東方大魔王伝   作:黒太陽

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第28話 ただ友の為に

とても……とても懐かしい声が聞こえた

 

 

「「バーン……!!」」

 

 

6人の視線がスキマへ向かう

 

 

「……」

 

 

そこに立っていたのは大魔王、バーン、半年を紅魔館で共に過ごした異世界の友人

 

「来て……くれたのか!!」

 

とても懐かしい感じがした、6人の死闘が僅かな時間を凝縮したった1日会わなかっただけなのにもう何年も会ってないかの様な錯覚を覚えた

 

そして、喜んだ

 

「……来るんならもっと早く来なさいよ、折角格好良く決めるつもりだったのに……」

 

紅魔館の主が口元を緩ませる

 

「本当だぜ……これじゃあ体張った甲斐が無い」

 

魔法使いの少女も微笑む

 

「遅いわよバーン!」

 

事情を知る妖精も笑みを向ける

 

「全く……狙った様にやって来ちゃって……」

 

魔女の微笑

 

「もぉ!遅いよバーン!」

 

吸血鬼の妹も笑う

 

「本当だよ……でも来てくれて嬉しいよバーン!!」

 

不死の少女の願いが叶う

 

 

「フン……」

 

 

笑みを受けたバーンは目を閉じ微笑んだ

 

 

「……」

 

 

ムンドゥスは現れたバーンを見つめていた

 

(こいつが魔力の主……大魔王……バーン……)

 

その身から感じる魔力に警戒を強める

 

「間に合った……」

 

7人の様を見ながら紫が呟いた

 

(これで約束は果たしたわ……次は貴方の番……お願い……)

 

紫はバーンを見ながら約束を思い出していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少し戻り・地霊殿

 

部屋に入ってきたチルノを見たバーンは表情険しく名を呼んだ

 

「チルノ……!!」

 

怪我をしたチルノの姿に何故か自然と足が進んだ

 

「……」

 

自然と動いた手がベホマを掛ける

 

「あ、ありがとバーン……」

 

淀みも言葉も無く行われた行為に戸惑いを隠せないチルノ、傍の二人も同じ思いで見ている

 

(!?……何故余は今チルノを見て心がざわつき、ベホマを掛けるのに何の躊躇も無かったのだ……)

 

自身の行動に疑問を感じ一人考えるバーンに我に帰ったチルノが叫んだ

 

「そ、そうだ!バーン!ムンドゥスって変な奴が幻想郷を荒らしてるの!助けて!お願い!」

 

助けを求めた、戦う仲間を、友を、幻想郷を守る為に

 

「……ッ!」

 

また心がざわつく、チルノの助けを求める瞳がバーンの心を揺さぶる

 

 

「……それは……出来ぬ……!」

 

絞り出す様に返事を返す、だが明らかに動揺している

 

「なんで!?バーンは幻想郷がメチャクチャになって皆が死んだって良いって事!?」

 

バーンの拒否にチルノが食い掛かる

 

「良くは……無い、だが既に決めた事、お前の願いでも聞けん」

 

「何よ決めた事って!」

 

「余は幻想郷に干渉をしないと決めていたのだ、分かれチルノ」

 

諭す様にチルノの頭に手を差し伸べる

 

「……わかんないよ!!」

 

手を払ったチルノが怒鳴った

 

「あたいは賢くないからバーンの考えなんてわかんない!わかんないよ!!」

 

「……」

 

チルノの叫びを黙って聞き続ける

 

「バーンは友達を助けようって気持ちは無いの!?ナイトメアの時は助けてくれたのになんで今はダメなの!?」

 

「なんでよバーン!!」

 

「ッ!?」

 

チルノの叫びに顔が歪んだ

 

「黙れ……チルノ……!!」

 

苦悶の表情でチルノを睨む

 

「黙らない!答えてよバーン!」

 

睨みつけるバーンに一歩も退かず食い下がるチルノ、その目にはうっすらと涙が浮かんでいた

 

「あの時……はナイトメアを見る……ついでだ……助けに行った訳では……無い」

 

訳を話す、まるで自分に言い聞かせる様に……

 

 

 

「もういい!!」

 

 

 

チルノの怒声がバーンを打った

 

