東方大魔王伝   作:黒太陽

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第21話 幻想大戦

ついに封印が破られ復活を果たした封印されし者

 

その名は魔帝ムンドゥス

 

異世界の魔界を統べる悪魔達の帝王、巨大な天使を思わせる姿に3つの目を持つその姿は一見彫刻にも似た美しさを感じさせる

 

しかしその意思は悪魔以外を許しはせず妖怪も人間も全て殺し悪魔だけの世界を作ろうとしている、そしてそれを可能と出来る力を持っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「八雲紫へのみせしめだ……まずはお前達を殺し、次いでこの地の者達を皆殺しにしてやろう」

 

遥か高くから見下しながら死を宣告される、妹紅も霊夢も絶望に震え動く事すら出来ない

 

 

「そんな事は……」

 

 

絶望に震える中、声が響いた

 

 

「させないわ!!」

 

 

声の主は魔理沙とチルノ、震えを止めた二人はムンドゥスに向かって言い放った

 

「魔理沙……チルノ……」

 

ムンドゥスへ啖呵を切る二人を妹紅と霊夢は見つめる、しかし動く事は出来ない

 

「フフフ……面白い事を言う、スパーダの血族ならともかく魔力を少し扱える人間と妖精ごときが我に挑むとはな……」

 

彫刻の様な顔の表情こそ変わらないがムンドゥスは啖呵を切る二人に興味を持った

 

「……我が力で根絶やしにするつもりだったが……」

 

赤い瞳を二人に向けムンドゥスは話し出す

 

「お前達に免じて我が動くのは止めてやろう」

 

その言葉に一瞬安堵する魔理沙だが状況は何も変わっていない、ムンドゥスをどうにかしなければ結果は変わらないのだ

 

「……代わりの者達を送ろう」

 

「何……?」

 

魔理沙が声を発した瞬間、ムンドゥスの魔力が更に高まりムンドゥスの前に黒球と異空間に繋がるゲートが作り出される

 

「ちょっと!何する気!?」

 

チルノが叫んだ瞬間、黒球とゲートから大量の何かが放たれる

 

「こいつら……悪魔か!」

 

放たれたのは悪魔、黒球とゲート、両方からおびただしい量の悪魔達が放たれる、その数は数百……いや数千以上

 

「外に……!?」

 

放たれた悪魔達は道を通り幻想郷へ送り込まれる

 

「我が魔力で造り出した悪魔と我の居た魔界から呼び出した悪魔を放った、我とは違い力は弱い……苦痛を味わいながら死ぬがよい……フフフ……」

 

 

 

 

「フハハハハ!!」

 

 

 

 

ムンドゥスの高笑いが辺りに響く、笑い声が響く中、拳を握り締める魔理沙

 

「霊夢!妹紅!いつまで呆けてるんだ!あいつを倒すぞ!」

 

戦意を失っている二人に叫んだ

 

「まさか……ここまでの力を持ってるなんて……もうダメよ……幻想郷はおしまいよ……」

 

膝から崩れている霊夢が悲痛な声で呟いた、予想を遥かに越えるムンドゥスの力は霊夢を諦めさせるには充分だった

 

「フフフ……その者は理解している様だ、我に抗う事の無意味を……この地を滅ぼした後、最後に絶望の内に殺してやろう……」

 

ムンドゥスの楽しげな言葉、ムンドゥスは自分に敵う者が幻想郷に居ない事を知っており悪魔を幻想郷に放つという事を行った、ムンドゥスにとってそれは死の遊び、死ぬのか早いが遅いかだけの違い

 

「そんな事……させるか!」

 

そんなムンドゥスの笑いを聞いていた妹紅が叫んだ、皆殺しにする、その言葉に友人達を思い浮かべた妹紅は怒りで立ち上がり自然と拳を握り締めムンドゥスを睨み付ける

 

「霊夢!立て!私達が幻想郷を守らなくてどうするんだ!」

 

奮起した妹紅が霊夢に檄を飛ばす、もう震えはない、幻想郷を守ろうとする心が、友を守ろうとする心が震えを止めていた、しかしその妹紅の声にも霊夢は動かなかった

「諦めましょう……私達では……バーンでも勝てないわ……皆も殺されるわ……」

 

霊夢は諦めを勧める程に戦意を無くしていた、ずっと地面を見つめ微動だにしない

 

 

 

「霊夢!」

 

 

 

