ダイヤのAたち!   作:傍観者改め、介入者

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1か月・・・・・・・・・・

これは大変なことだと思う。

読者の皆様、申し訳ありませんでした。



第117話 渾沌過ぎる準決勝開幕

紅白戦を終えて日は過ぎ、運命の準決勝、そして決勝の連戦は明日。

 

青道高校は、負けられない戦いに備えていた。

 

 

のだが、

 

 

「――――――――――」

 

黙々と守備練習を行う沖田。いつものように声を張り上げる機会は少なく、しかし鋭さを増す動きのキレ。そして打球への反応速度。

 

その様子は練習後まで続いていた。

 

 

終了後、

 

 

「気合がにじみ出ているな、沖田」

 

大塚が声をかける。この守備力がついているのだ。頼もしい限りだと感じるのは、当然だろう。

 

「ああ。まあな。」

だが、ぎこちない沖田の言葉。真剣さを感じていた練習中の時とは違い、何か歯切れが悪い。

 

 

「??」

 

「いや、まあ。気にしないでくれ」

 

首を傾げる大塚を前に、話をそらそうとする沖田。

 

 

「そういや、沖田の彼女って準決見に来るの?」

何気ない東条の問いに対し、ポーカーフェイスを作れない沖田。思わず吹き出してしまう。

 

 

――――――あんまり駆け引き上手くないよね、沖田

 

 

―――――いや、隠し事が下手なんだよ、沖田って。最近つるんでいるとよくわかる

 

こそこそと小声で話す大塚と東条。

 

「な、いや!! 違うぞ!! 女の子が見に来るから気合が入っているとか、そんな不純な動機は一切ないぞ!!」

 

 

「「ああ。」」

あきれた表情の二人。

 

「この自爆っぷりである。」

横から小湊がニヤニヤしながらやってきた。

 

「え? ダメなのかそれ!! あいつが来る俺も同じなのか!!」

そして自爆は連鎖する。沢村はうっかり若菜が観戦に訪れることを暴露してしまう。

 

 

「このリア充どもが!! ふざけんな馬鹿野郎!!」

レギュラーを沖田に奪われた倉持が嘆く。

 

「うぎゃぁぁ!!」

 

「藪蛇だぁぁぁ、じゃない!! チーターだぁぁ!!」

 

そして倉持に追い掛け回される沖田と沢村。

 

 

「うわぁぁぁ。ほんと緊張感のかけらもないね」

苦笑する小湊。

 

「倉持先輩、俺のこと素で忘れているよね。まあ、火の粉が降りかからないだけましかな」

大塚は、そんなことを言うのだった。

 

 

「ねぇ、彼女を作ると、何か変わるの?」

降谷が天然すぎる質問をする。

 

「うーん、人それぞれかな。うつつを抜かしてだめになるパターンと、奮起するパターン。もしくはあまり変わらないパターンとか。無理に作る必要もないよ」

 

 

―――――降谷は純粋だから騙されやすい。守らないと

 

大塚が諭すように言う。変な女にひっかけられないよう、誰かが保護しないといけない、そう誓う大塚だった。

 

 

「そうなんだ」

 

 

「降谷君はおじいさんが来るんだよね。準決の先発決まってよかったね」

晴れ舞台に先発。小湊に祝福されるが、

 

「決勝は大塚なのがちょっと悔しい。」

と、悔しさを示すご本人。

 

 

「そう簡単にこの背番号は譲れない。それだけ重いからな」

大塚も、その悔しさをぶつけられても特に感情を害されたと感じることもない。これが普通だと。

 

「俺も出番はなさそうだけど、準備だけはしとくぜ」

そして、狩場も御幸が出場濃厚なのが確実な現状でも準備を怠らないと決意する。

 

「第2捕手の鏡だな、狩場ぁ。けどいつか正捕手を奪えよ~。現時点で大塚の球を捕れるの、同年代でお前ぐらいなんだから」

 

 

金丸もその話の輪に加わり、狩場の姿勢を称賛しつつ、野望をむき出しにしろと要望する。

 

 