「難しい事ばっかり言って!友達は助け合うものなんだよ!あたい達の事なんてどうでも良いなら最初から……!!」

 

 

「最初からバーンと友達になんかならなきゃよかった……!!」

 

 

 

涙を溢れさせ言ってしまった、バーンとの関わりを否定する言葉を……

 

 

「……そうか」

 

 

泣くチルノを見ながら呟いた

 

(そうだ……余に友など不要だったのだ……どのみち皆殺しにされれば無に帰る……なんの事は無い、戻るだけよ……あの時に……)

 

バーンは受け入れた、友の否定を、そして配下は居れど孤独だったあの頃に戻る事を……

 

 

「あたいは行く……待ってる友達が居るから」

 

 

チルノはバーンから目を背けると紫の方へ向かう

 

「あんたも行くんでしょ?一緒に連れてって」

 

「……良いのね?」

 

紫の確認が入る

 

「良いに決まってるでしょ!」

 

「違う、バーンの事よ」

 

「!!……もう……良いの……」

 

悲しく項垂れてチルノはスキマへ近付いて行く

 

「お前では無理だ、行っても返り討ちに合うだけ……その後自然は壊されお前は甦る事は出来なくなる……それでも行くのか?」

 

バーンが止める様に聞いた

 

「だから!?それがどうしたのよ!!あたいが行ってもダメなのはわかってる!!でも行かなきゃ!!あたいは幻想郷が好きだから……皆が好きだから行くの!!」

 

「あたいは幻想郷の為に戦うの!」

 

背を向けたまま叫んだ、チルノの幻想郷を友を想う気持ちが声を荒げさせる

 

(幻想郷の為……)

 

チルノの気持ちに心が揺れる

 

(余も……魔界を背負い戦った……形は違えど想いは同じ……)

 

(余は……どうしたい?見殺しにするのか?友を……友……)

 

その時バーンはレミリアから聞いた言葉を思い出した

 

(愛……友愛……か……そうか……ようやく……ようやく理解出来た、余の心がざわつく訳が……)

 

 

 

 

(余は友を守りたかったのだ……友愛を真に理解していなかった……だから得体の知れぬざわつきにイラついていたのだ……このざわつきは友を救えと言う余の心の叫び……)

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

目を閉じ考え込む

 

 

「紅魔館での毎日……楽しかった……あたいを鍛えてくれてありがと」

 

涙を溢し床を濡らしながらチルノは言う

 

「じゃあね……バーン」

 

二度と会えないと悟っている、だから言ったのだ、別れの言葉を……

 

そして振り向かずスキマへと足を伸ばした

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て」

 

 

 

 

 

 

 

 

制止に足が止まる

 

「余はお前を……お前達を死なせる訳にはいかん」

 

 

「余に……任せろ」

 

 

「!!」

 

掛けられた言葉に振り返るチルノ、そのチルノにバーンの憑き物が落ちた様な優しい瞳が向けられる

 

「バーン!!」

 

駆け寄って抱きついたチルノの頭を撫でながらバーンは紫へと視線を向ける

 

「八雲紫……協力してやろう」

 

「……」

 

紫は内心驚いていた

 

(私達がいくら頼んでも首を縦に振らなかったバーンが……たかが……たかが妖精の言葉に……)

 

驚くのは無理は無い、幻想郷の長が、博麗の巫女が、神が、自身が平伏して頼んでも動かなかったバーンを妖精が動かしたのだ、信じられない思いで一杯だった

 

「聞いているのか八雲紫?協力してやると言っている、枷を外せ」

 

「……わかったわ……永琳」

 

バーンの言葉に我に帰った紫はスキマに向け声を掛けた

 

「驚きね……貴方が協力するなんて……その妖精は何なのかしら?」

 

スキマで待機していた永琳が姿を現した

 

「そんな話をする猶予があるのか?早くするがいい」

 

「それもそうね……やりましょう八雲紫」

 

永琳の言葉に頷いた紫はバーンの枷を外す作業に取り掛かった

 

 

 

「どうした?早くしろ、何を手間取っている八雲紫?」

 

開始から暫く経ったにも関わらず枷が外れる様子が無い事にバーンが催促する

 

「私の魔力の枷は終わっているわ」

 

「……外れていないが?」

 