その霊夢に魔理沙が叫んだ

 

「立てよ霊夢!やる前に諦めるなんてお前らしくないぜ!」

 

「魔理沙……」

 

顔を上げた霊夢に魔理沙は続ける

 

「異変を解決するのは博麗の巫女の仕事だろ?その巫女が仕事を放棄してどうするんだよ!」

 

「それにさ……」

 

ムンドゥスを睨みながら話す魔理沙は霊夢に顔を向け話した

 

「あいつらがそんな簡単にやられるわけないだろ?それは私とお前が一番良く知ってるだろ?」

 

微笑む魔理沙、信じているのだ、悪魔ごときにやられる幻想郷の民達ではないと

 

「……」

 

またうつむいた霊夢は幻想郷の皆の事を思いだしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「来たわね!悪魔どもがうようよと……」

 

空から、地上から押し寄せる悪魔達を目視したレミリア

 

「アレ全部壊しても良いのお姉様?」

 

「ええ、遠慮はいらないわ、好きに壊しなさい」

 

「でも……太陽が出てるよ?」

 

「わかってるわ、だからね……こうするのよ!」

 

レミリアの体から紅い霧が溢れだし幻想郷全体へ広がっていく

 

「さぁこれで自由に動けるわ……咲夜!」

 

「はい、お嬢様」

 

「準備は?」

 

「間に合いました、いつでも大丈夫です」

 

「わかったわ……紅魔館へ迫る悪魔を殲滅する、来るものは全て殺しなさい!」

 

レミリアの号令でゴブリンと妖精達は雄叫びをあげる

 

「フラン!行くわよ!」

 

「了解お姉様!」

 

姉妹を筆頭に悪魔達へ飛び込んで行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白玉楼

 

「ハッ!」

 

妖夢の一閃が悪魔を切り伏せる

 

「ギィィィィ!?」

 

切られた悪魔は断末魔の声をあげ生き絶える

 

「単体では問題ありませんが……この数は厳しいですね」

 

刀を構えた妖夢の前には今しがた殺した悪魔と同種の悪魔が何十体と妖夢を囲んでいた

 

この悪魔の名はアサルト、ムンドゥスが造り出した下級悪魔、人間大の大きさがあるトカゲの様な悪魔、下級と言えどもその力は並の人間では太刀打ち出来ない力を持つ、更に器用な事に兜や盾を持ち自分の体から生成したトゲを撃ち込んでくるのだ

 

「六道剣「一念無量劫」!!」

 

斬撃と共に放たれた弾幕がアサルトを薙ぎ払う、直撃し虫の息になる者もいるが盾で防いだ者もいる

 

「フッ!!」

 

弾幕を防いだアサルトの隙を狙い切り抜ける、数体を切り抜けた後、距離を取り虫の息のアサルトに弾幕を放ちトドメを刺す

 

「幽々子様には近寄らせません!」

 

アサルト達の様子を伺いながら刀で牽制する妖夢

 

「妖夢……」

 

そこへ幽々子が現れる

 

「幽々子様!私は大丈夫です!危険ですので中へお戻りください!」

 

主が危険な戦闘域に姿を現したのを見て退く事を伝える、これは弾幕ごっこでは無いのだ、命のやり取り……殺し合い、そんな危険な事に主を巻き込む訳にはいかないのだ

 

「ギィィィィ!!」

 

幽々子に気付いたアサルトが幽々子に飛び掛かる、刀を持つ者より今来た丸腰の方が組みやすしと思ったのだろう

 

「キィ!?ギイィイィィ!?」

 

飛び掛かったアサルトが突如声をあげ幽々子の前で悶える

 

「キ……キィ……」

 

数秒悶えた後、アサルトは動かなくなり、そして生き絶えた

 

「主に死を操る程度の能力……やはり恐ろしいです……」

 

生き絶えるアサルトを見た妖夢が呟いた

 

死を与える能力、言うならばザキである、対象に死を与えるその能力は造り出された悪魔にも有効だった、だがその強力な能力もムンドゥスには効かない、それはムンドゥスの力が能力の許容を遥かに越える化物だからだ、しかし低級の悪魔なら通用する、幽々子の能力は今この場では妖夢より殲滅力があった

 

「妖夢、行きなさい……幻想郷を守る為に」

 

妖夢の横に立ち告げた

 

「……今がその時なんですね?」

 

