東方大魔王伝   作:黒太陽

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第31話 死を賭して

「な、なんだ!?地鳴りに私でもわかる魔力の次はまた魔力かよ!?」

 

走る少女は感じた魔力に立ち止まる

 

「!?ヤバッ!!」

 

すぐに木に隠れた、木の前を悪魔が通り過ぎて行く

 

(立ち止まらなかったら見つかってたな……運が良い……幸運がまだ続いてるって事か……)

 

悪魔をやり過ごした少女は空を見上げる

 

(そういえば霧は晴れたんだったな……太陽と月があんなに近くに……バカッ!!そんな事考えてる暇なんて無いだろ!)

 

周囲を警戒しながらまた走り出す

 

(この魔力はバーンの魔力だ!何が起きてるのか想像もつかないけどこの魔力を辿ればそこにきっとバーンは……)

 

少女は走る、目的を果たす為に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鬼眼王

 

バーンの持つ力の源、鬼眼の力を開放し肉体に上乗せした姿、それは人の形を棄て魔なる獣、魔獣となる事を意味する

 

 

力は上がり魔力も高まる、それも少々どころではない圧倒的に!

 

 

代わりに代償は人の形を棄てる事、そして……

 

 

友との……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……!?」

 

猛烈な魔力の波動に顔をしかめる紫、攻撃の為の波動ではないのに浴びるだけで痛々しい

 

(先に博麗大結界を強化して正解だったわね……一時的な強化だけど何とかあの二人の力にも耐えれた、でも……)

 

バーンを見つめながら瞳を悲しくさせる

 

(すぐにあの姿にならなかったのはおそらく永琳でも戻せないから……だから限界までならずあんな悲しい目を……友と歩む道を捨てたくなかった為に……)

 

(最低ね私は……利用する事だけを考えて結果的に幻想郷を救おうとしてくれている彼を……勝ったとしても私は退去を命じなければならない……こんなにも……こんなにも幻想郷の民の事を思っている彼を……!!!)

 

 

悔しくて自分に腹が立つ……全てをバーンに任せた、ただそれを見ているだけの自分が勝利の際には去れと言わなければならない無力に……

 

 

(ごめんなさい……ごめんなさいバーン……それでも私は貴方に勝てと願わなければならない……ごめんなさい……ごめんなさい……)

 

唇を噛み、拳を握り締める、唇と拳から血を滴らせながら紫は懺悔する、何度も……何度も……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だよ……何だよそれは!!」

 

妹紅は怒る、それは

 

「バーン!?それはやっちゃいけないものなんじゃないのか!!?」

 

バーンの姿と感じる魔力に何か取り返しのつかない代償の様な物を感じていたから

 

他の5人も同様、強くなったバーンを見て喜ぶ者はいない、皆不安な気持ちで一杯だった

 

「あ、あれは……!?バーンあんた……」

 

瞳の中に居る萃香がその代償を知った

 

(あれは呪術に近い……それも禁呪……多分もう二度とは……)

 

「そこまでしてあいつらを助けたかったんだねぇ……妬けちゃうよ本当……」

 

軽口を呟きながらバーンを見つめる瞳には涙が浮かんでいた

 

(それがどれだけ辛い選択だったか……勝つ為に鬼となるほどの決意をしたあんたにあたしは何も言えない……勝てバーン!私にはそれしかあんたに掛ける言葉が無い……)

 

心情を察した萃香は勝利を願いバーンを見るしか出来ない、それだけバーンの覚悟を理解し同情したからだ、バーンの先を思うと悲しくて涙が流れた

 

 

「永琳!!」

 

魔理紗が永琳に掴み掛かる

 

「何なんだよあれは!!あれが可能性なのか!?ふざけるな!!」

 

「私にだってわかる!あれは一時のものじゃない!二度と戻れないんだろ!?あんなバーンをいくら幻想郷でも受け入れてくれる訳が無い!」

 

「バーンが幻想郷に居られなくなるのを知ってて……黙ってたのかぁ!!!」

 

揺さぶりながら問い詰める魔理紗に永琳は目を閉じ黙って聞いていた

 

