鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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さて、恒例のエイプリルフールネタが出そろったところで、投下します


エイプリルフール特別編  幻想の魔法少女達

魔道書「ネクロノミコン」

死霊秘法とも訳される稀代の魔書であるこれは、高度に概念化された科学書とも、読むだけで「喰われる」書物のカタチをした魔物とも言われている

そんなネクロノミコンに漢字訳版が存在していることを知っている者は限られたものしかいない

 

薄暗い書庫

「KOSUZU」と書かれたエプロンをした茜色の髪をした少女が地面に描かれた円陣の前に立っていた

その傍らにはまるで闇がそのまま人の姿をとったかのような、黒づくめの少女が笑みを浮かべていた

 

「これで・・・・失われたはずの第二漢字訳版が手に入る・・・」

 

少女は既に「喰われて」いた

今彼女が開こうとしているのは因果に穴を空ける行為

いつもの彼女ならそんな危険な事はしない

だが、心を喰われた彼女にそれを考えることはない

その心を支配するのは「失われた同胞」を得て完全になることのみだった

 

 

同時刻

見滝原市 宇佐美邸別館

 

ピンポーン

 

「ティンダロス運送でーす」

 

「は~い 今行きます」

 

鈴を鳴らすような声が響いて、玄関先に一人の小柄な少年が立つ

宇佐美真、二つ名は「鉄仮面の魔法少女」

 

「えっと何々・・・・最重要物、開かずにそのまま地下シェルターに置くべし。父さん・・・・今度は核弾頭でも買ってきたの?」

 

彼の父「宇佐美蓮助」は優秀な文化人類学者であると同時に稀代の奇品コレクターだ

現在はフィールドワークで世界を飛び回っているが、時折こうして旅先で入手した奇品を送ってくる

真は軽く、包みを揺らした

大きさ、重さからして恐らくは書物

真とて好奇心はあるが、「水神クタアト」をうっかり開いたばかりに雌のスキュラに逆レイプされかかったことがある以上、放置するしかない

ちなみに真は「まだ」童貞であり「処女」である

 

ピィーーーーーーーーーー!!!!!

 

「いけね、今お湯を沸かしているんだった!!」

 

彼が包みをテーブルに置くと、キッチンへと向かった

 

ピンポーン

 

「真入るぜ」

 

「お邪魔します」

 

「お邪魔するわ」

 

玄関から三人の少女の声が響く

 

「今、お茶の準備をしているから少し待っていてくださいね」

 

「おう。クッキーでも喰って待ってっから」

 

赤い髪の少女が真に声を掛ける

 

「・・・・・・?クッキーなんてあったか・・・・・げ!!!!!!!!」

 

彼は今更ながらに自分の軽率さを恨んだ

火を止め、急いでリビングに戻った彼が見たのは・・・

 

「どう考えても喰いもんじゃねぇな」

 

禍々しい書物を手に、残念そうな表情を浮かべる佐倉杏子の姿だった

 

「なぁ真・・・これはなんだ・・」

 

「佐倉さん!早くそれを離して!」

 

金色の巻き毛が特徴的な少女「巴マミ」が恐怖に顔を引き攣らせながら叫ぶ

 

「ただの本だろ・・・・ん!?」

 

本がドクドクと脈打っていた

慌てて杏子がその書物を放り投げる

その刹那、全てが光の中に消えた

 

 

「イテテ・・・・・ここは?」

 

目の前には霧に包まれた湖

そして悪趣味な紅い邸

 

ギィィィィィ・・・・

 

奇怪なアラベスク模様に彩られた重々しい扉が開く

その中には一人の少女

輝くような銀髪に白いフリル付きのカチューシャをつけ、青いメイド服に白いエプロンをつけたメイドが立っていた

人気のない赤い屋敷と人形のようなメイド

しかし、それよりも真を驚かせたもの

それは・・・・

 

~ 何時の間に! ~

 

瞬く程の瞬間で彼が門を抜け、大広間に立っていたことだ

幻覚や催眠なんて稚拙なものでは決してない、本物の「魔術」の片鱗を見たように思えた

 

