東方大魔王伝   作:黒太陽

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第25話 戦火を交えて

封印の地

 

「……中々やりおるなこの地の者は」

 

突然、霊夢達の戦いを鑑賞しているムンドゥスが呟いた

 

「何よ今更!自慢のナイトメアが壊されるかも知れないって言うのに随分と余裕ね!」

 

ナイトメアの攻撃を避けながら叫ぶ霊夢

 

「お前達では無い、この地、全体の者の話だ、我が放った悪魔の大半がやられた様だ」

 

「当たり前よ!そんな簡単にやられるもんですか!」

 

したり顔でムンドゥスに語る霊夢にムンドゥスは笑い出した

 

「フハハハハハ!なんともめでたい奴等よ!この程度で終わりだと思ったのか?フハハ!ならばもう一度絶望を見せてやろう!」

 

そう言うとムンドゥスはまた黒球とゲートを作りだし悪魔を大量に解き放った、今度は魔界に一旦降ろした後でゆっくりと進ませる

 

「なっ!?まだ出せるの!?」

 

驚く霊夢にパチュリーが口を挟んだ

 

「当然よ、魔法を使えない貴方にはわからないでしょうけどアレぐらいの事2、3回やっても余りある魔力をあいつは持ってる」

 

「そんな……」

 

告げられた事実に絶望がまた胸を埋めそうになる、しかし

 

「フフフ……やったと思ったか?希望を感じたか?どうだ今の気分は!ハハハハハ!!」

 

「黙りなさい!負けないわ!みんな必ず乗り越える!だから私達も諦めない!」

 

パチュリーの事実とムンドゥスの笑いにも霊夢の心は折れなかった、否、もう二度と折れる事は無いだろう、幻想郷を信じる心が霊夢を折れる事を拒んだのだ

 

「そうね……じゃあ私達も頑張らないとね」

 

霊夢の力強い言葉に微笑んだパチュリーと共にナイトメアとの交戦は続く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚に続く平地

 

「……」

 

そこに佇む者が1人、名はレミリア・スカーレット、かつて幻想郷に紅霧異変を起こした齢500を超える吸血鬼、永遠に幼い紅き月

 

「……」

 

彼女はそこから封印の地を見つめていた

 

(あそこに全ての元凶が……)

 

その体は血に染まっていた、その血の量と傷の少なさが彼女の強さと倒した悪魔の数を表していた

 

(赴きましょうか……死地へ……)

 

誰に見られる事は無かったが1人笑みを浮かべ歩きだす

 

「おやぁ?そこにいるのはレミリアじゃないか!」

 

そこに背後から声が掛かった

 

「萃香……それに勇儀……」

 

現れたのは鬼の二人、彼女等も悪魔を葬りながら来たので血にまみれ、そして酔っていた

 

「あんたもあそこに?」

 

勇儀が問う、地上に出た二人は悪魔を倒しながら魔力の濃いこの場所にやって来ていた

 

「そうよ、元凶を叩かなければこの戦いは終わらないわ」

 

勇儀の問いに結界跡を見ながら答えた

 

「……あそこに行く意味はわかってるのかい?」

 

酔い顔から一変、鋭い瞳になった萃香が尋ねる

 

「愚問ね……もう覚悟は出来てる」

 

「これはすまないね……そうか……あんたも同じ想いなんだね」

 

萃香も結界跡を見ながら横に並んだ

 

わかっている、あそこへ向かう事、それは死と戦う事……結界跡から感じる異常な魔力に3人は決して容易ではないとわかっていた

 

「ん?……誰か来たね」

迫る気配に気付いた勇儀が空を見上げる、それにつられて二人も空を見上げた

 

「遅くなったわぁ」

 

「お前達も来ていたのね」

 

やって来たのは幽々子と神奈子

 

「おぉ!あんた達も来たか!」

 

萃香が嬉しそうに手をあげる

 

「当たり前よ、やるだけやらないとねぇ」

 

「当然ね、信仰を得る代わりに守る、それが神の役目よ」

 

二人も覚悟は決まっている、幻想郷を守る為にやって来たのだ

 