「魔力の枷は永琳の枷と連動しているのよ、肉体の枷を外すと魔力も戻る様になっているの」

 

「面倒な事を……永琳まだか?」

 

「……厄介な事になってるわね」

 

肉体の枷を外している永琳の表情が曇る

 

「枷を付けたのは貴方があの状態の時なの、その後で戻した、問題はあの状態から戻った肉体が変質して枷の解錠を難しくしている……」

 

「そのせいで枷自体も緩くなってる、本来なら貴方の身体能力は半分程になる筈なのに落ちたのは攻撃力と速さ、防御力はあまり落ちなかった様ね」

 

 

「御託はよい、どれ程掛かる?」

 

「2,30分くらいかしら」

 

「えー!皆やられちゃうじゃない!」

 

時間にチルノが叫んだ、ムンドゥスを間近に見ているチルノはその僅かな時間が命取りになると思っていたのだ

 

「……八雲紫、何でもすると言ったな?」

 

「……ええ」

 

「時を稼げ、そしてあやつらを守れ、誰も死なせるな……蓬莱人であってもな」

 

「……信用して良いのね?」

 

紫の言う信用とは協力の事、用心深い紫は確認の意味でも聞いた

 

「余の言葉を信用出来ぬなら枷は外さずともよい、行って死ぬが良い」

 

「……わかったわ、約束しましょう、必ず守り抜いて見せると」

 

スキマを開いた紫はさとりと共に向かおうとする

 

「あたいも行く!」

 

チルノも向かう

 

「チルノ……頼んだぞ」

 

「わかった!!」

 

バーンの言葉に笑顔を向けた後、スキマに入った3人は消える

 

 

そして今に繋がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

周囲を見渡す、バーンの目に入るのは倒れる仲間の姿

 

「バーン……来て……くれたのね……」

霊夢が起き上がる、ボロボロの体を押して、飛ぶ事すら出来ず足を引きずりながらバーンに寄る

 

「……」

 

バーンの第三の目、鬼眼が光り閃光を幾つも飛ばす

 

飛ばされた光は倒れる仲間達に当り瞳と呼ばれる球体に変化させた

 

(神には効かぬか……)

 

神奈子だけが光を弾き瞳にはならなかった

 

「……」

 

魔力を放ち神奈子と瞳を持ち上げると目の前の霊夢に渡す

 

「それを持って下がっていろ……お前達もだ、巻き込むかもしれんからな……」

 

霊夢と擦れ違いながらレミリア達にも下がる様に告げたバーンは少し嬉しそうに笑う

 

「急に力が戻ったのでな、少々……やり過ぎてしまうかもしれん……」

 

唇を上げたままムンドゥスの眼下に立つ

 

「……」

 

バーンから感じる魔力に明らかにムンドゥスは警戒していた、何も語る事無くおもむろに黒球を作り出す

 

「フン……創造神気取りか」

 

大量に産み出された悪魔を前に鼻を鳴らす

 

「我は悪魔の創造主にして帝王……大魔王、その力、見せてもらおうか」

 

ムンドゥスが悪魔達に攻撃の合図を出した

 

 

ドン

 

 

繰り出した掌圧で数体の悪魔は一瞬でバラバラに肉を散らす

 

「枷も悪くはなかったが……やはり良いものだ、全力を出せるというのは……」

 

ゴウッ

 

バーンの体から魔力が溢れ出す、可視化した魔力は黒く禍々しくオーラの様に出ている

 

「あれが……バーンの全力……」

 

パチュリーが呟く、その圧倒的な魔力に思わず息を飲む

 

「はは……参ったなこれは……凄過ぎるぜ……」

 

魔理沙の呆れる様な感嘆の声

 

「どう見るレミリア?ムンドゥスと比べて?」

 

「わからないわね……既に私達の理解の範疇を越えている……化物よ……どっちも!」

 

妹紅とレミリアはバーンとムンドゥスを比べるがレベルの違いに正確に測る事が出来ない、わかるのは二人が強過ぎる事だけ

 

「「やっちゃえー!!」」

 

チルノとフランの嬉しそうな声

 

それを受けてバーンは構えた

 

 

「妹紅」

 

 

迫る悪魔を見ながら友の名を呼んだ

 