「答えろよ!!ぶっ飛ばすぞ!!」

 

今にも殴り掛からんとする魔理紗に目を開いた永琳は搾る様に話し出した

 

「……ごめんなさい、黙っていて……ッ!?」

 

殴り飛ばされた

 

「謝って済むかぁ!!知らなかったの私達だけか!なんで黙ってた!!なんで教えてくれなかった!!!バーンがあんな事になるなら死んだ方がマ……!?」

 

怒り狂う魔理紗が自暴自棄な言葉を出し掛けた所をレミリアが止めた

 

「魔理紗……あのバーンを見てわからない?」

 

「わかるわけないだろ!!」

 

「そう……なら貴方はバーンの友人じゃないのかもね」

 

「何だとぉ!?」

 

怒りを更に増した魔理紗にレミリアはバーンに指差し見るように促す

 

「バーンはね……私達の為……に、あの姿になったのよ……」

 

「……私達の為?」

 

「バーンは幻想郷を救う気なんて無い、私達の為だけに来てくれたの……何の為でもない、私達の為だけに……」

 

「……」

 

それを聞いた魔理紗は沈黙する

 

彼女もわかっているのだ、わかっているが激情を押さえきれなかった

 

「その私達が住む場所が幻想郷、だからバーンは私達の住む場所を守る為に戦ってくれてるの……化物になってもただ私達の為だけに……」

 

「あ、諦めたっ……て……良かったの……に……ね……」

 

声に嗚咽が混じりそれを見られぬ様に魔理紗から顔を背ける

 

「ああ……わかってるよ、わかってるけどさ……これじゃあんまりだぜ……バカヤロー……」

 

帽子でそれを見せぬ様に顔を隠した魔理紗は掠れる様な声で呟いた

 

「レミィ、魔理紗……ダメよちゃんと見なきゃ……私達は見届けなければならない……最後まで……」

 

うっすらとそれを浮かべているパチュリーはそれでも見る様に促す、それが友人であるバーンに出来る唯一の筋だったから

 

(そこまで覚悟したお前を止めるのは失礼……だな)

 

そう考える妹紅に声が掛かる

 

「フラン!わかってるわね!!妹紅も!!」

 

「うん!わかってるよ!!」

 

「ああ親分!!行くぞ!!」

 

3人はわかっていた、バーンの覚悟の重さを、それを否定する事はその覚悟に水を差すのと同じ、だから言うのだ

 

 

「イケー!!バー-ーン!!」

 

 

その覚悟を肯定し進むように叫んだ、それがバーンの覚悟に対する礼儀だから

 

6人の目にそれはあった、浮かぶ者、流す者それぞれだが顔は前を向き微笑んだ

 

 

バーンに向けて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(成った……もうこれで戻る事は出来ん、後は……)

 

佇むバーンは友の視線に気付いていたが目を逸らせなかった

 

「貴様がそれを出来るとは思わなかった……あの姿は気に入っていたのだろう?魔獣と成り果ててまで我を殺す気概、その原動力は何だ?王故か?」

 

舞い戻るムンドゥスがバーンに問う

 

「王だからではない、王の名は既に無かったのだ……幻想郷に来た時からな……」

 

「ならば何が貴様をそこまで……」

 

ムンドゥスはまた問う、既に答えは聞いている筈なのに問い直すのはムンドゥスにはそれを理解出来ないから、理解出来ないから記憶から消えていた

 

「友だムンドゥス……友を救う為に余は鬼と成ったのだ」

 

「……友……だと?」

 

「そうだ、貴様には理解出来まい」

 

「フフ……」

 

答えを聞いたムンドゥスが笑い始めた

 

「フハハハハハ!!何を言うかと思えば友だと!?貴様本当に魔族か!?そんな実体の無い物の為に!貴様はその姿になったのか!例え我を倒したとしても自身が滅ぼすと知ってか!!皮肉よなぁ!我を倒す為に魔獣になったと言うのに!!ハハハハハ!!」

 

ムンドゥスもわかっていた、自分の力が結界に干渉していた事を、だから仮に自分を倒したとしても滅ぼす役目はバーンが引き継ぐ事になるから面白く笑った

 