神妙な表情で主に問う、先に言われた事が今なのかと妖夢は確認する

 

「そうよ、ここは私に任せなさい、こんな低級の悪魔達にやられる程柔くはないわ」

 

そう言うと死蝶を飛ばし、蝶が当たったアサルトは生き絶えていく

 

「さぁ行きなさい妖夢、死んではダメよ?」

 

ニコリと微笑んだ幽々子に妖夢は頷いた

 

「わかりました、幽々子様もお気をつけて……魂魄妖夢、行って参ります」

 

主に告げた後、妖夢は身を翻しアサルトの集団の中に飛び込んで行く、襲い掛かるアサルトを切り抜けながら

 

「頼んだわね妖夢、私もここが済んだら向かうからね」

 

死蝶を大量に展開した幽々子はアサルト達を迎え撃つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

妖怪の山

 

妖怪の山にも大量の悪魔が押し寄せていた、空を漂う死神を連想させる鎌を持つシンサイズ、大鋏を持つシンシザーズ、その上位の牛の骨を依り代にしたデスシザーズ、鎌を4刀持つデスサイズ、そして白玉楼にも現れたアサルト、道中が長く狭い白玉楼とは違い陸と空から攻められる妖怪の山は白玉楼とは比べ物にならない量の悪魔が押し寄せていた

 

 

「う……うわあぁぁぁ!!」

 

「ぎゃあああぁぁぁ!!」

 

 

悪魔の大群に1人、また1人と力の無い妖怪達は倒れる、瀕死の状態で放っておかれる者もいれば既に事切れた死体を引き裂かれる者もいる、妖怪の山は今、地獄と化していた

 

「く、来るな!来るなあぁぁ!」

 

岩壁に追い込まれた妖怪にシンシザーズの鋏がゆっくりと迫る

 

「ウヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

 

カン高い狂喜の声をあげながら鋏は妖怪の首を刈り取ろうと迫る

 

「ウヒャヒャヒャヒャ!?」

 

首を鋏む瞬間、シンシザーズの依り代の面が割られシンシザーズは断末魔の声をあげ空中に霧散した

 

「大丈夫ですか!?」

 

シンシザーズを倒したのは早苗、恐怖で動けない妖怪に近寄り安否を尋ねる

 

「む、無理だ……勝てるわけがない!」

 

助けられた妖怪は戦意の欠片も無くただ脅えるのみ

 

「臆するな!妖怪の意地を見せよ!我等の居場所は我等で守らねばならん!立て!妖怪の誇りを見せるのだ!」

 

そこに神奈子が現れる

 

「し、しかし……」

 

神奈子の言葉にも動こうとしない妖怪、話が通じず殺意のみでやってくる悪魔達相手に平和に慣れた幻想郷の妖怪には荷が重かった

 

「ならばそこで震えていろ!居場所も守れずに何が幻想郷の民だ!行くぞ早苗!」

 

早苗を連れ悪魔の撃滅に向かおうとする神奈子

 

「……お待ちください!」

 

飛び立とうとする神奈子達を妖怪が呼び止めた

 

「私も……行きます……戦います!」

 

拳を握り締め立ち上がる、震えは止まらないが覚悟を決めた目をしている

 

「……我も悪魔共の相手で手一杯でな、守る事は出来ぬ……抜かるなよ?」

 

その瞳に笑みを向けた神奈子は早苗と共に飛び立ち他所で戦う諏訪子と同じ様に散っていった

 

そして残された妖怪も他の妖怪を鼓舞し、一丸となって悪魔達と戦い始めた

 

妖怪の山は阿鼻叫喚の地獄から猛り狂う戦場に変わる、神奈子を筆頭に諏訪子、早苗、天魔、文等の鴉天狗達が戦場を駆け巡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧都

 

ここにも当然悪魔達の侵攻が行われていた

 

アサルトやシンやデス、人形を依り代にした悪魔、マリオネットも加わり旧都を荒らし回っていた

 

 

 

 

かに見えた

 

 

 

 

「そぉらぁ!」

 

萃香の拳がアサルトを打ち、殴り飛ばされたアサルトが他のアサルトを巻き込んで肉体を千切れさしながら飛んでいく

 

「悪魔ってのはこんなもんかい?拍子抜けだねぇ」

 

勇儀がマリオネットをバラバラにしながらデスシザーズの依り代を握り潰す

 

「あんまり大した事はないけど数だけはいるねぇ……」

 