「見るがいい、これが……余の真のメラゾーマだ……」

 

魔力を集中させた手が激しく炎上する

 

「カイザーフェニックス!!」

 

全力のメラゾーマ、真のカイザーフェニックス

 

放たれた炎鳥は以前よりも大きく、強く、そして美しかった

 

その炎鳥は悪魔の群れに羽を広げ優雅に飛び回る、炎鳥が過ぎ去った跡には何も残らない、肉体も灰も断末魔すらも燃やし尽くし、皇帝の名を冠した炎鳥は舞う

 

「ちぇ……なんだよアレ……凄過ぎて何も言えないじゃねぇか……」

 

華麗に舞うフェニックスを眺めながら悔しく呟く

 

「でも……!負けるかよ!!いつか……いつか必ず越えて見せる!私の不死鳥で!!」

 

拳を握り新たに決意する

 

枷の無くなったバーンの全力のカイザーフェニックス、その優雅なる姿と想像を絶する威力に妹紅はそれを越えると自らに果てしなく高い目標に決めた

 

 

「チルノ」

 

 

炎鳥を消したバーンは次の友を呼んだ

 

「お前は器用では無い、パチュリーの様に様々な事が出来る訳でも無い……だが冷気、その一点のみならお前は誰の追従も許さん、鍛え上げよ……この様に!」

 

かざした手から極冷が広範囲に一気に放出される

 

マヒャド、冷気系の最上位呪文、平均的なマヒャドなら数体を凍りつかせる程度だがバーンが使えば話は違う、バーンの魔力から放たれるマヒャドは半径数十メートルに居る悪魔を一瞬にして凍りつかせる、体の芯ごと……命ごと……

 

「腹立つわねー!わかってるわよ!」

 

これ見よがしのマヒャドにプンプン怒りながらチルノはバーンに宣言した

 

「絶対にバーンに勝って見せる!見てなさいよ!」

力の差を見せられてもチルノは越えると言った、初めて二人が出会った時の様に

 

「フッ……」

 

宣言に薄く笑うとバーンは次の友を呼ぶ

 

「魔理沙」

 

「おう!」

 

バーンの呼び声に嬉しく応える

 

「弾幕は力……その考えは正しい、捩じ伏せろ!障害は全て力で!」

 

バーンの体から暗黒闘気が溢れだし手に収束されていく

 

「魔符「闘魔滅砕砲」!!」

 

撃ち出された暗黒闘気は凍りついた悪魔を薙ぎ払い、更に後方に居た悪魔をも薙ぎ払う

 

「簡単に言ってくれるぜ……そこまで辿り着くのに何百……何千年掛けたんだよ……」

 

ビームの威力を感じながら掛けた年月の長さを感じる

 

「わかってるよバーン!私の寿命は短い、でもやるさ……閃光のように……!!」

 

ただの人間である魔理沙は決意する、限られた命の長さを懸命に生きると決めたから

 

 

「パチュリー」

 

 

そしてまた次に

 

「メドローアを会得出来た様だな、見事……だがまだ教えていない事がある」

 

悪魔の放つ魔力弾を前に語る

 

「メドローアとて魔法……全てを消滅させるが例外がある、それは……」

 

呪文を唱えたバーンの前に光の壁が出現し魔力弾を全て跳ね返した

 

「マホカンタ……魔法を反射させる呪文だ、こればかりは魔法であるメドローアも消滅させる事は出来ん、更に……」

 

マホカンタを消したバーンにまた魔力弾が迫る

 

「フェニックスウィング!!」

 

凄まじい速さで出された掌底が魔力弾を弾き返す

 

「この様な技もある、メドローアを使う時は相手の事を良く吟味してから使え」

 

炎上した手を払いながらパチュリーに向く

 

「わかった、気をつけるわ」

 

頷くパチュリーにバーンは嬉しそうに微笑む

 

「お前の成長を嬉しく思う……だが魔の深淵はまだ深く広い、研鑽を怠るな」

 

「わかってる!」

 

パチュリーも笑みを向けた、師事するバーンに褒められた事が堪らなく嬉しかった、そして尚精進すると約束する

 

 

「レミリア、フラン」

 

 

最後に二人の友を呼んだ

 

