東方大魔王伝   作:黒太陽

12 / 45
第11話 神魔邂逅

ここは幻想郷にある妖怪の山にある守矢神社

 

「何ですか神奈子様?」

 

守矢神社の巫女、東風谷早苗は自分が祀る神、八坂神奈子に呼び出されて神奈子の部屋へ入った

 

「来たわね早苗、ちょっと貴方に頼みがあるのよ」

 

「何でしょう?」

 

早苗が頼み事の詳細を尋ねると神奈子と一緒にいた洩矢諏訪子が口を開いた

 

「見てきて欲しい人がいるの」

 

「見てきて欲しい人……ですか?」

 

諏訪子の言葉に首を傾げる早苗、彼女はこの幻想郷に見るに値する人物が想像つかなかったからだ

 

「早苗も知ってるでしょう?あの大魔王なんて言われてるバーンの事よ」

 

「ああ!あの大魔王の!凄く強いらしいですねぇ!」

 

「それを確めて来て欲しいの、それで本当に強いならここに連れてきて」

 

「確かめるって……どうやってですか?」

 

また首を傾げる早苗、彼女には神の確かめると言う方法が想像がつかないから

 

「そんなに難しく考えなくて良いの、普通に勝負したら良いのよ、弾幕勝負でね、弱っちぃなら連れて来なくて良いわ、早苗の修行の成果も試せるでしょう?」

 

「わかりました!……でもどうして今更大魔王の力を見るんですか?」

 

早苗の問いに若干顔を苦くする二人

 

「……余り時間が残されて無いからね、利用出来る物は利用しないと……ね」

 

「はぁ……良くわかりませんけどバーンさんの力を見てくれば良いんですね、行ってきます」

 

「任せたわ早苗」

 

自分の部屋に戻り身支度を整えながら早苗はワクワクしている

 

(弱かったら連れて来なくて良いって事は退治しても良いって事ですよね!最近妖怪退治してないからウズウズしてたのよね~楽しみ!)

 

身支度を終えた早苗はウキウキしながら守矢神社を出ていった……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇバーン、貴方ってここに来る前は何をしようとしてたの?」

 

図書館で紅茶を飲みながらレミリアが不意にバーンに聞いた、今日はパチュリーは魔導書を集めに外出中、図書館は狭いと紅魔館の回廊で四人が特訓しているので図書館には今二人

 

「知りたいのか?」

 

「嫌ならいいんだけどね」

 

レミリアのどちらでも良いと言う言葉に数秒沈黙した後バーンは話し出した

 

「……神になろうとしたのだ」

 

「……神?それは格を上げようとしたの?」

 

「いや、名だ……余が居たのは地底の魔界、その魔界に太陽を与え魔界の神になろうとした、その為に地上を破壊しようとしたのだ……失敗だったがな」

 

そう語るバーンにレミリアはバーンから何か虚しさにも似た物を感じる、表情に変化は無いが言葉から普段と違う物を感じていた

 

「魔族を魔界に押し込んだ神々の罪を償う為の計画だったが……今となってはどうでもよい事よ……」

 

「……悔いは無いの?」

 

「無いと言えば嘘になる、数千年を掛けた悲願とも言うべき計画だったのだ……それに神々への憎しみもある」

 

「……!」

 

レミリアはバーンが拳を握っているのを見た

 

如何にもう無意味と分かっていようとバーンの神々への憎しみは消えない、それ程までにバーンの神々への憎しみは深い

 

「……やり直したいと思った事ある?」

 

レミリアの質問にバーンはいつもの様子に戻り返答した

 

「そんな事を考えて何になるというのだ……遊技ではない」

 

「わかってるわよ、そんなに難しく考えずに答えてくれないかしら?」

 

「無い……だが……敗れた時の事は忘れる事は出来んだろうな……」

 

虚空を睨みながらバーンは呟く様に返答する

 

「そう……いつか復讐が出来ると良いわね……」

 

「気休めはいらん、それにもう叶わぬ事よ……」

 

その言葉を最後に二人が沈黙を保っているとドアを開き咲夜が現れる

 