「当然だろ? ルックス以外ではまだ何とかなる、かもしれないんだからさ!!」

 

 

「それは聞いててつらいからやめて」

東条が申し訳なさそうに突っ込む。

 

 

「そういや、大塚は5番レフトで先発なんだよな。リアル二刀流の開幕か。感想は?」

金丸が大塚に対して二刀流の感想を尋ねる。投手として打者方面でこれ以上伸びて、水を開けられたくない金丸。だが、嫉妬はあっても悪感情はない。

 

それ以上に頼もしいと感じているのだ。

 

 

 

「ノーコメント。監督の期待に応えるだけだよ」

にやりと不敵に笑う大塚。

 

「控え目なコメントで面白くないぞ!」

 

「悪いな。明日ホームラン打つから勘弁して」

 

「言ったな!! 言ったよな!! 打てなかったら何してもらおうかな!!」

虎の威を借りる狐のごとく、勢いが増す金丸。

 

 

「俺、ホームラン打てなかったら金丸に何をされちゃうのかなぁ」

 

 

「誤解を招く表現はやめろぉぉぉ!!!」

 

 

結局1枚上手な大塚と、案外初心だった金丸だった。

 

その後、落ち着いた金丸と沢村を生贄に捧げて逃げ延びた沖田が平静を取り戻し、

 

「まあ、今更隠すとか、恥ずかしいと思う必要はないわな」

観念したのか、沖田は緊張や恥ずかしさを捨てて、開き直った笑みを浮かべる。

 

今まで見たことのない笑顔だった。一同はそんな沖田に目を見開いた。

 

「1年間がもうすぐ終わろうとしているけど、俺は沖田の七変化並みの変貌に驚いているよ。」

 

最初は根暗、夏は野球小僧、秋はドルオタ、そして冬に近づくにつれてリア充になっている。

 

大塚でさえも沖田のこの変化は予想の範疇を超えていた。

 

「俺も驚いてるぞ。東京に来てから俺は結構変わっているのは自覚してる。」

肩をすくめて苦笑いをする沖田だが、嫌みは感じない。むしろ、ある意味彼が一番自身の変化に驚いているかのようだった。

 

「だよなぁ。まさか沖田に先を越されるとは思ってなかったしなぁ」

作ろうとは思っていなかった金丸。むしろ自分と同じく独身が続くだろうと思っていた矢先の秋。沖田があまりにもアレな変化をして溜息しか出なくなっていた。

 

「まあ、大塚があそこまでデレデレになるのもわかる。世界が変わったっていうか」

 

「それ俺の言葉じゃないか。二番煎じ?」

大塚が思わず突っ込む。確か秋大会に言ったような気がする言葉だ。

 

「けど、その通りなんだよ。お前の言ったとおりだった。」

しかし大塚の突込みにも動じない沖田。

 

「いじっても無反応だと面白くない~」

沖田の防御力の高さに悔しそうな顔をする大塚。以前は堅物な感じだったのに、これがリア充か、とお前が言うのかと必ず言われるであろうことを心の中に思い浮かべていた。

 

「人のことは言えないよ、大塚君……」

春市が大塚のお前が言うのそれ?という言葉に苦笑いをする。

 

「だよなぁ。野球の時はそうじゃないけど、それ以外だと甘々な空間を作り出してるし」

ジト目で大塚のほうを向く狩場。

 

「さっきから心が痛むからやめて、狩場。」

東条が思わず胸を抑える。先ほどからの隠そうともしない嫉妬を目の当たりにして、悲しい気持ちになっていたのだ。

 

「その言葉が一番傷つくんだよ~~」

しかし、さほど気にしていないのか狩場がはっはっはと笑う。

 

「なんだよ、それ~~~~」

そしてつられて笑う東条。

 

「―――――――」

そして二人の様子を見て、ポカンとした顔で見つめている沖田。

 

「どうしたの、沖田君?」

春市は突然言葉が続かなくなった沖田に声をかける。彼の琴線に触れるものがあったのかと考えるが、見当がつかない。

 

「―――――いやさ、こういうのって、いいなって。」

鼻がむずむずするのか、少し鼻に指を触れつつ、気恥ずかしそうに白状する沖田。

 

