鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

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とりあえず投下します


二人の転生者

 

師匠である和紗ミチルに拳銃を向ける「献身」の魔法少女 ― 飛鳥ユウリ ―

金色の瞳に滲むもの

それは愛しいものに出会った少女のようだった

 

「・・・・正体を現せ。その姿はユウリに対しての侮辱だ」

 

「ククク・・・アハッ!そのユウリを料理したアンタが言う?かずみさぁ!」

 

― かずみ ―

 

「かつて」の仲間から贈られた愛称

今、彼女をこう呼ぶものはいない

いや、彼女が許さない

それを目の前の魔法少女が使うということは・・・

 

「貴様も・・・・転生したのか?」

 

ミチルの問い掛けに狂気に染まった彼女は愉快そうに答えた

 

「ははっ!これから死ぬ人間がそれを知ってどうなる?」

 

嘲るように魔法少女は笑う

 

 

「なら・・・・身体に教えてもらう。容赦はしない」

 

黒い少女は仮面を外した

 

ヒュォォォォォォォ

 

ビルの谷間からの夜風に吹かれ、彼女の黒髪が翻る

猫を思わせるもじゃもじゃとした短く切りそろえられた黒髪

赤く透き通った瞳

目の前の少女を射抜くように見つめる

 

「我が名は和紗ミチル!推して参る!」

 

ミチルの名乗りと共に二人は地面を蹴った

 

 

 

あすなろ中央病院

既に光はなく、静かに佇んでいる

その前に魔法少女形態の飛鳥ユウリが立っていた

 

「命に優先順位をつける、か・・・・」

 

彼女に夢がある

料理人になりたい

ナースになって多くに人を救いたい

だからキュウベェに契約を持ちかけられた時、手を叩いて喜んだ

無邪気だった

「契約」がどういったもので、そして死すらあり得ることに気付くことがなかった

だから無理をして・・・・

 

ギュッ!

 

彼女が震える身体を抱きしめる

今でも怖い

誰にも気付かれずに消えてしまうこと

 

「あいり・・・」

 

だから、彼女は心を鬼にする

奇跡に値する価値があるか?それを見極めるために・・・・

 

 

「・・・・・帰って」

 

少女の目の前には初老の男性

見滝原で起こった少女達の薬物汚染

そしてそれに伴ういじめ問題

事件の起こした波紋は広がり続け、近隣の中学校ではその対応に追われている

 

「あんたたちが私の所に来た理由はわかっているわ。どうせ釘を刺しに来たんでしょ?マスコミに話してもらいたくないんでしょ!」

 

茜色の髪をした少女が激昂する

彼女の両足には金属のフレームに固定されていた

素人目から見ても明らかに重症だ

彼女は数週間前までは別の中学校でサッカー部のエースだった

日々サッカーに打ち込む日々

その努力が認められてサッカー部のエースを任されるようになった

しかし不幸な事故が起こった

他校との交流試合

いつもと変わらない試合のはずだった

 

「!」

 

ボギィィィィィィ!!

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

そこで湿った地面で滑った彼女は足のコントロールが効かず、相手側のある選手の膝を蹴ってしまった

人体に於いて膝はある一定の角度では非常に強靭だが、しかし横からの強力な加重には無力だ

ましてやサッカー用のスパイクシューズを履いている

彼女の足が一人の選手の膝を破壊してしまったのだ

幸い、命に別条はなかったがしかし相手選手は選手として復帰するまで過酷なリハビリが待っていた

もはや開催まで一月程に迫っていた県大会の出場は絶望的だった

よくある交流試合での不幸な事故

しかし話はそれで終わらなかった

 

「アイツよ。他校のエースを潰すためにわざと蹴ったって」

 

「怖~!」

 

「テコンドーサッカーかよwwwww」

 

「ひっどwwww」

 

誰が言い出したのか

彼女が事故にあった他校の生徒を「故意」で蹴ったことにされたのだ

いくら違う、あれは事故だったと言っても誰も信じてはくれなかった

日に日にエスカレートするいじめ

それまで信頼していたサッカー部員の誰も彼女を助けてくれる者はおらず、喜々として彼女をサッカー部の「エース」から引き摺り下ろした

そして・・・・

 

「きゃぁぁあぁぁぁぁっぁぁぁぁあぁっぁ!!!!!」

 

ドサリと彼女の身体が階段に臥す

彼女の自慢だった足の感覚がまるで石のように感じる

強すぎる痛みで麻痺したように感じているのだ

少女が顔をあげる

階段の上には見知らぬ少女

彼女は理解した

階段上の少女が彼女を突き落としたのだ

 

 

「・・・・これでカオルは絶望しない」

 

苦痛のあまり気絶した彼女に、黒髪の少女の声は届かない

 

 

 

 

NGシーン

 

ある日のビストロ・タチバナ

 

ガタ・・・・

 

オーナーシェフである立花宗一郎は飾り気のない椅子に身を委ねた

BGM代わりに点けているテレビを見る

代わり映えのしない番組

その中に上半身裸の筋肉質な男性が写っていた

「スライス秋山」

姿はアレだが、腕は良い料理人であることは間違いない

かつて、ともに料理腕を研鑽した「戦友」

友人と言ってもいい

立花の脳裏にかつての秋山の姿が浮かぶ

 

「料理とは愛であり、直感で感じるもの」

 

そう説く秋山のスタンスには立花も同意していた

 

― 分量は? ―

 

アシスタントの女性が秋山に尋ねる

 

― 直感で! ―

 

ズコッ!

 

「親しみやすい料理人になりたい」

 

これもかつての秋山の言葉だ

 

「いやそこは直感じゃだめだろ!!!!!」

 

親しみやす過ぎて、もはやお笑い芸人と化したかつての戦友に盛大にこけた立花がツッコんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとスライス秋山を出せた

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