「あら?お揃いの様ね」

 

そこに輝夜が合流する

 

「幽々子様~!」

 

「お姉様~!」

 

更に妖夢とフランが降り立ち、主と姉の所へ向かう

 

「目的は同じみたいね……」

 

集まった仲間を眺めながらレミリアが嬉しそうに呟く

 

「そうさ!やってやろうぜレミリア!」

 

「魔理沙……貴方達も来たのね」

 

そして最後に魔理沙、幽香、白蓮の3人が合流する

 

「案外……なんとかなるかもしれないわね……」

 

集った強力な仲間達に僅かながら勝機を感じる

 

「えらく弱気じゃないかレミリア!かも……じゃないだろう?する……だろう?」

 

「フフ……そうね」

 

萃香の陽気な、されど意思の感じる言葉に思わず笑顔が出る

 

「じゃあ行きましょうか」

 

レミリアの言葉に頷いた一同は封印跡を見つめ歩きだす

 

「……!?魔力が高まって……!?」

 

封印の地から感じる魔力の高まりが一同の足を止めた

 

 

 

ドンッ

 

 

 

爆発音と共に封印の地が爆ぜ、大穴を作る

 

 

 

「ギイィィィィィ!!」

 

 

 

その大穴から大量の悪魔が現れ幻想郷に散ろうとしている

 

「まだあんなに!?これ以上は幻想郷が持たないわよ!!」

 

先の悪魔の襲撃で幻想郷はかなり疲弊している、その上から悪魔の二陣、レミリアでなくとも幻想郷が持たない事はわかりきっていた

 

「ハアアアアアッ!!」

 

その様を見た神奈子がすぐに動いた、全身から神気を高め拡散させていく、神気は無縁塚全体に広がり誰も通さぬ結界となり悪魔を閉じ込める

 

「これで一先ずは悪魔が幻想郷に散る事は無い、後は……わかるでしょう?」

 

一同に微笑みながら問うた、やるべき事は1つだと

 

「わかってる!やってやるぜ!」

 

「しょうがないわね、付き合ってあげるわ」

 

「みなさん!気を抜かないように!」

 

「勇儀!決着をつけようじゃないか!」

 

「望むところさ!行くよ萃香!」

 

「あらあら……これは骨が折れそうねぇ」

 

「また数ばかり集めて……まったく」

 

「妖夢!いっくよー!」

 

「はいフラン!幽々子様、気を付けてください!」

 

全員が襲い来る悪魔の大群に構えた

 

 

「行くわよ!」

 

 

レミリアの号令の元、集った戦士達は悪魔の大群へ飛び込んで行く

 

千を超える悪魔の大群、迎え撃つは幻想郷の強者11人

 

数は足りない、圧倒的に……しかしそれは問題ではない

 

埋めれば良いのだ、数を覆す圧倒的な力で、魂で

 

想いは1つ、ただ幻想郷を守る為に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地霊殿

 

 

 

 

ざわつく……

 

 

 

 

(また再び魔を幻想郷に……調子に乗りおって……)

 

拘束されるバーンは悪魔の第二波を感じ、自ら意図せぬ内に拳を握っていた

 

 

酷く嫌悪感が襲う……誰かが幻想郷を荒らしているのが気に入らない

 

 

(あやつらなら乗り越えれる筈だ……それだけの事はしてきた……だが……)

 

 

酷く心がざわつく……あの者達の事を思えば余計に……

 

 

(余は……余はいったいどうしたいのだ……幻想郷に干渉はしない……そう決めた筈だ……なのに……なのに何故、余の心はこんなにもざわつくのだ……)

 

バーンは心に感じる謎のざわつきに悩んでいた

 

幻想郷への不干渉、それはバーンの決めた自分に対する約定、変わる事の無い決定事項だった筈……

 

なのにそれを心が圧力を掛ける、それがバーンにはわからなかった

 

(何故……)

 

バーンは気付いていない、いや、気付いていながら目を背けているのだ、その得体の知れない感情を認めてしまうのが怖くて……

 

 

