公開されていた。火山島の中心部にある都市に乱立する高層ビルの一つに飛来した一発の空対地ミサイルが突っ込み、あれよあれよという内に瓦礫と粉じんとなって崩れ落ちる光景が映っていた。

 

 朝ごはんのシリアルを思わず口から漏らしたのは悪くないだろう。だってコレもろフ○ント・ミッションだ。島の名前なんてそのままハフマン島だったし、人型機動兵器ヴァンツァーが出てこないとか、少しだけ戦争の様子が異なる以外は、フロミの展開そのままだった。

 

 そして、この戦争の名前は第二次ハフマン紛争なんだそうで…。

 ああ、やっぱり、と妙に納得している自分がいた。

 

 

 まぁソレくらいなら本国にいる俺たち市民はどうって事は無い。なにせ最前線で直接戦闘が起きているハフマン島から何千キロと離れており、今朝もご近所さんたちは普段どおりの生活を営んでいる。基本的に本土決戦にでもならないと、自国民の危機感は薄く対岸の火事くらいにしかならないんだろう。

 

 しかし、まだ世界は平和ムードなのに対し、我が家は少し勝手が違った。ハイそうです。軍の上級士官である我が両親は至急の命令で最前線へと赴任していきました。さすがの母上も俺を連れては行かなかった。戦争と訓練は違うのだと、そういう事なのだろうと俺は納得していたので別に問題は無い。

 

 だけど、そうなると一人っ子の俺は家で一人ぼっちだった。普段からボッチだが、家族がいないと比べ物にならないくらいに寂しいと感じた。前世のニュースで紛争地帯の実況とかを見た時と同じく、すぐに家族が戻ってくると、その程度でしかないだろうって高を括っていた。

 

 でも実際にそういう状況におかれると、尚更家族が戦争に行ってしまったと言うことを実感できてしまい、不安とかが凄まじい事になっている。母上の部隊の連中も全員前線に行っちまったそうだし、あの濃いメンツが見れないのも少し寂しい。父上はともかく、母上が落とされるところは想像がつかないけど……でも心配だった。

 

 

―――――主に俺の命がなッ!!

 

 

 なんでかって?決まってるだろう?

 俺も戦線に送られる可能性があるからだよッ!冗談抜きでなッ!!

 

 実は両親が前線に向かってから一ヶ月が経過したんだが、紛争は相変わらずこう着状態が続き長引く様相を見せていた。両軍とも短期決戦を望んだからか、最初から超兵器扱いの魔導師がどんどん投入されて少なくない犠牲者が出ているそうな。国土が広いからかそれなりに魔導師の数はいる物の、全力投入すればすぐに磨耗する。

 

 人の命をそうたとえるのは気が引けるのだが、実際OCUの魔導師の質はUSNに並ぶ程であり、数も同じくらいいる。それが小さな島で乱戦になれば、それはそれは沢山の命が流れて赤い河を作ってもおかしくはないだろう。要するに会戦してから僅か数ヶ月なのに両陣営ともかなりの戦力を削られたらしいのだ。

 

 そんな中でたまたま近所のマーケットに食料品の買出しに出かけた際。飽きもせずに噂話をしまくる奥様方の間でとあるうわさがある事を知ったのだ。曰く、磨耗した戦力の補充のために予備役の他にも、軍の高官の家族および親類で魔導師資質を持つ子供たちが次々と軍学校へ突っ込まれている。それも半ば強制的に。――というもの。

 

 普通なら眉唾モノだと、どうせエセアナリスト気取りの誰かが変なうわさを流したんだろうと気に留めなかっただろう。だって一般では戦場の感じは勝っていないが負けてもいないってのが広まってるからなぁ。平和なもんである。

 

 だが魔法という力を知った今なら分かる。この世界なら魔法を覚えられる子供は戦線に送る事くらいやりかねないだろうって事をな!良くも悪くも、この世界も魔法第一主義が蔓延していたりするから……だから、まぁ解るだろ?

