東方大魔王伝   作:黒太陽

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第8話 不死鳥

その日は雨だった、それもただの雨ではない雷を伴った豪雨が幻想郷に降り続いていた

 

「忌々しいわね……」

 

窓から外を覗くレミリアは呟く、彼女は吸血鬼ゆえに弱点が多い、雨……流水もその1つだ

 

(パーティーの次の日に豪雨なんて……せっかくの気分が台無しよ……昨日じゃなかったのが幸いね)

 

カーテンを閉めたレミリアは倦怠感を纏わせ咲夜を呼ぶ

 

「こんな日に誰も来ないでしょう、美鈴を中に入れて」

 

「わかりましたお嬢様」

 

咲夜が部屋を出たのを見てベッドに横たわる

 

(暇ね……何か面白い事が起きないかしら……)

 

その数時間後、彼女の希望は半分現実になる

 

 

 

 

「ねぇバーン、貴方八雲紫を探しているんでしょ?探さなくて良いの?」

 

フランの制御を見ているバーンにパチュリーが聞いた、今日はチルノも大妖精も魔理沙も居ない、今図書館には4人しか居ない

 

「居場所が分かっているならな、居場所の分からぬ者を宛もなく探す程余は急いではおらん、それに余を呼んだのが八雲紫ならその内現れるだろう」

 

「それもそうね、私としても貴方には居て欲しいし」

 

「あたしもあたしもー!」

 

手を挙げ跳ねるフラン

 

「フッ……」

 

思わず笑みが浮かぶ

 

「フラン、制御の完成はもうすぐだ、続けるぞ」

 

「はーい!」

 

そしてまた修業が再開される、そこへ

 

「バーンさん!暇なので組手をしてもらえませんか?」

 

暇を持て余した美鈴が図書館へやってくる

 

「良かろう、余も少し退屈していた所だ」

 

「ありがとうございます!鍛練しないと体が鈍っちゃうんですよねぇ」

 

ストレッチを始める美鈴にバーンは告げた

 

「構えるのと構えないのではどちらがよい?」

 

本気か否かの選択を与える

 

「えっ!?あ、いやー……組手にならないので構えは無しでお願いします!」

 

あたふたと慌てる美鈴

 

「フッ……わかった」

 

意地の悪い選択を与えたバーンは微笑んだ

 

 

 

 

 

「ハッ!」

 

美鈴の鋭い拳がバーンの顔を狙う

 

「……」

 

拳はほんの少し体を傾けたバーンの顔を避け空を切る

 

「イヤァ!」

 

即座に反転した肘打ちが胴に向かう

 

「……」

 

肘打ちはバーンの手によって止められる

 

「ハァッ!」

 

美鈴の胴回し回転蹴り

 

「フン……」

 

蹴りを掴んだバーンはそのまま上へ弾く様に投げる

 

「くっ……」

 

回転しながら着地し直ぐ様構える

 

「……ふぅー、ありがとうございました」

 

構えを解いた美鈴は礼を述べる

 

「動きは良くなった、鍛練に励め」

 

「ハイ!ありがとうございました!」

 

お辞儀をして改めて礼を述べる

 

「いやー良い運動になりました、所で気になったんですが私はバーンさんの世界ではどれ位の強さなんですか?」

 

「マァムと言う武道家が居る、技量で言えば同じ程だ、弾幕も加味すれば上の下と言った所か……」

 

「え?私で上の下ですか?」

 

予想外の高い評価に驚く美鈴

 

「余の世界でも強い力を持つものはそう多くない、お前程の力を持つ者は少ないのだ」

 

「私でそれならお嬢様なんかは最上位ですか?」

 

「そうでもない、幻想郷の力を持つ者は能力で大きく差がでる、一概には言えん、お前は他の者と違って余の世界に近い力を持っている、それ故だ」

 

「はぁ……そうなんですか」

 

そんなささやかな疑問について話している時にパチュリーが割って入った

 

「ねぇ?上から凄い力を感じない?誰か来たんじゃないかしら?」

 

「確かにな……激しく力を暴れさせている」

 

「ちょっと様子を見てきます」

 

「余も行こう」

 

「あたしも行く!」

 

謎の来訪者に興味を持ったバーンは美鈴らと共に図書館から出た

 

 

 

 

 

 

「バーン!出て来いコラァ!」

 

少女は怒り喚き散らす、抑えようともしないその力をたぎらせ私怨と言える怨敵を呼ぶ

 

「五月蝿いわよ侵入者!……妹紅じゃない、いくら貴方でもこれは失礼よ?」

 

先に応対したのはレミリアと咲夜、雨のせいで気が立っている

 