「それを心配する必要は無い……ムンドゥス……」

 

笑うムンドゥスに悟った瞳で告げた

 

「貴様を倒して……余は幻想郷を去る……」

 

 

決意と覚悟、それは先の話、友との永遠の別れを意味していた

 

 

「ハァーッハッハッハ!!笑わせるなバーンよ!そのあまりのいじらしさに笑いが禁じ得ぬ!よくもそれで大魔王などとほざけたものだ!恥ずかしくないのか?ククク……」

 

 

「ハァーッハッハッハッ!!」

 

 

同じ魔族の、それも強大な力を持つバーンが友の為に戦うなどムンドゥスからすれば愚かな動機であり行為、それが面白くて笑うのだ

 

「それが……」

 

笑いにバーンが静かに怒りを溜める

 

 

 

「それがどうしたアァァッ!!」

 

 

 

 

凄まじい怒りを怒声と共に浴びせた

 

「黙れムンドゥス……!!もう貴様と話す事など無い!!余は貴様を殺すだけの……魔獣だッ!!」

 

鬼の肉体に力を込める、高まる魔力がムンドゥスを押す、それを受けたムンドゥスから笑みは消え臨戦態勢に入る

 

「……先程は我以上と言ったな……それは違うぞバーン……これで同等……我も死を覚悟せねばならん……殺してやるぞ……!バーン!!」

 

高めた魔力で押し返し魔力は攻めぎ合う

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴ……ゴウッ!!

 

 

 

攻めぎ合う魔力が混ざり合い異様なフィールドを作り始めた

 

 

 

 

「あれは……!?まさか!?」

 

その光景にパチュリーが目を見開いた

 

「知ってるのかパチュリー!?」

 

それに魔理紗が聞いた

 

「ええ……おそらくあれは……真竜の戦い……」

 

「真竜の……戦い?」

 

「そう、真竜の戦い、私も異世界の本の伝承を読んだだけだからハッキリとは言えないけどアレは多分間違いないと思う」

 

「……何なのよその真竜の戦いって?」

 

二人の会話にレミリアが入り、促されたパチュリーは説明を開始する

 

「伝承では強大な力を持った二頭の竜が雌雄を決する際に出来たお互いの力が作りだした戦闘領域、中に居る者はそれだけで生命を削られ、近付く者も容赦無く生き絶えたらしい……」

 

「力のみが勝負を決める究極の決闘……戦う両者のレベルが最強かつ極めて等しい時にしかこんな状態にはならないらしいわ……」

 

パチュリーの説明で現象を理解した5人はまたそのフィールドに顔を向ける

 

「つまり……今バーンとムンドゥスの力は……」

 

「互角……って事ね、なら勝つのは……」

 

妹紅の言葉にレミリアが続く

 

「バーンだよ!!」

 

フランが力強く答える

 

「当然ね!だってバーンよ?あんな奴軽~くぶっ飛ばしてまたいつもみたいに無愛想に帰ってくるわよ!」

 

「絶対……絶対に……」

 

チルノも軽口で皆に語る、二人が励ます様に語ったのは自分にも向けていた、そうでもしなければ耐えられないから、堪えきれない感情を誤魔化すしか出来なかったから、でなければバーンに負担が掛かるから……

 

 

6人の見つめるフィールドが形成を終えた瞬間、咆哮が響き、戦いは始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「ハアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 

 

2体の魔が拳を振りかざし殴り合った

 

 

「グゥオ!?」

 

「ヌガッ!?」

 

 

互いに怯み、後退する

 

「……ハァアッ!!」

 

バーンの拳が打つ

 

「ッ!?……フンッ!!」

 

ムンドゥスが打ち返す

 

「「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」」

 

 

互いに力のみで相手を殺さんと打ち合う

 

技など無い、あるのはたった1つ、純粋な力

 

権謀術数も配下も小細工すら無い、残ったのは力

 

その力を駆使し鬼は戦う

 

勝利の為に

 

その先にある道を見据えながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……チッ!」

 

瞳の中で舌打ちするのは幽香

 

「何が友の為よ……そんな事の為に誇りを捨てて……そんな姿になってまで……」

 

イライラが止まらない、友の為に姿はおろか誇りすら捨てたバーンが理解出来ないから

 

(そんな理由がなければ少なくとも誇りを持ったままそう成れた……自分の為にだけ戦うから……今の貴方はとても弱く見える……あれが私に勝った奴だなんて!!)