次々と悪魔を葬る鬼の二人を囲む悪魔の大群に勇儀は酒瓶の酒を飲みながら笑う

 

「食い放題って奴さね、ねぇ勇儀?どっちが多く倒せるか勝負しないかい?負けた方が飯を奢るって事でさ」

 

「良いねぇ乗った!そうと決まれば本気で行くよ!他の奴等の獲物も全部あたしが頂いてやるよ!」

 

「おおぅ!勇儀が本気になったんならあたしもうかうかしてられないね!あたしも本気で行くよ!」

 

勝負が始まった瞬間、悪魔達はボロクズの様に散っていった、二人の鬼の前に低級悪魔だけでは数を集めても無意味だったのだ、旧都に住む他の妖怪達も地上の妖怪達より強く勇ましい者も多い、悪魔達は地霊殿に近寄る事すら出来ず次々と倒されて行った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太陽の畑

 

「鬱陶しいわね次から次へと……」

 

アサルトを踏み潰し、断末魔を聞きながら幽香が呟いた、花畑の回りには既にアサルトの死体シン達の砕かれた依り代の山が出来ている、かなりの数を倒したが一向に止む様子は無い

 

(これ以上はあの子達を守りながら戦うのは難しいわね……)

 

大量の花を悪魔達から守り抜くのは困難と判断した幽香は花畑から遠ざかる、悪魔達に見えるようゆっくりと

 

(狙いは私の様だし私が離れたら大丈夫でしょう)

 

花畑からかなりの距離を取った幽香は平地に降り立つ、それに追い付く様に大量の悪魔が幽香を囲む

 

「さぁ来なさい、ジワジワと嬲り殺してあげる!一匹たりとも逃がさない……覚悟しなさい」

 

傘を構えた幽香は飛び掛かってくる悪魔を前に微笑む、悪魔達は知るよしも無いが相手は究極のサディスト妖怪、悪魔達が生きて残る事は不可能だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命蓮寺

 

「収容状況は?」

 

水蜜が雲山に問う

 

「大丈夫、今完了したわ、この辺りの妖怪達は命蓮寺に収容出来たわ」

 

「よし!聖様!何時でも行けます!」

 

傍らの白蓮に報告すると白蓮は頷いた

 

「ではこれより命蓮寺は聖輦船となり悪魔達と交戦に入ります!水蜜!」

 

「了解です!聖輦船!発進!」

 

形を変えた命蓮寺は船の形になり聖輦船となり空を飛んだ、そして紅い霧の漂う幻想郷の空を我が物顔で飛び回る悪魔達の群れに飛び込んで行く

 

「これより戦闘に入る!撃ち方用意!」

 

水蜜の指示で妖怪達は聖輦船に装備された機銃へ向かう、この機銃は河童の協力で作り上げた魔力・妖力を弾にして撃ち出す魔法道具の一種、弾幕に不得手な者でも戦える様にこしらえた武器だ

 

「てぇー!!」

 

水蜜の合図で一斉射撃が開始された、機銃の威力は凄まじく、悪魔達を次々と葬っていく、だが悪魔達も負けてはいない、機銃の弾幕を避けながら遠距離攻撃を放ってくる

 

「左舷被弾!損傷は軽微です!」

 

オペレーター妖怪が被害状況を知らせる

 

「左舷!弾幕薄いよ!何やってんの!」

 

通信越しに怒鳴る水蜜

 

「私達も出ます、水蜜、聖輦船は任せました」

 

「了解です聖様!お気をつけて!」

 

敬礼し白蓮達を見送った水蜜はすぐに通信機を取る

 

「聖様達が出撃される!誤射に気を付けろ!そんで気合い入れろよ!」

 

水蜜の一喝に聖輦船の妖怪達の士気は上がり、出撃した白蓮達も加わり戦いは更に激しさを増していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隠された人里周辺

 

「大妖精!私から離れるな!」

 

「は、はい!」

 

慧音と大妖精は悪魔達に囲まれていた

 

「ハァッ!」

 

飛び掛かる悪魔に弾幕で向かえ撃つ

 

「ギュイイイ!?」

 

倒された悪魔が断末魔をあげながら肉体を破裂させる

 

「!?大妖精!離れろ!酸だ!」

 

破裂させながら撒き散らされる液体が地面を溶かすのを見て離れる、この悪魔はノーバディ、人間が四足歩行をしている様な悪魔、知能は低く同じ悪魔でも攻撃を仕掛ける、その体液は強力な酸で出来ており撒き散らしながら絶命する