「ここにバーンってのが居るんだろ?連れてこい!」

 

レミリアの事など気にも止めず命令する妹紅にレミリアの怒気が更に高まる

 

「……消えなさい……ぶっとばされないうちにね……」

 

中指を立ててお帰りを促す

 

「いいから連れてこい!」

 

聞く耳を持たない妹紅、完全に怒りで我を忘れている

 

「そう……なら仕方ないわね……月も出てないけど、本気で殺すわよ?」

 

臨戦態勢に入ったレミリア、飛び出すその時

 

「何事だ?」

 

幸か不幸かバーンがやってくる

 

「お前かバーンってのは!」

 

「そうだが……なんだお前は?」

 

「勝負だ!表に出ろ!」

 

バーンの問いに答えず外に出る事を促す、そこに……

 

「あたしが遊ぶ!」

 

フランが妹紅に駆け寄る

 

「引っ込んでろ!」

 

「フラン!」

 

レミリアが叫んだ時には遅かった、フランに妖術を込めた拳を打ち込みフランを気絶させる

 

「……外で待つ、逃げるなよ」

 

玄関を明け外へ出ていく

 

「あいつ……!!」

 

フランに駆け寄ったレミリアは怒りを露に歯噛みする、外は大雨、レミリアにはどうする事も出来ない

 

「レミリア……余に任せろ」

 

そう言うとバーンも外へ出ていく

 

「フランは大丈夫ね、ここはバーンに任せましょうレミィ」

 

「バーンさん……怒ってましたね……」

 

「あんなに怒るバーン様初めてです……お嬢様どうされますか?」

 

「フランを寝かせたら私も見に行くわ、傘を用意して」

 

「わかりました、すぐ用意します」

 

 

 

 

 

 

 

 

「余がお前に何かをしたか?」

 

雨の降るなか対峙したバーンは疑問を聞く

 

「何にもしてねぇさ……ただ……気に入らないんだよ!」

 

雨の冷たさなど感じないほどその怒りは高まっている

 

「奇遇だ……余もお前が気に入らなかったのだ、報いは受けて貰う」

 

「やってみやがれ!」

 

大量の弾幕を放つと同時に距離を詰める

 

「蓬莱「瑞江浦嶋子と五色の瑞亀」!!」

 

近距離から放たれた全方位を埋め尽くす弾幕

 

「ハァッ!」

 

バーンから放たれた五色の全方位弾幕が妹紅の弾幕を相殺し、なおも放たれる弾幕が妹紅を襲う

 

「オラァ!」

 

「!?……ぬぅ!」

 

弾幕を食らいながら突撃してきた妹紅の強烈な拳を受けたバーンは大きく後退する

 

(怯まず来るとはな……)

 

「まだまだぁ!」

 

後退したバーンに追撃の弾幕を放つ妹紅

 

「滅罪「正直者の死」!!」

 

放射線状に放たれた弾幕がバーンの逃げ場を狭める、そこに薙ぎ払う様にビームを放つ

 

「魔符「闘魔滅砕砲」」

 

バーンの放つ暗黒闘気が弾幕を歪めビームをはね除け妹紅の左半身に直撃する

 

「つあっ!?……この野郎!!」

 

痛みに怯む事なく再び弾幕を放つ、既に怒りは痛みを越えていた

 

弾幕を張り、近接戦闘を交えながらバーンに攻撃を続ける、自身のダメージを省みない戦いにバーンは数度の攻撃を受けながら戦いは更に熾烈を増す

 

「蓬莱「凱風快晴-フジヤマヴォルケイノ-」!!」

 

バーンを爆発する大量の弾幕が襲う

 

「イオナズン!」

 

それを更なる爆発が飲み込み広がっていく

 

「ウラァ!!」

 

爆発を突っ切って来た妹紅の拳バーンに届く寸前で払われる

 

「ぐっ!?」

 

裏拳で弾き飛ばされるもすぐ立ち上がりまた向かって行く

 

「……負けるかぁ!」

 

何度も向かってくる妹紅にバーンは少しずつ印象が変化していく

 

(折れぬ意思……強いな)

 

 

「うおおおお!」

 

雄叫びをあげ弾幕を放つ、大小混じらせた弾幕はバーンに弾かれ、相殺されるが構わず打ち続ける

 

「メラミ」

 

バーンの放った巨大な火球が弾幕を押し退け妹紅に直撃する

 

「ギギギギ……!?……ッラァ!!」

 

火球は壊され空中に霧散する

 

(加減したとは言え余のメラミを破るとは……)

 

妹紅の強さを認め、更に戦いは続く

 

 