「ふふふ・・・・やはり運命は絶対ね」

 

中央の玉座に少女が嬲るような瞳で真を見つめる

 

「キミは・・・・一体?」

 

その瞬間だった

 

「お言葉にお気を付けくださいませ」

 

喉元に突きつけられる銀のナイフ

それを握るのは先ほどのメイドだった

 

「咲夜よい、下がりなさい。名を名乗らず非礼だったな、わが名はレミリア・スカーレット。ここ紅魔館の主にして吸血鬼なるぞ!」

 

少女が玉座から立ち上がると同時に黒い羽が広がっていく

その光景の美しさに真は圧倒される

そして絶対的な恐怖をも感じていた

 

~ ああ、もう既に僕は化け物の口の中なんだ ~

 

恭順を示せば命は助かるかもしれない

しかし待っているのは彼女の「食料」としての未来か、それとも「慰み者」として蹂躙されるか

その先はわからない

真は一か八か、「魔法少女」に変身しようとした

だが、

 

「ソウルジェムが無い!!!!!」

 

そう真が指輪に変えて嵌めていた筈のソウルジェムが消えていた

 

「ほう、これがスキマの言っていたソウルジェムか。まさに魂の宝石ね」

 

レミリアの手の中にはオパールのような真のソウルジェムが握られていた

まさに絶体絶命だった

 

「そう睨むな宇佐美真よ。お前の必要とする魔力は保証する・・・・その上で我が妹の世話を頼みたい」

 

「妹?」

 

「そうだ。愛しくて愛しくてたまらず、縊り殺したくてたまらないほど憎い・・・・わが妹フランドール・スカーレットの」

 

その時、真は見た

気丈に振る舞うレミリアの瞳の端に光る涙を

そして彼は知ることになる

酷くいびつで、何処までも無垢な一人の吸血鬼の物語を

 

 

冥界 白玉楼

「恐怖のブラックホール幽霊」こと、西行寺幽々子の食卓はいつも賑わしいが、今日は更に賑わしかった

それはもう一人食卓についている赤い髪の少女「佐倉杏子」の所為だった

 

「よく食べて、よく笑う。ホント生きているって素晴らしわね。そう思わないかしら妖夢?」

 

「ええ・・・そうですね(幽霊なのにあんなに食べているアンタのほうがある意味素晴らしいよ!)」

 

昨日、白玉楼の門の前に倒れていた少女

服からすれば外来人のようだったが、驚いたことに彼女は「生きていた」

通常、此処へは死んでいない人間が来ることはできない

多少例外はあるが、彼女がそういう類の人間に見えなかった

幽々子様に報告すると、「あらあら、もう少し穏便にできなかったのかしら紫」と言っていたので、間違いなくあのBBAが今回も関わっているのだろう

きっとまた異変解決に駆り出されるに違いない

無論、あの大食い幽霊の世話をしながら・・・・

 

「白玉楼なのにブラックとはコレ如何に?」

 

彼女の呟きに誰も答える者はいなかった

 

 

妖怪の山 守矢神社

 

「ティロ・フィナーレ!!!!」

 

金色の巻き毛の少女が放った一撃で有象無象が一斉に吹き飛ぶ

 

「東風谷さんこっちは終わったわ」

 

「ありがとうございます。野良妖怪退治に付き合せちゃって・・・」

 

「いいのよ。山の中で倒れていた私を助けてくれたんだもの」

 

「巴さん・・・」

 

巴マミと東風谷早苗

二人は長年の友人のように笑いあった

その光景を一匹のカエルが影から見つめていた

 

「・・・・・神奈子」

 

「わかっている。だけどあの子にはあの子の人生がある。目的が終わったら元の場所に返さなければいけない」

 

二人は悩んでいた

ここ幻想郷に来て以来、早苗は笑わなくなった

二人の祭神はそれを見ていてつらかった

本当だったら、早苗は友人と一緒に笑いあう未来もあったのだろう

だが、彼女は二人についてくることを選んだ

外の世界の幸せを全て捨てて・・・

 

