ペルソナ3 The second world with You   作:harbor

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第十四夜

―side有里

 

車両が動くの、忘れてた訳じゃないんだよ?

余裕持って動いてたし、ちゃんと。

 

今回のイレギュラーは二つ。

まず、プリーステスの吸魔の威力。

まさか魔法を撃てなくなるまで持っていかれるとは思ってなかった。

それと、もう一つ。

プリーステスが、車両本来の性能を遥かに超えたスピードで車両を動かしていたこと。

あくまでも体感だけど、前週の倍は出てたね。

お陰で僕、死んじゃ――

 

 

『余計なこと考えてる場合?あと300m切ってるよ?』

 

いやぁ、だって動けないし。もうどうでもいいかなって…

 

『………あーもう!さっさとボクを呼べよ!!止めてあげるから!!』

 

いや、だから動けない…

 

『カード式召喚でいいよ!!早く!!』

 

 

はいはい…

 

「ファル…ロス………頼む…」

 

 

 

 

―sideリセット

 

有里が顕現させたカードを砕いた。

その瞬間、有り余る力の現れか、それとも慣れない召喚による力の暴走か、周囲に強烈な衝撃波を生み出した。

衝撃波は4人を例外なく襲い、4人の意識は、そこで途絶えた。

 

『………やっちった。』

 

現れたタナトス(※ファルロス)は呟くと、運転席へ駆け込み、思いきりブレーキレバーを引いた。

ブレーキ音が鳴り響く。

速度は落ちているが、止まるには時間がかかる。

 

『………やれやれ。仕方ないなぁ。』

 

言うや否や、タナトスは身を翻して車両の前に立ち、押し返す。

直後は変化がなかったが、すぐに効果が現れ、車両は人一人分前の車両とのの隙間を空けて停止した。

 

『危ない危ない。さて、このお馬鹿さんを起こさなきゃ…』

 

 

 

 

 

 

 

─side有里

 

「痛い痛い痛い痛い痛い!!」

 

しこたま叩かれて目が覚めた。

手の主はタナトスだった。

 

「あー…止められたんだね?」

『うん、なんとか。ほら、早く先輩に連絡いれないと、心配してるよ?』

 

「そうだね。………ありがと、ファルロス。」

 

『どういたしまして。疲れちゃったから、寝るよ…』

 

あ、消えた。

 

「………こちら有里。桐条先輩、聞こえますか?」

 

{有里!!無事か!?}

 

「ええ、なんとか。帰投したいんですけど、三人気絶してて…。どうしましょ?」

 

{………少し、待っていろ。迎えに行く。}

 

 

 

 

─side岳羽

 

眩しい光で目が覚めた。

うーん、良く寝た。こんなにスッキリしてるの、久し振りかも。やっぱり遅くまで寝ていられる日曜日も良いわね。

 

「………あれ?私、なんで制服で……ッ!?」

 

昨日は巨大シャドウと戦って、モノレール止まらなくて、それで…

 

「私…死んじゃった…ワケじゃないよね…?」

 

体の感覚はあるし、足もついてる。腕も、首も、お腹も、胸は……

 

「ってそうじゃなくて!」

 

悲しいこと考えかけた。

とりあえず、降りてみよ…

 

 

 

 

 

 

 

 

─sideリセット

 

気絶組最初の起床者は、岳羽だった。

階段を下りてきた岳羽に、有里が朝ごはんを作りながら、声を掛ける。

 

 

「おはよ、岳羽。良く眠れた?」

 

「うん、まぁまぁ。ねえ有里君、昨日さ…」

 

不安げに問う岳羽。

 

「え、昨日?あぁ、夜の事?」

 

対して有里はいたって普通である。

 

「うん、そう…。一体、どうなったの?」

 

「昨夜はその…した後に、岳羽、疲れたみたいでそのまま寝ちゃっ…」

 

訂正。ニヤニヤと厭らしい笑みを浮かべていた。

 

「蹴られたいの?」

 

「ごめんごめん。結論から言うと、なんとかモノレールは止まった。んで、僕と真田先輩と桐条先輩で鳴上と順平と岳羽を運んで帰ったんだよ。」

 

「そっか…ごめんね、迷惑かけて。」

 

しおらしく謝る岳羽。しかし…

 

「謝らなくていい。僕としては岳羽が気絶しててラッキーだったよ。いろいろ堪能できたし。」

 

有里のこの言葉に、岳羽、激昂。

 

「この…………馬鹿!!」

 

 

 

 

後に起きてきた鳴上はこう語った。

 

「いつもは料理を失敗しない有里が、珍しくスクランブルエッグを焦がしてたんだが…何かあったんだろうか?」


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