「はぁ……はぁ……クソォ!!」

 

 

そして激しい応酬の末、遂に妹紅に疲れが見え始める、体はボロボロ、特に左半身に酷いダメージを負っており常人なら、いや妖怪でさえとっくに倒れている傷を負っている

 

それでも体を動かすのは怒りに加えその強靭な意思、勝つと言う気概が妹紅をここまで奮い立たせる

 

「まだだ……まだまだぁ!」

 

妹紅は飛んだ、雨の降りしきる上空に飛んだ妹紅は全ての力を集中させる

 

「パゼストバイフェニックス!!」

 

宣言と同時に妹紅の体を鳥を模した炎が纏う

 

「不死鳥……」

 

その姿を見たバーンは呟いた、妹紅の纏う炎は永遠を生きるとされる伝説の火の鳥を連想させた、妹紅の纏う不死鳥は雨を蒸発させ水蒸気が周りを覆う

 

 

「これで終わらせてやる!」

 

 

不死鳥の羽を羽ばたかせ妹紅は最後のスペルの宣言をした

 

 

 

 

「不死「火の鳥-鳳翼天翔-」!!」

 

 

 

 

不死鳥と共にバーンに炎翼を羽ばたかせ翔る、その炎は生命を全て焼き付くさんとする勢いで燃え上がり、天を翔た

 

 

「その気概と美しき不死鳥に余も応えよう!」

 

 

手に魔力を集中させる、高まった火の魔力がバーンの制止を振り切り炎上する

 

 

「……これが……余のメラゾーマ、その想像を絶する威力と優雅なる姿から太古より魔界ではこう呼ぶ……」

 

 

燃えるその手をかざし、その極炎を放つ

 

 

 

 

「カイザーフェニックス!!」

 

 

 

 

凄まじい豪炎と共にそれは姿を現す、フェニックス、強大な火の魔力が自然と鳥の形を成し全てを焼き払う魔炎となる

 

 

不死鳥とフェニックス、奇しくも二人の最も得意とする属性は火でありそして模した姿も同じだった

 

 

 

ズドォ!!

 

 

 

轟音をあげ2体のフェニックスはぶつかり合う、その熱は周りに広がり雨を瞬時に蒸発させるドームを作るほどの熱量

 

「グギギギ……!!ま……けるかぁ!!」

 

力を込め押し込む、反動で全身から血が吹き出て炎によって蒸発する、それでも力は一切緩めない

 

「……ぬぅ!?」

 

バーンも妹紅の予想以上の力に気を抜いていない、一瞬でも緩めれば押しきられてしまうから

 

「うおお……お……」

 

「……くっ!?」

 

 

 

 

 

一瞬、時が止まったかの様に2体の不死鳥は動きを止めた

 

 

 

 

「ウオオオオ!!」

 

 

 

 

バーンのカイザーフェニックスを破り妹紅のフェニックスがバーンに向かい突進する

 

「…………か……ぁ……」

 

だがその不死鳥がバーンに届く事は無かった……炎はみるみる小さくなりバーンを目の前にして地面に落ちてしまう

 

「見事だ……その力、その気概に尊敬を感じる程にな」

 

目の前に倒れる妹紅に賛辞を贈る、聞こえてはいないのは知っているが言わずにはいられなかった

 

「!!」

 

「……る……か……」

 

バーンが目を見開いて見たのは立ち上がる妹紅の姿、虚ろな目で足を引きずり血を滴らせながら近づいてくる

 

「……ま……け……」

 

置くように打たれた拳をバーンは避けなかった、打った妹紅はその場に崩れ落ち、もう立ち上がる事はなかった、そして終結を待っていたかの様に雨は止み日が射して来た……

 

 

 

「やり過ぎよ……まぁこいつならいくらやっても大丈夫だけど……」

 

遠くで観戦していたレミリア達がやってくる

 

「バーン、貴方初めて苦戦したんじゃない?」

 

「確かにな……魔力が抑えられたとは言え真っ向から余のカイザーフェニックスを破ったのはこやつが初めてだ」

 

「鬼気迫るって感じでしたもんね……一体何が原因何でしょうかね?」

 

「こやつから聞けば良かろう、回復させるが良いかレミリア?」

 

「ええ、これだけやられたら充分過ぎるわ」

 

レミリアの了承を得たバーンは妹紅にベホマを掛ける

 

「……効かないわね」

 

ベホマは妹紅の傷を癒す事なく癒しの光を弾いた

 

「……多分、蓬莱人だからじゃないかしら?」

 

「蓬莱の薬を飲んだ不老不死か……」

 