 

 要するにだ。俺みたく資質のある子供は、年齢を問わず徴兵されて、戦争させる為に教育を施されて前線に送られる可能性があるって訳ッ!おまけに軍の高官の子供たちならば、両親の為に子供たちが憎い敵と戦うという立派なプロパガンダにもなるんだからな。一石二鳥だ。

 

 でもここまでなら、まだ唯のうわさだと流せたんだが、いるんだよね。うちの周りを探るいかにもな黒スーツを着た人たちがちらほらとね。見えないところにも不審な人物の反応をヴィズの高感度センサーが探知しているから、もうだめぽ。

 

 うん、間違いなく俺ってば狙われているね。一般に流れるうわさに続き、この怪しげな人たちの姿を見てしまうと、うわさが実は真実であると確信してしまう。というかコレでなにも無いわけが無い。賭けてもいい。

 

 もっとも、実際は誰なのかわからない以上こちらは後手に回るしかない。しかも連中は直接手は下してこないという悪辣さ。ずっと視線を感じるあたり、監視か何かのつもりなのだろうと思うが、私生活を大っぴらに出来るほど豪快じゃないので、あまりいい気分ではない。

 

 どちらにしろ嫌な予感を感じていた俺は、空いている時間は全て自主訓練にあてていた。魔力の成長度合いはまだまだ延びるはずだけど、手っ取り早く最大値を上げる為に、気絶するギリギリまで魔力行使したり、魔力を多く含むと言われる食物を食い、逆に近場の洞窟に行き、呑まず食わずで真っ暗な洞窟の中をさまよった。

 

 数撃ちゃ当たる方式で本当に上がるか微妙だったが、洞窟での臨死体感で結構最大値は増えた。やっぱ死を擬似的に体感するだけでも違うのだろう…死に対する恐れが薄くなり、精神の揺らぎが少なくなる。生き残る為だと自分に言い聞かせココまでやったけど……ホント今まで良く発狂しなかったなと自分で関心したほどである。

 

 不安や心配事を払拭したいが為に、このような無茶な訓練をしたのは、まぁ若気の至りだろう。だが十中八苦、俺は軍にしょっ引かれるだろうから、かなり鬼気迫るくらいのレベルでやるのもしょうがない事だった。俺の中の軍隊の認識が母上の部隊が基準だった所為というのもある。

 

 あれでも部下さんたちの技量は、スーパー母上についていく為に他の部隊よりもはるかにレベルが高いのだが、俺は2年間それを近くで見続けたが為に見慣れてしまっており、母上の部隊のアレが普通の魔導師部隊のレベルであるという基準が出来上がってしまっていたのだ。本当はもっとレベルは下だって、この時はまだ気が付いていない。

 

 結局、俺に出来た事はソレくらいであった。ただ洞窟での訓練の際に監視の人間が何度か俺を追いかけるようにして洞窟に入ってきた後、なんだか監視の数が減った気がするのは、もしかして何人か遭難してたりして……ま、まさかねぇ。

 

……………………

 

…………………

 

………………

 

 監視の目がつく様になり早数週間。

 自己鍛錬とヴィズの強化が一段落し、少しは休めると思ったある日のこと。

 

――――≪ピンポーン≫

 

 突如鳴り響く玄関の呼び鈴。

 

『マスター…“例”のお客さんです』

 

 そして、我が相棒の解析の結果、黒服さん方がようやく重い腰を上げたと。

 

『ちなみに“何時も来ていたヒト”でもあるみたいですよ?』

「そうか…」

 

 運命の時が動き出す……なんて言ってみても7歳児じゃ絞まらないな。とにかく鳴り続ける呼び鈴を無視するわけにもいかず、玄関に向かう。

 

≪ガチャ…≫

「どちら様…ですか?」

「こんにちは、ココはラーダー夫妻のお宅ですか?」

「はい、そうですが…アナタは…?」

「あ、紹介が遅れたわね?私はUSN軍人事部所属のエリカ・タスト中尉です。よろしくね?」

「はい…どうも」

 