「東風谷早苗が見えています、バーン様に面会を希望しています」

 

「……バーン、もしかしたら貴方の願い叶うかも知れないわよ?」

 

「何?」

 

邪悪な笑みを浮かべるレミリアに真意の読めないバーンは問う

 

「早苗の用件次第だけどもしかすれば……フフ……行きましょバーン」

 

問いに答えず歩き出すレミリアにバーンは敢えて聞かず図書館を出た

 

 

 

 

「おお~!実物は迫力が違いますねぇ……流石大魔王!早速ですがバーンさん!私と勝負して貰います!」

 

「……レミリア?」

 

バーンを見るや直ぐ様勝負を希望する早苗にバーンは怪訝な顔でレミリアに説明を促す

 

「アレは東風谷早苗、守矢神社の巫女よ、貴方幻想郷の本を読んでたから知ってるんじゃない?」

 

「博麗の巫女の様な重要な者は記憶しているが守矢の巫女は知らぬな」

 

「あらそうなの、博麗神社と違って守矢神社には神が居るのは知ってるでしょ?分かりやすく言えばあいつは神の配下ってとこね」

 

「ほお……」

 

レミリアの説明に神の存在を感じたバーンは早苗の前に歩いていく

 

「単なる力試しではあるまい?目的は何だ?」

 

「それは私を倒せれたら教えましょう!」

 

早苗の上からの態度にバーンの表情は冷たくなっていく

 

「……後悔せぬ様にな」

 

 

(あーあ……怒らせちゃった……勝つ気なんでしょうけど相手が悪過ぎるわ早苗……)

 

バーンの力を知るレミリアは早苗に強く同情した……

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

早苗はボロボロだった、倒せれたら発言からこの間、僅か5分

 

(つ、強過ぎる……)

 

満身創痍の早苗は肩で息をしながら余裕の直立姿勢のバーンを苦悶の表情で見ている

 

(弱かったら退治なんてとんでもない……強過ぎですよ……それに容赦無いし……なんか怒らせちゃったかな?)

 

自分の発言が今の状況を作ったと思っていない早苗

 

「まだ話すつもりは無いか?」

 

周囲に大量の弾幕を浮かべたバーンが聞く、話さないならコレを撃つぞと脅しを込めて

 

「ま、待ってください!参りました!」

 

大量の弾幕とバーンの本気の表情に早苗は直ぐ様負けを認め話し出した

 

「神奈子様と諏訪子様がバーンさんの力を試して来いって仰られて……まぁ私も退治する気だったんですが」

 

笑顔でバーンを退治するつもりだったと話す早苗

 

「……ならばもう一度掛かって来るが良い」

 

早苗の余計な発言にバーンが凄む

 

「あ、いや……そのぉ……ごめんなさい……」

 

「話が進まないじゃない、早苗あなた口の利き方に気を付けなさい、バーンも腹立つのはわかるけど抑えて」

 

レミリアが仲裁に入り話は進む

 

「えー……それでですね、バーンさんに神奈子様と諏訪子様に会って貰えないでしょうか?」

 

「帰って伝えるがいい、会いたいのなら自ら来い……とな」

 

「あーうー……それは困ります、どうかお願いします」

 

頼み込む早苗にバーンは身を翻し告げる

 

「帰るがいい」

 

そのまま図書館に戻り帰る事は無かった

 

 

「どうしよう……お仕置きされちゃう……」

 

困った早苗は頭を抱えてうずくまる、度々お仕置きされている早苗は怖くてしょうがないのだ

 

「早苗の態度が悪かったんでしょうね……もう少し言葉を選んだ方が良いわよ早苗」

 

「神奈子様と諏訪子様になんて言えばいいか……」

 

レミリアの助言など耳に入らず主への恐怖で頭が一杯の早苗

 

「バーンの言葉をそのまま伝えるしか無いわね、早苗には少し気の毒だけどね……少しだけ……そうほんの少しだけ……ね」

 

気の毒と言うがレミリアの顔は笑っている、早苗のお仕置きを想像してそれはそれは愉快そうに

 