 

(マズイな……私1人ならなんとかなるが大妖精を守りながらでは厳しいか……)

 

傍らにいる大妖精を庇いながら悪魔を睨む、大妖精も戦えない訳ではないのだがチルノの様な強い力を持つわけでもなく修行もしなかった、だから悪魔を相手にするには力が足りないのだ

 

「!?」

 

悪魔を牽制していた慧音が気付いた

 

(また増えた……このままでは逃げる事も……)

 

次々と増えていく悪魔達、既に回りは囲まれ空もシン達が包囲している

 

(クソッ……満月ならどうにかなったのに……)

 

歯噛みする慧音、悪魔達が飛び掛からんとした瞬間、空から大量の弾幕が放たれ悪魔達を襲った

 

「大丈夫ですか?」

 

「お前達は……八雲紫の……」

 

悪魔達を蹴散らし二人の前に立ったのは八雲藍とその式、橙

 

「紫様の命で助けに来ました、澄!蹴散らすわよ!」

 

「はい!」

 

言うや否や悪魔達に弾幕を放つ二人に一瞬呆けた慧音だがすぐに持ち直す、そこに背後からアサルトが大妖精を襲う

 

「ギュイ!?」

 

アサルトは悲鳴と共に真っ二つになり生き絶えた

 

「僕も助太刀しよう」

 

アサルトを切ったのは霖之助、草薙の剣を構え笑う

 

「霖之助……助かる!食らえ!」

 

慧音も攻撃に参加し、人里の周辺も戦場となる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷の僻地

 

「鬼人正邪!隠れていろ!」

 

交戦する見張りが正邪に叫んだ

 

「わ、わかった!」

 

すぐに物陰に隠れ様子を伺う

 

(あれは悪魔か?勘弁して欲しいな……折角殺されない様にバーンが骨を折ってくれたのにさ)

 

正邪は見張りの戦いから目を逸らし幻想郷の景色に目をやる

 

(幻想郷全体に悪魔がいるな……そうだ、バーンは大丈夫なのか?)

 

ふとバーンの事を思いだす

 

(いや、バーンなら大丈夫……か?待てよ……いくらバーンでもこれだけの数の悪魔は無理か?)

 

少し思案した正邪はおもむろに立ち上がり駆け出した

 

「鬼人正邪!どこへ行く!戻れ!」

 

見張りが正邪を呼び戻すが正邪は止まらない

 

「悪い!少し恩返しに行ってくる!あたしの最初で最後の恩返しさ!終わったら戻るよ!」

 

そう言って悪魔を避けながら正邪は走っていく、恩人の元へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地霊殿

 

(数千の悪魔が幻想郷に撒かれたか……アレは動く気がまだ無いと見える……遊んでいるな……)

 

身動きの取れない状況からバーンは可能な限り状況を分析していた、もちろんさとりに読まれぬ様に心に壁を作って

 

(こうしている間にも侵略は続いている……私が今為すべきなのはここでこうする事なのか、それとも戦いに行くべきなのか……)

 

バーンを抑えるさとりは焦っている、自分の判断は正しいのか?協力を諦め戦いに向かった方が良いのかを考えていた

 

「どうした?顔色が優れぬ様だが?……迷っているのだろう?このまま余を縛りあり得ぬ協力を求めるべきか戦いに行くのかを」

 

そんなさとりの心境はバーンには見抜かれていた、心を見抜かれたさとりは驚きバーンを見るがバーンは涼しい顔をしている

 

「何をそんなに驚く?心を見抜かれたのがそんなに驚きか?貴様のその表情を見れば誰でもわかるというものだ」

 

「……!?」

 

鼻で笑うバーンにさとりは益々焦りを増していく

 

(くぅ……やはり魔族に協力を求めるのが間違いだった……いや!しかしアレに対抗するには幻想郷の者では……)

 

焦りは思考の進展を阻んだ、結局はもとの位置まで戻り進む事はなかった

 

(もう来る頃と思ったが……何かあったか、仲間割れか……それとも余を用済みとしたか……)

 

バーンは待っていた、今この状況でしか会えないであろう待ち人を、待つと言うよりは予想だが読みが外れた事でバーンは自分の利用価値が無くなったのだと思い始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠亭

永遠亭には悪魔はあまり現れなかった、回りが迷いの竹林に囲まれているだけあって大量の悪魔が迷い、永遠亭に着けたのは運の良い悪魔か空からたまたま永遠亭を見つけた悪魔だけであった

 

「何なのこいつらは?悪魔みたいだけど……あっまた来た」

 

アサルトが1体竹林を抜け永遠亭の庭で倒した悪魔を眺める輝夜に襲い掛かる

 

「姫様!」

 

鈴仙の弾幕がアサルトを撃ち、アサルトは生き絶えた

 

「ありがと鈴仙」

 

鈴仙に礼を言った後、鈴仙の隣にいる女性に声を掛けた

 

「何が起こってるか知ってるんでしょ永琳?答えなさい」

 

「……何故私が知っているとわかるんです?」

 

永琳が澄ました表情で返した

 

「貴方がコソコソ何かをしていたのは知ってるわ、内容まではわからなかったけど、この悪魔の襲撃に関係あるんでしょ?紅い霧まで出てる、レミリアが霧を幻想郷全体に出すんだこの様子じゃ幻想郷全体に悪魔が蔓延っているだろうしね」

 

「……わかりました、教えます……」

 

観念した永琳は話した、封印から始まり封印が破られた事、そしておそらく悪魔はその封印を破った者の仕業だと

 

「なるほどね……通りで妙な魔力を感じる訳ね、バーンに一瞬似ていると思ったけど全然違うわ、この魔力は殺意が強すぎる」

 

納得した輝夜は外に向かい歩き出す

 

「姫様、どちらに?」

 

永琳の問いに振り返らず輝夜は話し出した

 

「決まってるわ、悪魔達を倒しに行くのよ」

 

「姫様がなさる必要はありません、それより月に避難しましょう、話はついています」

 

永琳の言葉に鈴仙は驚愕し、ピクリと反応した輝夜は足を止めた

 

「……お断りね、あそこに戻るくらいなら私は幻想郷の者達と運命を共にするわ、行きたいなら貴方達だけで行きなさい」

 

再び歩き出す輝夜を見つめる永琳に慌てる鈴仙

 

「し、師匠!私も月には戻りたくありません!ごめんなさい!私も行きます!」

 

永琳に告げた後、鈴仙は輝夜の後を追っていく、そして残された永琳は静かに目を閉じる

 

(例え蓬莱人でも勝つことは出来ないわ……死なないなら封印なり如何様にもやりようがある……精神を壊すなんて方法もね……無理なんですよ姫様……)

 

封印されていた者に対しての無力を悟っている永琳は二人を見送った後も立ち続けた

 

 

 

 

「とっくに逃げたと思っていたけど……どうやら貴方も覚悟を決めた様ね」

 

 

 

 

突然背後から声が掛かった

 

「こうなっては仕方ないわ、私1人が月に逃げてもね……それにアレには月も例外なんて事はないでしょうから」

 

振り向く事なく返事を返す、誰が来たのか見ずともわかっている

 

「……用件はわかっているわね?」

 

背後の声に永琳は頷く

 

「わかっているわ、行きましょう」

 

振り向いた永琳はスキマへと入っていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

封印の地

 

「そう……そうよね!」

 

今まで幻想郷で会ってきた者達、皆が簡単に諦める訳が無い、それを思い出した霊夢は拳を握り立ち上がった

 

「ごめんね、少し弱気になってたわ、もう大丈夫!」

 

凛々しい顔で3人に告げる、もう絶望は無い、戦う意思を持ち霊夢はムンドゥスを睨み付けた

 

「だ、そうだぜ?魔帝さんよ?私達は諦めない、例えそれが蜘蛛の糸を掴む様でもな!」

 

得意面でムンドゥスに言い放った魔理沙に3人も強い瞳でムンドゥスを睨み付ける

 

 

「フハハハハハハ!!」

 

 

その4人にムンドゥスが笑いをあげた

 

「その意気込みは認めてやろう……だがお前達に勝ち目は無い、それでも来るのか?」

 

「やってみなきゃわかんねぇぜ!」

 

力の差を知って尚その闘志は衰えない、彼女等を動かすのは幻想郷を守る意思、それがムンドゥスの力への絶望を消し、戦う道を選ばせた

 

「フフフ……ならば前座を用意してやろう、前座を倒せれたならば相手をしてやろう」

 

そう言うとムンドゥスは魔力を集め黒球を作り出した

 

