東方大魔王伝   作:黒太陽

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第30話 歩めぬとしても……

「ハアアアッ!!」

 

溢れんばかりの魔力をたぎらせムンドゥスは構えるバーンに向かう

 

 

「天地魔闘!!」

 

 

攻撃をフェニックスウィングで弾き、両手を構えカラミティエンドとカラミティウォールを放つ

 

「ゴォアッ!?」

 

カラミティエンドが銅を切り裂き、カラミティウォールの衝撃の壁がムンドゥスを磨り潰さんと削る

 

 

「魔符「闘魔滅砕砲」!!」

 

 

カラミティウォールの上から暗黒闘気のビームを放ち追撃を行う

 

 

「ヌウウウゥ……アアッ!!」

 

 

衝撃の壁と共に暗黒闘気はムンドゥスの腕に払われる

 

「フゥム……やはり素晴らしい技だな、どれ……もう一度試すか」

 

またバーンに向かう、魔弾を放ちながら

 

「結果は変わらん……何度やってもだ!」

 

向かってくるムンドゥスに破られる事は無いと告げまたその奥義を構える

 

 

 

天 地 魔 闘

 

 

 

三度炸裂するバーンの奥義、放たれた魔弾を返しカラミティウォールと極限に高めた熱、氷、風、炎、爆発の弾幕を同時に撃ち込む

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

硬直の切れた瞬間に再び弾幕を放ち続ける、五属性の弾幕は衝撃の壁と重なり異常とも言えるエネルギーの奔流を起こす

 

「ハァッ!!」

 

奔流の中にカイザーフェニックスが放たれる、奔流は炎鳥を象った炎の渦となりムンドゥスを覆い焼き尽くす

 

 

「……チィ!!」

 

 

渦を見ながら舌打ちが出た

 

 

「ズアッ!!」

 

 

渦の中から声が響くと渦は止まり弾き飛ばされた

 

(やはり……か……)

 

再生を始めたムンドゥスを見ながら確信はより深くなる

 

 

「……これは破る事は叶わんな」

 

 

再生を終えたムンドゥスがまた構えるバーンに呟いた

 

「当然だ……この天地魔闘の構えは余の誇る最大の奥義、先程は破られた事があると言ったがそれは偶然が産んだ奇跡の産物故よ……この構えを真っ向から破った者は誰一人としておらん」

 

バーンの天地魔闘の構えは確かに破られている、しかしそれはある大魔道士が勇者と組み偶然の果てに出来た奇跡の所業、バーンの言う通り天地魔闘の構えを真っ向から破った者は天地魔界に誰一人として存在しなかった

 

「どうした……臆したか?臆したならそう言え、やめる事も考えてやろう」

 

構えながらムンドゥスに笑みを向ける

 

「いや……その必要は無い……」

 

静かに魔力を高め始める

 

「そのままだ……その構えのままにいろ……ヌン!!」

 

 

 

ゴゴ……ゴゴゴゴゴ……!!

 

 

 

高まる……魔力が高まる……まるで際限が無いように……

 

 

「見せてやろう……これが……我が魔帝たる由縁……」

 

 

魔力が体から稲妻の様に迸り何かとてつもない事が起きようとしているのだと見る者全てに頭で考えるより先に体が感じる

 

 

 

「他を遥か凌駕する……圧倒的な……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         力を……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バウッ!!