「……はい……わかりました、伝えて来ますぅ……お邪魔しました……」

 

トボトボと出ていく早苗を笑顔で見送るレミリア

 

(さぁて……どうなるかしらね……)

 

笑みを浮かべたまま図書館へ戻って行った

 

 

 

 

 

守矢神社

 

「何?私に出向けと言ったのか?」

 

「は、はい……」

 

守矢神社に帰った早苗の報告を受けて神奈子の表情が変わる

 

「神に出向けと?フン……魔族風情が粋がるわね」

 

「私達に出向けとは……流石大魔王って所だね」

 

「お、お気を鎮めて下さい……」

 

二人の滲み出す怒りに慌てる早苗、神を呼び出すという所業は二人にとって侮辱にあたる、いくらフランクな神と言えど神は神、他種族の命令は面白くない

 

「大魔王などと呼ばれ舞い上がる者には少しばかり力の差を見せねばなるまい」

 

「そうね、大魔王が来たくなるような力を見せ付けようか」

 

「あ、余り危険な事はおやめくださいね……」

 

「なぁに、驚かすだけさ……少しだけ……ね」

 

「紅魔館の人には悪いけど仕方無いね、やろうか神奈子」

 

そして二人は早苗を置いて外へ出て行った

 

「これ……私のせいじゃない……よね?」

 

残された早苗は1人呟いた

 

 

 

 

 

 

紅魔館

 

「あれ?急に雨降ってきたよ?さっきまで晴れてたのに」

 

不意に降ってきた雨に気付いたチルノは窓を覗く

 

「本当だぜ……なんか……強くなってないか?」

 

小降りだった雨は勢いを増し豪雨になる

 

「えー……あたし雨嫌いなのにー……」

 

フランが不満気に窓を覗く

 

「雷まで落ちてきやがった……ん?なんかおかしくないかこれ?」

 

妹紅が異常に気付いた

 

「本当です……紅魔館にしか降ってないですね」

 

大妖精が指差した先には拡がる快晴、雷雲は紅魔館のみを覆っている様だ

 

「どういう事だぜ?」

 

「ただの異常気象じゃなさそうだな、取り敢えずレミリアに知らせるか」

 

異常を感じた5人は図書館へ走っていった

 

 

「……紅魔館の周囲を力が覆っている」

 

「えっ?……妖怪退治の集団の仕業かしら?」

 

外の異変を感じ取っていたバーン、とても不愉快な顔をしている

 

「いや、神気を感じる……おそらく守矢の神の仕業だろう」

 

「あの二柱の仕業?何をされてるの?」

 

詳細を尋ねたと同時に図書館のドアが開き5人が入って来る

 

「レミリア!なんか紅魔館の回りだけ大雨と雷が……」

 

魔理沙が外の異変を伝えようとしたその時、凄まじい地鳴りと共に紅魔館を地震が襲う

 

「あわわわわ……」

 

激しい揺れが本棚を揺らし小悪魔を本で埋める

 

時間にして10秒程で地震は収まったが無残にも図書館は落ちた本が散乱しゴミ屋敷の様になっている

 

「……やってくれるわね、あの農業神!」

 

レミリアは怒りを露に身を震わす、自身の居城を攻撃された上に親友の図書館を滅茶苦茶にされた事への怒りで

 

「まぁまぁ落ち着けよレミリア……」

 

「黙ってなさい妹紅……」

 

「怖っ!……マジで頭に来てるなこれ……」

 

気圧された妹紅達はレミリアとバーンから離れ様子を窺う

 

「バーン!あのふざけた農業神共を凝らしめて来なさい!」

 

バーンに二柱の討伐命令を与える

 

「それは構わんが……よいのか?余が行っても」

 

攻撃を受けたのは紅魔館、なのでバーンは一応館の主に確認を取る

 

「バーンが売られた喧嘩でしょう!紅魔館を巻き込んだんだから責任取って二度とこんな真似が出来ないようにして来なさい!」

 

命令に変更はなかった

 

「……よかろう、余も気分の良いものではないのでな」

 