 

瞳の内側を殴る、孤高の幽香にはバーンの理念が理解出来ない、彼女には友と呼べる者がいないから、いないから友の為にと言うバーンの行動が理解出来ない、だから精神が未熟に感じ弱く見えた

 

(……私も友人が出来たらあんな風になれるのかしら……)

 

同時に憧れもした、誇りを捨て弱く見えるのに何故か強くなったと感じる、それは力ではない、同じ孤高の幽香だけがそれを感じ、そう有りたいと思わせた

 

「貴方は私が殺す……だから……」

 

バーンを見つめながら初めて本心から言った

 

「勝ちなさいよ……」

 

小さく呟かれた応援の言葉は瞳に遮られ独白に終わる

 

 

そして皆に見守られながら真なる魔の戦いは更に激しく、苛烈に、熾烈を極める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌアアアァ!!」

 

バーンの膝蹴りが腹を打ちムンドゥスが怯む

 

「アアッ!!」

 

顔面に拳を叩き込み更に怯んだムンドゥスに殴打を浴びせる

 

「オオオオッ!!」

 

地面に叩きつけ馬乗りで殴りまくる

 

その戦いは単純、肉体の強さに魔力を込め殴り合う原初の戦い

 

美しくもなく、泥臭いとも言える戦い

 

だがそれはある意味で魔の深淵、魔の極致、力を突き詰めた先が今の2体だからだ

 

違いがあるとすればそれは一点のみ……

 

 

「ッガアッ!?」

 

殴り続けるバーンの腕が消し飛ぶ

 

「バァァァン!!」

 

撃たれたビームで怯んだバーンに回転しながら突進をかます

 

「ゴォア!?」

 

体に亀裂を作りながら後退するバーンだが体はすぐに再生する

 

「ヌゥゥ……!?」

 

同じく体に亀裂を作り大量に抉られた傷を再生させながらムンドゥスは睨む

 

「シネェ!!」

 

ビームを放つ

 

「ウオオオオ!!」

 

バーンも魔弾を放つ

 

「オオオオッ!?」

 

「ウガアアッ!?」

 

エネルギーが弾け互いの体を傷付け消す

 

 

「「ヌガアアアアアアアア!!」」

 

 

息もつく間もなく衝突する、破壊と再生を繰り返し2体はいつ終わるやも知れない死闘を続ける

 

だがいずれ終わりは来る、魔力は無限では無い、いくら量があろうと有限な限り終わりは来る

 

尽きる前に終わるかもしれない

 

 

「ウオオオオオオ!!!」

 

 

それでも全力で戦うのだ、終焉の時、勝利の天秤が自分達に傾くように

 

 

 

ドゴォ!

 

 

 

「ガッ!?」

 

 

 

ボゴォ!

 

 

 

「アガアッ!?」

 

 

 

ドン!

 

 

 

「ッハッ!?」

 

 

 

ドン!

 

 

 

「オグッ!?」

 

 

 

ドウッ!!

 

 

 

「「……ガハアッ!?」」

 

 

 

ズドォッ!!

 

 

 

「「カアァ……アアアアアアアアアアッ!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頑張れ……!頑張れバーン……!!」

 

殴り合いながら徐々にフィールドごと飛翔していくバーンにフランが拳を握り締め声援を送る

 

「……揺れてきたわね」

 

皆が見守る中、殴られて以降ずっと沈黙していた永琳が口を開いた

 

「揺れてる?」

 

妹紅が詳細を尋ねた

 

「真竜の戦い……さっきの説明で合ってるけどまだ続きがあるの」

 

「続き?」

 

「あのフィールドは両者の力が互角だから相手に届かず蓄積していった物なの、だから両者の均衡が崩れた時全てのエネルギーが弱い方へ注がれていく……」

 