既に一度干渉した事に矛盾を感じながら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideパチュリー・霊夢

 

「パチュリー!とっておきってまだなの!?」

 

「……ちょっと待ちなさい」

 

ナイトメアの止まない攻撃を避け続ける二人、パチュリーが何かをしようとはしているがナイトメアの攻撃がそれをさせて貰えなかった

 

「このままじゃダメね」

 

ボソリとパチュリーが呟いた

 

「はぁ!?ふざけてる場合じゃないのよ!早くやりなさいよ!ぶっ飛ばすわよ!!」

 

それを聞いた霊夢の怒声が浴びせられる、期待していたのにこれではしょうがないと言える

 

「まぁ落ち着きなさい、私がダメって言ったのは切り札を出す機会が無いって事よ、出来ない訳じゃないの」

 

理由を話し霊夢を落ち着かせる

 

「……じゃあどうすれば出せるのよ?」

 

不満気な霊夢の問いにパチュリーは事も無げに告げた

 

「使うにはかなりの集中力がいるの、だからその間私は無防備だから守って欲しいのよ」

 

「はぁぁ!?あのナイトメアから守れですって?あんた本気で言ってんの!?」

 

霊夢の不満が爆発した、あの凶悪なナイトメアから動けないパチュリーを守れと言うのだ、誰がやっても難易度は高い

 

「出来ないなら諦めるしかないわね、妹紅が来るのを待つしかないわ」

 

霊夢の不満にパチュリーは試すように笑った

 

「……それが出来れば勝てるのね?」

 

「ええ、それは保証する、出せれば勝てるわ……絶対に!」

 

自信満々に言い放った、出す事さえ出来れば勝てると、そう断言した

 

「……わかったわ、そこまで言うなら信じてあげる……」

 

その自信を信じた霊夢がパチュリーに印を結んだ

 

「防御用の結界を作ったわ、これで少しなら耐えられる……でもあくまで保険、あんたの切り札みたいに絶対じゃないわ……だから……」

 

ナイトメアへ向き直し祓い棒を構えた

 

「私が時間を稼ぐ!さぁ早くやって!」

 

パチュリーを残し、霊夢はナイトメアへ弾幕を放ちパチュリーへの注意を一身に引き受ける

 

「頼んだわ霊夢……」

 

残されたパチュリーは地に降り掌を上に向け魔力の球体を2つ作り出す

 

(ここからね……やってみせるわ……バーン!)

 

フゥーと息を吐き精神を統一させたパチュリーは切り札の作成に取り掛かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

無縁塚

 

 

オオオオオオオオオオオォ!!

 

 

雄叫びが響く

 

結界を壊さんとする勢いで悪魔は暴れまわる

そこは今や悪魔の巣窟、結界の中を黒く染め不可視の領域を作り出している

 

そしてその黒の僅な隙間から光が出ては消えていた

 

 

「神槍「スピア・ザ・グングニル」!!」

 

レミリアの投合した魔力の槍が悪魔を幾多も貫き葬る

 

「四天王奥義「三歩必殺」!!」

 

勇儀の放つ三重の弾幕が悪魔を文字通り必殺していく

 

「萃鬼「天手力男投げ」!!」

 

掴んだ悪魔を弾とし投げつける、萃香の怪力も合わさり悪魔の弾丸は大量の悪魔を道連れに突き抜けていく

 

「死蝶「華胥の永眠」!!」

 

永久の眠りへと誘う死蝶を大量に展開し解き放つ、触れた悪魔は一切の抵抗なくその場で覚めぬ眠りへと堕ちていく

 

「神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」!!」

 

神気を込められた御柱が触れる悪魔を滅していく、直接触れずとも付近にいるだけで強力な神気と神奈子自身から発せられる神気が悪魔を消し去っていく

 

「新難題「エイジャの赤石」!!」

 

群がる悪魔に全方位にレーザーを放ち大玉弾幕を撃ち込む、運良く潜り抜けた悪魔は能力により認識出来ない内に倒される

 

「人符「現世斬」!!」

 