「準決勝だというのに、緊張感がないというか。けど、練習の時はみんな一つの目標に向かっている。それがいい」

 

 

「沖田――――――」

それは誰の言葉だったのか、感慨深そうな声色で、チーム状態の良さをつぶやいた沖田に、それ以上の言葉を出せずにいた。

 

「その状態の良さを作ったのはお前でもあるんだよ、道広」

そこへ、大塚がその沖田のつぶやきに反応した。

 

「栄治―――――」

 

 

「守備での安心感はもちろん、打撃もそうだ。そして、俺は投手だからよくわからないけど、ポジションがよく変わるのは大変だと思う。」

 

「まあ、俺は複数守れるのが売りだし、監督もそれをわかっているだろうし。特に気にしていないぞ」

ポジションを変えられるのは特に気にしていないという沖田。常識ではなかなか考えられないが、

 

 

「けど、サードをやって、ショートをやって、練習ではセカンドをやっている。そのおかげで出番を得て、出番を失って。でも、チームの変化を促して、このチームの地力が上がった。」

 

沖田がサードをやっていたときは倉持が、そして金丸の出場機会がなく、日笠も出番がなかった。

 

沖田がショートをやっていたときは、サード争いがほぼ一騎打ちの形になった。倉持も沖田がいなければレギュラークラス。

 

そしてセカンド練習は、春市と木島の危機感をあおる結果となった。

 

内野手の選手たちに危機感を与え、沖田は常に先頭に立って信頼と信用を示してきた。

 

「くすぐったいな。そういわれるの」

朗らかに笑う沖田。

 

「それだけじゃないだろ。俺とヒデ、狩場はお前に教えられてベンチに入り、レギュラーを勝ち取った」

 

「金丸――――――」

 

 

 

「――――――――お前は俺たちの誇りだ。お前のおかげで俺たちは、ここまで来たんだ」

 

「俺も、まさか外野手でレギュラーを獲れるなんて思っていなかったよ。思えば、悩んでいた俺に声をかけてくれたのも沖田だったよね」

 

金丸が、そして東条が感謝の言葉を沖田に送る。準決勝前に、不穏な空気になりそうな気がした沖田が、少し苦笑いをする。

 

――――ちょい、この雰囲気苦手。すごくいいけど、なんだか恥ずかしいぞ

 

少しでも気を緩めれば、表情がにやけてしまう。そんな間抜け面を見せたくない彼のプライドが、沖田に這い寄る。

 

 

「――――――フラグになりそうだからやめろって。そういうの、優勝した後に言おうぜ、二人とも」

 

 

「違いない。」

その言葉に同意する狩場。ここでは早すぎる。ここでは早すぎるのだ。

 

「うん。俺たちの目標はあくまであの舞台でてっぺんを獲ること。それは夏の時から変わっていないし、変えるわけがないよね?」

春市も、ここで満足してもらっては困る、そんな言葉を出す時ではないとニヤニヤしながら二人を煽る。

 

「ちょっ、違うって。まあ、いろいろ浮かれていたのは反省するけどさ~!」

 

「あ~。だめだ。こんなんじゃ、当日はだめだ~~!」

 

 

そして春市の言葉に刺激を受け、対照的な状態になる東条と金丸。

 

 

「うおい!! 金丸がスランプとか、ちょいと笑えんぞ!!」

狩場が焦る。サードのレギュラーを獲った同級生、意外にメンタルが弱かった。

 

「この程度のプレッシャー、わけないよ。これよりももっとすごいの、甲子園で存分にやられたし、今から慣れないとね。これ、俺の経験談」

そして、甲子園での不調を自虐風に笑いながら話すあたり、春市の肝の据わり方が様になってきていた。

 

「ま、まじかよ!? やべぇよ…やべぇよ…なんとかしねぇと…明日で変えるんだ~~!!」

 

 

「金丸が壊れた~~~!!!」

大塚が頭を抱える。しかし、両手でにやけ面を隠しているので、そこまで深刻に感じてなさそうに一同は見えた。

 

