鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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ハーメルンが乙らないうちに投下


それぞれの想い

 

「劇団プレアデス聖団公演 魔王と聖女のダンス」

 

あすなろ市公会堂

その前には目深に帽子を被った少女

帽子の隙間から猫のような癖毛を覗かせた彼女の心中は穏やかではない

 

数日前

彼女は自分が別の世界の記憶を持っていること、有体にいえば「転生者」であることを弟子である飛鳥ユウリに伝えた

彼女は驚愕しつつもそれを受け入れた

魔力枯渇を起こして「魔女」へと変わり、絶望を振りまいていたことを

魔女という異形の怪物と化した彼女を救うためには殺すしかなかったこと

そしてそれを目撃した杏里あいりが復讐鬼に変わったこと、その全てを

全てを知った上で、尚も彼女は魔法少女として戦い続けることを選択した

たとえ先に絶望しかなくとも

たとえ全てが無へと変わっても

そしてその死すら誰にも気づかなくても

彼女が紡ぎ出した希望と彼女の起こした奇跡は彼女を裏切らない

ならば、命果てるその時まで多くの人々のために希望を紡ぎ続けると、彼女は二人の転生者である「杏里あいり」と「和紗ミチル」に宣言した

それはミチルがかつて仲間たちと一緒に夢見た「希望の魔法少女」の姿そのものだった

 

「ミチルさん貴方のしていることは彼女達への侮辱です!そんなにも彼女達は弱い人間だったんですか?」

 

― 言ってくれるじゃないか・・・・ ―

 

ユウリの言うとおりかもしれない

「過去」の私は魔法少女の魔女化という真実に打ちのめされ全ての責任を取ろうとした

その結果が・・・・

今、私は何の因果か全てを「やり直せる」立場にある

なら私は過去に目を向けるのではなく、これからの「現在」を生きることしかない

少女は意を決して、公会堂の門を開いた

ミチルが公会堂へ入ったのを何者かが物陰から覗いていたことに気付かぬままに・・・

 

ポテポテッ

 

物陰からクマのぬいぐるみが飛出し、一人の少女の手の中におさまる

ミチルにもう少し余裕があったのなら、微妙な魔力を感知してこのクマのぬいぐるみが監視していることに気づくことができたはずだ

クマのぬいぐるみを使い魔として扱える存在は「過去」においてただ一人しかいない

そして今ミチルの監視を終えたクマのぬいぐるみ回収し抱く少女の姿にも・・・

 

「ねぇこれで本当にアイツらは魔法少女になろうとするの?」

 

「貴方も見たでしょ?一緒に旅した世界の多くでプレイアデス聖団の連中がミチルに助けられて憧れや夢を勝手に抱いて魔法少女になったのを」

 

「そりゃそうだけど・・・・」

 

「それよりも発芽寸前のグリーフシードの設置は終わった?ジュニ」

 

金髪で紫色のドレスを着た少女が少女に語りかける

 

「もちろん!」

 

「なら私達も観客として楽しみましょうか。この舞台を・・・」

 

「「楽園への余興として、ね」」

 

先ほどの少女 ― 和紗ミチル ― によく似た面影の少女を伴い、紫色のドレスを着た少女は公会堂の中へと消えていった

 

 

「はぁはぁ・・・・・酸素が薄い・・・酸素が薄いよぉ・・・」

 

何時もは勝気な笑みを浮かべている杏子が青い顔で控室の中を右往左往している

 

~ いつもはあんなに自信満々なのにね ~

 

杏子の様子に、真は知らず知らずに笑みをこぼしていた

 

「なぁに!ニヤニヤしてやがんだ真!」

 

「いやぁ~杏子さんも緊張するんだなぁ~と思って」

 

「畜生・・・・」

 

不意に真の背後が小突かれる

 

「真君も杏子を見習ったらどうかな?」

 

振り向くと枢機卿の恰好をしたサキが立っていた

彼女のショートヘアとメガネが相まって、役柄によく合っていた

 

「舞台でトちるのは慢心した時だよ。真君、セリフは完璧かい?」

 

「ええ」

 

「じゃ行こうか。みんな笑顔でカーテンコールを迎えるためにね」

 

サキに伴われて杏子と真は舞台へと向かった

 

 

 

NGシーン

 

聖ロリアーナ女学院

劇団の衣装担当である若葉みらいの通う学校だ

その一室

 

「ここに来れば・・・・例のアレが手に入ると聞いて・・・」

 

やや地味めな少女が緊張した面持ちでみらいの前に立ち、封筒を差し出す

 

「ひいふうみい、と。確かに」

 

みらいは手慣れた手つきで封筒の中身を確かめ、少女に二体のクマのぬいぐるみを渡す

 

「一応言っておくよ。ボクは君のことを知らないし、それをどう使うかも知らない。君は僕にあってなんていない。わかった?」

 

「はい」

 

少女はクマを掴むと足早に去って行った

 

 

数日後

少女はもう一体のクマの人形の耳にヘッドホンジャックを刺して、何事かを熱心に聞いていた

 

~ やっぱりツインテールで性格のきつい女がいいよな ~

 

~ そうそう!それでいてくまパンなんてつけていたら辛抱たまらん! ~

 

思春期の少年同士のエロトーク

彼らの隣にさりげなく「テディベア」が置かれていることに気づくそぶりはない

そして彼らのエロトークを熱心に聞き、メモを取る少女

それは数日前、みらいから二つのテディベアを受け取った少女だった

 

「先輩の好みって意外とマニアックね。今度みらいさんに特攻服かボンテージドレスでも頼もうかな・・・・」

 

 

 

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かずみ☆マギカの魅力は露出のみに非ず!
メガネに萌えるべし!

・・・いや、意外とメガネっ娘が多いので

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