「なら永遠亭に連れて行ったら良いのよ、元々こいつは永遠亭の周りの竹林に住んでるんだから丁度良いわ」

 

「余もそこに用がある、ついでに済ませて来よう……場所は分かる、今日には帰らぬかも知れん、留守と……フランは任せた」

 

そう言うと妹紅を抱き抱え飛んでいった

 

「ハイハイ任されました……」

 

「嬉しそうねレミィ」

 

「まぁね……バーンがフランの為に怒ったのが……ね」

 

雨も止み、暇も解消された彼女は笑顔で紅魔館へ戻っていった

 

 

 

 

 

 

「はーい!どちら様ですかー?」

 

来客に鈴仙は永遠亭の戸を開ける

 

「八意永琳は居るか?」

 

「あっバーンさん……妹紅さん!?大丈夫ですか!!」

 

バーンを確認した鈴仙は直ぐにボロボロの妹紅に気づき声を荒げる

 

「八意永琳は居るか?」

 

「あっ!すいません、案内します此方へどうぞ」

 

鈴仙に早足で先導され医務室へ向かう

 

「師匠!妹紅さんが重体です!」

 

「やっぱりこうなったわね……その傷じゃ治すより1回殺した方が早いわよ?」

 

残酷な事を言っている様だが妹紅は蓬莱の薬を飲んだ不老不死、死ねば肉体は滅ぶが魂ある限り新しい肉体を作り甦る、その姿はまさに不死鳥のそれと同じ

 

「そういう訳にはいかん、これは報い、噛み締めて貰わねばならん」

 

「へぇ……貴方ってそうゆう人なのね、わかったわ、勘違いだけど妹紅を止めなかった責任もあるしね……そこへ寝かせて」

 

寝かせた妹紅を鈴仙と共に治療を始めた

 

 

 

「……」

 

居間に通されたバーンは出されたお茶に手をつけず、その和風の永遠亭の内装を眺めている

 

(どう表現するべきか……趣はあるが……)

 

和を感じていたバーンの部屋から見える竹林が風によって揺れるのをバーンは見逃さなかった

 

(熱心な天狗よ……雨にも負けず……な)

 

笑みを浮かべたバーンは庭への戸を閉めた

 

「あやや……気付かれちゃいましたか……」

 

カメラを構えていた天狗は残念そうに呟いた

 

 

 

 

 

「応急処置は終わったわ、その内目を覚ますでしょう」

 

処置を終えた永琳が居間へ入ってくる

 

「そうか……さて……」

 

「そうね……まず貴方と私の関係、そこから行きましょうか」

 

座った永琳は一呼吸置いて話始めた

 

「私が貴方を知っているのは貴方の体ををその状態にしたのが私だからよ」

 

「何?お前が鬼眼王を……だと?」

 

「ええ、方法は企業秘密よ、こう見えて私は貴方より長生きしてるのよ、貴方の知らない事を知っている……それだけよ」

 

(一体何者だ……ただの月人では無い)

 

「肉体に制限を掛けたのも私、それなりに強く掛けたんだけど貴方には緩すぎたようね、貴方の力の全容を把握出来なかったからしょうがないんだけどね」

 

「……では魔力は八雲紫か?」

 

「そうよ、貴方が眠っている間にね……勝手な事をして悪かったわ、肉体だけ解きましょうか?」

 

「いや良い、当初は忌々しかったが今となっては心地好いのでな」

 

「そう……」

 

「明日また来る、その時には奴も目覚めているだろう……」

 

立ち去ろうとするバーンに

 

「貴方を連れてきた目的知りたくないの?」

 

永琳が尋ねる

 

「お前が話さぬ事は分かっている、それにいずれ分かる事なのだろう?」

 

「お見通しね……じゃあ幻想郷の暮らしを楽しんでね」

 

バーンが居間を出よう戸に手をかけたその時、その戸は触れる事無く開いた

 

「永琳いるのぉ?……おお!?バーン!どうした?囲碁を習いに来たの?」

 

輝夜と鉢合わせる

 

「いや……今帰る所だ」

 

「まぁまぁそう言わず、なんなら泊まって行けば良い!さぁ一緒に神の一手を極めるわよ!」

 

(レミリア達には言ってある……まぁ良いか)

 

バーンは永遠亭に泊まる事にした

 

 

 

 

 

 

 

そしてその日の夜、輝夜の相手を終えたバーンは永遠亭の庭で立っていた

 

「……起きたか」

 

月に照らされバーンに寄る者を映し出す

 

「あ……いやー……そのよ……」

 

映されたのは妹紅、包帯だらけで歩行も満足に行えない体でやって来ていた

 