 玄関に立っていたのは人懐こそうな笑みを浮かべ、いかにも子供が好きですと言う仮面をかぶった女性…タスト女史であった。ちなみに玄関の鍵はかけてあったはずだが、なんで中にいるのかは聞かない方がいいのかもしれない。

 

 奥へと案内すると、彼女はさも珍しそうに視線を這わせる演技をして見せた。だが俺は知っている。この一カ月程、この近辺を嗅ぎ廻っていたのは彼女である。なんせヴィズがとらえた魔力パターンと完璧に一致するからな……少しは隠せよ。

 

 果たしてコレは試されているのか、それとも素でばれてないと思っているのか。どちらにしても俺にはあまりいいことではなさそうである。

 

「……御用件は?」

「あら、いい茶葉…ん?あ、そうそう要件ね?じゃあハイこれ♪」

 

 一応客人扱いなので客間に通した後、紅茶を振舞ってからここへ来た理由を尋ねたところ、彼女は手に持っていたバックから、それこそまるで回覧板を渡すかのような手軽さで大量の書類を客間の机にどさっと置いてくださりやがった。

 中身は――――まぁ想像つくんだが……。

 

「―――非常特例による幼年徴兵令……ですか?」

「ええそうよ?君は国の為に闘う魔導師に選ばれたのよ?」

 

 そういう彼女はニッコリとした貼り付けたような笑顔を崩さない。普通のガキならころっとだまされそうな人のよさそうな笑みなのだが、あいにく魔導師として早期から訓練を受け続けた俺は、彼女の動作に違和感を覚え、それが危険であると勘が告げていた。

 

 大体選ばれたってなんだよ選ばれたって。愛国心は無くはないが、まるで『テレビのヒーローになれますよー』見たいなえさには釣られないクマー。残念だけど、この身は子供であるが、中身は普通に精神年齢が馬鹿高いモンで。

 

「選ばれた…ね」

 

 感情は表に出ないが呆れと嘲笑の視線を送る。気づかれない…くそ。

 

「2~3日くらい経った後に出せばいいからネ?」

 

 2~3日ってのはせめてもの良心のつもりなのだろうか?大方曲解した場合には強制連行とかして、素敵な義務教育(洗脳もあるよ)に放り込むとかするだろう。そうしたほうがやりやすいだろうし。特に魔導師という即戦力がほしい軍部にはね。

 

「いいえ…今書きます」

「……あら、どうしてかしら?」

「コレに拒否権は無い…と知っているから…です。それに、先ほどから…貴女は断ってもいいとは一言も告げて…いない」

 

 正直、化かしあいってのは好きじゃない。腹のうちを探るくらいなら腹を撃ち抜く方が楽でいい………あー、母上に毒されてるぅ。

 

「ど、どうしたのかしら?突然頭を抱えて……風邪でも引いているの?」

「いえ、ちょっと自分の成長がコレでいいのかと…」

「は?………よくわからいけど、まぁいいわ」

 

 ま、うわさを聞いてから遅かれ早かれこうなるとは思ってたから、別にいいんだがね。

 

「……とりあえず従いますから……我が家の周囲に展開している人たち……どうにかなりませんか?正直……目障り、です」

「……いつから気が付いていたの?」

「一カ月程前…ですかね?まさか監視していた本人が来るとは…こちらとしても予想外でしたが…」

「随分と鋭いのね?」

「親に…仕込まれましたから…」

 

 正確にはヴィズの高感度センサーのお陰だがな。

 

「ふふ、探知能力も優秀、魔力も高い…あとは駆け引きを覚えればそれなりに優秀な士官になれるわね。合ー格よ?」

「合格…?」

「ええ合格、そこまで鋭い子なんて今までそうはいなかった。私がそう報告するからアナタは短期教育プログラムを終えたら尉官待遇で赴任出来るわ。下士官すっ飛ばして尉官なんて、なんてエリートなのかしらね、ホント」

 

 わーお、流石魔法世界。魔法第一主義万歳様々だね。つまりコレはテストの一環だった訳か。監視していた存在を見抜ければ、さらに優秀な個体として評価し、教程過程の余計な手間を省く。