 

 

 

ムンドゥスの魔力が爆ぜる様に一気に高まった、その高まりは全身を黒く覆い、赤く光る3つの瞳と胸の球体だけしか視認出来ない程強く、濃く、禍々しく、凶悪だった

 

全ての不吉を含んだかの様な魔力は近付くどころか常人なら見るだけで発狂してしまう恐怖を孕み、そして……

 

 

真なる絶望を感じさせた

 

 

「!!!?」

 

 

驚いたのはバーン、そして彼方に見る8人

 

 

「なっ!?嘘だろ……そんな……そんな……」

 

 

信じられない……それを見た魔理沙はそう思うしか出来なかった

 

「こんな……こんな事が……」

 

それを見たパチュリーも恐れおののく、何故なら……

 

「えっ……これってバーンより……」

 

チルノにもわかっていた

 

「嘘……だよね?」

 

チルノに同じくわかっていたが皆同様信じられない

 

「私だって嘘だと思いたいさ……なぁレミリア……?」

 

「そうね、でも……ありのままを受け入れるしか無い……認めたくない……認めたくないけどムンドゥスは……」

 

妹紅とレミリアは認めざるを得なかった

 

 

 

「バーンより強い……」

 

 

 

語られた事実、ムンドゥスの方が上だと認める

 

認めざるを得なかったのだ、先刻までのバーンとムンドゥスの力が幻想……夢の様な力だとすれば今のムンドゥスの力は神話……それも幻想郷のお伽噺で語られる様な誇張を含んだ話……

 

神話で語られる他を圧倒する神のごとき力をムンドゥスから感じたから信じられず認められなかった

 

 

 

 

「……よもやこれ程とはな……」 

 

全ての力を解放した真の力に思わず呟いてしまう

 

「フッフッフッ……我が力の深淵を感じていながら挑む貴様の姿は実に滑稽だったぞバーン……」

 

バーンは薄々感づいていた、数度の攻防でムンドゥスに余裕がある事を、そして内に更なる力を秘めていた事を……

 

「黙れ……」

 

その秘めたる力を解放したムンドゥスにそれしか返す言葉が無かった

 

「貴様の技は素晴らしい……効果もさることながら何より美しい……思わず見とれてしまうまでに……な、だが……」

 

バーンの技を褒め称えつつ最大の弱点を告げた

 

「力が足りないのだ……我を倒せる力だけが足りない……圧倒的に!!」

 

弱点、それは威力の無さ、バーンの技はムンドゥスに届きうるがムンドゥスの命には届かない、威力、それが致命的に足らなかった

 

「だが悲観する事はない……相手が我だからこそよ……フフフ……」

 

そうなのだ、相手がムンドゥスだからこそ弱点なのだ、相手がムンドゥス以外なら弱点になり得ない、カイザーフェニックスは瞬時に敵を焼き、カラミティエンドは命を刈り取り、フェニックスウィングは力負けしない、他の技、呪文も同様、全てが必殺の威力を持っている

 

ムンドゥスを相手にしたからこそ威力の無さは弱点……弱き点になってしまったのだ

 

 

「……!!」

 

 

魔力をたぎらせたバーンは体に全ての力を凝縮する、奥義に全てを注ぎ対抗するつもりなのだ

 

「ならば……掛かって来るが良いムンドゥス……!!余の天地魔闘に敗北は無い……これで終わりだ……!!」

 

 

 

 

「フハハァ!!」

 

 

 

 

構えるバーンに黒き力を溢れさし特大の魔弾を放ち突撃するムンドゥス

 

 

 

 

「天地魔闘!!!灰になれッ!!!」

 

 

 

 

魔弾とムンドゥスを目前に目を見開いたバーンは叫んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

 

刹那の衝突の後に写されたのはぶつかり合う2体の姿

 

 

半身を消し飛ばされ炎に身を焼かれ、右脇腹から入った手刀が胸の球体で止まっている

 

 

 

「フフフ……灰にはならなかったなバーンよ……」

 

 

 

「グッ!?ウオオオオオオオッ!?」

 

 

魔力を体から放ち弾いたバーンを残る半身の拳が打った

 

強力な魔力を込められた拳は打った後に衝撃と魔力を波動砲の様にしてバーンを飲み込み吹き飛ばした

 

 

「……グヌゥ!?……!?」

 

 

波動を魔力を集中し抜け出したバーンだが空中で膝を着いてしまう

 