「お前達は身体に恵まれている、弾幕や能力を否定する気は無いがもう少し己の肉体を鍛えるのも良いだろう」

 

手刀を構えたバーンは悪魔の群れに腕を振り切る

 

「カラミティエンド!」

 

悪魔を抵抗無く両断した手刀は更に斬撃を飛ばす、飛ばされた斬撃が悪魔を両断しながら飛んでいく

 

「弾幕に美しさを求めるのも悪くはない、だが本質は攻撃……ならば圧倒的な力で敵を砕け!」

 

バーンのかざした手から魔法弾が連射される、イオラ、爆発の中位呪文だがバーンの高過ぎる魔力はイオラの1発をイオナズン級に押し上げる、それをバーンの技量でガトリングの様に連射する、爆発が絶え間なく広がり悪魔の肉片を飛び散らせる

 

「鬼との格など凌駕しろ、それでこそ誇り高い吸血鬼であろう?」

 

挑発する様に二人を見る

 

「フン……言われなくてもそのつもりよ!まったく……生意気な客人よ本当に……」

 

「わかった!あたしもっと頑張る!!」

 

嫌味を言いながらも笑うレミリアに応えるフラン、吸血鬼の姉妹は高い能力を持ちながらも更に上に向かう事を約束する

 

「さて……いい加減うざったい悪魔共だ……磨り潰してやろう」

 

手刀を構えたバーンは前面に薙ぐ様に振り払った

 

「カラミティウォール!!」

 

衝撃の壁が出現し悪魔を粉微塵に磨り潰していく、いつかの時の様に遅くなく凄まじい速さで拡がっていく

 

「……」

 

悪魔を殲滅しすまし顔で見てくるバーンにムンドゥスはまた黒球を作り3体の悪魔を造り出した

 

「バーン!気をつけろ!強いぞそいつらは!」

 

造り出された3体に魔理沙が叫んだ、3体は魔理沙達を苦しめたファントム、グリフォン、ネロアンジェロ、新たに造り出された3体はムンドゥスの命で同時にバーンに向かう

 

「この様な雑魚に出す技ではないが……特別だ、目に焼きつけて……死ぬが良い」

 

迫る3体に呟いたバーンは瞳に顔を向ける

 

「妖夢、幽香、萃香、起きているのだろう?見よ……これが余の最大の奥義……」

 

瞳の3人に告げるとバーンは構えを始める

 

 

「あ……あれは!?」

 

瞳の中で意識を取り戻していた妖夢がかつて経験した事のある構えに目を見開く

 

「あれがバーンの奥義……力の結晶……」

 

構えを見た幽香はバーンの全身から感じる凝縮された力と隙の無さにその奥義の凄味を感じ取る

 

「あたしとの勝負で使われてたら勝てなかったろうねぇ……」

 

萃香もその構えの凄まじさを感じ息を飲んだ

 

「お前達も刮目して見よ!これを天地魔闘の構えと呼ぶ……」

 

霊夢含む6人にも告げると3体を迎え撃った

 

 

「ヴオオオオオォ!!」

 

「グオオオオオォ!!」

 

「フォフォフォッ!!」

 

 

3体の上級悪魔がバーンに襲い掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     天          地

 

 

 

 

 

 

     魔          闘

 

 

 

 

 

 

 

 

3体の悪魔は地に伏していた

 

ファントムはバラバラになりグリフォンは炎に身を焼いている、そしてネロアンジェロは真っ二つに両断されていた

 

「い、今のは……!?」

 

一瞬の内に3体の悪魔が倒されたのを見た妹紅が驚愕しバーンを見つめている

 

「悪魔がバーンと交差したと思ったらいつの間にかやられてる……」

 

レミリアも起こった現象を理解出来ていない

 

他の者も同様に唖然としている、その中で経験した事のある妖夢だけが何が起こったかが見えていた

 

(み……見た!蜘蛛の溶岩弾を掌圧で弾き返し!魔鳥をカイザーフェニックスで撃墜!更に剣士を大剣ごと手刀で切った!)