悪魔の隙間を縫う様に走り抜け切り伏せる、悪魔はその速い動きについていけず次々とバラバラにされていく

 

「禁弾「カタディオプトリック」!!」

 

反射しながら自在に動き回る大小合わせた弾幕が悪魔の逃げ道を無くしその体を破壊していく

 

「超人「聖白蓮」!!」

 

肉体強化を駆使し悪魔の中へ飛び込み格闘戦を行う白蓮の拳と脚は悪魔を容赦無く打ち砕く

 

「幽香!やるぜ!」

 

「……しょうがないわね」

 

背を合わせた魔理沙と幽香はミニ八卦炉と傘を構える

 

「恋符「マスタースパーク」!!」

 

同時に極大のレーザー放った二人は背を合わせたまま回転し悪魔を殲滅していく

 

 

数で勝る悪魔だったが為す術無く倒されていく、戦いは決して数だけでは勝てないと言うかの様だ

 

だが数に限りはあると言えど圧倒的な物量を前に無傷とはいかない、傷と疲労は溜まる、先に悪魔を殲滅するか力尽きるかの勝負

 

だが彼女達ならやってくれる筈だ、幻想郷を守る意思がある限り彼女達に敗北は無い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

sideパチュリー・霊夢

 

「そらそらそらー!どうしたの!?その程度!?」

 

声をあげナイトメアに弾幕を放つ霊夢、ナイトメアの周囲を飛び回り注意を引き付ける

 

「!!!」

 

ナイトメアも霊夢を攻撃する、しかし攻撃の全てを霊夢に向けている訳ではなくパチュリーにも少量の攻撃が向かう

 

(ちっ……挑発も効果無し、兵器相手じゃ仕方ないけど……それより結界が持つかが問題……)

 

横目でチラリと結界を見る、ナイトメアの攻撃が結界に当たっている

 

(もう持たないわね……しょうがない……か)

 

結界の耐久力があまり残っていないのを確認した霊夢は一定を保ち続けていた距離を止めナイトメアの至近距離に向かう

 

「!?」

 

霊夢の接近にナイトメアはパチュリーへ向けていた攻撃を霊夢に向ける、兵器の性質がより近く危険な方を先に排除しろと選択したのだ

 

「さぁ来なさいよ!グレイズで稼ぎまくってやるわ!」

 

威勢良く構えた霊夢は弾幕を放ちナイトメアの攻撃を一身に受ける

 

「んぅ~……!!」

 

紙一重でナイトメアの攻撃を回避していく、身に被弾するか否かを瞬時に見極め寸前で避ける、ナイトメアとの距離が僅か数メートルの距離で

 

「イッツ……!?」

 

霊夢は全神経を集中し回避に専念する、しかし避けきれない、回避が数瞬遅れ掠め始める

 

「うっ!?くぅ……!?」

 

徐々に、徐々に当たりが深くなる、掠めるだけだったのが皮膚を切り、しだいに抉る様になる

 

「まだ……まだぁ!」

体にいくつもの傷を作りながらも霊夢は避け続ける、信じた者の願いを叶える為に

 

 

「そんなのじゃ拍子抜けする……あっ!?」

 

 

左の上腕を撃ち抜かれた

 

 

「……全然効いてないわよ?……ッ!?」

 

 

次は右足を撃ち抜かれる

 

 

「うあぁ……ああっ!?」

 

 

肩が撃ち抜かれた

 

 

「……まだ……よ……さぁ……掛かって来なさい……よ」

 

 

至る所を撃ち抜かれた霊夢だがそれでもまだ立ちはだかる、もはや動く事すら怪しいその体で

 

「……!!」

 

ナイトメアが霊夢の眉間に目掛け魔力弾を放った、息の根を止めるために

 

「うっ……あっ……」

 

魔力弾は眉間を貫く事無く霊夢の頭上を過ぎ去っていった、ダメージによるふらつきで前に倒れたのだ、狙った事ではなかったが結果的に霊夢は命を拾う

 

