鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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原作でのプレイアデス聖団って結構、ミチルを酷使しているような・・・・


御崎海香の希望

 

「熱いぃぃぃぃぃぃぃぃいぃぃぃい!!助けて・・・助けてアベル!!!」

 

舞台の中央、小型のエア・コンプレッサーから供給される空気で作り物の炎が舞う

「魔王と聖女のダンス」の最終章

魔術師のフリをした悪魔の甘言に騙された騎士が悪魔と成り果て、その恋人であった修道女が神への背信から火炙りにされるクライマックス

彼女が炎に消えるとともに、ボロボロになった服から白銀のドレスを着た真と騎士が天上に現れ、神に許された二人が天国へ向かうシーン

この素早い早変わりを可能としたのは、裁縫部のホープである若葉みらいの腕があってのことだろう

劇団プレアデス聖団の衣装を一手に引き受ける彼女の腕はもはやプロといっても過言ではない

実際、本人の話によると通っている学校でも一般の学生から依頼を受けることもあるらしい

そんな彼女の渾身の一作であるこのドレス

所々にマジックテープを仕込んだこの服は直ぐ脱ぐことができ、そしてドレスも裏が赤く染められている

これは真演じる「シスタークラレット」を焼く炎なのだ

照明が消えた瞬間に、真が炎を取り外してひっくり返してドレスに変えて着るわけだ

観客からは文字通りの早変わりにしか見えない

 

「いいぞ真君!完璧な演技だよ」

 

サキがストップウォッチを手に感嘆の声をあげる

 

「ありがとうございます!」

 

「ちぃ・・・・あたしも褒めたっていいのに・・・」

 

「佐倉さんも最高の演技だったよ!!!特に最後、天使になったアベルが怖がるクラレットを抱きしめて囁く所なんて、ホントの恋人同士みたいだったし」

 

恋人同士という言葉に杏子の顔が赤く染まる

 

「そんな演技しているだけだろ!!!!!恋人なんて・・・」

 

「真と杏子が恋人なら、サキちゃんを取られなくて済むね!!!!!」

 

何時の間にか現れたみらいがサキを抱きしめる

 

「こら!みらい!いきなり抱きしめるなって言っているだろ!」

 

慌ててサキが手元からストップウォッチを落しそうになる

 

「え~~~?貴重なサキちゃんエキスを補給しているのに~~~」

 

二人の夫婦漫才を見ていると、普段いない人物がいることに真は気づいた

 

「ええっと・・・御崎海香さんでした・・よね?」

 

群青色のロングヘアーの少女に真が声を掛けた

真の声に少女が振り返る

 

「サキ!ここに部外者が!!!」

 

ズコッ!

 

「前から稽古に来ているのに今になってそれ!!!」

 

 

「失礼しました・・・・・」

 

暖かな紅茶を手に海香が真に頭を下げる

 

「海香、執筆は終わったのかい?」

 

サキが声を掛ける

 

「ええ。渡した後は担当の仕事よ」

 

海香はゆっくりと紅茶を味わった

彼女は思い出していた

自分が夢見がちな少女から「小説家」へと変わった日のことを

 

 

御崎海香

彼女の両親は海外赴任で日本に残っているのは彼女一人だった

彼女の孤独を癒してくれたもの

それは両親が残してくれた大量の本

先祖代々収集した書物を収めた書斎、中には価値ある稀覯本もある

ここは書斎は彼女にとって「ここではない場所」への入り口だった

やがて彼女はただ漠然と小説を書き始めた

小説家になりたいとか、そんな大きな目標があるわけではなかった

だが、とめどめもなく溢れる言葉を書き留めたかったからだ

そして・・・・・

 

 

「キミの小説を読ませてもらったよ。ホント中学生に思えない文章だね。これは責任もって僕が世の中に送り出すよ」

 

「ありがとうございます!!!」

 

海香は電話口で大手出版社の編集者に礼を言う

その手にはプリントアウトされたばかりの処女作「地図と手紙ときみのうた」があった

 

 

 

NGシーン

 

光の落ちたオフィス

ここは出版社「鶯文社」

御崎海香こと「う~か」

彼女と契約して、様々な小説を送り出している

また彼女の「ネットとリアルで小説を送り出したい」という願いを叶えたことでも彼女を大切にしていることが伺われる

しかし・・・

 

「う~かちゃんの生原稿・・・うへへ・・・」

 

海香の担当編集者である「八重久留米」

彼女は同人イベントで海香と出会い、そのまま彼女を訝しむ彼女を物理的に「抱き込み」出版へと漕ぎ着けた剛腕

彼女にとって海香は「可愛くて精神的に物理的にたべちゃいたい妹」

そう・・・

 

「ああ~ん!!修正が必要ね、と言ったときのう~かちゃんの泣きそうなあの顔!タマラナイワ!!!!!!!!!」

 

例の緑髪のワカメ女が見たらキマシタワーーーーーーーー!と叫びそうな勢いで陶酔する八重

オフィスには彼女一人しかおらず、彼女は海香の生原稿をオカズに夜のお祈りに励んでいた・・・

 

 

「最近、女性担当者の視線が怖い?」

 

「そうなのよカオル」

 

劇団の控室で衣装を着替えながら、海香が傍らの牧カオルに話しかけた

 

「気のせいじゃないの?」

 

「いや・・・・・あれは獲物を吟味する女豹の目だった」

 

「考え過ぎだって!女が女に欲情するわけないじゃん!」

 

「そう・・・そうよね」

 

 

「出版祝いにう~かちゃんと一緒に温泉旅行へ・・・・・辛抱堪らんばい!!!!!!」

 

ミチルの介入により海香は絶望から救われた

しかし、新たなる絶望が生み出されつつあった

それを知るすべは・・・ない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




九州出身の女子はやっぱり九州弁で喘ぐのだろうか?

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