「出でよ我が部下よ」

 

ムンドゥスが魔力を高めると黒球が膨張し黒球から3体の悪魔が産み出された、巨大な大蜘蛛、巨大な鳥、人間大の黒鎧の剣士

 

「ファントム、グリフォンそしてネロアンジェロ、かつて我の部下だった者よ、我が魔力で作り出した模造品よ、更に……」

 

足下に転がるナイトメアのコアに魔力を送る、魔力を送られ起動したナイトメアは液体を精製し3体の悪魔の横に並ぶ

 

「……上等だぜ!みんな!覚悟は出来てるな!」

 

「もちろんよ!」

 

魔理沙の確認に3人は声を合わせ答え、身構えた

 

「フフフ……行け!」

 

ムンドゥスの合図に悪魔は飛び出した、だが飛び出したのはグリフォンとネロアンジェロ

 

「どこに行くつもり!?まさか外へ!?」

 

グリフォンの背に乗ったネロアンジェロはグリフォンと共に外への道へ向かい飛んでいく

 

「フッフッフ……何もここで相手をするとは言っておらん、止めたくば追うが良い、外の者が殺される前にな……フハハハハハハ!」

 

「んの野郎!」

 

ムンドゥスの高笑いにキレた妹紅だがそれを抑え魔理沙が箒に跨がり叫んだ

 

「アレは私がなんとかする!そいつらを任せた!」

 

そう言うと魔理沙はグリフォンを追っていく、残された3人はファントムとナイトメアに対峙する

 

「ナイトメアは霊夢が相手をしないとダメだな……あの蜘蛛も1人じゃ厳しそうだしどうする?」

 

妹紅が二人に聞いた

 

「ナイトメアには妹紅の物理攻撃?が必要なんでしょ?じゃあナイトメアは任せたわ!あたいがあの蜘蛛の相手をするわ!」

 

「1人で大丈夫か?ってもそうなるか……」

 

チルノの発言に不安な妹紅だが現状を見るにそれしかなさそうだった

 

 

「ナイトメアは私が霊夢とやるわ、妹紅とチルノはそっちの化物蜘蛛をお願い」

 

 

相手を決めた3人に背後から声が掛かった

 

「パチュリー!どうしてここに!?」

 

そこに居たのはパチュリー、少し息切れをしている

 

「魔力を辿って来たのよ、魔理沙とは途中で会ったわ、任せる!って一言だけ告げて鳥を追いかけて行ったわ」

 

「そうか……よし!頼むぜパチュリー!」

 

「ええ……しかし……」

 

パチュリーは相手をするナイトメアを見ずにムンドゥスを見上げる

 

「本当に途方もない魔力ね……何をどうしたらこんな魔力を持てるのよ……」

 

ムンドゥスから感じる魔力に呆れを漏らす、魔女の彼女がそう感じる程にムンドゥスの魔力は人智を越えている

 

「フフフ……魔に長けた者よ、知った所で無意味よ、貴様等は死ぬのだ、我が部下を乗り越えたとしても待つのは我よ、貴様等に明日は来んのだ……さぁ行けファントム!ナイトメアよ!」

 

ムンドゥスの合図でファントムとナイトメアは動き出す

 

「行くわよ!幻想郷を守るのよ!」

 

霊夢の掛け声と共に封印の地での戦いは切って落とされた

 

 

 

 

 

 

 

幻想郷の命運を掛けた戦いは始まった

 

 

ただ1人、バーンを残して

 

 

 

 

 




ムンドゥス率いる悪魔軍団と幻想郷の戦争が始まりました。

元々封印されし者には3名候補がいました、ロトの紋章の異魔神、ゼルダの伝説のガノンドロフ、そしてデビルメイクライのムンドゥスです、この3名の中でムンドゥスを選んだ訳は今回の幻想郷全体の戦いをしたかったからです、ロトの紋章やナビィはその名残です。

他の2名でも充分ボスは張れるんですが異魔神はげっこうやしんくうがどうしようも無くて……特にしんくうをされると問答無用に妖怪や人間が死んじゃう……りゅうせいもヤバイし……ガノンドロフは力のトライフォースを駆使して良い感じにボスになれそうだったんですが悪魔を創造出来るムンドゥスが幻想郷全体を巻き込むにはピッタリだったのでムンドゥスになりました。

次回からはムンドゥスの部下との戦いになります。

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