 

全てを見ていた妖夢は震えていた

 

(あの刹那に3動作を同時に……それだけじゃない、溶岩弾にはバーンさんの魔力も上乗せされて弾き返されている、カイザーフェニックスは狙いを狂う事無く直撃させその上に大剣ごと切り裂く手刀……)

 

震えが止まらない

 

(か……勝てない……)

 

戦っているのは悪魔、なのに端から見ていた妖夢が戦慄し勝てないと思わせる程バーンの構えは強く、凄まじく、完成されていた

 

 

天地魔闘の構え

 

 

バーンの誇る最強の奥義、体に力を溜め相手の攻撃に合わせ刹那の三連同時攻撃を食らわせる受けの秘技

 

天とは攻撃、地は防御、そして魔は魔法

 

そのどれもが必殺級の威力を持つ技を同時に放つのだ、誰であろうとただでは済む筈が無い、如何に強く造られた悪魔と言えどバーンの構えの前には無意味だった

 

(いや!そんな弱気でどうする!越える!必ず破って見せる!)

 

バーンの構えにムンドゥスとはまた違う絶望を感じた妖夢だがそれを越えるべき目標と定め心を震わせた

 

(その前にまずあいつを倒さないといけませんが……)

 

戦いはまだ終わっていない、いや始まってすらなかった、ムンドゥスを見上げながら動けない妖夢はバーンの勝利を祈る

 

 

 

 

「力試しはもう良いだろう?ムンドゥス……と言ったか?」

 

悪魔を殲滅し終えたバーンがムンドゥスを見上げる、けしかけられた悪魔は自分を試す為だとバーンはわかっていた

 

「強い……王の名を冠するだけある」

 

バーンを見下ろしながらその高き力を認める

 

その力を認めた上でムンドゥスはバーンに聞いた

 

 

「我と手を結べ」

 

 

なんとバーンと手を組む事を求めた

 

「……何?」

 

予想だにしない言葉に疑心を含んだ目で説明を促す

 

「そう警戒するな、簡単な話だ、我等が手を組み世界を支配するのだ、我と主が組めば忌々しきスパーダの血族も根絶やしに出来よう」

 

「復讐に手を貸せと?」

 

「そうだ、だがそれは一端に過ぎん……その後に我等魔の世界を造るのだ!魔帝と大魔王が世界を魔に染める!」

 

「まずはこの地からだ!!力で全てを滅し!力の法を作る!弱肉強食の魔の世界を作り上げるのだ!」

 

高らかに唱えられた、バーンと共に世界から魔以外を滅ぼし魔だけの世界を作ろうと言うのだ

 

「バーン!耳を貸すな!」

 

「そうよ!聞いちゃダメ!」

 

妹紅とチルノが叫ぶ、そんな事を許す訳にはいかない、バーンを信じていない訳では無い、バーンをたぶらかすムンドゥスの発言が許せないのだ

 

「……」

 

だが二人の声を受けたバーンは考え込んでしまう

 

そこに

 

「グオオォ……オォ……」

 

グリフォンが現れた、カイザーフェニックスに体の大半を焼かれ頭と首だけのグリフォンはムンドゥスに助けを求める様に地を這って来ていた

 

「役立たずが……死ね」

 

ムンドゥスがグリフォンに指を向けるとグリフォンの周囲に魔力が集まりグリフォンの頭を振動させる

 

「オォ……!?オオオオオォ!?」

 

魔力がグリフォンを崩壊させていき断末魔と共にグリフォンは消滅した

 

「あの野郎……躊躇無く殺しやがった……!!」

 

何の躊躇すら無い非道に魔理沙は嫌悪感露にムンドゥスを睨む

 

「……それはお前の配下ではないのか?」

 

消滅したグリフォンの跡を見たバーンがムンドゥスに問うた

 

「関係無い、役立たずは我が配下に要らん……それに我が造った物をどうしようと我の勝手ではないか?」

 

「……」

 

ムンドゥスの返答にバーンはある事を思い出し考え込んだ

 

「して……返答は如何に?大魔王よ」

 

 

「バーン!!」

 

ムンドゥスの後に妹紅の叫びが響いた

 

叫びが響いたすぐ後にバーンはムンドゥスへ語りだした

 

 

「魅力のある話だ」

 

 

静かに話し出した

 

「……バーン?」

 

まるで興味があるかの様な言葉に妹紅の表情は不安に変わる、他の者も同様だった、1名を除いて

 

