鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ネタ探しに原作を読んでいます


箱庭の家族

廃ビルの屋上の縁に腰かけながら、紫色のドレスの少女は銀の煙管をふかしていた

香りのいい上質の紫煙が夜風に吹かれて消えて行った

 

「ねぇねぇどうなった?」

 

白い髪の少女が唐突に少女に声を掛ける

 

「守備は上場とは言い難いわね。ミチルだけじゃなくて、他の魔法少女が介入してきたわ」

 

「他の魔法少女?あの変態レオタード?それともミクのパクリな金髪ツインテール?」

 

「いいえ。見滝原の魔法少女、と名乗っていたわ」

 

「見滝原の?」

 

「ええ、一人は佐倉杏子、もう一人は宇佐美真と名乗ったわ」

 

「宇佐美って・・・・・ひょっとして知り合い?」

 

宇佐美と聞いて、白い髪の少女が傍らの少女を見る

しかし、少女はそれに関心を持たず紫煙を楽しんでいた

 

「知らないわ。ただ同じ苗字なだけよ」

 

「・・・・次は何をするの?」

 

「今は様子を見ることね。真って名乗った魔法少女の動きを監視しなきゃいけないわ」

 

「私が失敗したから?」

 

しくじりをしてしまったかのように白い髪の少女はやや怯えた瞳をしていた

 

「ジュ二・・・・。貴方は最高の仕事をした。それに今回の目的はプレイアデス聖団の連中にかずみが魔法少女となったことを知らせるのが目的だったからね」

 

そういうと少女は煙管を吸うのを止め、「ジュ二」と呼ばれた傍らの少女を抱き寄せた

 

「キャッ!」

 

「貴方の不安は自分がニセモノだからいずれ捨てられるかというもの。私はあの外道とは違うのよ?」

 

「ううん・・・・ありがとう・・」

 

「さぁ御飯を食べに行こうかしら。ジュ二は何を食べたい?」

 

「それなら私はイチゴリゾットを食べたい!」

 

「あらあら、もっと高いものでもいいのよ?」

 

「いいの!イチゴリゾットを食べていると幸せだった頃を思い出せるから・・・・・」

 

そう言うとジュ二は顔を伏せた

 

手が鉤爪だったけど、誰よりもやさしかった「よちゃん」

 

料理は壊滅的に下手だった「いっちゃん」

 

背中に蝙蝠のような羽をつけていた「なっちゃん」

 

皆の中では一番背の高かった「はっちゃん」

 

時折いじわるをしてくるけど楽しかった「ないちゃん」

 

みんなみんな死んだ

みんなみんな殺された

あの悪魔に命令されて!

 

「・・・・・復讐なんて考えるのはよしなさい」

 

「わかっているよ・・・・あの女は十分に報いを受けた・・・・13番目の私の手にかかって」

 

今でも思い出せる

血漿と一緒に脳髄を地面にぶちまけた「あの悪魔」の死に顔

笑みがこぼれる

だって、泣き虫のあの女は「何で死ぬの?」という呆けた顔をしていたのだから・・・・

そう報いを受けたのだ

なら私が手を下すことはない

 

「ねぇ・・楽園にはあの女は必要ないよね?」

 

「彼女が魔法少女となるのなら私は招くわ。楽園はそのために存在しているのだから・・・・」

 

金髪の少女は傍らの少女に微笑む

しかし、その瞳は笑っていなかった

 

「わかったよ・・・・・・」

 

「さぁ夕食を食べてきましょうか、ジュニ」

 

二人の少女が去った後には、微かな紫煙の残り香のみが漂っていた

 

 

 

NGシーン

 

― 魔法少女 ―

一つの願いの代わりに命果てるまで戦い続ける戦士たち

彼らは自らを鼓舞するため、自らの技に名前を付けたり凝った名乗りを上げる者も多い

・・・・決して「中二病」と言ってはならない

 

ビストロ・タチバナ

忙しい時間帯が過ぎた店内に思案顔の少女が二人

一人は踝まで輝くような金のツインテール

もう一人は短く切りそろえられた銀髪が特徴的だった

 

「二つ名なんていいってユウリ」

 

銀髪の少女がツインテールの少女に声を掛ける

 

「あいり!そんなことないって!ただでさえ悪役レスラーのような恰好をしているのに、二つ名もなしだったら逆に攻撃されちゃうよ!」

 

杏里あいり

ユウリの唯一 ― オンリーワン ― の親友である、ツインテールの少女「飛鳥ユウリ」の願いで命を繋ぎ止めた少女

故あって彼女も魔法少女となり、此処あすなろ市を成り行きであるとはいえ守っている

ユウリの言うとおりだ

彼女の魔法少女形態はどう見ても正義の魔法少女には見えない

 

「私は献身の魔法少女って二つ名を師匠がくれたんだけど・・・」

 

彼女の師匠「和紗ミチル」

魔力枯渇により死を迎えつつあったユウリを助け、師匠として魔法少女の戦い方を教えた戦士

彼女の二つ名は「道化」の魔法少女

それは道化師の仮面を常にしていたことと、親友を絶望の運命から救うために暗躍していたことから自嘲を込めて自ら名乗っていた

 

「ったく!二つ名なんて・・・・」

 

「せっかくあいりもあすなろ市を守る魔法少女になったんだから絶対必要よ!!!」

 

普段見せることのないユウリの迫力にあいりは折れた

 

「わぁったよ!」

 

 

数日後

 

「我が名は・・・・やっぱり言わなきゃダメ?」

 

「折角、立花さんも考えてくれたんだから言わなきゃだめだよ!!!!」

 

魔獣さん@待機中

 

「我が名は牛鬼蛇神の魔法少女 杏里ゆうり!!!!」

 

あいりは赤面しつつも名乗りを上げ、使い魔「コルノフォルテ」に跨る

 

― もうヤケクソだ!!!! ―

 

「推して参る!!!!!!」

 

・・・その後彼女は近隣の魔法少女たちより「中二」の魔法少女と呼ばれることになる

 

 

 

 

 

 

 

 




煙管をかっこよく吸えるようになりたい

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