「弱い方……つまり敗者に……」

 

真竜の戦いとは完全決着のフィールド、戦いに敗れた者が即死したなら肉体は崩壊し、例え生きていてもエネルギーがトドメを刺す、つまり死以外の決着は無い

 

「……なら尚更バーンの勝ちを信じなきゃな!」

 

それを聞いた妹紅は更にバーンの勝利を願い皆に顔を向ける

 

「そうね、バーンには勝って帰ってきて貰わないといけないもの……何が去るよ……認めないわよそんなの!」

 

「あの姿だってどうにかすれば戻るかもしれないしな、ダメでも工夫すれば幻想郷でも一緒に住めるだろ!」

 

レミリア、魔理紗二人は諦めていない、歩む道を諦めたバーンに最初は悲しみこそしたが今は逆に怒りすら感じている

 

「そうよ!これがその時なんて絶対あたいは認めないわ!大ちゃんだって一緒よ!」

 

かつての約束を思いだしチルノは叫ぶ

 

「あたしだって認めないよ!バーンはずっとあたし達と一緒だもん!」

 

「そうね……私もまだまだ教えて貰いたい事が山程あるし……逃がさないわ」

 

フランもパチュリーもバーンを去らせるつもりは一切無い

 

それだけバーンを想っている

 

絆、かつて吐き捨てた物がバーンと6人にはあった

 

勇者達が持っていた物を……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハアッ……ハアッ……!?ヌアアッ!!」

 

「ゼェ……ゼェ……!?ハアアッ!!」

 

 

「「……ガハアッ!?」」

 

 

長き戦いの果て、2体に遂に限界が見えて来た

 

破壊と再生を繰り返した2体の再生能力は落ち、抉られた傷を、亀裂の入る体を満足に再生出来なくなっていた

 

攻撃に込める魔力の量も膨大だが、再生させる魔力は更に膨大だった

 

魔力のフィールドが体にダメージを与え続けるからだ、そこに受けるダメージも相まり限界は思ったよりずっと早く訪れた

 

 

「ハアッ……ハ…アッ……!?」

 

 

「ゼェ……ゼ…ェ……!?」

 

 

ダメージに後退し手を止め睨み合う

 

「このままでは……死ぬかもしれんな……」

 

そう言ったのはムンドゥス

 

「かもではない……死ぬのだ貴様は……!余の手によってな!!」

 

返すのはバーン

 

「怖いな……本当にそうなりそうで怖い……貴様の気迫に押し切られそうだ」

 

そう思わせるバーンの気迫にムンドゥスの言葉が弱くなる

 

「貴様は言っていたな……友の為だと……」

 

そう言うと突然ゆっくりと回りだした

 

「……」

 

その奇妙な言葉と行動に警戒しながらもムンドゥスから目を放さない

 

(……あそこか)

 

それを確認したムンドゥスはまた話し出す

 

「それが貴様の強さか……我には理解は出来ん物だ……だが我に敗北は無い!何故かわかるかバーン?」

 

急に強気になるムンドゥスにバーンは怪しみながらも告げる

 

「……聞く気は無い、消えろムンドゥス……!!」

 

拳に強力な力を込め、ムンドゥスを葬らんと構える

 

「まぁそう言うな……簡単な事よ……貴様が先程言っていた……友を……」

 

力を溜めながら呟き

 

 

それを見た!

 

 

(なっ!?)

 

 

ムンドゥスの視線の先にある者!思惑に逸早く気付いたバーンはその瞬間飛び出していた

 

 

 

「利用するからだァァ!!!」

 

 

 

溜め込まれた極大のビームを撃った、バーンにではなくフィールドの外から見守る者達に向かって

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

突然の攻撃に皆が反応出来ず身構えるしかなかった

 

 

 

 

 

「ガッ!?アアァ……アアアアアアッ!?」

 

 

 

 

 

ビームは届かなかった

 

バーンが身を呈してビームから皆を守ったから

 

 

「そう来ると信じていたぞ!フハハハハ!!」

 

 

ビームを浴びせ続けながら愉快に笑うムンドゥス、バーンの弱点を見抜き、それを利用し成功した快感がムンドゥスを笑わせた

 