「カハッ……!?ハアッ……ハアッ……!?」

 

(余の……全てを注いでも……届かなかったか……)

 

炎を消し再生を始めたムンドゥスに悔しく睨み付ける

 

 

真の力を解放したムンドゥスとバーンの天地魔闘の構え、魔弾と共に突撃してきたムンドゥスにフェニックスウィングで魔弾を返すと同時にカイザーフェニックスを放つ、返された魔弾が半身を消し飛ばし炎鳥が身を焼く、そして目前に来たムンドゥスに弱点である胸の球体目掛けてカラミティエンドを繰り出したのだ

 

 

「その技を破る事は叶わなかった……素直に負けを認めよう……」

 

ムンドゥスの言う通り天地魔闘の構えを破る事は出来なかった、その究極に完成されていた技はムンドゥスの力を持ってしても破る事は叶わなかった

 

 

バーンの生涯を賭けて生み出された誇りは二度折れる事は無かった

 

 

「だが……勝敗は別だ……足らなかったな……力が……」

 

そう、そうなのだ……天地魔闘の構えを破る事は出来なかった、それだけで言えばムンドゥスの負け

 

だがこれは互いの存在を懸けた戦い、試合では無い

 

 

殺し合い……

 

 

いくらバーンの構えが凄まじかろうと命を消せなければムンドゥスに勝つ技に成り得ない、再生が出来るムンドゥスは全てを受けきり相撃ちに持ち込んだ、ダメージと引き換えにバーンに多大なダメージを与えたのだ

 

 

「フフフ……面白いなぁバーンよ……」

 

 

ダメージに膝を着くバーンに語り始めた

 

「貴様がどれ程の時を掛けて鍛えあげたかは知らん……その態度から察するに長き時を掛けたのだろう……そうして身につけた強大な力が通じず弱者に成り果て思うようにあしらわれる……貴様の今の胸の内を思えば気持ちが良い……優越を感じる……!」

 

表情は変わらないが愉悦感を全面に押し出した語りは止まらない

 

「力ほど純粋で単純で美しい法律は無い、生物はすべからく弱肉強食……強きが生き弱きが死ぬ……」

 

「力こそが全てを司る真理……貴様も同じ考えだったなバーン?」

 

力の演説はバーンの考えと同じ、それをわかっている上で崩れるバーンに問う

 

 

「黙れ……!!貴様と……同じにするな……!!」

 

 

息を荒げるバーンは睨み付ける、ムンドゥスの演説は正にバーン自身と言えた、それはかつて勇者達に語った内容と酷似していたから……既視感にとらわれたバーンだがムンドゥスに対する嫌悪が否定の言葉を返させる

 

「力があるものが正義とするなら今この場の正義は我……とすると貴様は悪か……フフフ……」

 

バーンの否定を無視し笑うムンドゥスは今一度問う

 

「どうだ?我と手を結ばぬか?今ならまだ間に合う、我と共に魔の世界を造ろうではないか」

 

仲間になる様に今一度聞いた、力の優劣がハッキリした今、この誘いはムンドゥスの最大の譲歩だった

 

「……」

 

誘いを受けたバーンは黙し考える

 

(まだ……余の心が決めかねている……決意が固まらん……この心の揺らぎの理由はわかっている……)

 

バーンが考えていたのはムンドゥスの誘いの事では無かった、横目でそれらを確認する

 

(……余は弱くなったのかもしれんな……かつてなら躊躇こそしたがここまで心が揺らぐ事は無かった……)

 

体にベホマを掛けながら立ち上がる

 

「黙れムンドゥス、貴様と歩む事は無い……未来永劫にな!」

 

体を全快させたバーンは構える

 

「……まだやる気か?その構えで根比べでもするつもりか?勝てぬとわかっていても尚やるのか?」

 

「当然だ……それより誰が勝てぬのだ?貴様か?ならば納得だ、今より貴様は余によってこの地から消えるのだからな」

 