「輝夜達から聞いたよ……あいつが負けたのはチェスだって……私の勘違いで迷惑掛けちまった……悪かった……」

 

そして謝罪を述べる

 

「余に謝る必要は無い、謝るなら紅魔館の者に謝るのだな」

 

「わかってる!明日必ず謝りに行くさ!」

 

「……聞かせて貰おう、何故周りが見えぬ程の怒りを持って余と戦ったのかを」

 

バーンの問いに口ごもった妹紅だがバーンの瞳の圧に観念して話始めた

 

「私と輝夜はさ、私の一方的な理由で殺し合いをしてるんだ、でもあいつは強くてさ……私が勝つ事もあるけどあいつが本気を出した時はいつも勝てなかった……」

 

うつむきながら喋る妹紅は続ける

 

「越えたかったんだよ……本気のあいつをさ……お前の歓迎会から帰ったあいつの落ち込み様で本気だったって分かった、だから信じられなかった……本気のあいつが負けるなんて事が……」

 

「まぁ……勘違いだったんだけどな!」

 

そう言うと苦笑する

 

「生き甲斐を奪われた様な気がしたんだ……だから頭に血が昇り過ぎてさ……本当に迷惑を掛けた……謝って済む事じゃ無いんだけどさ……」

 

「……」

 

何も返してこないバーンに妹紅は非難を覚悟していた

 

そして妹紅の理由を聞き終えてバーンはその口を開いた

 

「……名は何と言う?」

 

「えっ!?私か?」

 

「そうだ、お前の名は何と言うのだ?」

 

非難では無かった、予期せぬ質問に妹紅は慌てる

 

「……妹紅だ……藤原妹紅……」

 

「藤原妹紅……か、妹紅よ今日はもう休め、明日余が紅魔館へ連れて行ってやろう、お前の処断はレミリア達に任せるつもりなのでな」

 

そう言うとバーンは永遠亭に入って行った

 

「バーンか……強かったな……悔しいけど完敗だ……」

 

空を見上げ呟く妹紅

 

「勝ちたかったなぁ……」

 

小さく漏らしたその呟きを聞いたのは月だけだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にすまなかった!」

 

翌日、バーンに連れられて紅魔館に来た妹紅は集められた皆の前で深く謝罪した

 

「あたしは大丈夫だよ!」

 

殴られた事など全く気にしていないフランは笑う

 

「だから今度はあたしと遊んでね!」

 

「ああ……わかった!」

 

フランの許しの笑顔に微笑み返す

 

「私も許してあげるわ、お陰で良いものが見れたしね」

 

「ありがとうレミリア」

 

その会話を割って、来ていたチルノが声を荒げた

 

「あたいの友達をぶったんだから土下座よ土下座!せーいを見せて欲しいわせーいを!」

 

「お前は関係無いだろ……」

 

「なんだとー!」

 

呆れる妹紅に怒るチルノ

 

「あら、良いこと言うわねチルノ!私も誠意を見せて欲しいわ、誠意を……ね?」

 

邪悪な笑みを浮かべたレミリア妹紅を見る

 

「えっ!?おい……マジで?」

 

「……冗談よ、まぁフランのお願いを聞くぐらいはやってもらいましょうか」

 

「あ、ああ!それぐらいなら御安い御用だ!」

 

「ですって、フランどうする?」

 

「んー?あたしさっき約束したからチルノが決めて良いよ!」

 

「あたい?んーそうねーやっぱり土下……」

 

「土下座は無しで頼む……」

 

「じゃあんたあたいの子分ね!」

 

「えっ!?」

 

「何?イヤなの?じゃあやっぱり土下……」

 

「よろしく頼むぜ親分!」

 

妹紅が仲間になった

 

 

 

 

 

 

「来ると思ってた……待ってたわバーン」

 

「レミリア……」

 

その日の夜、既に日課になっているバルコニーでの一時、今日は先客が居た様だ

 

「……」

 

「……」

 

お互いに何も話さず緩やかに時は過ぎる、虫の奏でる音色と月光が二人の時に彩りを与える

 

「……花は育ってるみたいね」

 

「……ああ」

 

一言、そう呟きあった二人はお互いに微笑み、バルコニーを後にした……

 

 

 

 

それは脆い花、些細な事で枯れるし摘まれてしまう、その花をどうするかは彼次第、そして彼の荒野にまた1輪……




書けました……レミリアはろーがふーふーけんは使いませんし自爆でやられたりしませんよ?

妹紅のパゼストバイフェニックスと鳳翼天翔の使い方を変えています、何故って?こうしたかったんです……すいません……

永琳については何も言うことはありません、天才なので!

次回から……どうしようかな……

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