だがそれでは終わらない、魔力弾が回避されたと認識したナイトメアは確実に仕留めるべく砲口に魔力を溜め始める、相手に回避する力が無いなどわからない故のビームの充填、撃たれれば回避出来ない霊夢は間違い無く幻想郷から消えるだろう

 

しかしそこに鑑賞していたムンドゥスがナイトメアに命令を与えた

 

「それは最後に殺すと決めている……ナイトメアよ、先にそこの魔女を殺せ」

 

「!!」

 

ムンドゥスの命令に反応したナイトメアがパチュリーに砲口を向ける

 

「ま……ちなさいよ……!私が!……相手……よ!」

 

倒れたままの霊夢がナイトメアに叫ぶ、だが命令に従うナイトメアは反応を示さず魔力を溜め続ける

 

「そんな……ここまでして……ダメ……なの……?」

 

守り切る事に失敗したと思う霊夢、だが

 

「いえ……まだ……間に合うわ……!!」

 

ナイトメアのビームはまだ撃たれていない、ならば発射を防げば守れる

 

そう考えた霊夢は傷だらけの体を必死に起こす

 

「うぅ~!……う~!!」

 

だが限界間近の体はすぐには起き上がらない

 

(間に合わない……)

 

今にも撃たれんとする砲口に間に合わない、そう感じた時だった

 

 

 

「待たせたわ霊夢」

 

 

 

絶望を消し去り、希望の言葉が霊夢に掛けられた

 

「遅いわよ……パチュリー……死ぬかと思ったじゃない……」

 

苦痛に歪む顔を微笑ませ、切り札の準備を終えたパチュリーを見つめた

 

「まだ慣れてなくてね……後は任せて」

 

凛々しい表情のパチュリーはナイトメアへ向く

 

前に出されている両手には始めは2つだった魔力が今は1つになり両手を覆っていた

 

「……んっ!!」

 

右手を引き魔力を引き絞る様に構える、弓を引く様に

 

「火と氷……熱を操る魔法を融合させスパークさせる……」

 

バーンに教えられた事、そして練習過程で得た事を口ずさむ

 

「その果てに作り出されるのは熱の無……つまり消滅の力……」

 

呪文の原理を語るパチュリー、そこに天から声が響く

 

 

「撃てナイトメア」

 

 

ムンドゥスの発射命令、パチュリーの言葉など聞こうともしない

 

 

「!!!」

 

 

溜め込まれた魔力はムンドゥスの合図で撃ち出された、無縁塚の結界を破壊した時と同じ威力のビームを

 

「……これが!私の切り札!名を極大消滅呪文……」

 

ビームは霊夢の張った結界を容易く破壊し迫る、だが目前に迫ったビームを前にしてもパチュリーは動じない、それどころか一層体に力を込め……そして叫んだ

 

 

 

 

「メドローア!!」

 

 

 

 

パチュリーから放たれた呪文、メドローア、原理は熱を操る火と氷の魔法を融合させ消滅の魔力を作り出す、バーンの居た世界で大魔道士マトリフが作り出した魔の深淵、1つの魔の極致

 

それをパチュリーは半年の間必死に練習し習得したのだ、知識のみの手探りだったがパチュリーは成し遂げた、バーンに師事し修行を怠らなかった成果が今ここに具現される

 

 

「ナニ?」

 

 

ムンドゥスは眼下に広がる光景に驚いていた、ナイトメアのビームはパチュリーの放ったメドローアに消滅させられていく、メドローアの勢いすら抑える事も出来ずに

 

「その兵器が動けれたなら勝つのは難しかったでしょうね……」

 

ムンドゥスに語るパチュリーはナイトメアの周囲にある装置を見つめる、そう、ナイトメアはにとりの作った装置により固定化されている、動こうにも動く事が出来ない

 

「まぁこれさえ当たれば液体だろうと何だろうと関係無いんだけどね」

 

パチュリーは歩き始める

 

「この呪文に耐性だとかそんな事は関係無い……当たれば問答無用の消滅よ……じゃあね」

 

 

 

 

光矢がビームを消し去りナイトメアを貫いた

 

 

 

「……」

 