その姿を見てムンドゥスは半ば諦めた様に告げた

 

「フム……死ね」

 

バーンの返事に仲間に誘う事を諦めたムンドゥスはバーンを殺すべく殺意を剥き出し攻撃を開始した

 

「これが最後の機……」

 

目前に迫る力に一言呟いたバーンはムンドゥスを迎え撃つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーン……!!」

 

治療を受ける6人が拳を握り戦いを見ていた

 

拳を握るのはバーンの苦しさを感じ共有しているから、友の苦しみを救う事の出来ない自身の無力に腹が立つから

「……」

 

黙々と治療を続ける永琳、彼女も治療を続けながらもその戦いの凄まじさ、バーンの劣勢を感じていた

 

(……揺れている……私の助言が新たな枷になってしまったのね……)

 

バーンの心の揺らぎを理由を彼女だけが知っていた

 

(もし貴方がそのままで居ると決めても私達は責めはしないわ……貴方に全てを背負わせたのだから……)

 

(でも……もし貴方が決意したのなら……)

 

治療する手が一瞬止まる

 

(それは敗北よりも残酷な結果になるかもしれない……)

 

永琳は幻想郷の、バーンの先を思い静かに治療を再開した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カァハッ!!?」

 

2体が交差した後バーンが血を吐いた、天地魔闘の構えで挑むがダメージも同時に受ける

 

「……ッ!!」

 

力を振り絞る様に腕を上げ構えを取る、優雅に構えるのでは無く振り絞る様に構えるのはムンドゥスから与えられたダメージが高過ぎるから……

体を全快させてからこれで三度目の激突だった

 

「まだ続けるか……」

 

バーンから受けた傷を再生したムンドゥスは尚も構えを止めないバーンに呆れる様に言い放った

 

「もうその構えは飽きた……構えすら取れぬ様にしてやろう……」

 

天地魔闘の構えに突進する

 

「……天地……魔闘!!」

 

振り絞る様に出した声と共に迎え撃った

 

 

「ヌガアアアァ!?」

 

 

バーンの叫びが響く

 

「ガアッ!?……ツウッ!?」

 

痛みに悶える、バーンの左胸に赤い魔力の針が刺さっていた

「今までの戦いで貴様の心臓は3つある事は気付いた……そして1つでも潰せば再生は出来ぬ事もな」

 

ムンドゥスは知っていた、バーンに3つの心臓があり1つでも潰せば再生は出来ない事を、幾度となく行われた攻防がムンドゥスにその事を気付かせていた

 

「ぬぅ……ぐっ……!?」

 

針に手を掛け抜こうとするが抜けない

 

「無理だ、貴様の力では抜けず、消せない様にしてある」

 

バーンの狼狽える様を見たムンドゥスは拳を構え殴り掛かる

 

「くっ……」

 

痛みを耐えながら針を抜こうとしていたバーンは構えをする機を失い左手に力を込める

「フェニックスウイング……!?」

 

迎え撃った掌底は弾く事叶わなかった

 

ドン

 

「ウグオオオオッ!?」

 

バーンの左腕が消し飛ぶ

 

掌底が弾ける許容を遥かに越えた一撃はバーンの技ごと腕を粉砕し消し飛ばした

 

「これで……もう構える事は出来ん……」

 

冷たく告げられた、天地魔闘の構えを封じた事実を

 

「後……貴様に残されたのは我が力による……」

ムンドゥスの言葉に徐々に愉悦が混じる

 

「蹂躙のみよ……!!」

 

発し終わった瞬間、魔弾を放ちながらムンドゥスはバーンに攻撃を開始する

 

 

帝王による蹂躙が始まった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーン!!」

 

蹂躙の開始に6人が叫んだ

 

「永琳!まだか!?早くしないとバーンが死んじまう!!」

 

