ペルソナ3 The second world with You   作:harbor

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五年の時を経て久々に投稿です。忘れられてるとしか思えませんが……
執筆に当たって読み返して当時の自分の文章力に絶望しつつどうにかこうにか書き方は寄せたつもり、です。
そもそもペルソナ3をしばらく触ってないのでストーリーラインを思い出すのにまた失踪する可能性も無くは無いですけどオチは五年前から決まっているのでどうにか完結させたいな、などと思う所存。


第十五夜

-side鳴上

 

今日も今日とて、タルタロスだ。

満月戦の後から、湊とジュンペーのコンビネーションスキルが異常に向上している。

今も、湊の剣撃に纏わせる形でアギを打つというトンデモ技で敵シャドウ5体を一掃してしまった。というかあれは本当にアギなのだろうか。マハラギオンとかではなかろうか。

前衛2人が随分と張り切っている上に、互いのカバーも完璧であるためやることの無い後衛二人――即ち俺と岳羽は、リビングでサッカーを観戦する中年の如く駄弁っていた。

 

「そういえば鳴上君って、どんな風にペルソナを発現したの?確か連れてきたの有里君だよね?」

 

「あぁ。ただ俺の場合は皆と違うというか……昔から、なんだ。」

 

「昔から、って……どういうこと?ポートアイランドの事件よりも後だよね?」

 

「それは多分。ただ物心着いた時には召喚出来てた……と言っても、不完全な形でだけどな。どうしても取りたい物で手の届かない物を取る時に腕だけ、とか。そんな感じで一部分だけ召喚してたみたいだ。ペルソナだと気付いたのは、こっちに来て有里に保護されてからだけど。」

 

 

無論、嘘だ。しかしながら2年後に八十稲羽で目覚めました、なんて言える訳もないので最初の晩に湊と打ち合わせた。高過ぎる適正値も、ペルソナの扱いの熟練度も、これならおそらく誤魔化せるだろう。ワイルドについてはどうするか、まだ考えていないが。基本はイザナギノオオカミ以外のペルソナを使うつもりもないので良しとする。

 

 

「あぁ、それで私とか順平より適正値が高いんだ……。ねぇ、鳴上君。」

 

「うん、何だ?」

 

聞きながら佇まいを改める岳羽。一体何を突っ込まれる事やら……

 

「鳴上君は、何のために戦ってるの?」

 

「何の為……?」

 

思いの外突っ込んだ質問が飛んできた。ドライそうに見える岳羽だが、意外と周りの事にも興味があるのか。

 

「私は、十年前の事件の真相が知りたいの。私のお父さん、あの事件の原因だってすごくバッシング受けてたから。そんな人じゃないって、信じたい。でも、鳴上君、あなたは?何のために戦ってるの?」

 

「何の為に、か……。最初は湊に請われたから、だけど……今は……そうだな。危険に突っ込んでいく友達を放っておけないから、かな?それと前に世話になった人達皆を護りたいんだ。」

 

「そっか。優しいんだね、鳴上君。普段静かだし表情乏しいから、もっと冷たい人かと思ってたや。」

 

優しいんだね、と言われて少し嬉しくなっていた俺の耳に聞き捨てならないワードが飛び込んできた。表情が……なんだと?

 

「表情乏しッ………湊ほどじゃ、ないだろ……。」

 

「あはは、そうかもね。」

 

心底可笑しそうに笑う岳羽。ここまであけすけに笑っている所を初めて見たかも知れない。彼女は、いつもどこか思い詰めたような顔をしていた。……きっとコミュニティがあれば、絆が深まったという声が何処からか聞こえただろうが……俺のコミュニティは、ここでは湊との物以外深まらないらしい。八十稲羽のみんなとの絆が薄まる様な気がしていたので、個人的な心情としてはありがたい限りである。それに……人との関わりは、コミュニティが全てではないと改めて感じられて。これはこれで、良い。

 

「ねぇ、岳羽、悠。人が戦ってる間に何良い雰囲気になってんの?」

 

「かーっ……やっぱ顔か?顔なのか??俺っち心がへこたれる事海溝の如しなんですケド……」

 

少々話し込みすぎたらしい。ふと気がつくと、首を直角に傾けた湊がジト目で(いつもジト目のような物だが)こちらを見ている。後ろのジュンペーは心なしか切なそうな顔だ。

 

「なっ……!?良い雰囲気なんかなってないし!顔じゃねーし!!」

 

「良い雰囲気……じゃないのか……?」

 

「えっ……?」

 

「そうか……」

 

「ちょっと鳴上君!?なんで凹んでんの!?」

 

「悠。そこまでに。岳羽がガチで焦ってる。」

 

少し冗談のつもりでからかってみたが……やり過ぎたらしい。湊は苦笑いしているし、ジュンペーも少し困った顔だ。岳羽は……

 

「ッ!?」

 

背中に、強烈な平手が飛んできた。見れば顔を真紅に染めた岳羽が腰の捻りの効いたポーズで右手を振り抜いていた。スカートが捲れ上がって……見えない。

 

特別課外活動部の皆との絆が、少し深まった気がする。


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