鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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このSSのユウリはかなり行動的です


決別

「献身」の魔法少女 ― 飛鳥ユウリ ―

彼女は死の宣告を受けた無比の親友である「杏里あいり」を助けるために契約を結び魔法少女となった

ユウリの中ではあいりは魔法少女という、人外の存在を知ることなく日常を過ごしているはず「だった」

しかし、目の前で傷つき倒れ伏しているのはその「無比の親友」に他ならなかった

赤紫色の限界まで切り詰められたレオタード

同じ色の鍔の広い三角帽

そしてそこから覗く短く整えられた銀髪

ガーネットのような真紅の瞳

ユウリが幾ら目の前の存在を否定しようとしても、否定できはしなかった

 

「・・・・・見ないでくれ・・・」

 

弱弱しい声で彼女が懇願する

 

― やっぱりあいりだ ―

 

ユウリは全てが終わり、全てが始まった「あの日」を思い出していた・・・

 

 

ユウリが魔法少女となった日

彼女はあいりの病室にいた

 

「帰ってよ・・・・」

 

白いベットの上で胎児のように蹲る少女 

その姿に彼女は掛ける言葉もない

 

「聞いたでしょ・・・終わったのよ私の人生・・・・」

 

余命三か月

十五年にも満たない時間しか経験していない彼女にとって、それは絶望そのものだった

 

「ユウリ・・・あなたはお願いだから残された時間を精一杯いきろ、なんて言わないでね」

 

きっと担当の医師や看護師にそう言われたのだろう

この言葉は何よりも彼女を傷つける

なぜなら「諦めろ」と宣告しているのと変わらないのだから・・・・・

 

「ユウリ・・・あなたが生きたいのなら私は何でもする」

 

真闇の夜に彼女の元に訪れた白い生き物

その言うとおりなら・・・・

 

「私生きたい!生きてもっとユウリと一緒に美味しいものを食べたい!もっとユウリと・・・」

 

あいりは言葉を告げることができなかった

部屋を彼女の嗚咽が満たした

 

― もう迷わない ―

 

「何処へ行くの?」

 

「ナイショ」

 

そして・・・・私は命と引き換えに「魔法少女」となった

 

 

気丈に振る舞ってもあいりは心の弱さを隠しきれない

目の前にいるのは紛れもない彼女だ

 

「なぜ私を襲った?」

 

「お前が一番わかっているはずだ!!!お前が・・・・お前の仲間たちが何をしたのかをな!!!!」

 

あいりの激昂すらも彼女の鉄面皮を崩すことはできない

 

「全てを話してもらう。お前には私の知らない事を話してもらう」

 

「嫌だね!!!たとえ死んでも教えるものか!!!!」

 

「・・・・なら死ね」

 

再びミチルの持つ黒い杖が光りはじめる

 

ガチャ!!!

 

「どういうつもりだ・・・ユウリ?」

 

ユウリはミチルの背後から槍のような注射器を突きつけていた

 

「武器を納めてください・・・・わたしも聞きたいことがあります」

 

ユウリは呼吸を整える

 

「月華光江、彼女について教えてください」

 

「・・・・!」

 

常に精神的な余裕を持っていた和紗ミチルの心に漣がおきた

 

「それを知ってどうする?」

 

「私は・・・・真実を・・・いや師匠を信じたいのです・・」

 

絞り出すようにユウリは言葉を紡ぐ

消え去りそうな自分の信念を繋ぎとめるかのように・・・

 

「真実を・・・・・クッ!!!」

 

何かが炸裂する音が響き、ミチルがその場に倒れる

否、彼女の「足」はまだ立ったままだ

ふくらはぎから断裂させられたのだ

白髪の少女が握る銃によって

 

「・・・・やった!!!!!!これで・・・」

 

トーラス・ジャッジ

ブラジルのトーラス社が作り出した45口径の五連発ダブルアクションリボルバー

その特筆する点は410番という、非常に細い口径の散弾が使用できること

クマすら倒せる12番と比べ、威力は弱いが対人用には恐るべき威力を誇る

近距離でのバックショットを防衛できるものはいない

それは魔法少女とて例外ではなかった

 

「嘘でしょ・・・・・そんあ・・嫌ぁァァァァァァ!!!!」

 

ユウリは親友の凶行を直視することができなかった

 

 

 

NGシーン

「ユウリ・・・あなたが生きたいのなら私は何でもする」

 

真闇の夜に彼女の元に訪れた白い生き物

その言うとおりなら・・・・

 

「私生きたい!生きてもっとユウリと一緒に美味しいものを食べたい!もっとユウリと・・・」

 

あいりは言葉を告げることができなかった

部屋を彼女の嗚咽が満たした

 

 

「しろまる。契約する・・・・だけどその前に!」

 

『わかっているよユウリ』

 

しろまる ― インキュベーター ― の後部ハッチが開き、そこから小型のデジタルカメラが吐きだされる

 

「ブツを改めさせてもらう」

 

ユウリの白い指がカメラを操作する

映し出されたのはあいりの着替えシーン

発達不良なあいりの肢体を彩るのはレースや装飾のない黒のショーツ

 

「あぁぁん!幼児体型のあいりが黒パンなんてご馳走すぎるわぁぁぁぁ!!!早速お祈りの準備を・・・・」

 

チョンチョン

 

インキュベーターが触手でユウリをつっつく

 

『ユウリ・・・・これは僕からのサービスの一環だけど、そろそろ本契約をしてくれないと困るんだけど・・・・』

 

「ああん?」

 

ユウリがキュウベェに広島愚連隊並みの強烈なメンチを切る

あまりの迫力にキュウベェもたじろぐ

 

「そ・・・・そうだね。ボクは少し席を外すよ・・・・」

 

 

ホント契約は楽じゃない・・・・

この個体のボヤキを聞くものはいない

 

 

 

 

 

 

 




トーラス・ジャッジ
散弾を放つ、真に中二病を刺激するリボルバー
でも実は大きな弱点もあったりします

それは・・・・
「これで410番ゲージの散弾を発射するとシェルの長さからエジェクターロッドをいくら押しても一発で全弾排莢されない」
つまりはシリンダーにシェルが引っかかって次弾の装填に時間がかかるということです
ぶっちゃけ、シングルアクションリボルバーでの次弾装填のほうが場合によっては早いくらい


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