友の窮地にいても立ってもいられない魔理沙、声を荒げ永琳に応急治療の完了を促す

 

「早く!!バーンが……バーンが……!!」

 

フランも急げとせっつく、バーンの傷付く姿が堪らず目を背ける

 

「永琳!急いで!!」

 

普段冷静なパチュリーですら焦燥し声を荒げる

 

「……もう待てないわ……」

 

「そうだな……私も我慢の限界だ……」

 

レミリアと妹紅がバーンを見つめながら決意する

 

「あたいは行く!!今行くから!バーン!!」

 

友のもとへ向かわんとチルノは叫んだ

 

チルノの言葉に6人は示し合わしたかの様に傷で痛んだ体を起き上がらせようと力を振り絞る

 

 

「待ちなさい!!」

 

 

6人を永琳が止めた

 

「待てないわ……もう決めたの、邪魔しないで」

 

止める永琳を見ずバーンだけを見つめるレミリアが制止を拒否する

 

「悪いな永琳……今行かないと絶対に後悔するからさ……私は死なないけど死ぬにしても死に場所は選びたい……死ぬ時は皆と一緒が良いんだ、だから……止めないでくれ」

 

複雑な感情を混じらせた妹紅は痛みで体を震わせながら立ち上がろうとする

 

他の4人も同様、二人の言葉に触発され徐々に体を起き上がらせる

 

死ぬならばせめて自分達の為に来てくれたバーンと共に……

 

6人は同じ想いで向かおうとしていた

 

 

「……もう少し……もう少しだけ待ちなさい、可能性はまだ……ある」

 

 

永琳が苦い顔で告げる

 

「可能性……?貴方何を知っているの?」

 

何の可能性なのか……それは勿論バーンが勝つ可能性、既にそれを見出だせないレミリアは詳細を問う

 

「それは言えない……でもその可能性を0にするかの鍵を握っているのは貴方達……今行けば0になりかねない、だからもう少しだけ待って」

 

「……」

 

頼みに沈黙をせざるを得なかった、何故ならそれを頼んだのが他ならぬ永琳だったから

 

レミリア達が敵わなかった月の住人、その月の頭脳と言われ噂では幻想郷最強は彼女ではないかと言われる永琳が頼んだのだ、信頼に足る事なのだと6人に思わせた

 

「……わかった、後少しだけ待ちましょう、皆もそれで良いわね?」

 

従う事にしたレミリアは皆に確認を取る、5人も静かに頷く

 

「治療を続けて」

 

永琳も静かに頷き治療は再開された

 

 

友の地獄を見ながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……カァッハッ!?」

 

防御ごと殴り飛ばされ大きく後退するが踏み止まる

 

「!?……グヌッ!?」

 

直ぐ様詰め寄られ裏拳で打ち抜かれる

 

「フン!!」

 

吹き飛ばしたバーンに特大の魔弾を放つ

 

「フハハハハ!!」

 

魔弾を放ち続ける、優越感に浸りながら

 

「ヌウリャア!!」

 

連弾の締めにまた特大の魔弾を放つと自身も飛び込む

 

「……ッ!?ハアッ……ハアッ……!?……グガアッ!?」

 

魔弾を耐えきったバーンを殴り飛ばす

 

「カア……ァ……ハアッ……ハアッ……!?」

 

飛ばされながら追撃せんと迫るムンドゥスに気付き魔力を右手に集中する

 

「ハアアアッ!!」

 

体勢を立て直しカイザーフェニックスで迎撃を行う

 

「フン……」

 

炎鳥はムンドゥスの手で受け止められ羽ばたきを止められる

 

「……ムン!!」

 

手に力を込め炎鳥を握り潰す

 

「クッ……おのれぇ……グアッ!?」

 

散らされた炎鳥の残り火を掻き消し魔力の衝撃がバーンを打つ

 

「ハアッ……ハアッ……!!ハアアアアアッ!!」

 