ナイトメアは動かない、攻撃もせず佇むだけ、置物の様に……しかしナイトメアには本来あるべき筈の物が消えていた

 

「……コアごと消滅させたのか……」

 

ムンドゥスの呟き、そう……メドローアはナイトメアのコアを消滅させていた、ナイトメアの体に穴をつくって

 

「……」

 

コアが無くなったナイトメアは体が崩れていき魔界の大地に広がり、そして蒸発していった

 

「損な役回りをさせちゃったわね……ありがとう、お陰で倒せたわ」

 

霊夢を抱き上げながら感謝を述べる、パチュリー1人では不可能だったのだ、霊夢が身を呈してパチュリーを守ったからこそメドローアは撃てたのだから

 

「良いのよ……倒せたんだから構わないわ」

 

パチュリーの肩を借りて起き上がる霊夢はやり遂げた思いで少し笑っている

 

 

 

 

「ご自慢のナイトメアはぶっ壊してやったわ!次はあんたよ!」

 

ムンドゥスに言い放つ、体は満身創痍、しかし闘志は些かも衰えない

 

「……ナイトメアは確かに傑作ではあった、だが同時に失敗作でもあった……」

 

ナイトメアはムンドゥスの作り出した兵器の中では最高傑作とも言える力を持つ、そして同時に最大の失敗作でもあった、高い戦闘能力と無限に高まる魔力は侵略した地を破壊しつくすばかりかムンドゥスの居る魔界さえ破壊する危険な兵器だった、だからムンドゥスは拘束紋様とセットで運用していた程だったのだ

 

「いずれは破壊するつもりだった……手間が省けた……が……」

 

ムンドゥスの3つの赤い瞳が怪しく光る

 

「つまらんな……不愉快だ……」

 

ナイトメアがパチュリーを殺す事が出来なかったのが気に入らないムンドゥス、思うようにいかない事態に不機嫌になっていく

 

 

「ハッ!……所詮兵器だろうと悪魔だろうとこんなもんだろうさ!」

 

 

その場に3人以外の声が響く

 

「妹紅……!!」

 

現れたのはファントムを始末し終えた妹紅、ムンドゥスを見上げ勝ち誇る様に笑う

 

「……チルノは?まさかやられたの?」

「チルノは大丈夫だ!今はバ……」

 

チルノの今を紡ぎかけて止めた

 

(バーンは来るかわからない……変に期待させるよりかは黙ってた方が良いか……)

 

「どうしたの?」

 

「あ、いや何でもない!チルノは無事だ!心配するな!」

 

とにかくチルノの無事を伝えるとムンドゥスに向き直す

 

「次はお前だ!覚悟しな!」

 

指を差すと高らかに告げた、次はお前の番だと

 

「……勝てると思うのか?」

 

「思ってるんじゃない!勝つんだよ!私達はお前に勝つ!」

 

「愚かな者よ……」

 

飛翔していたムンドゥスが高度を下げようと僅かに下がったその時、聞き覚えのある声が一帯に響いた

 

「その通りだぜ妹紅!私達はお前を倒す!必ずな!」

 

響く声に振り向く3人、そこには……

 

「魔理沙!レミリア!フラン!みんな!!」

 

11人が立っていた、結界内の悪魔を全て殲滅し封印の地・魔界にやって来たのだ、その光景に妹紅の歓喜の声があがる

 

「ファントム、グリフォン、ネロアンジェロ……そして放った悪魔を退けたか……」

 

集った者を見つめムンドゥスは悪魔達の敗北を悟る

 

「よもやこの地の者がここまでやるとはな……些か遊びが過ぎたか……」

 

呟くムンドゥス、だがその言葉はただ事実を述べただけ、感情は一切籠っていない、怒りも焦りも反省も無い

 

「私達を舐め過ぎたみたいだな!」

 

「許さないぜお前だけは!」

 

「次はあんただよ!」

 

「やるわよパチェ!」

 

「ええレミィ!」

 

妹紅、魔理沙、フラン、レミリア、パチュリー、バーンに深く関わる5人はムンドゥスを前に先頭を切る

 

「フフ……」

 