「衛生兵?っていうべき? こういうの」

そして降谷がこの様である。

 

 

「それどこの知識ぃぃぃ!? 降谷君だめだよ、そんな言葉を使っちゃ!!」

春市が降谷の知識が汚染されていることに嘆く。

 

「純粋な降谷の、プフッ、ままで、クッ…いてく、ハフフッ! 不意打ちで…ギャク食らわされると、ウッ…こっちの身が、クフフッ、だ、だめだ…」

そして沖田がおなかを抱えて蹲る。笑いのツボに入ってしまったようで、沖田はしばらく行動不能になっていた。

 

「金丸って、意外と打たれ弱いからなぁ」

 

 

「さらっと毒を吐くな、毒を!! 東条~~~!! 明日はいつもの倍は打てよ!!! 責任重大だぞ!!」

狩場が笑いながらわめく。この中で一番彼がこの事態を本気にしていなかった。たぶん、どうにかなるだろうと。

 

 

 

「そういうのどうでもいいんで、俺にきづいてください。あと、沖田後で許さねぇから」

地面に寝転がっている沢村がジト目で呻く。そして、それはいつものやかましいものではなく、結構ガチな空気だった。

 

 

「沢村の性格が豹変したぁぁ!!!」

 

「逃げろ沖田ぁぁ!!」

 

「裏人格に目覚めてしまった」

 

「だからそれやめろ、降谷ぁぁぁ!! 腹筋が、腹筋がぁぁぁ!!!」

 

 

「そんなことより、沖田君土下座だよ!! ここは土下座の出番だよ!」

 

 

「すみませんでした!!!!」

鮮やかな所作で、きれいな土下座を決める沖田に、隣で見ていた春市は「兄さんの気持ちがさらに分かった気がする」と恍惚な表情を見せ、無様な姿を見せる沖田を見て笑う。

 

その愉悦を感じさせる笑みに、

 

「ヒエッ…」

 

「やべぇよ…やべぇよ…」

先程からメンタルをめった刺しにされている金丸が恐怖し、火種にも等しい働きをした東条の顔が引き攣る。

 

 

その時、中々に混とんとした雰囲気に耐え切れなくて、フェードアウトを狙っている大塚がいた。

 

「どうすりゃいいんだ……(逃げよう…)」

 

 

 

「しかしまわりこまれてしまった」

降谷が暗に「君も道連れだ」と言わんばかりの笑みを浮かべていた。春市に当てられて、彼にも悪影響が出ていた。彼の笑顔は珍しく、貴重だが、こんな時にこんな場面で見たくはなかったと心の中で呻く大塚。

 

「大塚。それはダメだろ。エースとして、逃げちゃだめだ」

裏人格?の沢村に逃げ道をふさがれる。

 

 

前門の降谷、後門の沢村。

 

 

大塚に成す術はなかった。

 

 

 

 

 

「エースの定義違うからぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

そして――――――

 

 

 

 

決戦の舞台。明治神宮球場――――――

 

 

午前10時より開始される青道対成孔。そして第2試合の明川学園対薬師。

 

 

夏の東京王者対豪快打線。台湾代表のエース対薬師の轟。

 

好カードになった試合を見に来た観客で球場は超満員となっていた。

 

 

青道高校ベンチ前、

 

 

ザッ、

 

 

ベンチ入りメンバーが円陣をくんでいた。全員に油断も、弱気な要素は感じられない。

 

「おっ、ついにあれをやるのか!?」

 

「秋季大会は初お披露目だよな!!」

 

「出るか、王者の掛け声!!」

 

 

観客たちも新チームになって初の掛け声に期待を感じていた。

 

青道史上最強ともいえるこのチーム。先発は降谷。

 

 

オーダーも伝えられ、スコアボード下に発表されていた。

 

 

『さぁ、秋季大会準決勝第1試合。青道対成孔!! 青道の先発は大塚ではなく降谷! 対する成孔は小島! ともに速球派の投手になります!』

 

 

『そして、ついに来た! 二刀流大塚!! 出陣です!! 今日のスタメンに5番レフトで先発出場の大塚栄治! その打棒と俊足を武器に、ダイヤモンドで輝けるか!!』

 

