鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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これからバイトなので少し早いですが投下します


The show must go on

 

「おやおや騎士団長というものが、このように薄汚れた場所に何用で?」

 

宇佐木里見演じるボロボロの服を着た老婆が糸を紡ぎながら、佐倉杏子演じる赤い髪の騎士に声をかける

その裏にあるのは侮蔑

自らの色恋に狂い、命惜しさに老婆の甘言に騙される

舞台の中盤、牧カオル演じる若い騎士が黒い獣に生きながら喰われるさまを見て、命惜しさに自らの信仰とともに老婆に「魂」を売り渡すシーン

杏子は開演前の緊張がウソのように与えられた役を見事に演じ切っていた

まぁ普段、男言葉で蓮っ葉なところがあることも役作りに一役買っていることもあるのだが・・・

舞台は変わり教会が現れる

真演じる「シスター・クラレット」の登場だ

シスターは神に殉ずるもの

色恋を考えてはならない

より多くを求めてはならない

彼女シスター・クラレットはそれに満足していた

信仰に殉じ、日々を他者のために祈る生活に

しかし、戦いの前の洗礼をするために教会に立ち寄った騎士は彼女の信仰を砕いた

もはや神への祈りも教会の厳しい戒律も彼女にとっては苦しみでしかなかった

祈りはやがて騎士への恋慕へと変わる

悪魔に魂を売り渡し「永遠の命」を得た騎士が彼女の元に現れる

二人は見つめ合い、そして抱き合う

それを若葉みらい演じる修道女が見つめていた・・・

セリフのない演技

これは二人が初心者であることを加味した浅海サキと脚本担当の御崎海香が考えた演出ではあるが、逆にそれが二人の深い愛を強く表現していた

 

~ 杏子さん!もうちょっとくっついてくれないと!!! ~

 

真が杏子に念話で話しかける

 

~ この変態セクハラ野郎!演技といいつついやらしい事をするんでしょ!マミの部屋にあった薄い本みたいに!!! ~

 

~ 違いますよ!!!!ってマミさんがそんなものを持っているんですか!~

 

見つめあい、真剣に演技する二人

 

「完璧だ・・・完璧だよ二人とも!」

 

舞台そでで二人にエールを送る演出担当の浅海サキ

 

しかし、二人は「魔法少女」

魔法少女特有の会話方法である「念話」で二人は会話していた

劇団員含め、一般人の預かり知らぬ裏で二人の思春期特有の葛藤があったことを知っている者はいない

 

 

「あ~疲れた・・・・」

 

控え室で杏子が背を伸ばした

 

「まだ終わりじゃないですよ次は杏子さんの出番なんですから」

 

そういうと真は控室に用意されている、よく冷えたスポーツドリンクを杏子に手渡す

 

「さんきゅー」

 

よほど喉が渇いていたのだろう、杏子はキャップをねじ切ると喉を鳴らしソレを一気に飲み干した

 

真は座り心地のいい椅子に身を預けた

演技は難しい

セリフがなくとも、演技で全てを語ることに彼は力不足を感じていた

だからこそ「楽しい」

もっともっと演技したい

もっともっと学びたい

 

~ 本格的に演技を勉強してもいいかもしれないな ~

 

真が控室でそんなことを考えていた時だ

 

ゾワッ

 

墓場のような重々しい空気が公会堂を包んだ

間違いない「魔獣」の結界だ

しかし、今は昼間

魔獣が出るには早すぎる

そしてその前兆ともいえる瘴気を真も杏子も感じてはいない

だが、今それを考えている猶予はない

 

「杏子さん・・・魔獣が!!」

 

「わかってる」

 

変身した杏子が控室を出ようとした

 

「ちょっと待って!」

 

真が杏子を引き留めた

 

「何だよ真!!!」

 

「討伐には僕が行きます」

 

「なんだよ!二人でやった方が・・・」

 

「次は杏子さんの出番ですよ。大丈夫です・・・・僕の出番はかなり先ですから」

 

「・・・・大丈夫か?」

 

杏子が真を見つめる

かつての相棒の姿が過る

 

「大丈夫です。そんなに僕が頼りないんですか」

 

真も杏子を見つめる

そこに恐れも慢心もない

そこにはただ一人の「戦士」がいた

 

「無事で帰ってこいよ」

 

「ええ」

 

真の手の中のソウルジェムから放たれる虹色の泡に包まれ、真は「鉄仮面の魔法少女」へと変わった

 

「・・・・行きます」

 

杏子は遠ざかっていく真の背中をただ見つめていた

今でも不安はある

だが、彼は自らの信念を持った一人の戦士だ

長く彼と一緒に戦った杏子は彼が道半ばで倒れるような人間ではないことを知っている

 

ギリッ

 

彼女の手の中で真から渡されたドリンクのボトルが軋んだ

 

 

 

NGシーン

 

真も杏子を見つめる

そこに恐れも慢心もない

そこにはただ一人の「戦士」がいた

 

「無事で帰ってこいよ」

 

「ええ」

 

真の手の中のソウルジェムから放たれる虹色の泡に包まれる

 

「スィッチオーン!!!!!」

 

ビュォォォォォォォォ!!!!!!

 

何時の間にか準備されていた巨大送風機からの突然の突風で、真の身体を覆う海の泡を想起させる虹色の泡が吹き飛んでしまう

そこには真珠のような白い肌を露わにした真の艶姿

 

「げへへへ!ちゃんと脇や股間の恥毛も処理してんだな~」

 

鼻から大量の鼻血を滴らせながら至近距離で真の裸体を鑑賞する杏子

 

「忘れていた、侮っていはいけない奴の変態力を! 杏子ーーーーーーーー!!!!」

 

ガラッ

 

「騒々しいよ!真く・・・・ん?」

 

浅海サキの眼前にあるもの

完璧な女性体の真とそれを鼻血を流しながらカメラに収める杏子の姿だった

 

 

BADEND

 

 

 

 

 

 

 

 

 




愛用の懐中時計の修理で少し金欠気味・・・・

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