 

 

「フハハハハハハ!!」

 

 

 

5人の布告を受けたムンドゥスが高笑いをしだす、見下す様に高々と

 

 

「愚かな……愚かな者達よ……我が配下を退けた程度で我に勝つとは……フフフ……」

 

 

不気味な笑いと同時に魔力が高まっていく

 

「少々腕の立つ雑魚の力を集めたとてこの我を越える事は出来ぬ……」

 

高まりと共に更に降下していく

 

「冥土への土産だ……次は我が遊んでやろう……我が力を思い知り……そして絶望の内に……」

 

 

 

 

「死 ぬ が よ い !!」

 

 

 

 

大地ギリギリに降りたムンドゥスは掛かって来いと言わんばかりに降りたまま動かない

 

「雑魚の力を集めただけじゃ勝てない?そんな事はやってみなくちゃわからないぜ!!」

 

「そうだ!それに死ぬのは私達じゃない……死ぬのはお前だ!ムンドゥス!!」

 

魔理沙と妹紅の叫びに全員が構える

 

 

 

「行くぞみんなぁぁぁ!!」

 

 

猛る号令と共に全員が飛び出した

 

 

魔帝との戦いが今、開戦した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地霊殿

 

(魔力が高まった……先程より高く……!?)

 

バーンを抑え続けるさとりは悪魔を放った時より強くなった魔力に気付きバーンを見た

 

「……」

 

バーンに変化は感じられない、いや、変化はある、拳を握り表情は先程に比べ苦い

 

だがさとりは焦り故にその変化に気付かない

 

(~ッ!!もう限界……もう……待てない!!)

 

遂にさとりの我慢が限界に達した、神妙な顔付きでバーンの前に立った

 

「これが最後です……協力してください」

 

バーンへの最後通達が行われた

 

「……」

 

聞こえてはいる、しかし反応を返さない

 

「聞こえませんでしたか?答えてください」

 

再度の問いにバーンはようやく口を開いた

 

「断る……と言ったら?」

 

やはり出されたのは拒否だった、たださとりを試す言い方になっている

 

「断るなら貴方の拘束は封印になります、先程も言いましたが手を組まれるのは避けなければなりません、封印をした後だれもわからない異空間に幽閉させてもらいます」

 

「……」

 

さとりの返答にバーンは更に拳を強く握り己の中で葛藤する

 

「さぁ返答は如何に?」

 

さとりの再三の催促に遂にバーンは答えを出した

 

「好きに……するが良い……」

 

バーンの出した答え、それは拒否、封印でも何でも好きにしろと言ったのだ

 

「……残念です」

 

無表情のさとりはバーンの封印に取り掛かる

 

(これで…良かったのか?)

 

施される封印の力を感じながら答えの出ない問答を行った

 

 

 

 

 

 

「それをされては困るわさとり……」

 

 

 

 

 

 

バーンの問答を声が引き裂いた

 

 

「……今まで何をしていたのですか?」

 

声に振り向く事なく返した、声の主をさとりは知っている様だ

 

「博麗大結界の強化にね……今は博麗神社を守ってくれる者がいるから大丈夫でしょう……」

 

スキマから出てきた彼女はバーンの前に向かう

 

「……お前が?」

 

眼前に立った女性に問う、そうなのかと

 

 

 

 

「ええ、初めまして……私が八雲紫、貴方を幻想郷に連れてきた者よ」

 

 

 

 

動き出した魔帝、それと戦う者達、そしてバーンを幻想郷に連れてきた賢者との邂逅

 

 

 

 

今、全ての運命が重なった

 

 

 

 

 

 




ようやくここまで来れた感がします。

パチュリーのメドローアは予想されてた方もいると思います、魔理沙がアバカムやマジックバリア等の補助系に対しパチュリーは攻撃魔法にしました、習得内容に差がありますが魔理沙は主に威力を上げる修行をしていたのです、弾幕はパワーなんです。

パチュリーは一心に魔の深淵に向かっていたのでメドローアの習得が出来た訳です。


次回は……なるべく早く書けるように頑張ります。

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