「余と貴様が組めば容易くそれは叶うだろう……それに余を倒した者にも勝てるだろうな……」

 

「ほお……主にも怨敵が居たか……良いぞ、我等で抹殺してやろうではないか」

 

淡々と話すバーンに愉快気なムンドゥスは手を差し伸べる

 

 

「さぁ!我と共に!」

 

 

この手を掴めと更に強く差し出す

 

「バ……!?」

 

妹紅が叫ぼうとした瞬間、肩に手を乗せられ止められた

 

「大丈夫よ……バーンを信じて……」

 

「レミリア……」

 

止めたのはレミリア、心配要らないと妹紅に語りバーンを見つめる

 

 

「よかろう」

 

 

バーンの返事が決まった

 

 

「フフフ……これで我等魔族に敵は無い!今ここに……魔の時代来たり!!!」

 

 

 

 

 

 

ゴウッ

 

 

 

 

 

 

バーンの魔力が高まった

 

 

 

 

 

 

「余が引導を渡してくれよう……帝王の名を着た小物よ……」

 

 

 

 

 

 

強大な魔力と威圧感を出し蔑んだ目でムンドゥスを睨んだ

 

 

「……」

 

 

ムンドゥスも何も語らないが3つの赤き瞳でバーンを睨む

 

「世界を魔で染めるだと?程度の低い事を大層に語りおって……」

 

 

「貴様の考え全てに虫酸が走る……下衆が……!!」

 

 

ムンドゥスを否定する言葉は次第に怒りを滲ませていく

 

 

「力が全て……そこだけだ、貴様と考えが合うのはな……」

 

共感する部分はある、だが同じ考えを共有する事すら御免だとバーンの表情が物語る

 

 

「配下すら躊躇無く殺すその冷徹……貴様は知らんのだ、幾多の失敗を重ね……その度に命を拾い、そして化ける者が居る事を……」

 

 

(なぁハドラーよ……)

 

目を閉じ、誇り高き武人にまでなった漢の名を思う

 

 

「そして……!何より……!!」

 

 

まるで大地を怯えさしている様な怒り、今までの理由などほんの一部でしかないと言わんばかり

 

そんな事は大事の前の小事、言ってみればどうでも良い事だ

 

この理由は何よりも優先する事だったから

 

 

「余の友を殺そうとした貴様が許せんのだ!!!」

 

 

それが……

 

バーンがムンドゥスに敵対する最たる理由

 

友の為に……ただ、それだけ……

 

「覚悟は出来ていような……」

 

告げられたムンドゥスへの布告、同じ魔に属する二人だが決定的に考えが、美学が合わなかった

 

そして初めてバーンの口から告げられた友、今までぼかしてきた感情が今ハッキリと言葉に表れた

 

「バーン……!!」

 

喜びに震える6人が居た、バーンの口から初めてハッキリと友と呼んでくれたからだ……堪えようのない嬉しさが内から溢れてくる

 

 

 

「相容れぬか……」

 

「その様だな……」

 

 

 

睨み合う二人の魔力が徐々に……更に高まりゆっくりと飛翔していく

 

 

 

「我に勝てると思うか……」

 

「小物が余に勝てると思っているとはな……」

 

 

 

高まる魔力が地を揺らす

 

「ま、まだ本気じゃなかったのかよあいつら!?」

 

「……もう私達がどうにかできるレベルなんて遥かに越えてる……」

 

地鳴りを伴う力の高まりに妹紅が驚愕しパチュリーが諦めに似た目で2体の魔を見つめる

 

(私の魔力の何千?何万倍?桁が違い過ぎる……量も、質も……)

 

遥か、遥か高みにいる魔力は測定すら出来ない、魔の頂点とも言える2体の魔力はせめぎあい大地の岩片を浮かせる程に高まった

 

 

「王は1人で良い……」

 

「そうだ……1人で良い……」

 

 

宙の一点で止まった2体は互いの意見が合致する

 

 

 

 

 

         ムンドゥス!!

  貴様が消えろ       

         バーン!!

 

 

 

 

 

王と帝、決して出会う事の無かった2体の王は幻想の特異点にて雌雄を決す

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は枷の外れた全力のバーン無双でした、強さが上手く伝われば幸いです。

次回からは王対帝の決戦が始まります。

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