鉄仮面の魔法少女   作:17HMR

71 / 322
今章は前話で真の回想にあった真と杏子が出演した演劇の話が主です

ユウリ様と公然猥褻少女は出てきますが・・・・


聖女と魔王のダンス

 

焼きつくようなスポットライトを浴びながら、ドレスを翻し一人の少女が舞台にあらわれた

少女の身体を彩るのは、黒を基調とした修道女の服

胸元を彩るのは大切な人物から譲り受けた銀のロザリオ

背後には書き割のセット

 

ここは偽りの世界

 

死よりも遠い世界

 

少女の名は「宇佐美真」といった・・・

 

 

 

「ねぇ真さんと佐倉さん、役者になってみないかしら?」

 

何時ものようにマギカ・カルテットの本部 ― 宇佐美邸・別館 ― で寛いでいると急に巴マミが二人に声を掛けた

 

「「へ?」」

 

そして何時ものようにユニゾンしてしまう真と杏子である

 

 

「いやね、私の知り合いがやっている演劇サークルで役者が不足してしまって、急遽役者を募集しているのよ」

 

「でも僕は演劇なんてやったことなんてないですよ?」

 

彼、真の疑問は最もだ

劇団は基本、客演をやりたがらない

舞台は真剣勝負

自分の背中を預けるには心打ち解けた仲間の方がいい

とはいえ、演じる演目によっては客演を必要とすることがある

 

「なんでマミが出ないんだ?アタシや真よりも舞台映えする身体をしてんだし」

 

「私だと・・・・その一部分が・・・その役に合わないらしいの・・・」

 

「つまりは胸が邪魔ってことか?でもそしたら真もだろ?」

 

赤い髪の少女 ― 佐倉杏子 ― は傍らの少年を見る・・・・主に彼の胸を

 

「ちょっと杏子さん!何で僕の胸を見るんですか!」

 

「いやだって・・・変身したらアタシよりあるだろ?胸」

 

「それは・・・・・僕が望んだわけでは・・・・」

 

 

『それはおかしいな真。あれは君の願望だよ?』

 

 

「キュウベェ!何時の間に」

 

インキュベーター ― キュウベェ ― 

真を含め、多くの少女達の願い事と引き換えに魂を結晶化させ「魔法少女」に再誕させる人外の存在だ

 

「で、今日は何の用かしら?」

 

『相変わらずキミは僕に敵意を向けるね、暁美ほむら。今日は使用済みのグリーフシードを回収に来ただけさ』

 

「・・・・そうね」

 

黒髪の少女 ― 暁美ほむら ― は懐から黒い立方体「グリーフシード」を取り出すと、それをキュウベェに投げ渡した

 

「私の分はそれだけよ」

 

『僕としてはノルマ達成のためにキミ達とは良好な関係を築きたいと考えているんだけどね』

 

キュウベェは背中のハッチのような器官からグリーフシードを取り込むときゅぷぃと鳴いた

 

 

「で、だ。真の巨乳がコイツの願望ってのは一体なんだ?」

 

『なんらおかしいことはないさ。君たちの能力、着ている服もいうなれば願いの一部だからさ。真の場合は、助けてもらった美樹さやかの恰好を無意識にトレースしている。だから、その胸のサイズも・・・・」

 

「つまりは真はさやかの胸をガン見していたわけか。と言うことはあのスパッツの下はさやかと同じく縞パンってことか?」

 

「もうやめて~!それ以上言ったら濁っちゃうから!導かれちゃうから!!」

 

真の懇願空しくガールズトークは続いていた・・・

 

 

『じゃあ僕はまた契約を望む少女たちの所に向かうよ』

 

「貴重な話乙でーす」

 

「ううぅぅ・・・・キュゥベェのばかぁ・・・・・」

 

「真さん、これでわかったでしょう?アイツらに心許してはいけないと」

 

「暁美さん、それを言うなら寧ろ佐倉さんのことだと思うの・・・」

 

「さて気分を変えて、さっきの話の続きといこうか!」

 

「杏子さんってホント真さん絡みだとドSね」

 

「いやだって、弄りやすいからさ」

 

その時、巴マミの目が野獣のような鋭いものに変わる

 

「演劇なら好きなだけ、真さんを弄れるわよ?」

 

「ホントか!」

 

杏子が身を乗り出す

 

「ええ、知り合いのやっている演劇の内容がね・・・・・」

 

巴マミが妖しい笑みを浮かべながら杏子に囁く

 

 

さあ、既に幕は上がった

ありきたりな喜劇?

それとも絶望の果てに終わる悲劇?

快刀乱麻な冒険譚がお望みか?

彼らは知らない

舞台裏で誰も知らない「過去」に縛られ踊る二人の道化を

何気ない日常に潜む「無垢な悪意」を

 

 

 

NGシーン

 

客席

 

漆黒の修道服を着た真が現れると多くの観客が息をのんだ

そこに居るのは紛れもない女性、しかも美女ときている

観客の中には、「本当は男性じゃなくて女性ではないか?」と疑うものもいた

 

 

観客席の後ろ、所謂「桟敷」と呼ばれるVIP席に座る少年

普段は新進気鋭のバイオリニストとして活躍する彼の瞳は、スポットライトに照らされる真に注がれていた

灰色の髪を靡かせ、ややハスキーな声で演技をする彼の姿はかつて絶望の淵に沈んでいた彼をその淵から救い出した魔法少女を彷彿とさせた

 

― 真君は確かに男の子だ。でも・・・余りにも「彼女」に似ている。そんなことが・・・・・ある!条理を覆す存在である魔法少女なら・・・ ―

 

舞台で舞い踊る真の姿を熱心に見つめる「上条恭介」

それを怪訝な顔で見つめる彼の恋人である「志築仁美」

その内には黒々とした感情の澱みが渦巻いていた

 

― 折角二次元廃人から復帰できたと思いましたのに・・・・・今度は男の娘なんですの!!節操なしなのですの?夜の伯爵なのですの? ―

 

その類まれな知性で真の正体に近づきつつある恭介

だが・・・

 

― こうなったら実力行使ですの!!!!香港で仕込まれた媚薬を盛ってでも恭介様を真人間に戻すのですわ!!! ―

 

彼が真実に辿りつけるのはもう少し先のことになりそうだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




伯爵と聞くと、どうしても卑猥なイメージが浮かんでしまう・・・

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。