同等の力を持つ2体の違い、それは友の有無

 

バーンは友の為に戦いムンドゥスを追い詰めた、しかし皮肉にもバーンを追い詰めたのもまた友だった……

 

 

「あのままいけば勝てたのに……」

 

「体が勝手に動いた……って感じだったね」

 

「去るつもりだったバーンだから例え私達が死んでも勝って去るつもりだったでしょうね……それがバーンだもの……」

 

「守られる私達がバーンの枷になっちゃうなんて……バカね……本当に……」

 

「みんな……準備は良いか?」

 

「永琳のお陰でちょっとくらいならいつでも大丈夫だぜ!」

 

6人の意思は揃い、その時が来ても遅れぬように体勢を整え不可侵のフィールドを見つめる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフフ……勝負あったなぁ……バァァァン?」

 

ビームの照射を止め、背を向けて崩れるバーンに笑みを向ける

 

「グゥヌ……ゥ……」

 

バーンは生きてはいた、だが継続的に与えられたダメージが凄まじく肉体を再生させるのがやっとだった

 

「天秤は傾いた……このエネルギーは全て貴様に流れる、敗者は貴様だ!バーン!!」

 

叫ばれた勝利宣言に呼応し周囲のエネルギーが弱き方へ、バーンの方へ流れていく

 

「……」

 

流れてくるエネルギーにバーンは黙するのみ

 

「魔族の恥晒しがぁ!消え失せろ!!」

 

黙するバーンに告げると高らかに笑いだす

 

「フハハハハ!!湧いてきた!また湧いてきたぞ!魔獣と化した同族は我が力の前に死ぬ……!これが……!!完全勝利だ!!!」

 

勝利を実感し高らかに笑うムンドゥス

 

「安心しろバーン!すぐにこの地の者も向かわせよう……貴様の守りたかった友ごとなぁ!ハハハハハ!!」

 

勝利を確信した時、それは意識が最も緩む時

 

 

 

 

ドゴォ!!

 

 

 

 

「やはり貴様は生かしてはおけん……!!」

 

「グオオッ!?バ、バーン!!?」

 

 

その意識の緩み、油断をバーンは見逃さなかった、エネルギーの奔流に飲まれる刹那、一気に詰め寄ったバーンの渾身の拳がムンドゥスの胸の球体に炸裂しそのまま掴んだ

 

 

「貴様も道連れだムンドゥス……我等は消えねばならん……それが余の友が生きる幻想郷にとって最良だからだ……」

 

 

「ヌグオオオッ!?離せ!離せぇぇぇ!!バァァァン!!」

 

 

バーンを引き剥がそうと殴りつけるがバーンは決して離す事はなかった

 

(……後僅か……間に合わなかったか……やはり余ではダイの様にはいかんものよ……)

 

目を閉じ忘れたくとも忘れ得ぬ勇者と自分を比べ、苦笑した

 

 

 

「ウグアアアアッ!?アガアアアアッ!?!?」

 

 

 

2体はエネルギーの奔流に飲まれていく、2体の魔力の蓄積は幻想郷を数度滅ぼせるまでに溜まっていた

 

全てのエネルギーが2体の居る中心に注がれるとイオナズンなど比較にならない黒の結晶を越える大爆発を魔界の遥か上空で起こした

 

 

 

 

 

 

 

その爆発の後に生き残れるのか?

 

生き残ったとしてもどちらなのか?

 

広く濃い爆煙が結末を覆い隠していた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




……展開が早い気がしますね、漫画なら5話分くらいありそう……小説だとこうなっちゃいますね、私が下手なだけか……

2体の力は互角なのは真竜の戦いをしたかったのもありますが互角の相手に勝ちに行く必死さを書きたかったんです、まさに死闘の様な……

ムンドゥスが外道なのは元からです、力はあるのに小物臭い奴なんです、私の中では配下になりたくない王ランキング1位ですね、自分も勝てなかった者の息子に配下を差し向けて負けたら殺すんですもの……同じ王ならやはりバーン様が良いですね。

次回は意外な展開かも知れません。

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