『ついに来ましたね。投手大塚君の方はすごいですが、ここまで打者としての評価が上がるとは考えていませんでしたね。夏では沖田君が目立っていましたが、大塚君はそれほどではありませんでした。ただ、成孔もいい打線ですから、降谷君といえど球威を頼りにすると少々痛い目を見るかもしれませんね』

 

『そうです。成孔打線は今大会最も得点を奪っているチームであり、この生き残った4校の中で最も爆発力のある打線といっていいでしょう!! 一度火が付けば止まらない! そのパワフルな打線に降谷がどう挑むのか。』

 

 

『エースの小島君もいいスライダーがありますからね。青道も得点を奪うのが簡単ではないでしょうね。』

 

『成孔も打撃のチームといわれていますが、守備のほうも鍛えられていますからね。青道と同じくエラーは少ないですし、バランスのいいチームでもあるんですよね。投手陣では確かに青道に分があるかもしれませんが、攻撃力では上。守備力もよく、下馬評を覆す確率もなくはないですからね』

 

 

 

『選抜の椅子を確定させる椅子は一つだけ。明日の決勝へ進むのは青道か、それとも成孔か!! まもなくプレーボールです!』

 

 

青道オーダー

 

1番 右 東条

2番 二 小湊

3番 遊 沖田

4番 捕 御幸 左

5番 左 大塚

6番 中 白洲 左

7番 一 前園

8番 投 降谷

9番 三 金丸

 

 

 

昨日の刺激的な夜から一転して、彼らの表情は引き締まっていた。しかし直前までは悲惨の一言だった。

 

 

「昨日のあれは夢だ。夢に違いない――――」

 

「切り替えよう、金丸。逃げちゃだめだ」

 

「うーん、すっきりした」

 

 

「外道過ぎる春市にビビった俺は悪くない」

 

「心配するな、狩場。俺もビビった。」

 

野手組が試合前のバスでこんな雰囲気だったが、球場に入った瞬間には切り替えられていたのは、片岡監督の指導の賜物だろう。

 

 

 

 

「今までにないくらい冷静だった…マウンドでもあれが出来れば」

 

「あれ、操られてた?」

 

 

「だめだ沢村。それは悪い方向の冷静さだ…」

 

 

投手組も、沢村を怒らせてはならないと誓っていた。

 

 

 

そして時間は元に戻り、ベンチ前。

 

 

 

 

円陣を組んだ御幸が皆に問いかける

 

 

「―――――――俺たちは」

 

 

始まる。ついに掛け声が始まる。一同はそう感じていた。

 

 

「王者なんかじゃねぇよな」

 

御幸は普段の時と同じ声色で、そういってのけた。

 

 

 

今の自分たちは王者にあらず。今の自分たちを指すとすればそれは

 

 

「挑戦者だ!!!!」

 

 

一同が全員その言葉を聞いて笑みをこぼす。予想をしていたわけではない。驚いてもいるはずだ。

 

だが、それは彼らが胸に感じていた言葉でもあった。だから、それは驚くに値しないのだ。

 

雄たけびを上げる一同。その雄たけびが心地よく感じる。

 

 

 

「誰より汗を流したのは!!」

 

 

"青道ッ!!!!”

 

 

「誰より涙を流したのは!!!」

 

 

 

"青道ッ!!!!!

 

 

 

「戦う準備はできているか!!!!」

 

 

 

 

うおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!

 

 

ベンチリメンバーだけではない。いつの間にか、スタンドの青道応援団、ベンチ入りできなかった選手たちの声も重なる。

 

 

「我が校の誇りを胸に!!!! 狙うは全国制覇のみッ!!!!」

 

 

天に向けて片腕を掲げ、その大望を口にする。

 

 

それは夢物語ではない。諦めなければ、進み続ければ、手が届く確かな現実。

 

 

 

「行くぞぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 

 

 

 

鳴り響く、掛け声と雄たけび。青道ナインは闘志を燃やし、整列場所へとかけていくのだった。

 

 

 

 


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