ペルソナ3 The second world with You   作:harbor

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少々長くなったので、早目に投稿。


第十三夜

「コレ…人、だよな?」

 

「あぁ。これが象徴化、か。悪趣味だな。」

 

確認するように呟く伊織。周囲には、知らなければ人だとはわかるはずもない、艶のある光沢を持った棺がいくつか立っている。

流石に終電近くともあり、決して人が多い訳ではなさそうだった。

 

「この数で助かったね。もし満員だったら…」

「弓は使えないよねー…。」

 

「俺達の両手剣も無理だろうな。」

 

「まぁ、ラッキーということで。……ん?」

 

周囲を見回していた有里だったが、異変に気づく。

岳羽の顔が、真っ青なのである。

よくよく見ると、膝も笑っている。

 

(うーん、どうしよ。)

 

前回は余裕がなかったためか気づく事もなかったが、今回は違う。

二週目の余裕のせいか、強くなったシャドウとの戦闘のせいか、有里は以前より仲間の様子に留意するようになっていた。

 

(まぁ、鳴上に任せるか…)

 

ただし、基本的な思考パターンは変わらない。

面倒事は押し付けたもの勝ち、である。

 

「よし順平、行こう。」

 

「おっ?はいよ。」

 

斯くして二人は警戒しつつ歩き出す。

ただし有里は、鳴上にアイコンタクトを出しながら。

 

(有里がかチラチラこっちを…?岳羽がどうかしたのか…?)

 

気になった鳴上は岳羽を見、全てを察した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しっかしまー、歯応えないな?」

 

「うん、確かに。タルタロスのシャドウよりは殺りやすいね。」

 

「有里…?やるの字が違うような気がしたんだが気のせいか…?」

 

「大丈夫大丈夫。っと、また来たね…!」

 

「おっしゃ、めたんこにしてやる!」

 

刹那、シャドウは臆したかのように身を翻し、車両の奥へ進んで行く。

 

「追うぞ、湊!」

 

{待て!あのシャドウだけが敵前逃亡とは、不自然だ。有里、どう思う?}

 

「…まぁ、罠ですよね。」

 

{私もそう思う。だから、追うのは─}

 

途端に不機嫌そうになる伊織。

しかし、有里は遮るようにニヤニヤと笑いながら、

 

「まぁ、今回は前後衛分けてますし、敢えて乗るのもありでしょ。鳴上、岳羽、後ろに気を付けながらサポートよろしくねっ!」

 

{な、なぁっ!?}

 

「えっ、ちょっ、ば、バカじゃないの!?てかバッカじゃないの!?」

 

「………任せろ(`・ω・´)」

 

桐条といえどやはり女性。動揺が見られる。同様に岳羽も狼狽しているが、相変わらずのこの男。

この状況下でこの返しができるあたり、得体が知れない。

と、後衛が混乱している間に前衛は駆けていく。

 

「岳羽、前に行ってくれ!」

 

「えっ!?う、うん!」

 

駆け出す二人。

普通ならば弓は後ろに配置するものだが、罠と分かっているものに突撃するのである。

十中八九、後ろからの追撃が来ると見てのこの配置である。

後ろからの攻撃で足が止まろうとも、弓を使う岳羽ならば仮に前衛が挟まれていても対応ができる。

などとぼんやり考えながら走る鳴上。ちなみにたまに後ろ走りをしている。そして。

 

 

「!来たか。岳羽、止まれ!背中を頼む!」

 

想定通りの足止めである。

 

{敵4体!的確に対処してくれ!}

 

「岳羽は、前衛どもの後ろを見ててくれ。こいつらは俺が散らす。」

 

「わ、わかった!危なくなったら言って?」

 

「気遣いありがとう。だが、終わった。行こう。」

 

「…………へ?」

 

一閃、である。

スキル名、空間殺法。

顕現させたイザナギノオオカミを戻しつつ、鳴上は微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!止まった、ね。順平、前お願い。」

 

「お、おう…って、え!?囲まれてんじゃん!?」

返事をしようと振り返った伊織の目に飛び込んだ複数のシャドウ。慌てて前を見ると、いつの間にか三体に増えている。あせる伊織。だが。

 

「大丈夫、僕と順平でならなんとでもなるよ。」

 

有里の自信に溢れた声。

幾度となく羨んだ人間から伝わってくる、大きな信頼。

一瞬呆気にとられたが、すぐにいつもの道化で返す。

 

「……おいおい、俺っち調子に乗るぞ?」

 

「いいよ、乗って。ミスはカバーするよ?」

 

「……へへっ。よっしゃ、いっくぜ!?」

 

そこに嫉妬する少年は既におらず。

ただ、親友とも言える男のためにその剣を振るう、戦士がそこに居た。

 

「うん。………頼むよ、相棒!!」

 

