これにて今章は終わり
土曜日にも設定を投下しますね
『契約するんでいいんだね?』
白髪の少女の目の前には猫とウサギを混ぜ合わせたような生き物
その正体を知らない人間には、可愛らしさのみを抽出した理想の愛玩動物としか思わないだろう
しかし、その正体は「人間を宇宙延命のために使い潰す宇宙人」
少女は正体を知っていても契約を望んだ
「お前がどれだけ外道であっても、アタシにはこれしか方法が思いつかなかった・・・・」
少女の表情は硬い
『願いを』
「アタシをユウリにして!さあ、叶えなさいよ!!!!」
動物で言うところの耳にあたる場所から生えた触手が彼女の胸に吸い込まれ、彼女の胸からはシトリンのようなオレンジ色の宝石が飛び出した
『おめでとう。君の願いはエントロピーを凌駕した。さあ、その力を解き放ってご覧』
白髪が踝まで伸び、根本から金髪に変わり
赤い瞳が金色の瞳へと変わっていく
その姿は彼女に命を分け与えてくれた無比の親友の姿にそっくりだった
そして露出度の高すぎるボディースーツ
まるで「傷つけられるなら傷つけて見ろ!」とでもいうかのようだ
「アハハハ!これで奴らに復讐できる!アタシのために魔法少女になったユウリを奪った奴らに!!!!!」
全ては彼女の「記憶」通り
病気が治った後、ユウリと一緒に約束通りバケツパフェを食べた
その夜から夢に現れるようになった「未来」
その中で、飛鳥ユウリは彼女に命を与え、そして死んでいった・・・・
記憶の中の私はユウリの復讐が遂げられる、そのあと一歩で力尽き闇に包まれ消えた
なら、今の私も歩む道は一つしかない
狂気の笑みを零す少女
だが・・・
『あいり。キミの言うユウリという少女は生きているよ』
「へ?!」
『この街にユウリと言う魔法少女は一人しかいないよ。飛鳥ユウリ一人だけさ』
ギュム!
『きゅぷぃ!』
あいりと呼ばれた少女が白い生き物を頭と足を持って力いっぱい引く
渾身の一撃を食らい、白い生き物が呻く
「アタシをだまくらかそうって、そうはいかないぞ淫獣が!!!」
『僕らに嘘を付くなんて感情はないよ。そもそも僕にスタンガンを当てて、有無も言わず拉致したのは君の方じゃないか?』
「なら、なんでユウリは検査入院中のアタシを見舞いに来ないの!」
未来の記憶なら、最後に彼女を見舞ってからユウリは失踪した
つまりは今現在生きているはずがないのだ
『そんなに信じられないなら見てみればいいさ』
あすなろ市シティーホール
ここは市役所としての機能のほか、図書館も併設されていた
そこに舞い踊る二つの影
二人は戦い合っていた
「ティロ・コットラ!!!!!」
金色のツインテールを靡かせながら、手にした無数の針が突きだした注射器から光弾を弾きだす
「遅い!!!!」
道化師の仮面をつけた黒い少女が、エジプト十字 ― アンク ― を象った黒い杖を構える
彼女に向けられた光弾が杖の中心に嵌められた黒色の石に吸い込まれる
「なんで・・・全力の攻撃なのに!」
「お返しだ」
黒い少女が杖を振った瞬間だった
今しがた吸収された光弾が現出し、彼女に向かっていく
「きゃぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『確かにユウリは危なかった。でも、あの黒い少女が助けた』
「あいつは・・・・」
脳裏に浮かぶは、寄ってたかって彼女の親友「だった」魔女を抹殺した少女達
そしてそれを率いる、「黒い少女」
『今のユウリは彼女の弟子になっている。最近は二人で模擬戦闘を行っているようだね。君の見舞いに来なかったのはきっとその事が原因さ』
淡々と赤い瞳が事実を告げる
それが彼女「杏里あいり」の心を傷つけることを知りながら
「あいつの・・・・あいつの名前を教えて」
彼、「インキュベーター」には感情を表す機能はない
しかし、もし感情を表すことができたのなら、満面の笑みを浮かべたろう
厄介な存在を「厄介な存在」に始末させることができるのだから
『魔法少女 和紗ミチルさ』
ちなみにタイトルの意味は「バカは死んでも治らない」