そう言うとバーンは図書館を出ていった、気分の良いものではないのは当然だが紅魔館に住ませて貰っている恩義もある、だからバーンはレミリアの命令を素直に聞いた

 

「……さっ!用意しなさいあんた達!観戦に行くわよ!」

 

バーンが図書館を出て数秒後に急に笑顔になり魔理沙達に告げた

 

「は?」

 

レミリアの急変振りにみんな目を丸くさせている

 

「何ボーっとしてるのよ!早くしなさい!」

 

「……お前怒ってないのか?」

 

「怒ってるわよ!それよりも今はバーンと神奈子達の勝負が見たいのよ!」

 

そう語るレミリアの目はキラキラと輝いている

 

「……それにもしかしたらバーンの悔いも解消出来るかもしれないしね……バーンの望む形じゃないけどね」

 

「何だかよくわからないけど確かにバーンと神奈子の勝負は気になるぜ……良し!行くぜ!」

 

魔理沙の言葉に頷いた小悪魔を除く図書館メンバーは少し遅れて紅魔館を出発した

 

 

 

 

 

 

守矢神社へ向かうバーンに障害は無かった

 

神奈子達がバーンが来るのを予期し妖怪の山に住む妖怪達にバーンを通すよう通達してあったからだ、そのため発見されても襲われる事は無かった、もっとも並みの妖怪ではバーンにキズすら与えられはしないが……

 

 

「……お前達が守矢の神か」

 

守矢神社に着いたバーンは神社の敷地に佇む二人の女性に問う

 

「そう、私達がこの守矢神社の神、八坂神奈子と洩矢諏訪子よ」

 

神奈子は普通に名乗る、紅魔館への悪戯で溜飲が下がったのかいつも通りの口調に戻っている

 

「フン……その守矢の神とやらが余に何用だ?」

 

「早苗を容易く退けるその力を借りたいのよ、貴方も知ってるでしょう?アレを」

 

「お前はアレが何かを知っているのか?」

 

アレ、もちろん無縁塚に封印される者の事、不干渉を決めているバーンにも興味はある者なので神奈子の口振りから何かを知っていると感じたバーンは神奈子に問う

 

「いや、私にもわからない者よアレは、ただ分かるのは途方も無い力を持ち封印が破れると幻想郷が滅ぶ事だけね」

 

意訳すれば分かるのは強いだけで正体は分からない、それを聞いたバーンは苦笑する

 

「……何か可笑しいかしら?」

 

「神にも分からぬ事があるのか……フフフ……それで神とは笑わせる……と思ってな」

 

「……私達は全知全能では無いからね、分からない事もあるわ」

 

バーンの嘲笑に神奈子の表情は変わり始める

 

「ほお……では分からないから魔族である余に助けを求めるのか?フン……所詮は些細な天候や大地を操るだけの下級神か」

 

「魔族風情が調子に乗らない事ね……お前は黙って私達に協力すれば良いのよ……」

 

既に神奈子から神の余裕は消えていた、神を恐れぬバーンの発言に神奈子の怒りが表情を通して伝わる

 

「断る、八雲紫もそうだがお前達の掌で踊るつもりは無いのでな」

 

神奈子の威圧を受けても表情一つ変わらぬバーンは更に続ける

 

「そして……魔族を卑下するお前達が気に入らんのだ!」

 

鋭い眼光と共に神奈子へ言い放つ

 

「……ならば我の力で屈服させてやろうぞ」

 

神への宣戦布告とも取れるその言動に遂に神奈子がその力を開放する

 

「そうだ……」

 

力を開放した神奈子に同調し同じく力を開放したバーンは告げる

 

「余を踊らせたいと言うなら、言葉ではなくあくまで……」

 

 

 

 

 

「力で語れっ!!」

 

 

 

 

大魔王と神の戦いが始まる……




神様との戦いが始まりました。

ちなみに諏訪子は戦いません、地震しただけです。

バーン様はドラクエのパラメータにするとどれぐらいでしょうかねぇ…歴代ラスボスの上位には行きそうですね、三段階変身もあるし強そうだ…ゲームで出ないかな…

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。