 確かに…これは随分と効率のいい事で―――――クソッタレめ。

 

「それじゃあ早速行きましょうか?ラーダー君。戦線は緊迫しているから、一人でも多くの戦力がいるのよ。解っていたなら準備も終わっているんでしょ?」

「アイマム、10分ください」

「8分でお願い」

「厳しい事…で」

 

荷物を取りに二階へあがる…ふぅ、とうとう来ちまった。

両親が両親だし、俺の魔導師ランクも病院での解析データで持っているだろうから避けられない事かと思ってたけど……。

 

 あーーーーーー死にたくねェーよーっていう。

 

『マスター、質問の許可を』

「ん、何?ヴィズ」

 

 あら珍しい。こいつが俺に質問してくるなんて。まだそこまでAIが進歩してないと思ってたんだが…どらどら、何が聞きたいのかね?

 

『何故そこまで抵抗も無しに従っているのですか?』

「……逆らっても意味が無い……から」

『マスターは常日頃から死にたくないとか戦争は嫌とおっしゃっていたじゃないですか?嫌なら逃げれば良いのでは?』

「そうしたいのも…山々なんだけど…ね」

 

 ふーむ、普段の俺のことを見ているから出た質問か。それはともかく、質問についてだが、なんせ命令してるのが国家だからな、一個人である俺が逆らえるわけがない。大体今俺のそばには守ってくれるはずの庇護者がいないんだぞ?どうしろって?ちなみに逃げる考察は何百通りもしたが、結局最後はつかまるぞ?全部。

 

 泡良く逃げたとしても、この国にいる以上絶対に捕まるし、海外になんて逃げるルートなんて戦争が始まった段階でアウトだ。それに下手に逆らって両親に迷惑が掛かったり、国家反逆の意志ありとか思われて、この国の暗~い部分に連れてかれたりなんかしたら……らめぇ、そんな太いの無理(自白剤の注射だよ?)

 

 そして、最後は身元不明の遺体に……。

 

「――――流石に…そう言うのは、遠慮したい」

 

 

 それならば普通に国に従順なフリをして、戦線に行った方がずっとマシ……じゃないけど、八方塞りならまだ自分で決められる道の方が生き残れる可能性が高いだろう。

 

『しかし…戦争に行けば…』

「うん…いままでと違って、生きるために……俺は、確実に相手を…人を殺す事になる…だろうね」

 

――――覚悟はしている……訳が無い。

 

 俺は元は平和な国日本生まれだぞ?人を殺す覚悟なんて……ムリだ。

 だがそれでもやらなきゃならん……転生した場所と時期が悪かったとあきらめて

、俺はこの手で人を殺める。生んで愛してくれた両親の為、そして生き残る為に。

 

「とっくに逃げ場なんて無い…」

『……私はデバイスです。ですのでこの状況に見合う語呂をライブラリから見つけられませんでした。しかしマスター、幾らなんでもコレは―――』

「言うな…ヴィズ」

『……了解しました。一時スリープモードに移行します』

 

 ヴィズはそう言うと黙りこんでしまった―――随分と優しい子に育ってくれたようだ。ふふ、しかし戦争か…戦争なんて対岸の火事位にしか思って無かったのに…な。ありえそうだと思っていたから覚悟を決めたと思っていたんだが、どうやらやっぱり怖いんだろうな。身体が震えてるよ。

 

 壁を思いっきり殴ってみる――魔法の力はなしで――すこし壁が凹み、痛みで身体の震えが収まった。精々死なないように……敵は倒すしかない……か。ホント厄介な世界に転生しちまったなぁ…魔法使えると浮かれてた前の自分を叱りたいぜ。

 

 

 俺はやるせない思いのまま、準備していた荷物を手に取り、そのまま我が家を後にした。まさか、もう二度とこの家に戻れなくなるなんて……このときの俺は知るよしも無かった。

 

 




とりあえずここまで。
遅筆なので次回は未定。

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