右腕の手刀に力を注ぐ

 

「ヌアアアアアアアア!!」

 

 

目前に迫った拳に渾身のカラミティエンドを切り入れる

 

 

「ヌウゥ……!!アアアアア!!」

 

 

攻めぎ合う手刀と拳、ムンドゥスの力に打ち勝たんと吼える

 

 

 

 

「フフフ……」

 

 

 

 

グシャ……

 

 

 

 

「ガ……ハッ……!?」

 

 

 

 

手刀を砕き拳がバーンを打った

 

 

「フハハハハ!!」

 

 

打った拳を振り上げ鉄槌を食らわせる

 

鉄槌を受けたバーンは凄まじい勢いで地に叩きつけられ大地を爆ぜさせた

 

 

「カッ!?ガハッ!?ゴ……ゴフッ……!?」

 

 

バーンは夥しい量の血を吐き仰向けに倒れていた、左腕は無くなり、右腕は砕かれ、全身は酷く傷み血塗れ、そして貫かれた針により再生は望めない

 

死に瀕するダメージ……生きながらに地獄を味わっていた

 

「フフフ……まだ生きているか、やはり強いな貴様は」

 

降りてきたムンドゥスがその様を見て笑う

 

「我が力をあれほど受けてまだ原形を留めているとはな……流石王と名乗るだけあったな」

 

「……黙れ」

 

一人喋るムンドゥスを睨み付ける

 

「そのザマでまだそんな事が言えるとはな……腕は消され手は砕かれ体は傷付き……もう貴様には何も残ってはいない……命乞いぐらいしかな」

 

 

何も残ってはいない、誇りは封じられ、不死鳥の羽はもがれ、不死鳥も通じず、最も強き剣すら砕かれた

 

 

もう何も残ってはいない……

 

 

「最後に聞いておいてやろう……我と来る気は無いか?来るなら歓迎しよう……」

 

 

最後の誘いがあった

 

 

「我が配下としてな」

 

 

誘いは仲間ですらなかった

 

 

「……ムンドゥス……先に1つ聞いておきたい事がある」

 

 

返答の前に質問が行われた

 

「貴様は……かつては余と同じく人に近い姿だったのか?」

 

「……そうだ」

質問に応えが入り2体の王の会話が始まる

 

「我が魔界ではアルゴサクス、アビゲイルと言った者達と覇権を争っていた……その者達に勝つ為に我はこの姿になったのだ」

 

「やはり……勝利の為にその姿になったのか……」

 

「当然だ、勝つ為の力を得られるなら姿など些細な事よ、気にするにも値せん」

 

「そうか……」

 

「もう良いだろう……返事を聞かせて貰えるか?バーンよ……」

 

「少し……考えさせろ……」

 

目を閉じたバーンは思いを巡らす

 

(魔界の神とさえ謳われた大魔王の名は地に墜ちた……)

 

(奴の言う通り何も残ってはいない……いや……残ってはいる……残ってはいるのだ……だがそれには……)

 

ある会話を思い出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……言っておく事があるわ」

 

「よい、早く枷を外せ」

 

「貴方にとって重要な事よ、外しながら話すわ」

 

「……何だ?」

 

「今、枷を外しながら体を見たけど貴方の体はおかしくなってる」

 

「……先程話した変質の事か?何も変化は感じぬが……」

 

「普段の生活や戦闘において気になる類いじゃないの、貴方が掛けられていた呪いの副作用なのかあの状態から戻したからなのかはわからない」

 

「……何が言いたい?」

 

「……次にあの状態になったら私でも戻せないって事よ、原因がわからないからどうしようもないの」

 

「……そうか」

 

「それと……あの状態になったらおそらく貴方はここに居られなくなる」

 

「……何故だ?」

 

「あの状態で共に歩めると思う?あんな……」

 