真に信頼しあった二人の前に、敵は為す術もなく散っていく。

 

 

「伊織、有里、だいじょ……余裕か、お前ら。」

 

「もう、心配かけないでよね…」

 

{全くだ。さて、その先に巨大なシャドウの反応がある。状態を万全にして、進んでくれ。}

 

「万全に、ね…。皆、大丈夫?」

 

「「「おう!!」」」

 

「よし、行こう。」

 

手を掛け、開いた扉の先には…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんかスゴい。

一言で言えば、そうなる。

 

基本的には、白黒で塗り分けられ、紅い仮面で目元を隠した女性だ。

ただ、格好がよくない。

服など着てないし、膝をたて、開いて座っている。

怪しいビデオの人のような格好で、巨大シャドウ─プリーステスは佇んでいた。

 

「こ、これは…」

 

「ロマン、だな。」

 

静かに呟いた鳴上の後頭部に蹴りが入る。

 

「ば、バカども!!見とれてないで構えてよ!!」

蹴りの主はもちろん岳羽。真っ赤である。

 

「鳴上、順平、前屈みにならなくていいから。早く構えて?来るよ?来ちゃうよ?」

 

「み、湊、お前ほんとに男か…?」

 

「だってシャドウに欲情なんて…ねぇ?」

 

「欲情とか言うなばか!!」

 

二発目の蹴り。今度はローキックである。

 

と。

こちらに気付いたプリーステスは、前頭車両全体に広がる髪を蠢かせ、氷結魔法を放つ。

漫才を繰り広げていたとはいえ、戦闘中。

皆、警戒は解いていない。

……解いていなかったのだが。

 

 

「痛ぇッ!?」

 

「キャッ!?」

 

「うおっ!?」

 

「あれま。」

 

何せ、巨大なシャドウである。

必然的に攻撃範囲が広くなる。

見誤った四人は、直撃とは言わないまでも、ダメージを負った。

ただし…

 

「嘘…だろ?かすっただけでこの威力かよ…」

氷に耐性のある鳴上と有里以外の二人は既にグロッキーである。

 

「…ピクシー!メディラマ!」

 

有里が回復させるが…

 

シャドウの髪が発光し、突如有里の体を虚脱感が襲う。

 

(!?これは…吸魔か!?全部持ってかれた!?)

 

「ごめん、皆…僕もう魔法使えない…」

 

「なっ!?いまの光か!?」

 

「うん…全員が食らう前に蹴りつけないと…。順平、行くよ!」

 

「了解!」

 

二人は、それぞれ得物を構えて走っていく。

 

一振り、一振り確実に体力を削っていく。

 

「岳羽、俺たちは魔法で援護しよう!」

 

「了解!ペルソナ!ガルーラ!!」

 

「オルトロス!!アギラオ!!」

 

炎は風に煽られ、巨大になってシャドウを襲う。

悶えるシャドウ。しかし、その髪が二ヶ所、光ったと思うと…

 

「ぐっ!?」

 

「あっ…!?」

 

岳羽、鳴上の体も虚脱感で満たされる。

「すまん、有里…やられた…」

 

「えぇっ!?」

 

振り向いた有里。

その隙をシャドウが見逃すはずもなく。

 

「ぐぁっ!?」

 

背中に一撃。

髪を鞭のように動かし、一閃である。

 

「湊!?」

 

「はは…やっばい…順平、決めちゃってよ…」

「……くそッ!!早く復活しろよ!?悠!来てくれ!」

 

「あぁ!!決めるぞ!」

 

刀を振り抜く二人。

両腕を落とされたシャドウは、髪を振り回して応戦する。

逃げ場もなく、四人は地に臥せった。

 

{お、おい!大丈夫か、皆!!}

 

「く、そ…」

 

「ねぇ、順平…」

 

「あ…?」

 

「アギ、撃って…終わらせてくれ…」

 

「わかった…」

 

ゆっくり、ゆっくりと召喚器に手を掛け、、引き金を引く伊織。

それを尻目に、止めを差そうと魔力を練り上げるプリーステス。

膨れ上がったそれが、爆発する────

 

 

 

「ヘルメス!!!!!!!」

 

 

ことは、なかった。

練り上げられた魔力を呑み込み、なお貪欲にシャドウを襲うその火焔は、まさしく神々を焼いた炎そのもので。

 

焼かれたシャドウは跡形もなく消え去った。

 

「終わった…のか?」

 

{ダメだ!!車両が止まらない!!ブレーキレバーを引いてくれ!!}

 

「なっ!?」

 

四人に、そんな余力は残されていなかった。

静かに涙を流す岳羽。

うつむく伊織。

少しでも近付こうと這う鳴上。

 

そして…。

 

 

 

 

 

 

眼前に前の車両が写り…

 

 

 

 

 

四人の意識は、そこで途絶えた。




戦闘描写は…苦手です…

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