「私・・・早苗があの子を返したくないっていうのなら・・・・スキマとやり合ってもいいと思っているんだ」

 

もう一人の祭神である洩矢諏訪子は濁った瞳で八坂神奈子を見つめた

 

 

「此処は・・・・?」

 

「暁美ほむら」が目覚めると無数の目が浮かぶ空間にいた

最初は魔女の結界と思ったが、結界特有の魔力は感じない

 

「流石は界渡りの魔法少女。これくらいで驚くことはないか・・・」

 

ほむらが振り向くと、フリルの付いた豪奢な日傘をさした金髪の女性が彼女を見つめていた

 

「ここ幻想郷の管理人をしております、八雲紫と申します。どうぞご贔屓に」

 

― 此奴胡散臭い ―

 

ほむらは警戒を止めなかった

なぜならここは彼女の結界

魔女ではないにしろ危険なことに変わりはない

 

「貴方方をここに呼んだのは私ですの。お願いをするためにね」

 

「お願い?」

 

「そう。今幻想郷は危機に瀕しておりますわ。危険すぎて二つに分けられた魔書がここ幻想郷で一つになろうとしている・・・ある小娘のお蔭でね」

 

ほむらは長い黒髪をかきあげた

それは重力に引かれ、ゆっくりと降りていく

 

「私がそれを手伝うメリットは?」

 

「魔力の補充、安全の保障、そして・・・・・」

 

ほむらの手に何かが握られていた

広げるとそれは・・・

 

「まどかのパンツ!!!!!!略してまどパン!そして裏地の布の汚れ具合からすると夜のお祈りをしたあとのモノ・・・なんてレアなの!!」

 

「ふふふ・・・あの年頃の娘なら興味本位で夜のお祈りをすることもあるわ。引き受けてもらえるなら、まどかの無修正ノーカットのビデオもつけるわよ」

 

そこまで言うと紫は口元を扇子で隠し笑みを浮かべた

 

「します!させてください!!!」

 

・・・・ほむらは即答した

 

 

 

これより始まるは「救いの物語」

 

 

あるものは触れるモノ全て壊してしまう自分に絶望し、自ら俘囚となった

 

「真お兄ちゃん!来ないで!来たら私、真お兄ちゃんを壊しちゃう」

 

「僕は壊れないよフランちゃん!」

 

真は半壊した自らの身体で彼女を抱きしめた

痛みは消していない

きっとフランは自分よりも「痛い」はずなのだから・・・

 

 

彼女は絶望した

どうにもならない、自らの「死を招く能力」に

そして・・・・ある春の日、彼女は自らの呪われた人生を終えた

 

「杏子さん、貴方・・・死者に取り憑かれているわよ」

 

「え?!」

 

杏子が振り向くが何もいない

 

「死者というのは死を招くもの・・・・あなたは言うなれば今はいない人物のことをいつも考えている」

 

「・・・・あたしにアイツを忘れろってい言うのか?」

 

「そうじゃないわ。でも、貴方がそんなに強く思う限り死者は死者のままよ。生者は生を生きなければならない」

 

何時もは飄々とした幽々子が真剣な表情で杏子を見つめる

 

「貴方は今を生きている。生を謳歌しなさい。乙女の命は短いのだから・・・」

 

 

夫が死んだ

何れこうなると知っていた・・・・知っていた筈だった

なのに、瞳から流れる涙は止まることなく、神殿を嗚咽が満たした

彼女の傍らには夫との子供

半神半人の現人神

人間よりも長生きだ

しかし、神である自分よりも短命

だから誓った

この子供、いやこの子供たちを幸せにすると

そのためにはどんなこともすると

 

「スキマ~やっぱアタシは辞めるわ。あんたにつくよりもあっちの方が見返りが多いもん」

 

「神奈子!狂ったか!!!!」

 

「狂ってなんかいない!!私はただ早苗の幸せを願っているだけだ!!!」

 

 

 

幻想に抱かれた少女達は何を見るのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ふぅ、いつもの二倍の文章を書くのはつらい・・・・

あ、これは「ネタ」ですので本気にしないでください

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