「それに強過ぎる力が博麗大結界に干渉してしまうのよ、強過ぎる力は結界をいずれ破壊してしまう、そうなれば幻想郷は滅ぶのと同義になる……」

 

「……そうなれば余はあやつらと……」

 

「……貴方がそのままで倒せれば問題は無い、でも気に止めておいて欲しいから話したの、貴方は幻想郷を滅ぼすつもりは無いでしょう?」

 

「……わかった」

 

「良かった、さぁもうすぐ終わるわ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……やむを得ん……か……)

 

決意は固まった

 

「ムンドゥス……」

 

そう言うと砕けた右手に回復呪文を掛ける、ベホマではないホイミを

 

「……?何のつもりだ?」

 

回復させるなら先に行った全快させる呪文にすれば良い、僅かに手を回復させ指を動かせる程度の回復を行ったのが解せない

 

「掴める指が必要なのでな……」

 

倒れたまま手を掲げる、ムンドゥスに向ける様に

 

「フッフッフッ……歩むか魔道を……」

 

出された手を見て愉快に笑う

 

(残されたのは……余の心に生まれた……)

 

 

この感情だけ……

 

顔を向けた、感情を生ませてくれた者達に

 

 

「バー……ン……?」

 

 

今にも飛び出さんとしていた6人は自分達を見るバーンの瞳に動きを止めた

 

その瞳が余りにも悲しみに満ちていたから

 

(……そんな顔をするなお前達……安心しろ……余がお前達に与えよう……例え共に歩む事叶わずとも……友に……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

         勝利を……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

 

指が鬼眼を引き抜かんと掴み上げる、血飛沫が舞い顔に血が流れる

 

流れる血が目から頬を伝う、まるで泣いている様に……

 

 

「ヌウゥゥ……この凄まじい波動……!?まさかバーン貴様……!?」

 

 

感じる力の増大にたじろぐムンドゥスを前に変化は始まった

 

バーンの肉体の下半身と腕を覆い更なる肉体を形成していく、徐々に巨大化する肉体と魔力はムンドゥスの刺した針を消滅させ尚も続く

 

 

「バー……ン……バー-ーン!!」

 

 

その変化に6人は叫んだ、それが見るからに異質な変化だったから……何か大事な物が壊れる様な気がしたから

 

 

 

カッ

 

 

閃光を放った肉体は黒い魔力の霧を漂わせバーンの姿を隠す

 

 

 

 

「貴様……獣に……」

 

 

 

 

ドゴォ!!

 

 

 

 

「ウガアッ!?」

 

 

霧から飛び出た巨大な拳がムンドゥスを打ち吹き飛ばす

 

 

 

「その通りだムンドゥス……獣……化物よ……貴様以上の……な!!」

 

 

 

霧を払い姿を現したのはムンドゥスに匹敵する巨大な姿、生物的な外皮に覆われ、岩の様な肩、力の源である鬼眼は肥大化し胸の中心に来ている

 

そして決意を具現化した姿は肉体、魔力共に今までの比ではなかった

 

 

 

 

 

          勝利

 

 

 

 

 

その二文字を渇望する友に与える為に今、王は……

 

 

 

 

 

 

 

         鬼と成る

 

 

 

 

 

 

 

       鬼 眼 王 再 臨

 

 

 

 

 

 

 

       全てはただ友の為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    例え二度と共に歩めぬとしても……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




鬼眼王!!

原作では影の薄い鬼眼王ですが初めて見た時はふざけんな!ここまで来てそんなのアリかよ!と印象に残っています、嫌いではないです。

天地魔闘の構えは破られませんでした、と言うよりポップのアレは私の中では破ったとは言い難いです、一回限りの奇襲的な方法だったので。

ムンドゥスの姿の設定はオリジナルです、バーンとは異なる方法で力を得てあの姿、力になった感じです。

1話に詰め込み過ぎた様な気もしますね、2話構成にすべきだったか……

次回も頑張ります!

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